概要
ヒナモロコとは、コイ目 コイ科 クセノキプリス亜科 ヒナモロコ属に分類される淡水魚の一種。
中国、朝鮮半島、日本に分布し、日本では九州北西部の平野部にのみ分布していたが……
現在日本では絶滅した可能性が極めて高い。
詳細は後述する。
学名:Aphyocypris chinensi
モロコと名に付くが、ホンモロコなどのモロコ類とは遠縁である。
カワバタモロコに似ているが、こちらの方が少しスレンダーな印象を受ける。
現在の環境省レッドリストでは、絶滅危惧種IA類(絶滅一歩手間の最高ランク)に指定されている。
体長は4~7cmほどで、寿命は1~6年。
食性は雑食で、プランクトンや水生昆虫、藻類など、なんでも食べる。
主に平地の小川やため池、田園地帯の農業用水に生息する。
繁殖期は4~7月で、オスには追星と体側に1本の黒色縦帯が現れる。
増水時に出来た浅い湿地や水田に集まり、水に浸かった草や水草に産卵する。
日本での分布域は九州北西部。
過去には膨大な個体数が生息していたが、宅地開発や圃場整備などの影響で急速に減少し、福岡県内のただ一箇所の用水路を残して絶滅してしまった。
その場所の個体群が各所の研究施設や水族館などで系統保存され、展示も行われていたが、ある時、何者かが生息地の用水路に日本では観賞魚として流通(流通名はヒナモロコ表記)する台湾原産の近縁種キクチヒナモロコ(キクチムツ)を放流。
その結果、ヒナモロコとキクチヒナモロコが交雑し雑種化、その場所から純粋なヒナモロコは消滅してしまった。
その後、各地の研究施設や水族館、個人が飼育していた個体、ペットショップで販売されていた個体などの遺伝子が調べられたが、全て交雑個体かキクチヒナモロコそのものという結果が判明した。
現在純粋なヒナモロコは見つかっておらず、日本の個体群は絶滅したと考えられている。
中国、朝鮮半島に分布する個体群は健在だが、日本の個体群とは遺伝的にも形態的にも明確に区別でき、遺伝的には日本産ヒナモロコよりもキクチヒナモロコに近い事が判明しており、日本産とは別種の可能性が高い。
この事から、ヒナモロコは絶滅してしまった可能性が極めて高い。
関連タグ
絶滅寸前だったヒナモロコを交雑によって絶滅に追い込んだ台湾原産の近縁種。
ペットショップなどでヒナモロコとして販売されているのは本種である。
飼育は容易でなんでも食べ、大量の水草を入れた水槽に数匹入れて放置するだけで繁殖する。
ヒナモロコとは顔の形などが少し違うらしいが、形態での識別は困難。
静岡県に外来種として定着している。
原産地の台湾では、本種も絶滅危惧種である。
共にヒナモロコが絶滅した可能性が高いと発表された2020年に同じく絶滅した可能性が高いと発表された日本の生物。
共に昆虫で、本当に絶滅していれば、日本固有種で初めて絶滅してしまった蝶と蝉になってしまう。
日本国内で絶滅したとされる淡水魚。
絶滅したとされた後に再発見された唯一の日本産淡水魚。
ヒナモロコも本種の様に日本のどこかで生き残っている事を切に願う…