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概要

流祖は、戦国時代江戸時代初期に活躍した島津家家臣の剣豪である東郷重位。『薩摩示現流』と呼称される事も。

示現」とは、仏教経典の一つ『法華経』の一章「観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん) 第二十五」(「観音経」とも)の中における経文「示現神通力(じげんじんつうりき)」に因んで、重位が慕っていた薩摩の禅僧南浦文之が命名したという。薩摩の秘剣を衆生を救う菩薩の霊力に例えたとされている。

1604年、重位が当時の薩摩藩主・島津忠恒の御前試合でタイ捨流の剣術師範を破って島津家兵法師範となった事により、藩内で一躍その名を馳せる。

その後、江戸中期頃には後継ぎ問題などで一時的に衰退・混乱を見せるも再び隆興。江戸後期には島津斉興より御留流(一つの藩でのみ伝承され、同じ藩内でも他流の者に稽古を見せることを、藩より禁じられた武術の流派)とされ、分家である佐土原藩を除き、藩外の者に伝授することは厳しく禁じられていた。

数ある日本剣術の中でも特に「攻め」に重きを置いた剣術として知られ、中でも裂帛の掛け声(『猿叫(えんきょう)』」と呼ばれる)と共に打ち込まれる初太刀の威力は凄まじく、防御した相手が受けた刀の峰を自身の頭部にめり込ませて絶命したという記録も残っているほど。

幕末にはこれを修得した薩摩出身の尊王攘夷派剣士も活躍しており(※実際は後述の分派剣術『薬丸自顕流』の使い手の方が多かったようだが)、新撰組を始めとする佐幕派の剣士達から強く警戒されていたという。

その攻撃的で力強いイメージからか、現在も多くの小説漫画アニメゲーム等で取り上げられている。

猿叫

示現流特有の裂帛の気合を込めた掛け声。後述の薬丸自顕流にも取り入れられている。

「キィエーイ!」と聞こえることで知られるが、正式な掛け声は「エイ!」であり、発声時の勢いがあまりに激しいためにこうした発音になっているという。

なお漫画などでは「チェストー!」と叫ばれることもあるが、これは俗説らしく、「キエー!」「キヤアァァァー!」「チェーイ!」といった他流派には無い独特な掛け声が混ざり、そう認識されるようになったとされる。

薬丸自顕流との関係

しばしば薩摩藩士薬丸兼陳が編み出した分派剣術薬丸自顕流』(野太刀自顕流、あるいは単に自顕流とも)と混同される。

同じ薩摩で盛んな剣術であり読み(「ジゲンリュウ」)も同じ、一撃必殺を旨とし猿叫を取り入れるなど共通点も多いからであるが、薬丸自顕流は先述の東郷重位の高弟でもあった兼陳とその子孫達が家伝の野太刀剣術を継承しつつ、そこに示現流の技を取り入れながら独自に形作ったものであり、正確には別物。

江戸後期に正式に本家示現流から独立を果たすが、その際に弟子の移動が問題となりトラブルも起こっている。

両者の違いをざっくり説明すると、示現流は高度複雑な体系を持つが難解で精神論も多い、自顕流は技は少なく単調だが一撃がより強烈、という特徴がある。

幕末期には、上士は示現流、下士は自顕流を修めていた者が多かった。

空手との関係

琉球王国の武術家で、武士として薩摩へ渡り示現流を学んだ『近代空手の始祖』と言われる松村宗棍は、示現流を通じて日本武術思想構造を琉球古武術『手(ティー)』に取り入れ、流派の1つ「首里手」を体系づけ確立させたとされている。

そのため、空手には多くの流派において、上述した示現流の猿叫が気合いを入れる際に使用されている。

また、近世以降は武器術の一つとして剣術も教えられた。

イメージとしての示現流

新撰組局長・近藤勇の「薩摩者と勝負する時には初太刀を外せ」という発言から「薩摩のジゲン流は初太刀をかわせば素人同然」という拡大解釈に至り、「蜻蜓(とんぼ)」と呼ばれる構えからの袈裟斬りしかしない剣術というイメージが根付いているが、これは前述の薬丸自顕流との混同による誤ったイメージである。

実際には初太刀を躱された後の二の太刀・三の太刀についてもきちんと体系化されており、当時の幕末において新撰組で使われていた天然理心流と並び、実用性がより多く残された実戦向けに特化された剣術である。

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