「男は心の中に一本の剣を持っておかねばならん、大切な者を守るには心構えが必要だ」
概要
ルーデウスの父親。冒険者パーティ「黒狼の牙」の元リーダー。アスラ王国の上級貴族ノトス・グレイラット家の生まれだが、12歳で家を飛び出し冒険者として生活していた。しかしパーティメンバーのゼニスを妊娠させ、安定した生活を求めて冒険者を引退。従兄弟のフィリップを頼ってフィットア領ブエナ村駐在騎士の職に就いた。
容姿
茶髪の我儘そうな印象を与える濃い目の顔立ちの美形。女性によくモテて、結婚前はナンパなどで何人もの女性と関係を持った。しかし、本気で好きになったのは母親を除けばゼニスだけだったという。
人物像
巨乳好きの自由奔放で破天荒な性格。子どもの頃からノトス・グレイラット家の悪童として有名で厳格な父親に束縛されるのを嫌がっていた。家出して冒険者になってからは、どこぞの鬼畜戦士のごとく好き勝手に生きて各地に敵を作るが、評判の悪い相手でも偏見で見たりせず長所を見抜き、同じようなはぐれ者を集めて「黒狼の牙」を結成するなどリーダーシップに優れている。ただし、ゼニスと結婚する際に揉め事を起こし、元仲間たち(特にエリナリーゼとタルハンド)は今もパウロを嫌っている。
ゼニスと出会ってからは自分が欲しかったものが自分を愛してくれる家族と家庭だと気づき、大人としての責任や良識を身につけていった。
他の女性に手を出さないという約束でゼニスと結婚するが、結局性欲に負けてメイドのリーリャに浮気をした。
擁護するとこの世界では一夫一妻はミリス教徒などの一部の考え方で複数の妻を持つのは珍しくなく、村長就任時に2人目の妻を娶るのがルールで決まっている村もある。
パウロの立場だと複数人妻を持っても珍しくなく、この世界ではあくまで約束を破った嘘つきで、開き直らないで謝るだけましとも言える。
また、追い詰められると酒に逃げるなど精神的には弱いところがある。
『剣士としてもリーダーとしても優秀な人物であるが、父親としての才能は無い様子』と評されており、家事など家のことはできず、子どもの教育でも失敗ばかりだが、親としての責任感は強く、異常な息子にも父親として愛情を持って時に失敗しながらも真剣に接している。
戦闘能力
剣術の三大流派「剣神流」「水神流」「北神流」を上級まで習得した優秀な剣士。攻撃・防御・立ち回りが揃った剣技は理想の剣士を体現したと評されている。
剣神流を主体にしているが、一番才能があるのは北神流で本気で戦う時は二刀流で獣じみた戦い方になる。しかし、北神流は「あれは剣を使って戦っているだけで剣術ではない」として好んでおらず使いたくないと言っている。
総合的な実力は聖級剣士程度で剣王のギレーヌには一度も勝ったことはない。
技
- 無音の太刀
剣神流上級技。奥義である光の太刀の下位に位置する技で風切り音もなく斬る。光の太刀と違って片手でも使用可能。
- 流
水神流基本のカウンター技。敵の攻撃に剣を当てて受け流しカウンターを放つ。基礎的な技だが、極めればどんな攻撃でも返すことができ、全ての技に通じる重要な技なので、水神流では奥義と名づけている。
- 四足の型
獣族の北神流剣士が開発した技。四つん這いで相手に突進して近づき、身体をひねりながら跳躍して、腰の剣を抜刀し斬りつけると同時に口に咥えた剣を左手に持ち逆手で斬りつける。
指導者として
ルーデウスが実家にいた頃は剣術を教えていた剣の最初の師匠だが感覚派なので「クっと踏み込んでザンッ!って感じだ」など抽象的な説明しかできないうえに、ルーデウスの適性に気づかず適性に合った北神流を自分が嫌いだから教えないなど(どんな技を使うのか教えたりと対策は教授していた模様)客観性に欠けており指導者としての適性はない(作者曰わく教え子が何かを掴みそうになったらぶちのめして芽を摘むタイプ)。
関連人物
長男。前世の記憶があるが、肉体の影響を受けているので性格はパウロに似たところが多い(主に女性関係や落ち込みやすいところなど)。
息子が転生者で前世の記憶を持っていることに気づいていないが、年齢に反した知性と非常に優れた魔術の才能を備えていることから一人前の大人と同等に扱っている。
自分より立派な息子にコンプレックスを抱えるが、自分に似ているところがあるとわかると積極的にその手の話題で絡んで、時には対等の悪友のようなやり取りもしていた。
自立と成長を促すために家から半強制的に出してから一度も連絡を取らなかったが、ルーデウス十歳の誕生日には祝いに行くつもりだった。しかし誕生日の次の日に起きる転移事件の兆候により魔物が大発生し、村を守る騎士としての仕事でルーデウスの元には向かえなかった(別に行かなくても大丈夫だろうと当時は思っていたが、再会後に反省してからはルーデウスに謝っている)。
再会の際には互いの間の悪さと誤解や認識のズレ、パウロのルーデウスへの過剰気味の信頼もありルーデウスを責めて喧嘩になったが、周りの人達の手助けもあって仲直りした。ルーデウスは自分が転生者で普通の子ではないので失敗も仕方ないと受け入れている(同時に普通の子なら決して許してはいけないとも言っている)。
長女。兄妹の中で唯一平凡なことや、転移事件で共に飛ばされたこともあって非常に気にかけており、ノルンからも信頼されている。ただし、アイシャと嫌いあっていることに関しては「姉妹なんだから喧嘩くらいするだろ」と放置している。
また、物心つく前にルーデウスがパウロによって家から出されてから6歳まで一度も会っていないため、ルーデウスを家族と認識できておらず、パウロとルーデウスの喧嘩でルーデウスを嫌うようになって、そのことがアイシャとも仲が悪い理由の一つになっていたり、パウロが原因で一時期兄妹の仲で孤立していた。
次女。自由奔放で束縛が嫌いな性格やケーキが嫌いな味覚などがパウロに似ている。英才教育を施そうとしていたリーリャに「もっと自由にのびのびと育てさせるべき」と反対したのだがリーリャに鬼気迫る態度で押し切られてしまっている。ルーデウス同様優秀だから放っていても大丈夫という考えがあり、教育はリーリャに任せて預けたゼニスの実家での扱いに傷ついていることにも気づいていない(教育に積極的に参加できない事情はあるが)。
妻。ゼニスに出会う前のパウロは作者曰く某鬼畜戦士以上のゲスだったが、ゼニスに出会って自分の気持ちに向き合う内に自分が本当に欲しかったものが幼少期に手に入らなかった愛情のある家族だと気づいた。その後はそれまでの振る舞いを改めて常識的な行動をとるようになった。
父親。12歳の時に喧嘩別れした。パウロがルーデウスに行った「事情や言い分を聞かないで責める」「強制的に家から出して学ばせる」「自分の非を棚に上げて八つ当たりで責める」はパウロが子どもの頃に父親からやられて嫌だったことで、パウロは嫌いだった父親と同じことを息子にしているのであり(パウロの場合は父親を思い出して反省したり、友人に窘められたりで仲直りはできている)似た者親子と言える。
しかしパウロと違って息子に対して他人のように突き放すなど完全に親失格でパウロが出ていった後に謝罪の手紙を残して亡くなったが、パウロがアマラントを許す事はなかった。
弟。産まれる前から母親の愛情がピレモンに向かう事に不満があり、ピレモンも物心つく頃には悪童として扱われているパウロを見下すようになったので、お互いに家族という意識がなく仲が悪い。
見下して優越感に浸るピレモンを相手にはしていなかったが、母親を利用して自分を貶めたさいは半殺しにした。
パウロの出奔後にノトス・グレイラット家の当主になるが、低い能力に卑怯な性格から人望は皆無で、パウロを当主にと頭をすげ替えようとする一派が家臣にすら存在する。
従兄弟であるフィリップの娘。
フィリップがルーデウスは彼女と恋仲になって貴族になることに前向きと嘘を吐いた際にはルーデウスが望むならと許可を出していた。
一方彼女からは強制的に家から出してから一切連絡を取らず、ルーデウスの十歳の誕生日に顔も見せなかったことと、再会時にルーデウスの苦労を全く考えずに責めて見る影もないくらい落ち込ませたため、父親失格と見做されるなど非常に嫌われている。
冒険者時代にリーダーを務めていた黒狼の牙での仲間。はぐれ者をパウロがまとめた問題児の集まり。
僅か数年でS級になったが、ゼニスの妊娠を知ったパウロが一方的に解散を宣言。
さらに「気が合いそうだからつるんで、他に呼び方がないから仲間って呼んでただけだ。俺の中で、お前らはそれほど重くない」と仲間関係を否定し、パーティーの資金を持ち逃げしたためメンバーはパウロを嫌っている。パウロも本心では黒狼の牙の仲間を最高の仲間だと思っていたが、ゼニスが妊娠した時点でもう冒険者を続ける選択肢はないため、言葉を訂正する事はなかった。
作中の行動
転移事件
家族と共にプエナ村で暮らしていたところをフィットア領転移事件に巻き込まれノルンと共に転移した。すぐさま馬で移動し帰還するが、ほかの家族が全員行方不明な状況を理解し過酷な現実に絶望しかけるも、ボレアス・グレイラット家の執事であったアルフォンスと協力してフィットア領捜索団を結成。自分はその団長として世界中から転移事件の被害者を救出する任に当たった。しかし家族の情報はさっぱり入らず、次第に酒に溺れていくようになる。
ミリス大陸でルーデウスと再会した後は気力を取り戻し、その後ルーデウスが見つけたリーリャとアイシャと再会した。
ベガリット大陸へ
ロキシーとタルハンドによってゼニスの居場所がベガリット大陸の迷宮都市『ラパン』だと判明。ノルンとアイシャルーデウスのもとへと送り、ベガリット大陸へ移動し、ゼニスがいる『転移の迷宮』の攻略に挑む。
しかし迷宮の攻略は難航し、ロキシーが行方不明になるなど攻略メンバーの安全すら危ぶまれるほど追い詰められていった。
ルーデウスとエリナリーゼがギースの手紙を読んで『ラパン』に到着したことで、戦力を増強したパウロ達一行は『転移の迷宮』へ突入する。
この先ネタバレ注意
ロキシーも救出し順調に迷宮を攻略していき『転移の迷宮』の最奥に到達する。そこには迷宮の守護者である魔石多頭竜(マナタイトヒュドラ)と、巨大な魔力結晶に閉じ込められたゼニスがいた。
一行の中で唯一魔石多頭竜の首を切断できるパウロと、無詠唱で魔術を行使できるルーデウスのコンビを軸に、魔石多頭竜と死闘を繰り広げ、魔石多頭竜の九つの首を全て切断することに成功する。
しかし…この戦いには二つの犠牲が生じた。
一つは魔石多頭竜の最期の悪足掻きで、ルーデウスが左腕を失ったこと。
そして……
息子を庇ったパウロ・グレイラットが胴を両断され死亡したこと。
至らない点は多かったが、家族のために必死に動き続け、異常な力を持った息子に対しても真剣に向き合ったその生き様はルーデウスに自分がパウロとゼニスの息子だと自覚させ、自分が前世の両親から目を背け続けていたことを気づかせる。
関連タグ
野原ひろし:アニメ版での声優及びスケベな父親キャラ繋がり。