者演:ティモシー・スポール
吹替:茶風林
概要
ウィザーディング・ワールドの人物。魔法使いの男性。
ハリー・ポッター シリーズの主人公ハリーの父ジェームズの学生時代からの友人。
ハリーの両親をヴォルデモートに売った裏切り者のシリウス・ブラックを一人追跡するが、返り討ちに遭う。
彼は周囲にいたマグルたちと一緒に魔法で吹き飛ばされ爆死。指一本しか遺骸は残らなかった。
その勇気を讃えて、マーリン勲章(一等)を授与された。
真相
裏切り者はシリウスではなくピーター。
ピーターはマグルを巻き添えにして偽装自殺し、ネズミに変身して地下水路に逃げ込んでいた。
そしてスキャバーズとして魔法使いの旧家ウィーズリー家に何年もの間潜伏。
彼は不死鳥の騎士団のメンバーだったが、途中から死喰い人側のスパイに堕ちていたのだ。
外見
小柄かつ小太り。鼻が尖っており、どことなくネズミに似ている。
瞳の色は薄い。髪はくすんだ茶色でくしゃくしゃ。成人後は頭頂部が広く禿げている。
前述の通り指が一本欠けており、また後に手首から上の右腕を切り落とすも、銀色の義手が与えられた。
経歴
組み分け困難者
魔法力を持ったピーターは、ホグワーツ魔法魔術学校に入学。
スリザリンと熟考の結果、組み分け帽子はグリフィンドールと叫んだ。
なんと帽子は五分以上に及んでどちらの寮にするべきか考え込んでいた。
これは「ハットストール」(組み分け困難)と呼ばれる極めて稀な現象であり、ハリーが出会った数多の魔法使い中で困難者はピーターとミネルバ・マクゴナガルの二人のみである。
ワームテール
リーマス・ルーピンと友人となった後、彼の紹介のもとジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックとも親しくなる。四人はやがてマローダーズ(※)と名乗る。
(※強奪者。襲撃者。日本では悪戯仕掛け人と呼ばれることが多い。)
2年次にルーピンが人狼と判明すると、ジェームズやシリウスに助けられながらネズミのアニメーガスとなった。
その姿から彼は「ワームテール」とマローダーズ内で呼ばれるようになる。これはミミズの尾の意味で、ネズミの細い尾を虫に例えたもの。
学生たちの中心だったジェームズとシリウスを英雄視して崇拝していたようで、周囲からはシリウスの腰巾着と認識されていた。同時にマクゴナガルは「ジェームズやシリウスのようには絶対になり得ない子だった」と評しており、教師陣から劣等生と見做されていた。また本人も劣等感を抱いていた様子である。
裏切り者
卒業後はマローダーズの他メンバーやリリー・ポッターと同様に不死鳥の騎士団の創設メンバーに加わる。
しかし死喰い人からの威迫と勧誘に屈し、「死喰い人に通じるスパイ」となる。
そんな中、予言によりポッター家に危険が訪れると、アルバス・ダンブルドアはポッター家の居場所を忠誠の魔術により秘匿し、「秘密の守人」になろうとした。
シリウスはこれに反対し、自分が守人になると主張。ダンブルドアはその要求を呑む。
しかし実はこの後シリウスはピーターを守人にした。これはシリウスが「まさかピーターが秘密を握っているとは誰も思わないだろう」と考えた末のアイデアである。
そしてピーターはヴォルデモートにジェームズ、リリー、そしてハリーの居場所を割り、ハロウィンの惨劇とヴォルデモートの破滅が起きたのである。
その後、シリウスにポッター夫妻殺害幇助およびマグル12人殺害の罪を着せ、自身もシリウスに殺されたかのように指を切り落とすという偽装をして逃亡。以降、ネズミに姿を変えてウィーズリー家に潜伏し、魔法省と「ピーターがヴォルデモートを裏切った」と思う死喰い人の双方の追及を逃れる。
スキャバーズ
ウィーズリー家で「スキャバーズ」という名を与えられ、ペットとして飼われていた。
当初パーシー・ウィーズリーが飼い主だったが、1991年にロン・ウィーズリーがホグワーツに入学してからは彼が飼い主となっていた。
ロンがハリーの親友となり、ホグワーツでの寮でも同室になったことから、正体がバレる3年生までハリーの傍で生活していたが、ダンブルドアの監視下でハリーを殺す勇気はなく、彼に危害を加えることは一切無かった。
特に目立つことは何もしておらず、寝てばかりいた。そのためロンにはダメな奴だとぼやかれていたが、実は一度ハリーとその両親を侮辱したドラコ・マルフォイの仲間グレゴリー・ゴイルに突然激昂し、噛み付いている。
ドラコが口にしたのは「ハリーの両親もハリーと同様、親しくする相手を間違えたから死んだ」という旨の、痛烈な侮辱であった。
下僕の肉
3巻にてアズカバンを脱獄したシリウスと、ホグワーツで闇の魔術に対する防衛術教授に就いていたリーマスに正体を暴かれ、殺されそうになるが、「父の親友であるシリウスやリーマスを殺人者にしたくない」という理由でハリーに命を助けられ、その直後、一瞬の隙に逃亡。仲間と主君への恐怖心から、ヴォルデモートの下に走る。
4巻で三大魔法学校対抗試合に優勝したハリーとセドリック・ディゴリーをリドル家の墓に誘い出すと邪魔者であったセドリックを殺害、ヴォルデモートの父の骨、仇であるハリーの血、自身の右手を「下僕の肉」として捧げてヴォルデモートを復活させた。
この時、切り落とした腕の代わりとしてヴォルデモートから銀色の手を与えられる。実はこの義手にはピーターを元より信じていなかったヴォルデモートにより、ピーターの忠義心が揺らいだときに持ち主を絞殺するよう呪いがかけられていた。
以後、ピーターは再び死喰い人としてヴォルデモートに仕えた。
ちなみに、かつての友人たちからのあだ名であるワームテールとヴォルデモートと死喰い人たちからも呼ばれている。
ピーター・ペティグリュー
7巻のマルフォイ家にてハリーの首を絞め殺害しようとするが、かつて「ジェームズならピーターを殺さない」と言って自分を庇ってくれたハリーへの情が沸いてしまう。一瞬の憐憫、一瞬の躊躇いを見せ、その後はすぐにまたハリーを殺そうと思い直したものの、既に動き始めていた銀色の手に絞め殺され亡くなった。享年38歳。
このときハリーは銀色の手をひっぱったり、ロンはレラシオを使って助けようとしたものの叶わなかった。
なお、彼の杖はロンにより勝ち取られた。
ギャリック・オリバンダー製。ドラゴンの心臓の琴線。23.5センチ。チェスナット(栗)素材。
オリバンダーによれば栗の杖は「いくつもの側面を持つ、極めて興味深い木材である。この木で作った杖の性質は、使う芯の種類によって大きく左右されるうえ、持ち主の性格にも染まりやすい。」
また、栗とドラゴンの琴線が合わさると、「物欲が強くぜいたくを過度に好み、欲しいものは分別なく手に入れようとする者と相性がよくなる。」
総評
彼は無能なのか
寮監や主君からは散々な評価を受けているが、彼は愚かではあっても無能とは言い難いことが分かる。
- 友人の補助があったとはいえ、高等魔法である動物への変身に在学中に成功。その後は自在にネズミへの変身をする。
- シリウスに追い詰められながらも逃げおおせる。またマグルをまとめて12人殺し、彼にその罪を被せる。その際には自分の指を切り捨てている。
- 野生のネズミから情報を集め、アルバニアで零落したヴォルデモートと接触。
- 魔法省の役人バーサ・ジョーキンズに自分の正体がバレそうになった際、彼女を上手くまるめこみ「夜の散策」へ誘い、騙し討ちにする。
- バーテミウス・クラウチ・ジュニアとの共同戦線とはいえ、元最強の闇祓いムーディを抑え込み捕獲する。
- 不意打ちとは言え、強い魔力と殺意を必要とする「アバダ・ケダブラ」をセドリック・ディゴリーに浴びせ殺害する。
- ヴォルデモートからの指示があったといえ、肉体を蘇生する高等魔法薬を完璧に調合する。しかも、その過程で自分の腕を切り落とす。
このように彼には闇の魔術をはじめとする高等魔法を使いこなせる力、そして機転と決断力を土壇場で発揮できる精神力を持つ人物だった。
結局ピーターにポテンシャルがあるとは誰も見抜けず、臆病で小心者の劣等生と決めつけられ、教師や友人たち、恐らく本人ですら自身の底力に気づくことはないままであった。
ピーターは大切にすべき自分の小さな才知を、間違った方向へと使い続けてしまった。
残念なことに誰一人として良い方向に導き、伸ばすことができなかったのである。
グリフィンドールとスリザリンのどちらに組み分けされるか長時間組み分け帽子に思案させた「組み分け困難者」であるピーターは相当に複雑な人物であり、その根底には勇ましさと狡猾さが絡み合うようにして存在していたのだと考えられる。
グリフィンドールに入るに足る勇気をピーターが持っていたのか疑問をもつ者も多いが、土壇場だとしても並みの人間では「スパイ」「殺人」「計画的な自傷」を行うところまで振り切れるのは困難である。
(例えばスリザリン生として典型的なドラコにはなかなか出来ない真似だろう。)
それに、「差別を許さず、冒険好き」というグリフィンドールの特徴を体現するマローダーズの一員であったのは事実である。
そもそも、歴代のグリフィンドールからも闇の魔法使いは一定数輩出されているので、ピーターがグリフィンドールであることは不自然なことではない。
ピーターはハッフルパフに組み分けすべきだという読者もいるが、彼はハッフルパフとは迷われていない。徒労や埋没を恐れないハッフルパフと、憧れが屈折し闇に堕ちたピーターはかなり相性が悪いと思われる。
彼は悪なのか
友人たちを裏切り死に追いやった上、大勢の人間を殺害し罪を擦り付け逃亡し、学生時代からの友情を破壊した張本人であるピーター。彼が闇の魔法使いであることは間違いない。
また本来の性質が臆病で、強者に従属するという卑屈な部分もピーターが疎まれる理由となっている。
しかし、シリウスはジェームズとポッター家を守るためとはいえ、「俺はジェームズの為に死ねる」という信念(※)の元に、「友人ジェームズの命か、それとも自分の命か」をピーターに強要したことが正しかったのかは分からない。
(※まぁ、これはシリウスが収監と脱獄により情緒が不安定だった際の発言である留意すべきだろう。作者いわく、シリウスの情緒的発達は長期の投獄によって妨げられ、学生時代で止まっている。)
ジェームズやシリウス、リーマスが友人としてピーターと過ごしたのは紛れもない事実である。にも関わらず、ピーターを「おまえのような弱虫の、能無しを利用しようとは夢にも思わないだろう。」と断じてて守り人にしたのは、友人への態度としてはあんまりな扱いであると言えよう。
このようにシリウスがピーターのことを多方面から完全に見誤っていたのも悲劇が起きた原因のひとつであろう。しかもこの時シリウスとリーマスはお互いをスパイではないかと疑い合っており、ジェームズはリリーと蟄居中。学生時代は無敵だったであろう悪戯仕掛け人だが、もはや四人の友情全体にヒビが入り始めており、真っ先に崩壊したのがピーターだと考えることもできる。
闇側優勢であった当時の状況でアルバス・ダンブルドアや不死鳥の騎士団の仲間に相談する猶予があったのかは不明である。
結局、ピーターはヴォルデモートと死喰い人たちを恐れ、彼らに分があると判断して死喰い人に与してしまった。そしてリリーの犠牲によりヴォルデモートが破滅すると今度は死喰い人側からも追われる身となった。彼は以後、誰の仲間にもなれずに他者を欺き害していくことでしか生き残れなかったのである。
しかし最後はハリーの「君は僕に借りがある」という言葉を聞き、自分がハリーにかつて慈悲をかけられたことを思い出した。かつて友に抱いた憧憬や親愛、感謝はずっと心の底に残っていたのだと思われる。(ハリーの両親にしてかつて友情を結んだジェームズを侮辱された際の反応は何よりの証明である。)
上記のことからまとめると、裏切りは裏切り、殺人は殺人であり、ピーター・ペティグリューが自己保身に走った悪人であることは否めない。ただ、自らの死を恐れるのは人として当然な感情であるし、死に様も考慮すると邪悪な人間とは言い切れないだろう。
ヴォルデモートの登場により人生の歯車が狂ってしまった魔法使いの一人、とも言える。ヴォルデモートさえいなければ彼にもまた違った道があったのかもしれない。
余談
切り落とした指
ピーターが切り落としたとされる指は左右どちらのどの指かは原作では明確に描写はされていない。シリウスとの「英雄的対決」を評価されて授与されたマーリン勲章勲一等のメダルと共にピーターの母親のもとに送られている。
しかし映画版では左薬指の第二関節から先がない状態にある。結婚指輪を嵌める指というイメージ通り、左薬指は「愛の絆」を意味し、ピーターは親友たちの友情という絆を切り捨てたことの暗喩とも推察できる。
もう一人のペティグリュー
原作者J・K・ローリングの初期の下書きにおいて本編のシビル・トレローニーのポジションに相当する占い学の教授にイーニッド・ペティグリューというキャラクターが存在していた。
初期段階でこのイーニッドがピーターとどのような関係なのかは不明だが同じ苗字なので上述の母親、原作には登場しない姉妹や親戚の可能性がある。
またイーニッドは闇の魔術に対する防衛術の教授を担う設定も当初想定されていたようで、ハリーの四年次、六年次、そして七年次はリーマスと共同で担当する予定だった。
ネズミとヘビ
ピーターはネズミに変身する。対して、ヴォルデモートは、スリザリンのシンボルであり自らのパートナーである蛇に自分の顔を近づけている。蛇はネズミを食べるが、まさにヴォルデモートに出会ってしまったが故に人生が崩壊してしまったピーターの運命にはピッタリの喩えだろう。
関連タグ
属性が類似しているキャラクター
ネビル・ロングボトム……ハリーは三巻で初めてピーターの話を聞いたときに、ネビルと彼のイメージをダブらせていた。裏切りが露見する前のやり取りであるため「劣等生だがいざというときにガッツを見せる」という部分が彼と重なったのかも知れない。実際は多くの面で対照的な人間であったが。
ねずみ男……ねずみ、禿げた汚らしい見た目、強い者に媚び、自己保身と利益を優先して仲間を裏切る、善と悪の狭間を行き来する人物、戦闘力が低いように見えて実は強力な技を持つなどと共通点が多い。ただし、ペティグリューがヴォルデモートへの恐怖から永遠に仲間と袂を分ってしまったのに対し、ねずみ男は自ら平気でコロコロ寝返ることが多く、一方でたびたび鬼太郎側に舞い戻ったり時には仲間や惚れた女性のために動いたりもする。