Four Wheel Steeringの略称。日本語では四輪操舵と呼ばれる。
メカニズム
四輪自動車は通常、前輪のみ操舵可能となっているが、4WSは後輪にもステアリング機能を加えたものである。逆位相方式と同位相方式があり、それぞれ異なる特性を持つが、乗用車では同位相と逆位相の両方が可能なものが多い。4WS車でも後輪が前輪と同じくらい切れるものは少なく、後輪の切れ角は通常10度未満である。
逆位相方式
メイン画像のハイメディックのように、前輪と逆の方向に後輪の舵を切る方式。低速走行時に回転半径を小さくすることができ、長い車体でも狭く曲がりくねった道に入れることから一部の大型車両に採用される。ただし、旋回時にリアオ ーバーハングが外側に膨らむ傾向があり、この特性を理解していないと巻き込み事故に結びつくので注意が必要である。また、車庫入れなどのバック駐車では車輪の軌跡がわかりづらく、狭い駐車場でピッタリ壁に寄せることが難しい。
同位相方式
前輪と同じ向きに後輪の舵が切れる方式。ステアリング時に発生するヨーイングを抑えることで、高速走行時の安定性が向上する。同位相方式での旋回は、横滑りするような独特の操縦感覚を持つ。
歴史
1987年にホンダが販売したプレリュードが乗用車の4WS導入の先駆けと言われており、日産のS13型シルビアやR32型、R34型スカイライン、トヨタのセリカT180 GT-S、マツダのカペラ、三菱GTOなど、1980年代後期~1990年代の一時期、日本車で流行した。一頃は4WDと4WSの組合せは、国産ハイパフォーマンスカーの必須装備と言われるほどだった。ただし、4WS車特有の操縦感覚がドライバーに嫌われたほか、構造の複雑化によりコスト高騰やメンテナンスの複雑さなどを招いたことから流行は長続きせず、短期間で姿を消した。
その後、乗用車の大型化による小回りの悪化を解決するため、2010年代に入ってからポルシェやルノーやBMWなど欧州の高級車を中心に導入が増えつつある。レクサスも一部車種で4WSを採用している。時代が追いついた....ように見えるが、かつての日本車の4WS車は高速域でのスタビリティが重視されていたのに対し、今日の4WS車は低速域での小回りが重視されたもので、採用理由の重点が異なる。