概要
『.hack』第1期プロジェクトの一環としてOVAコンテンツとして位置付けられたアニメ作品。第1期ゲーム版と同一の時期に、現実世界(リアル)で起こっていた出来事を描く。全4話。
単体で販売はされず、第1期ゲーム『.hack//』の各巻にそれぞれ1話ずつが同梱されているが、現在新品廉価版として発売されている第1期ゲーム版には未同梱となっている。
後に『.hack//Integration』に全話が収録されたDVDが収録されている。
ストーリー
高校生の水無瀬舞は、交際相手の香住智成と共に学校の部室でオンラインゲーム"The World"をプレイ中に二人揃って意識不明に陥るが、彼女だけがすぐに意識を取り戻す。
そんな中、日本のCC社の"The World"の日本語版ディレクターであった徳岡純一郎が唯一意識を取り戻した舞に接触を図り、事態の究明のための協力を打診する。そして香住とゲーム内で親交のあったフレンドの女子高生2人、黒のビト(佐藤一郎)と共にゲーム内の謎を現実の世界から解く。
ゲーム内の出来事と連動して、現実世界にも影響が出てくる。ゲームと現実の境界性(Liminality)が少しずつ薄くなっていく。
登場人物
怪しげな中年男性。かつての『The World』日本語版製作チームのチーフディレクターであったが、現在は既にCC社を退社しており無職。
普段はどこか飄々とした雰囲気を漂わせているが、その裏にシビアで真剣な顔を併せ持っている。
CC社を退社した後は『The World』で起こっている異変の真相究明に明け暮れている。そのために組織的な圧力を受けているらしい。
そんな中、『The World』のプレイ中に意識不明に陥った人物達の中で、ただ一人すぐに回復した水無瀬舞に接触を試みた。
舞が香住智成と共に意識障害に襲われた状況を再現するため、舞と共にゲーム研究会の部室で『The World』をプレイするが、逆に自分が軽度の意識障害に陥ってしまう。
その後、『The World』で香住の仲間である相原有紀と遠野京子に接触し協力を要請すべく、本格的な行動に乗り出した。
CV:小林沙苗
Vol.1の中心人物。金沢の県立高校に通う高校二年生の少女。
絶対音感の持ち主で、同時に八人の会話を聞き取れるという特技を持っている。
ごく普通の少女らしい明るい性格だが、社交的とまでは言い難く、一人で思い悩むことも多い。
恋人の香住智成の薦めで始めた『The World』の初プレイ中に、突然意識障害に襲われて倒れる。
今までこのゲームのプレイ中に意識不明となった者の中では回復した者が皆無と言われていたが、彼女だけは早期に意識が回復した。
舞が覚醒出来たのは、彼女が習っていたバイオリンなどの楽器全般の調律に使われる“ハ長調ラ音”が聞き取れたのが要因らしい(ディレクターによれば、この音こそ禍々しき波が波長となって空気をふるわせた?音の現れだと言う)
なお『.hack//SIGN』において司がリアルへ復帰する際、『.hack//G.U.』第1巻付属の「ターミナルディスク」内映像における八相の出現時や、ハセヲら碑文使いの憑神発現時や三爪痕登場時などにもこの音が鳴っている。
香住智成(右側)
CV:櫻井孝宏
ノリは軽いが責任感は非常に強く、プレイヤーの相談相手になることも多い。
その際、解決するために水無瀬舞に相談しており、これがきっかけとなって恋仲に発展している(が、後に破局)
『The World』でのPC名は「ジーク」
舞と共に『The World』をプレイしていた際、スケィスのデータドレインを受けて未帰還者となった。
意識を取り戻した後も『The World』を続けた。
『R:2』に移行後は碑文使いとして選定されたことでCC社に見出される。(G.U.のクーンの事)
ちなみに.hack//Linkの特定条件をクリアして出現するシナリオを見る限り水無瀬舞の事は全くふっ切れておらず、相応しくなるための努力はしている。
ただし、待ってもらう約束はしていない。
CV:保志総一朗
水無瀬舞が通う高校のゲーム研究会部長。
香住智成に『The World』の存在を教えた人物。
父親は大病院の院長。
その病院に入院している香住に対し、自分が『The World』の世界に引き込んだことに責任を感じている。
舞に好意を抱いているらしく、舞に接触しようとする徳岡純一郎のことを快く思っていない。
ちなみに妹がおり、舞と同じバイオリン教室に通っている。
CV:千葉紗子
Vol.2の中心人物。『The World』のプレイヤーでもある。PC名は「ユキちん」
横浜にある私立の名門女子高校に通う高校三年生の少女。
外見や学歴などから、周囲からは優等生的な印象で見られているが、それ故に背伸びをして少々不良っぽく振舞っている。
『The World』ではジークと主にパーティーを組んでいた。
その事もあり、未帰還者となったジークのプレイヤー・香住智成の身辺を調査していた徳岡純一郎と接触することになる。
徳岡と落ち合う際、待ち合わせまでの時間を潰そうとしたビル内の映画館でネット災害に遭遇。
その混乱の最中に出会った女性、浅羽と共に、閉じ込められたビルから脱出を試みた。
浅羽
CV:冬馬由美
有紀と共にビルからの脱出を試みる女性
遠野京子(左から2列目のポニーテールの作業着)
CV:久川綾
Vol.3の中心人物。『The World』のプレイヤーでもある。PC名は「KYO」
飛騨地方の県立高校に通う高校三年生の少女。
ただ特別な事情があるらしく、現在の年齢は19歳。
初めてネットゲームを体験したのは小学三年生の頃と、そのネットゲーム歴は長い。
頭の回転が速く、単純に言えば頭が良い。
しかしそれ故に、思い切りの必要な出来事に対しては慎重になり過ぎてしまう一面がある。
両親がそれぞれ翻訳家と文筆家なので、幼い頃から文章に関する物には事欠かなかった。
小説だけでなく歴史学や民俗学の専門書も愛読しており、神話や伝説のルーツに興味を示している。
そして彼女の興味は詳細不明の叙事詩『黄昏の碑文』もその範疇に収めている。
飛騨にて徳岡と落合った際、ヘルバの代理人である“黒のビト”と名乗る男と接触。
CC社による『The World』のゲームサーバーの物理破壊を阻止するため、その解決策であるサーバー転送計画を打診され、それを引き受けた。
佐藤一郎(中央付近の白いコート)
CV:関俊彦
現実とネットの両方におけるヘルバの腹心。
この名前は表向きの偽名という可能性が強い。
ハンドルネームは『黄昏の碑文』において闇の女王ヘルバを補佐する人物“黒のビト”を名乗っている。
基本的に表舞台に立って行動することは無く、移り変わる事態の裏側で活動している。
覚醒した直後のアウラとそれを取り巻く状況を動かすべく、一度は『The World』から遠ざかった昴を再びあの世界へ戻るよう促したのも彼のメールが切っ掛けとなってのこと。
後にヘルバの指示により、彼女の代理人として飛騨高山にて遠野京子と徳岡純一郎の二人と接触。
未帰還者に関する物証を隠蔽するために、CC社自らがThe Worldが稼動するゲームサーバーの物理破壊を試みようとしている事実を教唆する。
それを阻止すべく、千葉県浦安のCC社のサーバー管理施設に潜入してのサーバー転送計画を二人に打診した。
クリスマス・イブの夜に徳岡ら四人と共にサーバー管理施設へと潜入。
この最中、ゲーム内のカイト達はラスボスと戦闘の真っ最中であったため、この作戦のおかげでゲーム内のカイト達が勝利することが出来たと言っても過言ではない。
計画は成功するが、四人を逃すための囮となって警備員(ミストラルの旦那)に捕まった。
ハロルド(ハロルド・ヒューイック)
CV:山崎たくみ
天才と謳われるコンピュータ研究者で、『fragment』の開発者。ドイツ人。
人間とコンピュータの未来の姿を提示した論文を発表して一躍脚光を浴び、以降は自分の仮説を実証すべく究極のAIの開発に取り組むこととなる。
その過程で“知性”の根幹を成すものを求めて神智学・人智学の分野に興味の領域を広げていき、参加したあるセミナーでエマ・ウィーラントと出会い、その美貌と洗練された感性に強く惹かれていくことになる。
エマのネット叙事詩『黄昏の碑文』をベースに『fragment』を開発し、2006年の夏に設立されたばかりのCC社にそれを売り込む。
2007年5月に『fragment』のテストプレイが開始されるが、ハロルドは突如として失踪。
結果、『fragment』は開くことが出来ずにブラックボックス化した謎のフォルダやファイルを残したまま製作が進められ、完成後は『The World』として販売されることになった。
ハロルドは『fragment』で究極AI“アウラ”を育て上げようとしていた。
それまでに幾度となく独力だけの研究で失敗を重ねており、人間の持つ思考や行動に関するデータを『fragment』で収集することでアウラの成長に役立てようとしていた。
CC社に売り込む前、テストタイプの『fragment』を姪のララ・ヒューイックにプレイさせ、『fragment』が「再誕」のプログラムによってループ状態に陥っていたシステムを、「個の変化」として新生する「成長」を促すために子供であるララを利用したとされている。
これにより制御システムの正常な稼動に成功し、ハロルドは完成した『fragment』をCC社に持ち込んだ。
しかし、『fragment』のテストプレイにおいて管理プログラムの暴走という予期せぬ事態が起こった。
ハロルドは管理プログラムである人工知能モルガナとの対話の必要性を感じていたものの、一度プログラム内に入ると外部からのアクションがなければ出ることができなかったために躊躇していた。
しかし最終的に、「危険だがもうこれしかない。どこで間違ったのかわからない。なぜ」との言葉を遺して自ら『fragment』に取り込まれている。
そのまま帰還することなく現実世界では失踪として扱われたが、ハロルドの意識はその後も『The World』内に思念体として存在しており、徐々にデータは壊れていくようだが、その残留思念が語る言葉は司やカイトやハセヲの行動の道標となっていた。
スタッフ
原作 - Project .hack
監督・音響演出 - 真下耕一
シリーズ構成・脚本 - 伊藤和典
キャラクターデザイン - 鷲田敏弥
絵コンテ - 澤井幸次(1,2,4話)、吉原正行(3話)
演出 - 吉原正行(1話)、澤井幸次(2,4話)、守岡博(3話)
作画監督 - 鷲田敏弥(1,4話)、つばたよしあき(2話)、桂憲一郎(3話)
メカニカルデザイン - 寺岡賢司
美術監督 - 高山八大
色彩設計 - 佐藤節子
撮影・編集 - 黒澤雅之
音楽 - 梶浦由記
音響プロデューサー - 中野徹
プロデューサー - 内山大輔、江川功爾憲
アニメーション制作 - ビィートレイン
製作 - バンダイ
主題歌
歌はすべて、See-Sawが担当
オープニングテーマ
「edge」(1話)
「千夜一夜」(2話)
「君がいた物語」(3話)
「記憶」(4話)
エンディングテーマ
「黄昏の海」(全話)
関連動画
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