概要
『ポケモンXD』の主人公。ポケモン総合研究所にて母親のリリアと妹のマナの三人で暮らしている少年。パートナーのイーブイは父親からのプレゼントだが、その父親はすでに亡くなっている(正確にどのようにして亡くなったかは不明)。
正式には「リュウト」「ジェイミー」「レツ」の3種類があり、プレイヤーの任意で自由に付けることができる。一般的には「リュウト」と呼ばれることが多いため、便宜的に本項ではこちらの呼称を使う。
前作の主人公(以下、便宜的に「レオ」と呼称)が当時のポケモンの主人公キャラとしては一際年長だった上に経歴が不穏だったことで作品自体もかなりダーティーな雰囲気となったことの反省か、容姿や周囲の対応がきちんと「子供」として映るように意識して設定されたことが窺える。
屈指の有能主人公
しかし子供というキャラ付けながら劇中ではあらゆる面で優秀な側面を見せており、まず自分とマナ以外は大人しかいないポケモン総合研究所の中でもポケモンバトルの腕前は研究所で一番強く、周囲からは最初から戦力として信頼されている。その上でゲーム冒頭の描写から、シミュレーションを使ったバトルの訓練を日課とする努力家であることも分かる。
ポケモン主人公のお約束で基本的にしゃべらないので詳細な性格は不明だが、他のキャラとの会話の反応を見る限り、子供ながら礼儀正しくしっかり者であることが窺える。妹のマナからの慕われ方を見るに良き兄であることも間違いなく、また幼い妹を持つためかパイラタウンのテレビ局「ONBS」では局内で迷子になっている子供歌手のチリルを助けるイベントもあり、年下の子供に対してもとても親切であることが分かる。母のリリアも冒頭こそリュウトを子供扱いして礼儀についての説教を述べていたが、ストーリーが進むとリュウトの成長を認め、母親としての寂しさを少しだけ醸しつつも強い信頼を寄せるようになっていく。
乗り物については、普通のエリア移動は前作でレオが乗っていた「サイドカー付きのゴツイ大型バイク」から「小型の三輪スクーター」に変わったが、それでもこの年で運転免許を持っている可能性が高いことに変わりはない。しかも場面によってはマナやクレイン所長と2人乗りするシーンもある。
極めつけは物語の最終盤で、ラストダンジョンのニケルダーク島に向かうため、島近海の荒天と荒波にも負けない超高性能な高速艇「メカ・カイオーガ」まで乗りこなしてしまう。しかもただ動かすだけではなく、アイオポートとニケルダーク島間を問題なく航行しているのは勿論、初出港時のムービーではアイオポートの橋の状態に合わせてきちんと待機(要するに信号待ち)を行っていることが分かり、港への停泊も問題なく行えている。一体どこでこんなもんの操縦方法を覚えたんだ…。
そしてポケモン主人公とは切っても切り離せない存在である伝説のポケモンとの関係だが、リュウトの場合はシリーズでよく見られる、「伝説のポケモンが引き起こした厄災に巻き込まれる(人為的かポケモンの意志かは関係なく)」や「伝説のポケモンと特別な縁ができて懐かれたり助けられる」のどちらのパターンにも当てはまらず(ちなみにレオの場合はこの内の後者に該当する)、完全に「伝説のポケモンを窮地から救い出す」というヒーローポジションになっている。他作品であれば彼・彼女とパッケージ伝説ポケモンとの関係が近いだろうか。
本作がオーレ地方二部作の完結編となることから最終的にはレオよりも遥かに壮大な偉業を成し遂げるなど、設定上は子供であるがその実態はまさに何でもできるスーパーマンであり、その総合的な有能さ加減は歴代のポケモン主人公たちと比べてもかなり上位に位置すると思われる。
ストーリー中盤にフェナスシティの事件を解決した際には、偶然もあったとはいえONBSによりリュウトの活躍がオーレ全土にテレビで放送されたことで一躍有名人となる点も他の作品ではあまり見られない展開と言える(他作品だとそういう展開は基本的にストーリーをクリアしてチャンピオンになって以降の話となる)。
しかしただ徹頭徹尾有能なだけの人間というわけでもなく、ストーリー中盤では通常仕様のスクーターで砂が深い砂漠を通り抜けようとしたら途中でスタックしてしまい断念して引き返すことになったり、スナッチ団と初めて遭遇した際には油断から不意討ちでクサイハナのねむりごなを受けて眠らされてしまい、自身の旅の生命線と言えるスナッチマシンを奪われてしまうなど、相応に失敗や状況的な敗北を経験している描写もあり、その際には必ず周囲の大人やそれまでの旅で出会ってきた人たちから力を借りながら乗り越えている。そういったキャラの掘り下げや成長の描写の豊富さについてもレオとは大きく異なると言える。
また本作には前作のようなヒロインが存在しないことも影響してか、やたらとモテる描写が多いのも印象的。
しかも女性だけに限らず、スナッチ団ボスのヘルゴンザは当初は敵対していたものの一回バトルしたことを機にリュウトを気に入り、以降は良き協力者となる。クリア後コンテンツのオーレコロシアムまで含めればシャドーの幹部達ですら最終的には彼に友好の情を見せており、かなりの人タラシでもあるといえる。
前作主人公との対比
リュウトは前作主人公のレオとは色々な意味で対照的な描かれ方をしているのは上記の通りだが、実はある意味その決定的とも言える2人の差異がコロシアムのオープニングムービーとXDの完全クリアエンディングムービーで明確に描かれている。
コロシアムのオープニングにおいてレオは、所属していたスナッチ団を突如として裏切り、携行可能な小型スナッチマシンを強奪、さらに他の大型スナッチマシンをアジト諸共爆破して全て使用不可能にしてから逃走し、スナッチの技術を独占することに成功した。本人の項にも記されている通り、このとき彼が何を考えて行動していたのかは一切明かされていないが、少なくともこの時点で彼はまだダークポケモンの存在を知らなかったため「ダークポケモンの救出」が目的だった可能性はまずありえない(後にその活用法が見出されたのもパートナーの発想と提案によるもので、レオ自身は関与していない)。何かしらの目的があったのだとすれば、スナッチという行為の本来のダーティーさを考えても状況的にそれはほぼ間違いなく悪行であったと思われる。
一方リュウトは、XDで全てのダークポケモンのスナッチとリライブを完了して再度ラスボスを倒すと完全クリアとなり、通常のエンディングムービーに追加のシーンが入るのだが、その内容が「リュウトがスナッチマシンを外して自室に残し、一瞬だけ振り返ったもののそのまま部屋を出て行く」となっている。つまりダークポケモンの救出という目的を完了して役目を終えたスナッチマシン、そしてスナッチという行為自体を自分の意志で手放し、封印したことを表している。
「ダークポケモンの存在に関係なく自分の目的のためにスナッチを独占しようとした(可能性が高い)レオ」
「ダークポケモンの救出以外には決してスナッチを行わず、目的を果たした後は自らスナッチを止めて封じることを選んだリュウト」
勿論レオの主人公としての活躍はここから始まるのでこの時点の彼を槍玉に上げるのはナンセンスだが「シリーズの最初と最後のシーンで2人の主人公がスナッチに対して正反対の姿勢を示している」と考えると、興味深い構造の演出といえる。