概要
初出は『小学四年生』1971年2月号。てんとう虫コミックス7巻及び、藤子・F・不二雄大全集1巻に収録。
『ドラえもん』の中に数ある、ドラえもんの恋愛を扱ったエピソードの一つ。
ストーリー
部屋で丸まっているドラえもんにのび太はご飯の時間だと起こすが、ドラえもんは全く締まらない顔でごはんを食べ、のび太の分のおかずまで食べてしまう始末だった。それでも本人は「どうもこの頃食欲がない」と言い、のび太は顔でも洗うよう水を持ってくるが、逆に自分の顔に水をかけられてしまった。
この家に来た時から中古ロボットだったから、そろそろ壊れる頃なのかとのび太は疑問に思い、部屋に戻るが突如現れたシルエットに化け猫と驚いてしまう。だがその正体はボール紙製の耳を付けたドラえもんで、のび太はドラえもんから悩んでいることを聞かされ思わず顔がにやけてしまい、大声で笑い転げてしまう。これにドラえもんは怒って庭へと出て行ってしまうが、のび太は「もう笑わないから」と謝り、改めてドラえもんから悩みを聞こうとする。
すると好きな猫がいると聞かされ、またも思わずにやけてしまい、ドラえもんから再度睨まれるが、必死に笑いをかみ殺し、相手がドラえもんに好意を抱いているかどうか、本人に聞きに行くよう勧める。ドラえもんは恥ずかしがって中々行こうとしなかったが、のび太に後押しされ、雌猫の元に向かうが緊張して全く会話にならず、すぐ部屋に引き返してしまい、おろし金や木槌で自分を削ったり叩いたりしだした。
のび太は慌てて止めに入り、雌猫に「明けましておめでとう」と言ったことや、天気の話を振られたことを聞かされ、デブはいやで、風船みたい顔は嫌いという目で見られたことをドラえもんから聞かされた。そこでのび太はドラえもんに、人間の値打ちは見た目ではなく中身だと力説し、途中言い過ぎでドラえもんに掴みかかられたが、カツオ節をプレゼントするようアドバイスをする。
そして面白い話で相手を引き付けるため、会話の練習もすることにし、ドラえもんは天気や公害、どら焼きについて話そうとするが、どれも全くダメで、のび太が呆れ果てるとドラえもんはダイナマイトを持ち出して自爆し出し、のび太は再び止めに入った。そしてのび太に自分に自信を持つよう一喝され、何とか自信がつき、早速外に出るがすれ違ったスネ夫から「ウスラデブ」と言われてしまい、再び自身を無くしてしまう。
そこでのび太は自分がしずかに話しかけたり、プレゼントを渡したりする様子を手本としてドラえもんに見せることにした。だが事情を知らないしずかは、のび太にからかわれていると思い、怒ってしまったが、のび太に「君のためならどんなことでもしてあげたい」と言われ、機嫌を直し、のび太に留守番を頼んで、自身はスケートシューズを持ってスネ夫と出掛けに行ってしまった。
ドラえもんはこれからどうすればいいのかとのび太に聞くが、機嫌が悪くなったのび太から一人で考えるよう言われてしまい、再び雌猫のもとを訪れ、友達になってと伝えるとOKをもらうことができた。そして2人仲良く屋根の上で一緒に歌を歌うが、これにのび太は「うるさい。うるさい!」と怒るのだった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1980年3月29日に、水田版は2005年6月17日及び、2024年2月17日にそれぞれ放送している。
1980年版
- 部屋で丸まっているドラえもんをのび太が起こす場面はカットされている。
- ドラえもんは付け耳をつけた際、三面鏡を覗いておらず、のび太はドラえもんを化け猫と勘違いして驚いてから、そろそろ壊れる頃かと言っている。
- のび太がした変顔は控えめな表現となっている。
- 雌猫はドラえもんに「明けましておめでとう」とは言っていない。
- ドラえもんが公害について話そうとする場面はカットされている。
- ラストでドラえもんが雌猫と一緒に歌っていたのは「ぼくドラえもん」。
- 本編終了後のショートアニメは、ドラえもんが雌猫と楽しそうに追いかけっこをしていたが、いつの間にか雌猫がネズミに代わっていたため、慌てて逃げるというもの。
2005年版
- 部屋で丸まっていたドラえもんにのび太は「具合でも悪いの?」とも聞いている。またこの後の「自動的に食べてる感じ」はカットされている。
- ドラえもんが中古ロボットだからそろそろ壊れる頃かなと、のび太が発言する場面はカットされている。
- ドラえもんから悩んでいることを聞かされた際ののび太の表情は1980年版と同じく控えめなものとなっていたが、この後の変顔は原作通りだった。
- 今回ドラえもんは木槌は持ち出しておらず、この後の「デブ」は「太った」に変更されている。
- のび太は人の見た目ではなく、「たとえネコ型ロボットでありならも、猫とは似ても似つかなかったとしても断じて恥じることはない!」と力説していたが、「やっぱり猫には見えないんだね...」とドラえもんは気を落としてしまった。
- ドラえもんが公害ではなく景気について話そうとした。ちなみにこの後ドラえもんが持ち出したダイナマイトは黒くて丸い爆弾に変更されている。
- ドラえもんとすれ違ったのはジャイアンとスネ夫で、この時ジャイアンは「風船猫」、スネ夫は「威勢いいな真ん丸ロボット」と言ってドラえもんをけなしていた。
- のび太は語尾に「たまえ」などを付けてしずかに話しかけており、手を握ってはいなかった。またしずかはのび太を「あんた」とは言っておらず、待ち合わせをしていたのは出木杉で、スケートシューズも持っていなかった。
2024年版
- のび太の「来た時から中古ロボットだからな」のセリフはカットされている。
- のび太は「あの子そんなこと言ったの?」と、原作や過去のバージョンとは違い、いら立っている様子はなかった。またこの後ドラえもんを力づけた際のセリフの内、「男だろ!」はカットされ、今回も過去のバージョンと同じくドラえもんは公害について話そうとしていない。
- すれ違った際にスネ夫が言った悪口は「デブえもん」に変更されている。
- 今回も留守番を頼んだ際、しずかはのび太のことを「あんた」とは言っていない。
余談
このエピソード自体が初期のもので、それ故にキャラ達の設定も固まっていなかったためか作中ではのび太がドラえもんに良いアドバイスを送ったりサポートをするという、今であれば珍しい描写が存在する。
中でも、落ち込むドラえもんに言ったのび太の「いちばんいけないのは自分なんかだめだと思いこむことだよ。」というセリフはネット上でもよく話題に上がる名言として知られている。