ロッテンマイヤー(Rottenmeier)とはドイツ語圏の女性人名の一つ。
ロッテンマイエルと表記されることもある。
アルプスの少女ハイジの登場人物が世界的にも有名すぎて、ほとんど固有名詞と化している。
「アルプスの少女ハイジ」のロッテンマイヤー
ドイツ西部のフランクフルトの大富豪ゼーゼマン家の執事を務める女性。
クララ・ゼーゼマンの遊び相手として連れてこさせたハイジを厳しく躾けた。
ハイジを本名(洗礼名)のアーデルハイドと呼ぶ。
世界名作劇場と家庭教師のトライCMの初期(途中から代わり非公開である)では麻生美代子が声優を務め、総集編である劇場版では京田尚子が声優を務めた。
人物
家事一切を取り仕切る家政婦長であり、相応の教養と品格を備える中年女性。秩序を守ることを何よりも優先し、騒々しい騒ぎを嫌う。
子猫に飛び掛かられて失神するほど動物が苦手。また、地下室に閉じ込められたハイジがネズミを連れてきたときは、恐怖のあまりテーブルの上に避難して震えるなど、コミカルな面も持ち合わせている。
責任感は強いが気難しく他者への配慮に欠け、多くの登場人物から煙たがられている。病弱なクララの身を本気で案じてはいるものの、過剰な保護が却ってクララの自立心を削ぎいつまでも一人で歩けないままにしてしまい、クララの友人にさせるつもりだったハイジに対しクララを不安にさせないために山に関する話題を一切禁じ結果的に重度のホームシックと夢遊病になるまで追い詰めたことは作中でも多くの人物から失望され、雇い主であり本来は温厚な性格のゼーゼマンからも「ハイジを病気(夢遊病)にしたのはあなただ!」と激しい叱責を受けた。
ハイジがアルムの山に戻った後も外の世界への憧れを捨てないクララを快く思っていなかったが、最終的にはクララの心情に理解を示した。
アニメではクララと共に山に向かう。慣れない山の環境に振り回され、おんじの言動に戸惑いつつも、クララに付き添う。最後はおばあさま(クララの祖母)に屋敷の留守を頼まれて、先にフランクフルトに帰る。
最終話では、階段を使って歩く訓練をするクララを支え、この調子だと来年の春にはアルムの山に行けることでしょうと嬉しそうに言うなど、クララを歩けるようにまで回復させたアルムの山に理解を示していた。
読者および視聴者からの評価
ロッテンマイヤー自身は職務に忠実なだけで悪人ではないが、ハイジの持つ「子供・自然・自由」の要素を否定する存在として描かれており、明確な失態と制裁(※)も描写されているため、悪役としての印象が強い人物。
成長小説の主人公が他の価値観に触れることは避けられないが、こうも極端な関係になってしまったのはロッテンマイヤーとの相性の悪さに加えて、ハイジが叔母のデーテに騙され無理やり連れてこられたこと、クララが孤独を恐れてハイジの心情を理解していながら黙っていたことも原因である。
ただし、言い方ややり方に問題があったことこそ否定できないが、山育ちで礼儀作法どころか文字も読めなかったハイジを、都会でも暮らせる一人前の淑女に粘り強く教育しようとしたロッテンマイヤーの言い分自体は至極真っ当かつ正論そのもの。
裕福な貿易商のゼーゼマン家ならば、貴族らとの付き合いもあることは容易に想像でき、そんな家に身を置く以上、礼儀作法は必須であったろうし、ましてや物語の舞台となっている19世紀末ヨーロッパは、まだまだ「女性への社会福祉?ナニソレ?」な時代である。早いうちに教養や礼儀作法、職能を身につけられなかった女性は、結婚して家庭に入るか、俗世の全てを捨てて修道女となるか、さもなくば娼婦などの最下層民として生きるくらいしか道の無い時代だったのだ。
当時のロッテンマイヤーを嫌っていた子供などが、大人になって結婚して子どもができ、自分自身が子どもに躾を行う立場になると彼女に共感するようになった(むしろ奔放すぎるハイジに苛立ちを覚える)という声は度々聞かれる。誰が呼んだか、通称「ロッテンマイヤー効果」。
(※)……そもそも、ロッテンマイヤー自身が受けた罰らしい罰と言えば、先述のゼーゼマンの叱責と、終盤近くのハイジの故郷にて、自身が「けだもの」と呼んでいた動物に腰を抜かしたぐらいのものである。
関連タグ
アルプスの少女ハイジ ゼーゼマン セバスチャン ヨハン チネッテ
六転舞蔵…銀魂に登場する人物。幼い少女への口うるさい教育係というキャラクターから作られたパロディキャラクター。
丹波歳三…侍戦隊シンケンジャーに登場する人物。主人である少女に仕え、主人以外に高圧的な態度で接するそのキャラクターは、ロッテンマイヤーをイメージしたと脚本家が認めている。
ガッテンマイヤー:元ネタにされたキャラクター。
ロッテン前田…クレヨンしんちゃんに登場する名前がロッテンマイヤーに似ている人物。酢乙女あいのボディーガードをクビになった黒磯の代わりとして雇われた。
ウォン・リー…『機動戦士Ζガンダム』および『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場するキャラクター。こちらはロッテンマイヤーとは立場は違うものの、軍の出資者である「民間人」ながら並の軍人以上に規律と責任感が強い一方で、出資者故に口うるさく高圧的なのが難点であるなど、それらの「教育・指導」に関してはロッテンマイヤーと類似している。ただしウォンの場合は指導が過激であり、『Ζ』において師匠と弟子にも間違ったところを叱責した結果、弟子が精神的成長を遂げたのに対し、『ΖΖ』では自由奔放な主人公たちにコケにされ、自身の主張(壊滅的被害を受けた軍艦とその戦況を鑑みたうえで軍規を正すように諭す)も艦長から「子供たちの自由を尊重する」と返され「まるで自身が悪者扱い」されるなど、ロクな目に合っていない。