概要
西部・中部・東部(伊豆含む)でわずかに違いがあり、それぞれ遠州弁、駿河弁、伊豆弁と細分化されることがある。
一般的には中部の駿河弁を基準とする。
主な静岡弁
- 「ら」「だら」「ずら」:推量(「~だろう」)を意味する終助詞。「ずら」はアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』で有名になったが、実際には戦争経験者あたりの古い世代で使われていたもので、近年の若者~中年世代はまず使わない。更に断定(「~である」)として使うのは誤用であり、あくまでキャラ付けとしての用法である点に注意。
- 「に」「だに」:「なのに」もしくは「だ」を意味する語尾。遠州弁で多用し、駿河弁では稀にしか使わない。伊豆弁ではまず用いない。
- 「っけ」「っけら」:過去形を表す語尾。
- 「ざあ」:「しよう」を意味する語尾で、「行かざあ(行こう)」のように使われる。遠州弁では使用頻度は低く、代わりに「まい」(「行かまい」など)が用いられる。
- 「ばか」:「すごく」「とても」の意味。「ばかだるい」「ばかすごい」のように使われる。罵倒としての「馬鹿」とは別物。
- 「だもんで」「もんで」:「だから」の意味。代表的な静岡弁の一つで、世代を問わず頻繁に聞かれる。
- 「けんど」「けえが」:「だけど」の意味。
- 「おぞい」:「ボロい」「古い」「粗末な」の意味。「おぞましい」ではないので注意。
- 「ぶしょったい」:「だらしない」の意味。
- 「うっちゃる」:「捨てる」「処分する」の意味。
- 「しょんない」:「しょうがない」「しょうもない」の意味。これを用いた『ピエール瀧のしょんないTV』というローカル番組がかつて存在した。
- 「みるい」:「若い」の意味。
- 「ちょびちょびする」:「ちょっかいを出す」「絡む」の意味。
- 「ちんぶりかえる」:「怒る」「キレる」の意味。
- 「ポンポン」:バイクの事。昔のバイクのエンジン音に由来。西部で使われることが多いが、これは西部(特に浜松市周辺)でバイク産業が盛んだったため。
- 「しぞーか」:「静岡」の事。
- 「頭を切る」:散髪の事。
「標準語」化
日本語の標準語は東京弁の山手ことばであるが、戦後、テレビの普及によるバラエティ番組の拡大や漫画、アニメなどのオタク文化の普及に伴って、格式高く上品な言葉である山手方言よりも悪く言えばくだけてぞんざいな、よく言えば親しみやすい新たな標準語が求められるようになった。しかしながら、同じ東京弁の日常会話方言であった江戸弁や多摩弁は、京言葉から派生した山手方言に比べると文法や語彙の面で応分に北日本的な要素を持っており、特に西日本出身者には難解であった。
これに対し、静岡弁は西日本方言と東日本方言の境界地域に属しており、双方ともに理解しやすい文法と語彙表現を有していた。そのため、全国的に遍く通じる必要のある標準語のくだけた形として、元来静岡弁に特有であった表現や語彙が盛んに取り入れられていくこととなる。
例えば、強調の語尾「〜だよ」「〜じゃん」「〜じゃんか」などの今ではおなじみの言い回しは、元来は神奈川県から静岡県にかけて用いられていた方言に由来するものである。
こうしてできた「新たな口語的標準語」が、元来の多摩弁、江戸弁話者や、東北地方などから首都圏に移り住んだ層にも日常語として取り入れられるうちに、現在首都圏方言と呼ばれる新方言へと繋がっていくこととなった。
このため、多くの静岡弁話者が、自分たちの言葉は「訛っていない」と自覚することも多い。
しかしながら、すでに首都圏方言は静岡弁とは全く異なる方向に進化してしまっている。(例えば、標準語での「〜ない」に相当する言い回しは首都圏方言では「〜ねえ」、静岡弁では「〜なぁ(にゃぁ)」である)。このため、標準語のつもりで口走った言葉が実は静岡弁だったということが、とても起こりやすい方言である。
静岡弁を話すキャラクター
国木田花丸:『ラブライブ!サンシャイン!!』の登場人物。「ずら」が口癖。
牧之郷あい:『ステーションメモリーズ!』の登場人物。「くよくよしたってしょんない」をモットーにしている。
初内ララ:『八十亀ちゃんかんさつにっき』の登場人物。「しずおか」と発音出来ず、「しぞーか」と言ってしまう。
ラムディミア・ド・アクセィメモール:『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』の登場人物。人間界に移住してきた魔人族だが、何故か常に遠州弁で喋る。