「つべこべつべこべと! 何故ごめんなさいと言えんのだ!」
解説
反地球連邦組織エゥーゴの出資者であるアナハイム・エレクトロニクス社の有力者。
人物
軍人ではなく民間人であるが、出資者故の強い発言力を持っている一方、エゥーゴが軍隊である実態も意識してか規律にも厳しい。非戦闘員ながらもカンフーの達人で、身体能力も非常に高い。
アーガマに乗り込んでからはブライト・ノアやクワトロ・バジーナにたびたび注文を付け、エゥーゴやアーガマの戦略・戦術に大きく関わっていく。これも、エゥーゴへの出資に携わる者としての自覚や、責任感から来るものと思われるが、プロの軍人では無い故か無理難題としか思えない任務を、事務的かつ平然と回してきたり、民間人には理解の及ばないはずの範囲にまで口を出す場面もある為、内心煙たがられてしまう一面もある。
一方で、自らの行動にも責任を持つ有言実行の人物でもある。実際、ティターンズのコロニー落としによる襲撃を受けたグラナダに、自らの身の危険を顧みず残り続けた上で、市長の説得を行ったり、自らプチ・モビルスーツ(=民間にも普及している作業用の小型モビルスーツ)を駆って住民の避難を支援したりもしている等、命を賭ける行動も辞さない。
アクシズからの脱出時には軍人顔負けの瞬発力と判断力で、他のメンバーと無事にアーガマへの帰還に成功している。
地球連邦軍から派生した軍事組織であるエゥーゴにアナハイムから直々に派遣されてきたことからも軍、特に連邦軍に一定以上の見識がある人物と思われ、良くも悪くも行動派である劇中の言動も見るに若い時に連邦軍に兵士等として在籍していたなどのキャリアがあったのかもしれない。
劇中の様相
機動戦士Ζガンダム
支援者としてアーガマに接触した際、ハロの修理にかまけてミーティングに遅れた上、屁理屈捏ねて口答えしまくるカミーユ・ビダンに激怒。空手の有段者であるカミーユを格闘でほぼ一方的にボコボコにする形で下している。
これは、増長していた彼をこのまま放置すれば、半端な覚悟のまま自滅する可能性を考えた結果行った叱責であり、後にクワトロも「カミーユを甘やかし過ぎていた」と考え、反省せず自閉症を気取っているカミーユに激怒したエマ・シーンも「自分の都合で『大人』と『子供』を使い分けないで!」と更なる修正を加えた上で叱責している。
実際、こうでもしなければTVシリーズ版序盤のカミーユはおそらく全く反省しなかったと思われる。他にもTV版序盤において、カミーユはあまり人間的に肯定できるような人物に描かれていない。
劇場版ではカミーユを修正するシーンや、アーガマクルーから疎まれている描写などはカットされて「責任ある大人」として行動する部分が強調されている(ただし、TV版でカミーユが殴られたのは、増長している彼の完全な自業自得)。
また、初対面のシンタとクムにジュースを奢ってやるシーンがピックアップされていたり、会議中に家族からのビデオレターをこっそり見ていたブライトが、それを知られて慌てて消そうとした際に咎めず「消す事も無い」と諭す新作シーンが挿入されるなど、口うるさいが粋なところのある好人物として描かれた。
また、TV版では義理の娘だったステファニー・ルオの設定は実子(逆にルオ・ウーミンとの関係は子息の嫁の設定)に変更された。ビデオレターの件を咎めなかったのは、自分の娘の存在に関して想いを馳せたからなのかも知れない。
機動戦士ガンダムZZ
第20話のみに登場。グラナダでジュドー・アーシタを中心とするガンダムチームと対面。精神崩壊したカミーユを気にかけていた。
しかし、出会って間もなく、エゥーゴのパイロットとして責任感の欠けている振る舞いや言動しか見せず、市外へ遊びに行こうとした姿勢のジュドー・アーシタに激怒し、鉄拳制裁を加えようとしたが、初撃を交わされ逆に一撃でいなされてしまった(ただし、制裁を加えようとした場所が狭い通路だったことも原因であり、もしジュドーがカミーユと同じ条件かつ同じ場所だった場合はジュドーをKOしていた可能性も高い)。
この時のウォンの言動や振る舞いは、一見すると横暴にも見えなくも無いが、多くの犠牲を経てグリプス戦役が終結した矢先に、ハマーン・カーン率いるネオ・ジオンによる第1次ネオ・ジオン抗争が勃発してしまった現状に、かなりの焦りを感じていたとも取れなくもない。
その為、ロクな戦闘経験も無い民間人の子供である上に、かつて期待したカミーユとはあまりにも性質の違うジュドー達には、苛立ちを隠せなかった様で、特にネオ・ジオンへの裏切りを行ったビーチャ・オーレグ、モンド・アガケに対し殆ど処分を行おうとしないブライトの甘さに苛立って、2人をアーガマから降ろそうとしたり、ネオ・ジオン対抗の為の重大な戦力であるΖΖガンダムを「妹のリィナ・アーシタの救出」と個人的私用そのものな動機で使おうとしていたジュドーの身勝手さにも激怒している(そのために、ブライトとの口論の末に彼を小突いている)。
これらのウォンの態度は、出資企業から派遣された監督役としての彼の立場や、当時の情勢を鑑みれば決して間違いでも横暴でもなく、むしろ至極当然のものなのだが、彼等と共に戦って来て感情移入していったブライトは、最後までジュドー達を庇おうとする姿勢を貫いている。
その後、グラナダにネオ・ジオンと通じているスパイの存在を察知したジュドー達が無断出撃してしまう形で、ネオ・ジオンの隠れている宇宙港へと向かい、交戦してしまうのだが、この時の戦いで宇宙港の1つに大被害をもたらしてしまう(次の回では多数の艦船が壊れてしまっている事実が判明しており、恐らくそこにいた人間の中にも、犠牲者が出た可能性は否定出来ない)。
当然、この騒動を起こしたジュドー達シャングリラ組に対し、ウォンは激怒した(出資先の部隊が無断で交戦した挙げ句、民間人にまで被害を出したわけなのでそりゃ怒る)のだが、彼等からは最後まで反発され、ブライトまでもが「アーガマのクルー全員がこの子達と同じ考えだという事を忘れないで下さい」とまで三行半を突きつけられるかの様な物言いをされている。
客観的に見れば、ウォンの言い分も正しいと言えなくも無いのだが、アーガマのクルー達からは終始反発される状況になる等、殆ど「ダメな大人」の様な扱いを迎える顛末となってしまっている。
おまけに第21話の冒頭では、語り部のジュドーによって「ウォンさんのおかげで、ビーチャとモンドと俺で単独行動に出る事になった」と無断出撃に関する責任転嫁までされる始末だった。
これらの理不尽とも言える仕打ちから、一部の視聴者からは『ΖΖ』におけるウォンの扱いについて批判する者も少なくない。
ただ、これについては前作『Z』と『ZZ』、両作それぞれのテーマ性と作劇スタンスの違いもある。『Ζ』が「人間同士の殺し合いである戦争の悲惨さと無慈悲さ」を『1st』よりもさらに鋭く描くことに力を入れていたのに対し、『ZZ』は「子ども達の逞しさと自由意思の尊さ」をテーマとして強調していたため、厳格で規律に厳しく責任感の強いウォンが、ジュドーら「自分の心に素直な、可能性に満ちた子ども達」の対立項となる「社会常識や正論に囚われた、頭の堅いわからず屋の大人」の象徴として悪い印象で描かれてしまった面もあるだろう(『アルプスの少女ハイジ』のロッテンマイヤーさんみたいなもんである)。
『ΖΖ』ではとにかく扱いの悪いウォンであるが、「ハマーン・カーンにサイド3を提供して和平交渉になる」と考えていたホワイト将軍を始めとする、連邦政府達の官僚に比べれば、遥かに現実的な視点に立っていた人物でもある。
また、終始反発されてしまい、アーガマ達とのクルーの関係が完全に冷え切ってしまったかのように思われがちであるが、再会時に語っている「宇宙に戻ったら新しい艦を用意する」約束は、後に配備されるネェル・アーガマの存在を見ても、ちゃんと守っている実態が推察出来る為、ブライト達に愛想を尽かして見限ったりはしなかった事実が窺われる。
その後、
『閃光のハサウェイ』のマフティー動乱期と近似である設定の『デイアフタートゥモロー カイ・シデンのメモリーより』では、老境にさしかかった姿で登場。グリプス戦役時との時代の変化や、サナリィやステファニー率いるルオ商会に出し抜かれつつある現状を口にする。
SDガンダム外伝
CV:滝雅也
第3部「アルガス騎士団」編にて「カミーユ王子」のお目付け役である「家老ウォン」として登場。しかし、見た目が「眼鏡を掛けた出っ歯」になっており、一目では元となったキャラクター「ウォン・リー」であることは気づきにくい。
名前について
「ウォン・リー」という氏名や、カンフーの達人であることから中華系を連想させるが、富野監督曰く「ベトナム系の名前」とのこと。
その他
名言である「つべこべつべこべと、何故ごめんなさいと言えんのだ!」という台詞は、ファンの間でも「つべこべつべこべと、何故○○と言えんのだ!」というネタでテンプレ化されている。
また初代ガンダムの前日譚であるアニメ版機動戦士ガンダムTHEORIGINにファン・リーという同名のキャラクターがいるが血縁関係はない。
関連イラスト
関連タグ
機動戦士Ζガンダム 機動戦士ガンダムΖΖ スーパーロボット大戦Z カンフー スポンサー 修正 エゥーゴ アナハイム・エレクトロニクス