ゾルタン・アッカネン
ぞるたんあっかねん
「誰が失敗作だ!誰が出来損ないだ!俺をバカにする奴はぁ!!」
CV:梅原裕一郎
概要
宇宙世紀0097年に、地球連邦軍が極秘で展開していた『不死鳥狩り』作戦に、ジオン共和国のモナハン・バハロ外務大臣が派遣した強化人間で、シャアの再来候補だった失敗作の1人。
精悍な顔つきに、右前髪のみを伸ばし他は剃り落としたモヒカンを連想させる特徴的な髪型、更には両目に傷が付いたオッドアイと特徴的な容姿をしている。ただしオッドアイについては生来のものではなく、赤い右目はサイコミュが内蔵されたサイコミュ・レンズという義眼であり、本来の右目は人体実験の過程で失われた。
このように、徹底的な強化人間施術を施されているようで、本人のコンプレックスも後押しして精神の安定性を著しく欠いているが、ピーキーなニュータイプ専用モビルスーツの性能をフルに発揮させる高いポテンシャルを、確かに身に宿している。
搭乗機はシナンジュ・スタイン、及びⅡネオ・ジオング(ハルユニット装備型)。
人物
奇抜な髪形や改造制服をまとい、母艦ブリッジにおいて鼻歌でアイネ・クライネ・ナハトムジークを口ずさむ、軍人としては非常識……を遥かに通り越している。
さしたる必要性が無くともスペースコロニー内で躊躇いなくビームライフルを「撃っちゃうんだなぁ、これが!」。民間人の犠牲などお構いなしどころか、撃つ自分ではなく避ける相手のせいでコロニーに被害が出ると主張し避けるなと要求。
さらにハルユニットのメガ粒子砲によってコロニー外壁をくり貫く、コロニーの燃料のヘリウムコアをまるごと爆破しようとする等、正真正銘の「鬼畜生以下」、「外道の極み」である。
しかしながらただの狂人ではなく、強化人間として弄り回され、さんざん弄った末に失敗作扱いを受けた末に、軍や世界への憎悪を煮詰めた独自のニュータイプへの解釈に至っており、高い知性を持ち合わせていることが窺える。
漫画版では喋る言葉がやたらとカタカナになるクセの強い喋りとなっている。
フロンタルというシャアの代わりを生み出す計画の一員であったが、失敗作として選ばれなかった。
しかし、そもそも失敗すると廃人化して完全に使い物にならないことも多い強化人間において、あくまでシャアの代わりは務まらないというだけであり、強化人間としては高い水準で完成している。このため、過去の強化人間の多くがそうであったように、「『強化』のためにかかった予算分は活用しなければもったいない」という思想によって、モナハン・バハロ外務大臣の“ジョーカー”として手勢に置かれていた。
実戦では完成版フロンタルと同様のシナンジュ及びネオ・ジオングを魔改造前のほぼ原型機の状態で運用するが、思想の違いもあるとはいえ、戦闘面に関しては完成版フロンタル以上に機体性能を活かしており、失敗作とされるがパイロットとしては劣っていないことを存分に見せつけている。
部下(という名目の監視役)であるエリク・ユーゴと共に、フェネクス捕縛のため、『袖付き』(正規軍ではなく過激派テロリスト)に偽装された機体と部隊を伴って、サイド6(旧サイド4)へと送り込まれるが、そこで半ばモナハンの予想通り暴走。多数の民間人死傷者を出す。
さらに現れたナラティブガンダムがエセファンネル使いの二流ガンダムであったために、失敗作だからテキトーな機体で相手にされてると勝手に激怒。
一連の凶行とⅡネオ・ジオングの起動が引き金でフェネクスを呼び出すことには成功……するのだが、ハルユニットをナラティブにジャックされる等完全に蚊帳の外に置かれてしまう。
一連の失態、というよりもフェネクス鹵獲のための陰謀にモナハンが関与していることが露見しそうなことによる尻尾切りとして、ジオン共和国に切り捨てられる事となるが、盗み聞きでそれを知ったことでエリクを殺害、Ⅱネオ・ジオングで脱走兵となり、ジオンも連邦も関係なく宇宙全てをパーっと楽にしてやろうと暴走していく。
この際、「失敗作でも見捨てられれば傷つく」「生真面目が馬鹿を見る」等、弱音とも言えるものを吐露している。
しかしながら、ゾルタンをここまで破滅的思考の暴走へと至らせたのは元はジオン共和国であり彼は加害者であると同時に「ジオンの抱く『シャア・アズナブル』への妄信とも言える理想」の被害者とも言える。
実際、「ジークジオンだの、サイド共栄圏だの、くだらんお題目のために全てを犠牲にしてきた」と恨みを吐露している。
フル・フロンタルはジオンの相違の器として自分で考えず政治家の言いなりとなりサイド共栄圏を実現するための人形であり、ゾルタンがどれだけ強化人間として優れていようとも、このように自我を捨てていないどころかジオンに反感を持っているとあれば、失敗作とされたのも妥当なことだろう。
あくまでゾルタンは「政治家に都合の良いシャア」になりきれなかった、という政治家から見ての失敗作である。
また、自身を産んだニュータイプ研究について「よくわからないで人の頭をいじるから事故だって起きる」「宇宙に上がって100年足らずでそんな進化は夢見過ぎ」「オールドタイプは現象だけを見て理解しようとしない」等、極めて否定的な主張をしている。
事実として、アムロ・レイをはじめとするニュータイプと呼ばれる人々はジオン・ズム・ダイクンの提唱した人類の進化と言うよりは超能力者の類に近く、ララァ・スンのように地球出身で「宇宙への適応した進化」と呼ぶには無理のある事例も多い。しかしアムロの戦果やアクシズ・ショックといった「結果」だけを見て、強化人間やユニコーンガンダムが生み出され、ニュータイプは「時間をかけた進化」ではなく「科学で実現できるであろう強制進化」に至ったのが、ゾルタンの生きてきた時代である。
同時代、サイアム・ビストとスベロア・ジンネマンの会談等においても、同様に「人々がニュータイプと呼ぶ存在は、ダイクンの提唱した者とはかけ離れてしまった」ことを指摘されている。
そのずれを文字通り身をもって体感してきた結果として、ニュータイプやジオンを通し破滅的な否定へ至るのは致し方ないと言える。
一方で、連邦軍側で同様に弄り回された末にサイコミュと同化し人としての存在を失ってしまったフェネクス=リタ・ベルナルに対しては、同じような境遇として共感や同情に似た感情も見せている。
一連の凶行や立ち振る舞いは自らをオモチャのように弄んだ時代や世界への復讐としての暴走が目立つが、一方で「このままでは自分やリタのような人間が切り刻まれ続ける」と、自分達のような犠牲を終わらせたいという想いも吐露している。
ゾルタン自身、映画版では省略された過去エピソードでは、志願ではなく戦争で自分以外が死んでしまったコロニーの「奇跡の生存者」として一方的に期待され改造された、リタとの類似性もある被害者としての側面を持っている。
おこなった行動は肯定できるものではないが、その動機や考えそのものには充分な正当性があり、言うなれば「ニュータイプや強化人間を発展させたい研究者や政治家にとっての、最大の失敗作」と言える。
余談
サンライズ小形プロデューサー曰く「(原作版フル・フロンタルを意識した)勧善懲悪キャラ」、吉沢監督曰く「頭の中に小学5年生がいる」「スタッフのお気に入り」、福井氏曰く「メカニックが肩ぶつけただけでも半殺しにしちゃう」…とメインスタッフからとてつもないキャラと紹介されており、宇宙世紀どころかガンダムとしては珍しくシャアに代表されるクールなライバルキャラではないことに驚きを隠せないファンがいた。
しかし公開後、鼻歌と乗機に見捨てられ嘆く奇抜なキャラとともに、その奇行と残虐さも強化人間の悲哀さから来るもの、そして主人公3人の写し鏡とも言えるキャラクター性のおかげで、早くもガンダムNTの中で1、2位を争う人気キャラになっている模様。
ついには公式動画『ゾルタン様の3分でわかる宇宙世紀!』のナレーションを担当するまでに至った。
この動画では「こいつら暑苦しくてダメ!このお姉さんは怖すぎてダメ!こいつは赤い彗星なのに黄色かったからダメ!じゃ!ってんでセルフパロディすれすれのこいつが出てきたけど!」と歴代ジオン残党勢力中心人物に(半分ネタ混じりの)容赦ないダメ出しを下す(しかも「四字熟語に詳しい」「俗物アレルギー」「やっぱりこの人のせい」「名前は和訳しない方が良い」と一言添えてある始末)どころか、「ガンダムの事を話し出すと早口になっちゃうおじさん達」というメタ発言や、「これ別のアニメじゃないの!?」という公式による自虐とも過去作のオカルト要素が忘れ去られている事に対する皮肉ともとれるネタまで言いたい放題である。
公開後、Twitterでは早速「ゾルタン様の3分」がトレンド入りしたのだった。
年が明けてもぉ、ロングランヒットしちゃうんだなぁ!!これがぁ!!
関連項目
宇宙世紀作品外
フロスト兄弟 - 『機動新世紀ガンダムX』のキャラクター。同じく自身の能力を認められなかった故に世界を破滅させようとしたライバルキャラたち。ただしこちらは、特異な能力を認められなかった異能者というだけで精神操作等は施されてはおらず、それ故に強化人間特有の精神の不安定さは見受けられない。
ラウ・ル・クルーゼ - 『機動戦士ガンダムSEED』のキャラクター。同じく似せて造られた存在(クローン)であり、身勝手に自分たちのような人間を造っては捨てる世界を憎み、その滅亡を望むようになる。属する国家の大義名分に一切興味がない点でも共通している。なお、パーソナルカラーも白で、かつCV池田秀一のキャラクターと深い縁がある。なお、スーパーロボット大戦30でのゾルタン相手への特殊戦闘台詞はクルーゼ相手に近いものが多い。
ガンダムシリーズ外
クロキ・アンジュ - スーパーロボット大戦30で共演した「ある意味シャアやフロンタル以上にゾルタンの存在を否定する」キャラ。スーパーロボット大戦30でのゾルタンは様々な作品のキャラに特殊戦闘台詞があり、その大半が破滅的な怒りだがアンジュを始めとする銀河機攻隊マジェスティックプリンスのキャラに対しては悲痛なまでの本音をぶつけてくる。もし、ゾルタンも育った環境が違えばアンジュの様になれたかもしれない。