学校において、生徒の間で自然発生する人気の度合いを表す序列を、カースト制度のような身分制度になぞらえたもの。
概要
「学校カースト」といえばアメリカの高校におけるそれが昔から有名であり、ハリウッド映画や学園モノの海外ドラマでも頻繁に登場するヒエラルキー表現だが、日本でも同種の現象が発生しているのでは?ということでこの名称が日本で作られた。
(当のアメリカでは単に「学校文化(スクールカルチャー)」と呼ばれている)
基本的に「運動神経が良い+容貌が美しい」ほど上位に位置づけられる。
アメリカにおける学校ヒエラルキーの順位
- ジョック (Jock):ピラミッドの頂点。イケメンかつスポーツ万能の帝王。アメフト部やバスケ部などで活躍する、校内のスターである。
- クイーン・ビー(Queen Bee):「女王蜂」の意味で、 所謂「学園の女王」。カリスマと美貌に恵まれ、多くの場合はチアリーダーを務める。総称はクイーンズ (Queens)。
- サイドキックス(Sidekicks):上のクイーン・ビーの取り巻き。
- プリーザー(Pleaser):女子の場合はクイーン・ビーおよびサイドキックスの取り巻き。男子の場合はジョックの子分。下の立場の者へのたかり (Please) を活発に行う。
- ワナビー(Wannabe):クイーン・ビーおよびサイドキックスの取り巻き。取り巻きながらも立場の上昇(サイドキックスへの昇格)を夢見る(ワナビー) 立場。
- メッセンジャー(Messenger):パシリ(キョロ充)。
- プレップス(Preps): 文科系の上位者。お金持ちのお坊ちゃま。
- ゴス(Goth):ゴスロリ。
- 馬鹿(Slacker):おバカ。
- ギーク(Geek):ヲタク層。
- ブレイン (Brain):ガリ勉。上の3つはナード(日本でいう「根暗・陰キャ」に相当)に属する。
- ターゲット(Target):いじめの標的。ナードに属するとは限らない。ゲイの子など。
- 不良(Bad boys&girls):不良少年および不良少女。※ランク外
- 不思議ちゃん(The Floater):図書館で司書したり一人で本を読んだりしてる子。※ランク外
なお、クイーン・ビーに関しては、上記の法則に加え、髪の色がブロンドの人が多いという法則があった。
しかし、多民族国家であるアメリカでは、両親が異人種である混血の子供も少なくないうえに、現在メキシコ系およびそれ以外の中南米系の移民の急増によりメキシコ系アメリカ人と中南米系アメリカ人が人口の2割を占めている現在のアメリカにおいては、この限りではない(両親ともにメキシコ系・中南米系のアメリカ人は無論、混血のアメリカ人でも生まれたときの髪の色は、原則黒もしくは栗色であるため。)
問題
アメリカ
1999年にアメリカで発生した「コロンバイン高校銃乱射事件」は、このスクールカーストが背景にあると考えられている。つまりカースト下位の学生が、カースト上位の学生に虐げられる・迫害される・踏みつけにされる毎日を送る中で、鬱積した不満・怒りが爆発し、カースト上位の学生を殺すという悲劇に至った。
アメリカでは、『異性にもてて、スポーツ万能で、トーク力が高くて、友達が多い人』というのが理想の人間像として、また理想の社会人像として求められる傾向がある。『個人の個性を尊重し、誰でも平等であり、誰にでチャンスはある』というのがアメリカのイメージかもしれないが、『隣の芝生は青く見える』というように、実際にアメリカで暮らしてみるとそうではないことも多い(「個性」はともかく、「平等」「チャンス」に関しては良くも悪くもアメリカが「実力主義=負け犬に発言権は無い」からと言える)。
また、「ナードは二流、負け犬である」と考えるアメリカ人も老若男女問わず少なからずいる。
つまり、カースト下位に置かれた若者は、社会からもそっぽを向かれる可能性も高い。
早い話が、『コミュ障とか、ぼっちみたいな根暗な人はアメリカ社会には必要ありません』と言われてるようなもの。
それらが上記のような凶悪事件の火種となってしまった。
しかしながら、こうした明確な差別がまかり通っていても、スクールカースト上位の人間たちが支配するアメリカ社会に挑戦しようとする、スクールカースト下位のアメリカ人も少なくない。
人気映画監督やシンガーソングライターの中には、スクールカースト下位に置かれ差別を受けた悔しさをバネに、ハングリー精神で這い上がった者も多い。
このため、アメリカ映画・TVドラマでは「スクールカースト上位に属していたような登場キャラクターは、作中では散々な扱いを受ける」傾向があり(特に監督がナードだったホラー映画などに顕著)これはスクールカースト下位に属していたアメリカ人のウケを狙ったものであることから、アメリカにおけるスクールカースト問題の深さが見て取れる。
補足
ちなみに、上記にあるとおり、ゲイもアメリカのスクールカーストではいじめの対象となる。
『多様なジェンダーを受け入れてる21世紀のアメリカではもうありえないでしょ。』なんて思う人もいるかもしれないが、21世紀が始まってから10年以上経った現在でも同性愛者とみなされた時点でアメリカ社会から拒絶される可能性も高い。その理由のひとつはアメリカではキリスト教が国民の間では圧倒的多数派であるが、そのキリスト教の宗派によっては同性愛そのものが悪と解釈されており、当然そういった宗派のキリスト教の教えに従い、同性愛は許されざる罪と認識しているアメリカ人も少なくないためである。
もうひとつは恋愛あるいは肉体関係を持つならやっぱり異性がナンボでしょってイデオロギーを持ったアメリカ人も老若男女問わずいるからである。
特にこれらは、田舎町および小規模クラスの地方都市にこれらの傾向が根強くなる。
これは日本より圧倒的に広い国土を持つアメリカでは、大都市部と地方との人的交流や情報交流が日本以上に困難であり、これによりこれらの地域では現在の日本の町村以上に閉鎖的で保守的であるケースもままあるためである。
そうなると、「キリスト教の教えは絶対。私たちの宗派では同性愛は悪だから、同性愛者が存在すること自体完全にアウトでしょ」とか「同性愛とかありえない。やっぱり、異性愛が普通っしょ」「ナードの連中って、ほんとに負け犬だよねw」などといった、はたから見れば封建的差別的あるいは古臭いような考え自体がその地域の価値基準になっていることが多い。
現実問題、上記のコロンバインの事件においても、事件の起こった場所が地方の町であったために、これらの価値観が学校内において公然と罷り通ってた上に、その学校の教師でさえジョックの生徒を優遇しスクールカースト下位の学生をないがしろにしていた傾向があったとされている。上記で記述したように、アメリカの地方ではいろんな人々と触れて、多様な価値観を理解共有する機会自体が乏しいため、教師ですら「マッチョで運動神経がいい男子生徒、容姿端麗な女子生徒こそが至高。それ以外の生徒どうでもいいわw」となっていたのである。
日本
日本の学校にもスクールカーストに似たものはあるが、アメリカのような明確なピラミッド構造ではない。異性からの「モテ」にはそこまで重きをおかれない一方、周囲から浮くことを嫌う集団主義がこれに絡んでくるので、より複雑な状況となっているためである。
2000年代中盤~2010年代序盤における考察では、いわゆる「コミュ力」が最重要視される傾向があり、たとえ美形でスポーツの実力もあり、一見した所トーク力があっても、自己中とみなされたり、空気が読めずにクラスの統制を乱す存在は、クラスの集団から排除される場合がある。具体例としては、授業の最中に挙手をして教師と議論するだけで、「目立ちたがり」、「生意気な奴」とみなされ孤立する可能性があるのである。このため場の空気が読める事とコミュ力はほぼイコールのような関係性だと推測される。
日本でも昔からこうだったわけではなく、「ネクラ」「ネアカ」が流行語だった1980年代の学校は、アメリカに似た様相だったと思われる。
スクールカーストがわかりやすく描かれている作品
- 「ブレックファスト・クラブ」
1985年公開のアメリカ映画。初めてこのヒエラルキー問題に切り込んだ作品として知られる。
- 「glee」
米FOXのTVドラマ。スクールカーストの最下層組である「ナード」を主役にしているが、上記のポジションに該当するほぼ総てのキャラが登場し、それぞれにスポットが当たる構成になっているので、参考になるかもしれない。
日本の特撮ヒーロードラマ。このヒエラルキーを明確にドラマ展開に取り入れられた。
劇中で明言されているのは「如月弦太朗:バッドボーイ」、および「大文字隼:キング(ジョック)」、「風城美羽:クィーン(クィーンビー)」の三人だけだが、他の生徒キャラも「歌星賢吾:ブレイン」等と当てはまる様に設定されている。
尤も弦太朗は学業的には落ちこぼであっても不良ではないのだが。
現代日本におけるこのスクールカーストシステムを、主人公の視点から客観的に考察するというテーマが盛り込まれている。
- 「HEROMAN」
本場のアメコミの超大物作家が原案・監修したアニメ作品だけあって、アメリカのスクールカーストシステム内で孤軍奮闘する主人公という一種のステレオタイプなアメリカ人主人公がこの作品に登場する。
スクールカーストっぽい作品
校則等で明文化しているので正確にはスクールカーストとは別物。進学校なら「特進クラス(特別進学学級)」とか普通だし。
日本ならではとして、一番偉いのはジョックではなく生徒会長な事が多い(尤も運動部に所属していないだけで、何をやらせても一番な事が多いが)。
進学校の落ちこぼれ組という設定上E組とそれ以外という形式でのヒエラルキー構造が明確にされており、クラス内外でそれぞれのポジションに属するキャラクターが数多く登場する。
生徒会長の鬼龍院皐月により、学園の生徒全員が「三ツ星(生徒会四天王)」「二ツ星」「一ツ星」「無星」にランク分けされており、その生徒の実力や功績に応じてランクが変動する。一ツ星以上の生徒には極制服と呼ばれる特殊な制服が与えられるほか、星の数によって生徒とその家族の生活水準にも明確な格差がつけられており、無星はスラム街だが、一ツ星はマンション、二ツ星以上は高級住宅街に住むことを許される。
アリス学園のルールのひとつ「星階級」。nothing、single、double、triple、specialの5段階。階級によって待遇(部屋、食事、解放など)が異なり、クラスメートの間でもそれが原因でいじめの対象にされることも。
主人公らが属する天之御船学園1年7組(幸福クラス)を除く1~3組、4~6組はそれぞれ勉学、スポーツの特進クラスであり、1年1組の担任は幸福クラスの存在を疑問視していた人物である。
この作品では、序列がギャンブルで全て決まってしまうぶっ飛んだ高校が舞台で、借金を抱えてしまうと、男子なら「ポチ」・女子なら「ミケ」と呼ばれるようになり、家畜もしくはそれ以下の酷い扱いを受けてしまう。学校を卒業してもその借金地獄からは逃れられず、「人生計画表」なる代物で、人生そのものを生徒会に支配されてしまう恐るべし作品である。