愛を知り、人の心を得たブリキの騎士の最期
概要
ATTENTION‼︎
本記事にはキョウリュウジャー終盤(ブレイブ46)のネタバレが含まれます。また、放送当時の台詞を入れていますので、閲覧する際にはご注意ください。
アイガロンは、自分と正反対の感情を司るキャンデリラと意気投合し、次第に彼女を恋い慕うようになる。
しかし、キャンデリラが地球に寝返る事態を危惧したカオスの口から「キャンデリラの抹殺」を立ち聞きしてしまい愕然とするアイガロン。更に自らも用済みとして消されそうになり、素顔を現したアイスロンドとキルボレロの攻撃に負傷しながらも、彼女を守ろうと決意したアイガロンは、その危機をキャンデリラとラッキューロに伝えるべく氷結城から逃亡、深手を負いながらも合流に成功し危機を伝える。
しかし、キャンデリラの抹殺のために送り込まれたアイスロンドの急襲を受け、アイガロンはその攻撃から2人を庇いながら3人で逃走し、その最中にダイゴを除くキョウリュウジャーの面々と鉢合わせる。
その時、アイガロンは自分を恨んでいるはずのイアンに縋りついた。
「おまえら……頼むよぉ! キャンデリラちゃんとラッキューロだけでも助けてやってくれぇ!」
「何勝手なこと言ってやがる!! あれほど人間を哀しませ……オレの親友の命まで奪っておいて!!」
突然の手のひら返しに当然、断ろうとするイアン。
しかし。
「あぁ、分かってる……だから、オレ様のことはいいんだ! でもこいつらはなぁ、まだ人間を殺したりしてないんだよ! いいヤツらなんだよぉ!!」
自らの悪事を自覚しながらも、イアンの怒りを買うのを承知で「キャンデリラとラッキューロだけでも助けてほしい」と必死に懇願するアイガロン。
自分を犠牲にし、これまで散々敵対してきた相手に頭を下げてまで仲間を守ろうとするアイガロンの姿を見て、イアンの心は揺れ動く。
「うぅ……頼むよぉ……! 守ってやりてぇんだ……″ 惚れた女 ″ぐらいよぉ……!!」
涙ながらに愛するキャンデリラへの想いを告白するアイガロン。しかし、その直後にアイスロンドから衝撃の事実が明かされた。
「あぁ……何と哀しいブリキの人形……。アイガロン、あなたはね……以前、最初に感情を爆発させた時、もう死んでいたんですよ」
そう、実はアイガロンは以前単身でキョウリュウジャーと戦った際、自爆攻撃で既に一度命を落としていたのだ。
通常、倒されたデーボス軍は肉体を滅ぼされても、必ず再生復活できるようバックアップとして魂が〈大地の闇〉へと送られる。
しかしアイガロンの場合、頑丈すぎる鎧のせいでその魂が大地の闇に行けずに肉体に閉じ込められていた。
そこでカオスはそれを利用し、アイガロンの亡骸に自身の魔力を注ぎ込んで、自身の意のままに操る為の死者兵士として蘇らせたのである。
思い返せば、あの戦いから不審な点はいくつかあった。
時々自分の中に沸き上がる、自分でも制御できないどす黒い感情……それはカオスの魔力が漏出したものだった。
自分の死に気付かず、それどころか死して尚も利用され、キャンデリラへの思いを果たせなくなった残酷な事実に絶望するアイガロン。
「まぁ、哀しみのもとを絶ってあげましょう……それが、私の今回の使命ですから」
そう吐き捨て、無情にもキャンデリラに爆音符を放つアイスロンド。しかし、アイガロンは咄嗟に自らを盾にキャンデリラを庇い、遂に致命傷を負ってしまう。
キャンデリラとラッキューロが駆け寄り、愛する人の腕に抱かれるアイガロン。
「ハハ……これでいいんだ……もう、死んでんだし……オレ様……」
アイガロンに邪魔されたアイスロンドは彼を「鉄クズ」と罵るも、仲間を平然と手にかける外道な行いはキョウリュウジャーの逆鱗に触れ、すぐさま戦闘に突入する。
アイガロンはキャンデリラ達に支えられながら木にもたれかかると、今までの己の所業に対する後悔とも懺悔とも思える心情を吐露した。
「″誰かを大事に思う″って、切ないわぁ……もっと早く分かってりゃ……人間だって、面白半分で殺さなかったのになぁ……」
「ふざけんな……今さら、そんなこと言い出しやがって……!」
怒りに震えながら、ディノスグランダーを装備したイアン。
止めようとするラッキューロとキャンデリラを払いのけ、雄叫びと共にアイガロンの胴へとスクリュードライバーを叩き込んだ。
しかし、それは彼への攻撃ではなかった。
「おまえ……まさか、オレ様の鎧を砕いて……?」
イアンは囚われていたアイガロンの魂を解放するために、彼の鎧に穴を開けたのである。
肩を震わせながら、空を見上げるイアン。
「なぜだ……なぜなんだよ…! 憎い敵の最期だってのに……なぜ、こんな気持ちになるんだッ!!」
討つべき仇だったはずの相手の最期に悲しむイアン。その涙がマスク越しに流れ、アイガロンのシンボルに零れる。
「あっ……哀しみが来た……さてはおまえ、泣いてるな……?」
アイガロンの問いにそんな訳がないと反論するイアン。
「ちょっと……痛みが引いたよ……おまえの情け……染みる……わぁ……」
葛藤しながらも仇敵の自分を救ってくれた、イアンから流れた涙を感じ取ったアイガロンは、消えようとする命の中で、小さな花をキャンデリラに差し出そうとする。しかし、その手は届かず……。
「……キャン……デリラ……ちゃん……」
愛する人の目の前で力尽き、キャンデリラを深く想いながら、アイガロンの肉体は消えた。
しかし、その魂は〈大地の闇〉へ堕ちず、まるで成仏するように天へと昇って逝った。
泣き崩れるキャンデリラとラッキューロを背に、イアンは遺されたトホホークを携えて戦闘に加勢。
重く深い悲しみを乗せた斧の一撃が、空蝉丸の雷電残光・五連突きをも弾くアイスロンドの強固な防御を打ち砕いた。
「バ……カ……な……!? それは……アイガロンの……斧……!!」
「この一撃……おまえなんかとは、哀しみの重みが違う!!」
「人」の心を知ったアイガロンの哀しみを知るイアンの思いを感じ取ったのか、トホホークから一筋の涙が零れた。その後、アイスロンドが爆散すると同時にアイガロンの想いが残っていたのか、トホホークはキャンデリラ達の所へ戻ってきた。
彼の死を嘆き悲しむキャンデリラに、イアンはアイガロンが渡そうとしていた花を差し出し、告げる。
「逃げろ。そして、この星で生きていくんだ。トリンのように……!」
アイガロンの命懸けの行動とその最期は、キョウリュウジャー達との交流で揺らぎつつあったキャンデリラとラッキューロの心を大きく、そして決定的に動かした。
この出来事を経て2人はデーボス軍から完全に離反し、最終決戦で共に〈大地の闇〉に赴き、カオスの撃破に繋がった。
邪悪な宇宙生命体であるデーボスを復活させるために多くの人間を哀しませ、イアンの親友の命まで奪うなど決して許されない悪事をはたらいてきた哀しみの戦騎アイガロン。しかし、キャンデリラへの一途な思いが、次第に人間らしい心を芽生えさせた。
そして最期に見せたのは、自らを犠牲にしてでも苦楽を共にした友を守ろうとし、生ける屍となって尚、1人の女への愛を貫いた漢の勇姿であった。
哀しいブリキの戦騎は、最期に心を得る
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関連タグ
誇り高い武人ドゴルド:同じく終盤、涙無しには見られない同胞の生き様。
グレイ(ジェットマン):彼もまた「愛する女性の幸せ」を第一義に動いた幹部。
皇妃ヒステリア:こちらは最終回にて「愛する孫の助命」のため、今までの悪行の贖罪に自決した女性幹部。
バラリベンジャー:上記のヒステリアが属する組織における『今週の怪人』枠ながら、彼が掲げる「誇り」と中の人の好演、敢えてセオリーを破った巨大ロボ戦などの演出も合わさり、未だに多数のファンから彼が登場したエピソードを「神回」と評価されている。
愛の戦士レインボーマン:実写版の主題歌歌手、アニメ版では主人公役も同じ人が務めた。