青い 霧とたそがれの中に住み
永遠のときを 生きる一族……
概要
萩尾望都の初期の代表作の一つ。第21回小学館漫画賞受賞。
1972年~1976年にかけ『別冊少女コミック』で断続的に連載され、日本の少女漫画界に多大な影響をおよぼした。
永遠の時を生きるバンパネラをモチーフにした耽美で幻想的な世界観と、繊細で絵画のような絵柄、200年以上の時間が交錯する、綿密に構成された完成度の高い物語に未だ熱狂的なファンを持つ。
2016年7月より、40年ぶりとなる新作が『月刊フラワーズ』にて断続的に連載中。
ストーリー
1744年幼いエドガーとメリーベル兄妹は、何者かに深い森の奥に捨てられる。彼らを拾ったのは老婆、ハンナ・ポー。彼女に愛情をたっぷりと注がれ育てられるが、ある日エドガーが老ハンナの正体に気が付いてしまう。彼女は吸血鬼・バンパネラだったのだ。秘密を知ったエドガーはバンパネラにされるが、メリーベルを村から逃すことに成功する。
3年後、エドガーと再会したメリーベルは全てを知り、自らもバンパネラになることを望む。
バンパネラとして生きるのに必要なことは一つ。それは人間のふりをして人間に紛れ、決して正体を気が付かれないこと。気が付かれて心臓に杭、あるいは銀の銃弾を撃ち込まれれば、消えて塵になってしまうのだ。
エドガーとメリーベルは100年以上の時を共に生きるが、1879年、正体を知った医師によってメリーベルは消滅。
悲しみに暮れたエドガーは、メリーベルの代わりに、人間の友人・アランをバンパネラにしてさらっていってしまう。
“おいでよ……
きみもおいでよ ひとりではさびしすぎる……”
それからエドガー・アランの2人は欧州を駆けまわって、200年以上のときを生きていく。
主な登場人物
声優はドラマCDより。
エドガー・ポーツネル
青い目と茶色い巻き毛が印象的な14歳の少年。人間だった頃は負けん気が強くて頭の冴える子どもだった。すこぶる妹思いでもあり、メリーベルに注ぐ献身的な愛情は、バンパネラとなったあとも深く彼の人格に根ざしている。バンパネラでありながら自分たちを「呪われた存在」とし、常に人間に戻りたがっている。人間社会に紛れるときには14歳の子どもらしく、いたずら好きな少年を演じているが、ふとした瞬間にこの世のものとは思えない魔を覗かせ、人々に峻烈な印象を残していく。
メリーベル・ポーツネル
声-いのくちゆか
エドガーの妹。銀色の巻き毛が印象的な13歳の少女。エドガーがバンパネラになったことを知り、自らもそうなることを望む。明るく純真、おてんばな性格をしており、その愛らしさから彼女に想いを寄せる男性は多い。もともとは「我が強く狂信的」とまで評されるほど意志が強く、森を駆け回りスポーツを楽しむなど気丈で快活だったが、バンパネラとなってからは徐々に体が弱くなり、それにつれ死に近い儚げな雰囲気がつきまとうようになる。エドガーのように人間に戻りたいような素振りは見られず、永遠に子どものままであることを受けとめている。
アラン・トワイライト(1865-1976)
エドガーの友人でありパートナー。元は金持ち息子だが家族との仲は最悪で、理解者である父と婚約者を亡くして以来、誰にも心を開けずにいた。エドガーとメリーベルに会って初めて心の拠り所を見つける。バンパネラになってからはエドガーにかなり依存しており、その愛を独占したがる。プライドが高く気分屋、人当たりも悪いが女の子には優しい。バンパネラなのに血が苦手で、見るとぶっ倒れる。
ポーツネル夫妻
夫・フランクと妻・シーラは年長のバンパネラであり、身寄りのなくなったエドガーとメリーベルをひきとった。抜け目なく慎重に行動する。
オズワルド・O・エヴァンズ(1735-1780)
声-子安武人
エドガーとメリーベルの腹違いの兄。エドガーとおなじ青い目をしている。人間として生涯を全うするが、その子孫はエドガーたちとたびたび邂逅を果たすこととなる。
キリアン・ブルンスウィッグ(1945-)
声-皆川純子
1959年、エドガーとアランが西ドイツを訪ねたときの友人。好奇心旺盛でリーダーシップがある。バンパネラに血を吸われた数年後、行方不明に……。
ファルカ
1925年、エドガーとアランがパリ万国博覧会で出会った青年。ポーの一族とは別系統の吸血鬼(ヴァンピール)で、空間の“目”を見つけ通り抜ける能力を持つ。
各話あらすじ
オムニバス形式で連載されたため、それぞれが読み切りであり、時系列も異なる。
すきとおった銀の髪
(『別冊少女コミック』1972年3月号)
14歳のチャールズは、町はずれに越してきた少女メリーベルに恋をするが、彼女はまたすぐに引っ越してしまう。30年後チャールズは町中で、子どものまま姿が変わらぬメリーベルに出会う……。
ポーの村
(『別冊少女コミック』1972年7月号)
森で狩りをしていたグレンスミスは、茂みからとび出てきた少女をシカと見誤って撃ってしまう。少女の名はメリーベルといった。彼女の兄エドガーと村人に連れられ、グレンスミスはポーの村に二晩滞在する。
グレンスミスの日記
(『別冊少女コミック』1972年8月号)
グレンスミスの娘エリザベスは、父の遺品から日記をみつける。そこにはバンパネラの住む村についての記述が……。エリザベスは激動の人生を日記と共にし、日記はさらなる世代へと受け継がれる。
ポーの一族
(『別冊少女コミック』1972年9月 - 12月号)
1879年、ロンドンから古い港町へと越してきたポーツネル一家。彼らは身体の弱いメリーベルのために、新たなる生贄を探しにきた……。エドガーは貿易商の一人息子アランに目をつける。
メリーベルと銀のばら
(『別冊少女コミック』1973年1月 - 3月号)
幼きエドガー・メリーベル兄妹は、森の捨て子だった。老ハンナ・ポーに拾われ、スコッティの村で健やかに成長していく。村では、バンパネラの噂がまことしやかに囁かれていた……。
小鳥の巣
(『別冊少女コミック』1973年4月 - 7月号)
1959年春の西ドイツ。エドガーとアランは、ある目的でガブリエル・スイス・ギムナジウムに潜入する。ギムナジウムには、「魔の五月」「ロビン・カーの幽霊」という伝説があった……。
エヴァンズの遺書
(『別冊少女コミック』1975年1月 - 2月号)
エドガーは嵐の中、馬車の落下事故にあい、記憶喪失を起こしてしまう。衰弱した彼を看病してくれたのは、兄オズワルドの孫たちだった。
ペニー・レイン
(『別冊少女コミック』1975年5月号)
最愛の妹メリーベルを失ったエドガーは、アランをバンパネラにしてしまう。アランが目覚めるのを待つ間、エドガーはメリーベルへの想いに苦しむ。
リデル・森の中
(『別冊少女コミック』1975年6月号)
10歳までエドガーとアランに育てられたリデルは、彼らとの思い出を語る。彼女は「リデル人形」と呼ばれていた。
ランプトンは語る
(『別冊少女コミック』1975年7月号)
1966年、ジョン・オービンは、エドガーの正体を追うための集会をクエントン館で開く。エドガーは館に火をつけ、逃げ遅れた少女シャーロッテは焼死する。
ピカデリー7時
(『別冊少女コミック』1975年8月号)
第一次世界大戦の少し前、エドガーとアランは友人のポリスター卿に会うためロンドンを訪れるが、彼は殺人事件に巻き込まれ、行方不明になっていた。
はるかな国の花や小鳥
(『週刊少女コミック』1975年37号)
エドガーはアランと共に立ち寄った町で、美しい女性エルゼリ・バードと出会う。彼女は10年以上前のひと夏の恋人を想いつづけていて、幸せだという。
ホームズの帽子
(『別冊少女コミック』1975年11月号)
1934年、ジョン・オービンは魔性の少年エドガーと出会い、その魅力にとりつかれる。
一週間
(『別冊少女コミック』1975年12月号)
一週間、留守番をすることになったアランは、2人の少女と河畔で遊びすごす。
エディス
(『別冊少女コミック』1976年4月 - 6月号)
1976年、アランはエドガーにそっくりな少女、エディスに恋をする。エディスはオズワルドの子孫であり、エドガーが殺したシャーロッテの妹だった。
春の夢
(『月刊フラワーズ』2016年7月号、2017年3月 - 7月号)
1944年、エドガーはユダヤ人の少女ブランカと出会う。眠ってばかりいるアランのために、エドガーは1925年のパリ万博で出会った同族異種の吸血鬼(ヴァンピール)・ファルカを呼びよせる。
ユニコーン
(『月刊フラワーズ』2018年7月号 - 9月号、2019年5月号 - 6月号 )
2016年、ファルカはミュンヘンでエドガーと再会する。
秘密の花園
(『月刊フラワーズ』2019年7月号、2020年8月号 - 11月号、2021年6月号 - 8月号、10月号 - 11月号 )
1888年、クエントン卿が一族に加わった経緯や彼がランプトンの絵を描いた経緯が描かれる。
青のパンドラ
(『月刊フラワーズ』2022年7月号 - 8月号、10月号、2023年1月号 - 2月号、6月号 - 7月号、9月号、11月号、2024年1月号、8月号、 )
メディアミックス
2016年3月27日にSMAPの香取慎吾主演で「ストレンジャー〜バケモノが事件を暴く〜」というタイトルで単発ドラマ化する。
登場人物を日本人に置き換え、サスペンス要素を含んだ作品となっている・・・・・が、やはり設定とキャストに原作設定を無理矢理つめ込み過ぎたのが評価はあまり良くない。
2018年に「ポーの一族を舞台化したくて宝塚に入った」という経歴を持つ劇作家・小池修一郎の執念が実り、宝塚歌劇団花組による舞台化が実現。
明日海りおのエドガーと柚香光のアランのビジュアル公開から、宝塚界隈を巻き込む大騒ぎとなり、アレンジを加えつつも世界観や衣装などを見事に再現した舞台は大好評を得た。
なお初日は萩尾望都、美内すずえ、青池保子、木原敏江が並んで観劇していた。どんな神々の遊びよ(はるな檸檬)
関連イラスト
関連タグ
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