- 1908年発表のビセンテ・ブラスコ・イバニェスの小説を原作とする映画作品。
- 1965年公開の戦争映画。岡本喜八監督作品。
- 1987年のローズマリー・サトクリフの小説『血と砂 愛と死のアラビア』。
本項では1.と2.を紹介する。
貧しい靴屋の青年フワン・ギャラルドは修行を積みスペイン一の闘牛士となり、幼馴染のカルメン・エスピノーサと結ばれるが、闘牛の観戦に来た有閑マダムドーニャ・ソルに心を奪われやがて破滅していく。
3度映画化されており1941年に公開されたルーベン・マムーリアン監督・タイロン・パワー主演のものがよく知られている。挿入歌「愛のロマンス」は『禁じられた遊び』でも使用され話題となったほか、楽曲の一部が「闘牛士のマンボ」に編曲されている。
1941年版
- スタッフ
製作:ダリル・F・ザナック
脚本:ジョー・スワーリング
監督:ルーベン・マムーリアン
- キャスト
カッコ内は日本語吹き替え(1972年7月30日放送『日曜洋画劇場』より)。
ドーニャ・ソル・デス・ミューア:リタ・ヘイワース(平井道子)
セニョーラ・アウグスティアス(フワンの母親):アラ・ナジモヴァ
ガラバト:J・キャロル・ナイシュ
エンカルナシオン:リン・バリ
ナシオナル:ジョン・キャラダイン(千葉耕市)
ピエール・ローレン:ジョージ・リーヴス
ラ・プルガ:エイドリアン・モリス
パブロ:チャールズ・スティーヴンス
子供時代のカルメン:アン・E・トッド
子供時代のエンカルナシオン:コーラ・スー・コリンズ
子供時代のフワン:レックス・ダウニング
子供時代のマノロ:カレン・ジョンソン
子供時代のパブロ:ラリー・ハリス
子供時代のラ・プルガ:テッド・フライ
子供時代のナシオナル:スカイラー・スタンデッシュ
子供時代のドーニャ:ビバリー・ラフ
1989年版
- スタッフ
脚本:ラファエル・アスコナ、リカルド・フランコ、トマス・フッチ
監督:ザビエル・エロリエッタ
- キャスト
カッコ内は日本語吹き替え。
ホアン・ガイヤルド:クリストファー・ライデル(江原正士)
カルメン:アナ・トレント(相沢恵子)
ドンナ・ソル:シャロン・ストーン(高島雅羅)
1965年9月18日公開。
『独立愚連隊』シリーズの集大成を目指した東宝・三船プロダクション製作の戦争アクション映画。
第二次大戦末期の北支戦線を舞台に、軍楽隊の少年兵と不良兵士たちの交流、そして悲劇を描く。
本作の制作の直前、岡本監督は三船敏郎と石原裕次郎の共演映画『馬賊』の企画を練っていたが、石原と日活の契約上の問題から実現しなかった。
原作は「悲しき戦記」とされている。この作品は全25編の短編集で、そのうち「黄土の一輪」と「麦萌える」が原点となっている。
あらすじ
昭和20年の北支戦線。上官を殴った不服従で最前線の陽家宅に送られた小杉曹長は、前線慰問のために陽家宅に向かう軍楽隊の少年兵たちと行動を共にする。
たどり着いた先の陽家宅では敵前逃亡の罪で小原見習士官が銃殺刑に処されていた。横暴な尋問の末に銃殺刑を行った隊長の佐久間大尉に憤る小杉は大尉を殴打してしまう。
しかし大尉は小杉を軍法会議に掛けず、少年兵たちと共に小原が守っていた最前線の陣地「火葬場(ヤキバ)砦」の奪還を命じる。
マトモな戦闘経験のない少年兵たちを鍛え上げ、営倉に入れられていた厄介者の一等兵3人を入れて敵陣に挑む。
壮絶な銃撃戦で楽隊の指揮者原田とトロンボーン奏者渡が戦死するが、なんとか火葬場砦を奪還する。
一方小杉に思いを寄せる慰安婦のお春は大尉に懇願し火葬場砦まで向かうトラックに便乗させてもらう。ゲリラの強襲に遭いトラックはやられてしまうが、お春はかろうじて火葬場砦に合流する。
しかしトラックを襲撃したゲリラは火葬場砦にも襲来。大太鼓奏者の大賀と不戦を訴えて営倉に入れられた志賀一等兵が戦死する。
連日の敵の猛攻によって消耗する少年兵たち。そしてついに小杉までもが敵の銃弾に倒れてしまう。
小杉の墓を掘るお春は少年兵たちをまとめることになった犬山一等兵に小杉のある秘密を教える。
キャスト
小杉曹長:三船敏郎
犬山一等兵(出刃):佐藤允
お春こと金山春子(金春芳):団令子
志賀一等兵(営倉):天本英世
原田(コンダクター):大沢健三郎
三保少尉(副官):伊吹徹
根津曹長(憲兵):名古屋章
陳(少年ゲリラ):木浪茂
小原見習士官:満田新二
八路兵:小川安三
中野伍長(憲兵):長谷川弘
銃殺隊下士官:桐野洋雄
苦力A:沢村いき雄
八路歩哨:大木正司
杉山:滝恵一
稲本:宇野晃司
ゲリラB:鈴木治夫
ゲリラA:伊原徳
出口:加藤茂雄
苦力B:小杉昇司
八路観測兵:伊吹新
慰安婦A:森今日子
慰安婦B:浦山珠美
慰安婦C:河美智子
佐久間大尉(大隊長):仲代達矢
持田一等兵(葬儀屋):伊藤雄之助
余談
原作のひとつとされる「黄土の一輪」は23名の兵隊が集う最前線の地陽家宅にある事情から左遷されてきた戸倉曹長、そして戸倉に思いを寄せる慰安婦のお春がやってくるという展開は『血と砂』と共通するが、陽家宅駐屯部隊は猛者ぞろいという違いがあった。
「麦萌える」は砦の構造が『血と砂』の火葬場砦と共通するが、日本軍の陣地であり八路軍の奇襲を受け壊滅、守備隊の一等兵ひとりだけが生き残るという本作導入部の小原見習士官のような顛末になっている。
過去の愚連隊シリーズではチェコ式軽機関銃、九六式軽機関銃ともに1丁ずつしか登場しなかったが、本作では九六式軽機関銃が2丁登場している場面がある。
訓練シーンで登場した九二式重機関銃は『独立機関銃隊未だ射撃中』で使用されていたもので保弾板が稼働するギミックが施されている。