概要
戦時中に中国大陸のトーチカ陣地に配属された経験を持つ井出雅人の脚本をもとに谷口千吉監督が映画化。
アクション映画を得意とした谷口監督としては珍しい、トーチカという密室を舞台にした会話劇となっている。
タイトルに『独立』を冠しているが『独立愚連隊』に連なる愚連隊シリーズとは特に関係ない。
同時上映は『続・雲の上団五郎一座』、『読売巨人軍創立三十年記念映画 闘魂こめて』。
あらすじ
昭和20年、ソ連・満洲国境の国境守備隊には無数のトーチカが展開していた。
そのうちの機関銃トーチカ「㋖の3(マルキの3)」に若い志願兵の白井二等兵が配属された。
白井を出迎える㋖の3トーチカの面々は「俺はツイてる」が口癖の山根班長、農村出身の無口な渡辺上等兵、学徒動員の原一等兵、狡猾そうな三年兵金子一等兵。
5人はトーチカで連日激しい訓練を繰り広げる。
しかしある日本格的にソ連軍の侵攻が始まる。機関銃が敵に向かって火を噴く。反撃の銃弾がトーチカに飛び込みパニックに陥る金子。
古参兵として余裕の態度を取っていた金子は以来自らの手に小銃を撃って自傷行為を試みるなど精神に異常をきたしていき、やがてトーチカを飛び出し敵に飛び込み戦死してしまった。
指揮官の小栗中尉が前線視察にやってきた。山根はいつまで戦うのか尋ねるが、小栗は本部から死守命令が下りたことを伝える。
戦車隊がトーチカに向かってきた。山根と渡辺は対戦車地雷を抱えて戦車隊の前に飛び出し、見事敵戦車を仕留めるが反撃を受け山根が戦死してしまう。
トーチカの中にも敵兵が突入してきた。とっさに反撃する白井。
敵の熾烈な猛攻。降伏勧告とカチューシャロケットの猛攻が繰り出される中、原は降伏してでも生き延びようとトーチカの面々に呼び掛けるが…
スタッフ
脚本:井出雅人
音楽:團伊玖磨
助監督:竹林進
監督:谷口千吉
キャスト
山根銀次郎軍曹:三橋達也
小栗中尉:夏木陽介
渡辺子之次上等兵:佐藤允
原昌志一等兵:太刀川寛
白井春男二等兵:寺田誠
峯岸兵長:福山博寿
金子源吉一等兵:堺左千夫
郵便兵:尾小山安治
余談
当初のタイトルは『点(トーチカ)』だった。完成作品のタイトルは1941年に発表された坂口一郎の実戦記『独立機関銃隊未だ猛射中なり』からとされているが、谷口監督は勇ましいタイトルに不満を感じ「なんで『独立』なんだ。これは『点』でいいんだよ『点』で」と語っていた。
『独立機関銃隊未だ猛射中なり』では頑強な抵抗を見せる敵のトーチカを攻略した際、兵がその中を覗いたところ血の海になっていたという描写、激戦で荒み切った兵たちが花を目にして「忘れていた何かが胸に甦ってきた」と語る描写などは本作への影響がうかがえる。
山根役の三橋達也は奇しくもソ満国境のトーチカ陣地に配属された過去があり、谷口監督とともに本作の方向性について話し合ったという。
撮影に使用された九二式重機関銃は陸上自衛隊武器学校に保管されている実物で、発砲シーンは精巧なプロップを制作した。このプロップはその後も『蟻地獄作戦』や『血と砂』で使用されている。また『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」に登場した熱線重機関砲もこの九二式重機関銃の改造という可能性も考えられるが真偽は不明。
トーチカ陣地を襲うソ連軍の戦車は劇中では「BT戦車」と呼称されているが、外観はどちらかと言えばIS-1またはIS-2に近い。
『独立愚連隊西へ』で岡本喜八監督が戦車の模型を制作し、荒野のジオラマを走らせようとしたがまっすぐ走らず失敗、戦車の模型はスタッフが持ち帰ったという証言があるがこの戦車との関係は不明。
ラストシーンは脚本ではひとり生き残った渡辺がソ連兵に投降し、敵兵と心を通わせかけたところで友軍の砲撃に巻き込まれて死んでしまうというものだった。このバージョンのラストシーンも撮影されたとされる。
また別バージョンとして倒れ伏した原たちの遺体をソ連兵が踏み越えて「自由のために前進!」と叫ぶというものが考案されたという説もある。