トラック横転沙汰に発展するまでの経緯
前談
2010年代に入ってから渋谷ではハロウィンの日になると来訪する仮装行列を楽しむ人々が年々増加し、次第に来訪者達のマナーやモラルがなっておらず、収穫祭としてのハロウィンとはかけ離れていたバカ騒ぎに地元商店街は頭を悩ませていた。
どういう事かと言えば、
- ハロウィンに乗じたただ騒ぎたいだけの連中の増加による夜明けまでの騒音や迷惑行為(器物破損等)
- 来訪者によるゴミのポイ捨てによるゴミ問題
- 大量の来訪者にまぎれてのすり・痴漢・盗撮の被害の増大
- 未成年者の夜間の来訪
- これらの為の警備の手間・迷惑行為故に店を早く閉めざるをえない事態
……等といった問題が膨れ上がっていた。
魑魅魍魎の大騒ぎが過ぎ去ると本当にこの有様である。
世紀末なのかここは……。
この影響により商店街のハロウィン効果を期待した売り上げも年々減少してしまい、それどころかハロウィン明けにはゴミ等で汚れてしまった清掃の手間も頭が痛い問題となっていたのである。
しかもゴミならまだしも、早々と店が閉める事からかトイレが少ないせいで、路地やビルのエレベーターホールでの放尿に始まる排泄行為や吐瀉物の散乱等、衛生面でも深刻な事態になっていたそうである。
騒ぎが頂点に達した2018年ハロウィン
挙句には2018年は酷さが頂点に達して暴徒紛いの来訪者が軽トラックを横転させたり自販機を破壊する事件も発生してしまった。
さながらその有様は暴動における暴徒にしか見えなかった。(なお火災も発生したが因果関係は不明)
その後12月に入り軽トラックを横転させた4人は逮捕された。警視庁はあらゆる監視カメラをリレー形式で追い彼らの帰宅までを特定して捜査を行っていた。
ちなみに警視庁はこの有様を「クレイジーハロウィン」と呼んでいたという。
何故この様な事になっているのかについては「金もたいして持たないくせに繁華街に繰り出して騒ぎたいだけの若者が増加」したとの見方もある。また、この迷惑者達は渋谷の住民ではなく関東近圏の他県から来ているのが多いとのことである。
憤りの声として
これらの問題に対して例年の渋谷でのハロウィンに憤っていた渋谷センター商店街の理事長・小野寿幸氏は、
「ハロウィンに関しては(売り上げ増は)ないですよ。3分の1のダウンですから」
と、人が多く集まっても売り上げには結びつかないと説明。ついには怒りをにじませ
「私たちはハロウィンではなく、変態仮装行列でもう困っている。もっとマナーを守った楽しみ方があるはず」
と、過激な言葉でハロウィンで大暴れする人達を非難した。
この「変態仮装行列」がSNSでもトレンドワードとなり、渋谷の街の商店や住人に同情の声が上がった。また、「理事長よくぞ言ってくれた!」との賞賛の声もあった。
実際、例えこそ過激ではあるが「ただただ迷惑なだけに留まらず、碌に金は落さないくせにゴミばかり落としていく、挙句ドサクサに紛れて犯罪行為まで働く不届き者ども」に毎回悩まされていてはこうボヤキたくなるのも当然である。
今後は渋谷でも主催者を設けて正式なハロウィンイベントを計画して有料化するか、代々木公園に誘導するかの意見も出てきているが仮に有料化・誘導したところで迷惑者が他の場所で迷惑行為をするだけではないのか、有料化でも「金払ってんだから文句言うな」と開き直る迷惑者が出るとの声もある。
果ては渋谷ではハロウィン禁止にするべきではという意見まで出ている始末である。
・・・ん?主催者を設けて?
一体どういうことなの・・・?
主催者は誰なのか?
実際これも原因の一つと言われている。
一見、世間から見ればイベント会場が開催されているというように見える・・・のだが、この渋谷ハロウィンは主催者自体が全く存在しておらず、管理する責任者すらもいない上に運営組織団体自体が存在しないのである。
そもそも正式なイベント会場でも無いので、早い話がこういった騒ぎたい連中が現地へ勝手に集まっているだけの話である。
そのため「ここの主催者は誰なんだ!」「運営責任者出てこい!」と苦情や非難をしても、その運営組織団体すら自体存在していないため、言ったところで効果はなく無駄なのである。
開催する場合、通常なら実行委員会による企画や実行、イベントスタッフの動員、会場の責任者等、イベントを管理する運営団体組織の他、また商店街の協力や企業のスポンサーによる後援となる広報活動がある。
近い会場としては池袋、川崎のハロウィンは有名だがこちらはれっきとした主催者や運営組織団体が存在する真っ当なイベントであり、もちろん徹底的に運営管理がなされている。
他にも小規模で行う町内の自治体が開催するのもあるが、これらにもきちんと主催者等運営団体は存在する。
それに対し渋谷のハロウィンは主催者不在な上、このような運営組織団体等は一切合切存在しないのである。
ハロウィンを中止にすべきという声もあるが上記の通り特定の個人や団体により開催されているものではなく勝手に集まっている活動であるため、中止にしたくても出来ないのである。
誰か主催者が存在するイベントであれば、企画・実行を中止・禁止させることも可能であるが、主催者が存在しない自然発生的なイベントであるため対策のしようが無く、そもそも正式なイベント会場でも無い上に渋谷区側もハロウィンのイベント会場は設置しておらず、ただただ完全に被害者側である。
渋谷区だけでは対応できない問題
ハロウィンだけではない迷惑者達
実はワールドカップ開催年においても同様の事が起きており、こちらも問題化していた。
このハロウィン騒動から一ヶ月もしないウチに渋谷駅周辺で「大みそかカウントダウン」を催すと発表したが、大みそかから翌朝までコンビニエンスストア等では酒類の販売を自粛するよう呼びかけているとの事。しかし、「ハロウィンでさえあの有様だったのを渋谷はまた繰り返すつもりなのか」「渋谷で酒類販売を自粛しても根本的に解決していない」「自粛したところで他から酒を持ち込んでくるに決まってる」との声があった。
メディア露出
各メディアがわざわざ扱う事で余計問題が肥大化したのではないのかとの見方もある。
というのも、渋谷ではハロウィンイベントを特に開催しているわけではないのに来訪者が勝手に騒いでるだけであって、こういった光景を扱う事でイベントを行っていると錯覚させているのではないかとの意見もある。
この手に付き物の迷惑行為集団のせいで他の健全なハロウィンイベントを行っている地区にまで偏見の悪影響を及ぼす可能性も否定できない。
例えば警備の為に来訪者をたくみに捌いていた警官を「DJポリス」とメディアが喧伝したような事によってそれをわざわざ見に来る来訪者も出て逆効果となったのではないかとも見られている。
せめて、テレビやネットニュースで取り上げる際に注意喚起等を行えばまだ良いのだが、視聴率や閲覧数のみを気にしているせいか面白おかしく取り上げておしまいなのが現状である。
その後の対応
渋谷区も2018年の警察沙汰を反省して翌2019年6月に「ハロウィーン路上飲酒規制条例」が成立した。ハロウィンが近づいた同年10月24日には渋谷区長直々に会見を開き、警備費用を中心に約1億円の税金を投入する旨を発表した。
ただし、「迷惑者の方をなんとかしないといけないのに、迷惑者のバカ騒ぎの為に税金を投入するのはいかがなものか」という意見もチラホラ出ている。
実際に、前述の小野寿幸氏も
「なんでこんなバカ者に区の大事な税金を投入しなければいけないのか」
と批判している。
2019年度の対応
前年度のバカ騒ぎを受けて地域の小売店も自発的に対策を講じている。2019年ハロウィン当日は渋谷スクランブル交差点の象徴的なビルQFRONTにあるスターバックスが18時をもって閉店するなど見物客対策も敷かれ、地域の小売店もお酒の販売を自粛するなどした。加えて、混雑中もゴミ袋の配布が積極的に実施されただけでなく、約1,000人のボランティア清掃員が未明から朝方にかけて清掃活動に勤しんだ。
しかし、混雑中に爆音バイクが駆け抜ける騒音問題や訪日観光客の来訪人数が年々増加しているなど新たな課題が浮き彫りとなっており、渋谷区としは地方自治体の範疇を越えているとして外務省や観光庁に協力を打診する方針を明らかにしている。
新たなる問題
2020年に入り、新たな懸念が出てきた。新型コロナウイルス「COVID-19」の濃厚接触の危険性である。
既に数々のイベントの延期・中止が発表された上半期だったが、下半期にあるハロウィンでは恐らく他のハロウィンイベントも自粛による中止が考えられており、先に記した通りこの渋谷の場合は「主催者・責任者の存在が皆無」というものと制御のほとんど効かない集団である為、例年のごとく集まるとなると濃厚接触による感染者の増大や感染拡大の危険性が一気に跳ね上がるのである。果たしてこれを渋谷区はどう対処するのかは2020年時点では明らかになっていない。
2020年10月に入り「渋谷に来ないで」「渋谷に来ることは自粛を」と区長が呼びかけている。
結果的に2020年は新型コロナ以前の週末と変わらない程度だったが、仮装した人については前年に比べ少なくはなっていた。
そして、2021年は夏頃に第5波によるいくつかの都府県は緊急事態宣言となったが、ワクチンの接種が進み、感染者が下火になり10月1日をもって解除された。
しかし2019年以前のような状況に戻ってしまうと、ブレイクスルーによるクラスター感染が発生し、これが原因で第6波の始まりとなる可能性も否定はできない。
引き続き警戒と感染対策が必要となる。(第6波はこの時期ではなく後の2022年の冬頃であり直接的な原因にはならなかった。)
あの事件から4年経った2022年、緊急事態宣言そのものは出ていないものの夏に第7波が猛威を奮った、2022年9月現在下火になっていたが、前年に比べるとかなり集まってしまった。
そのため、11月以降に第8波の感染拡大のトリガーが引かれたと予測されている。
渋谷以外での似た事案
国内
渋谷だけで取り上げられているが、日本全国でもこのような主催者がおらず勝手に集まっているだけという点では各地に存在する。
東北では仙台駅前、関西では大阪の道頓堀、九州では福岡の警固公園など、地方中枢都市でも発生するケースがある。
いずれも主催者や運営団体の皆無でイベント会場は設置しておらず、騒ぎたい連中が勝手に集まっているだけである。ただ、渋谷に比べるとそこまで騒ぎになった訳ではない(東京が極度に人口集中しているため、問題化しやすい)。
国外
渋谷に目が行きがちであるが、実は国外はより深刻な状況である。特に、2022年に大韓民国の首都・ソウル特別市の梨泰院でハロウィンの時季に群衆雪崩による156名の死者を出す大惨事の事故が発生した。
こちらは各店舗が独自にイベントを開く状況だったため、安全管理を命じるべき民間事業者がいなかっため、事実上全体を取りまとめる主催者が存在しないものでもあった。
また、2022年のサッカーワールドカップでは、フランスやベルギー、モロッコといった国々で一部のサポーターが暴徒化し、放火や商店の窓ガラスを割るといった破壊行為も見られ、機動隊が出動する事態になった。
注意(※重要)
あくまでも「変態仮装行列」は渋谷において場を考慮できない連中を指すものであり、他の真っ当なハロウィンイベントでのコスプレ参加者またはハロウィンそのものを指すものではない事である。
その為ハロウィンそのものを「変態仮装行列」と揶揄した批判をするのは間違った拡大解釈である事に注意しておく必要がある。
関連項目
荒れる成人式:類似パターン。
ハロウィンワルド:この騒動を擬似的に再現してしまった戦隊怪人。
ハロウィンの花嫁:ハロウィンの渋谷が舞台となっていることから、一説にはこのエピソードが考案されるきっかけになったのではと言われている。もっとも、劇中ではもっとヤバい事態が発生しそうになってしまうのだが…。
渋谷事変:2018年のハロウィンの渋谷が舞台の出来事であり、軽トラ横転のシーンが一瞬だが登場した。数えればキリがない程民間人の犠牲者が出たり、渋谷だけでなく東京23区がほぼ壊滅的な状態になったりするなど、未遂に終わった上記のハロウィンの花嫁よりある意味もっとヤバい事態になってしまった。
パリピ孔明:ドラマ版の舞台がハロウィン真っ只中の渋谷だったため、転生直後の諸葛亮孔明の乗っていた軽トラを横転させようとする群衆が登場している。しかも、同時期に上記の『呪術廻戦』渋谷事変編が放送されているため、更にネタにされる事態になってしまっている。