概要
それぞれの宗教制度・集団の信仰内容に基づいて、信仰の広布、維持、教育などの仕事に専念する者を聖職者と呼ぶ。その範囲・職務内容・地位・呼称は各宗教によって異なっているが、一般には、教祖、教主、祭司、僧侶、神職、神父、牧師、シャーマンなどがこれにあたる。
宗教や地位を問わない聖職者一般をさす英語として『クレリック(cleric)』がある。
実在の聖職者
古代宗教
古代宗教では「超自然的存在と人を仲介する人」、司祭や神官が聖職者と呼びうる。古代ケルトのドルイド、古代インドでのバラモン、日本での神職や巫女などがこれに該当する。マヤの神官などもこれに類する物だろう。古代ギリシャで神託を行っていたデルポイの巫女や、古代ローマのウェスタの巫女および神祇官も聖職者と見なして問題ないだろう。古代ローマの神祇官は Pontifex = 「橋を架ける人」と呼ばれており、その役割を良く表していると言える。また最高神祇官 Pontifex Maximus という称号はローマ教皇がそのまま借用している。
近代宗教
教典を備えた近代宗教の場合、教典や儀式についてある程度以上の知識を有する人が聖職者と見なされることが多い。正式に何かの位階を与えられていなくても、明白に聖俗が分かれている場合は出家して俗世間を離れた時から聖職者と見なされることもある。
神道
神道では、祭祀、祈禱をつかさどり、社殿や境内の守護、事務を行う者を総称して神職と呼ぶ。
神職には「階位」「身分」という区分がある。「階位」は(一定の階位までは)所定の研修を受けることにより昇進が可能である。「身分」の選考は、経歴・神社界に対する功績をもとに行われる。
また、その他に「職階」という神社内での役職順位があり、一般的には、宮司・禰宜・権禰宜が置かれている。神社の規模や由緒によって異なるが、原則として宮司・禰宜は各神社に1名ずつである。
かつて神職を務める官吏(公務員)を神官と呼んだが、日本国憲法施行以後、祭政の分離がなされており、現在では神官は存在しない。
なお、法的には巫女は神職には含まれない(女性の神職が巫女の役を務める場合はある)。巫女になるためには何の資格も必要ないが、神職になるためには資格が必要である。
仏教
仏教の場合、出家して僧侶となるかどうかが聖俗の境であり、キリスト教のように叙階されたもの(司教、司祭、助祭)と、ある種の厳しい戒律を守るもの(修道士)の間にあるような区別はない。この差を強調する場合、英語では修行僧をあえてmonkと呼ばずBhikkhu(比丘・比丘尼)と呼ぶことがある。
カトリック・正教会
カトリック・正教会では、聖書の解釈や典礼を指導する司教(主教)を中心として、司教に叙階され実際の儀礼を執り行う司祭、助祭(輔祭)までが聖職者という扱いとなる。現在は、副助祭(副輔祭)や(かつての)エクソシストは儀式に参加しても聖職者に含めないことになっている。入信や懺悔などの特別な儀式は司祭以上が取り扱う。また修道士(モンク)・修道女(シスター)は聖職者に含まれないが、修道士の中に修道司祭などの聖職者を設ける。
プロテスタント
プロテスタントでは「万人祭司」という考えを取っており、宗教儀式を独占的に執り行う聖職者は置かないこととなっている。ただし、神学を十分に学んだ者が教会に勤め牧師となるのが一般的であり、外部から見た場合はこれが実質の聖職者である。
イスラム教
イスラム教においても独占的に儀式を執行する資格を設けておらず、その意味では聖職者は不在である。ただし礼拝の“模範役”であるイマーム・カティブや拡声器で礼拝を呼びかけるムアッジンといった職がモスク専任で置かれており、入信儀式の受付から礼拝の司会、懺悔・人生相談の類まで扱っていることから、司祭に近い役割を持つ専任職員がいるとも言える。またイスラム圏ではイスラム法が法律であり、裁判官や教師の役となるカーディー、ウラマー、アーヤトッラー(シーア派)といったイスラム法学の専門家がいる。これら神学者とも法学者とも呼べる人々は外から見ても「聖職者」のボーダーラインである。
比喩としての「聖職者」
宗教とは関係が無い、あるいは薄い仕事でもその業務そのものに公共性が高く清潔・高潔である(べき)従事者を指して聖職者と呼ぶことがある。
実態はともかく。
関連イラスト
関連タグ
司祭 神父 修道士 シスター / 修道女 牧師 宣教師 枢機卿 法王 ローマ教皇 / ローマ法王
神職 / 神主 宮司 禰宜 祝人 (巫女 / 神子 / 巫覡)
聖職者と魔物 / 魔物と聖職者 魔物×聖職者 / 聖職者×魔物
同音異義語:性職者