概要
多板綱(ヒザラガイ類:Polyplacophora)と呼ばれる海岸や海底などに棲む海洋生物で、古くは多殻綱、ヒザラガイ綱とも呼ばれていた。
一列に並んだ8枚の殻を持ち、一見節足動物のダンゴムシや三葉虫などを彷彿させる体節制にもみえる特異な外見をしていたことから、軟体動物の一種として分類されたのは18世紀になってからである。
身の部分はアワビに似て海藻の旨味を濃縮したような味がするため、アイヌや北西海岸インディアンのアウレト族、台湾・蘭嶼東岸に住むタオ族は古くから食用としており、日本でも奄美群島の喜界島を含めた島々では高級食材として用いられている。
しかし一般的な種はサイズが小さく採取に手間がかかり、生息場所によってはカビ臭いので全国的にはマイナー食材である。
地方名
- 北海道:アイヌ語「ムイ」、襟裳岬「蝶々貝」
- 高知県:「オニグジマ」「グジマ」
- 愛媛県:「グズマ」
- 和歌山県:「コゴマリ」
- 奄美群島:喜界島「クンマー」、その他の島々「グズィマ」「クジマ」
- 福岡県志賀島:「イソワラジ」
- 山口県萩市他:背を丸める様子から「ジイガセナ」「ジイゴシ」「ジイノセナカ」「ジイノセナ」「ジイノセ」「オジノセ」「オジガセ」「オバコシ」「バアイノセナ」「バアノセナ」「ジイとバア」「シイトバア」「ジイジイバアバア」「ジイジイババアバア」「ジーノスネ」「ジジイ」「ヂイカゼ」「ジイカゼ」「セナガゼ」
- 島根県隠岐:「オナノツメ」「ハチマイ」「ハチマイガイ」
- その他:「アカコゴ」「コゴ」「コブ」 スナコゴ」「イシヌフン」「クズマ」「クルマ」
余談
鮮度や採取した場所の植生(食歴)、摂食者の体質によっては、食後にアナフィラキシーショックを発症する場合があり、野食ハンター茸本朗氏も発症したと報告している。
またpixivユーザーの中にも、キャプションで作品制作中に発症したと報告した者がいる。
アイヌ民話では、かつてアワビとの間に戦があったので、棲む場所が被らないようになったとされる。