概要
「ゼルダの伝説シリーズ」としては初の携帯ゲーム機タイトル。
ストーリー上は『神々のトライフォース』の続編にあたる(ゼルダの伝説大全より)。
「ゼルダの伝説シリーズ」としては外伝的なストーリーであり、地下に潜ればPックンフラワーが登場したりダンジョンで星のKビィが現れるなど任天堂の他のゲームタイトルからのゲストキャラクターやパロディをふんだんに取り込んでいる。
「ゲームボーイのタイトルとして最高のものを作る」という目標を掲げ製作された本作は、ハードウェアでの表現力を補うべく「ゼルダの伝説シリーズ」としては珍しくストーリーに力が入れられている。コミカルで賑やかな世界観と切ないストーリーに根強いファンがいる。
一癖も二癖もある個性的な登場人物が数多く登場する、というその後の『ゼルダの伝説』シリーズの雰囲気に大きな影響を与えている。
また、初めてゼルダの伝説シリーズでゼルダが出て来ない作品でもある。
1998年にゲームボーイカラー対応ソフトとして『ゼルダの伝説 夢をみる島DX』が、2019年にNintendoSwitch対応ソフトとしてフルリメイク作が発売された。
※初代CM
やたら明るい人形劇のようなCMとは裏腹に、単純な勧善懲悪ではなく、主人公の行いが「善」なのか「悪」なのかプレイヤーに問いかけるような結末をむかえる。そのため幼少期に本作をプレイした人の中にはトラウマに近い衝撃を受けた人もいるらしい。
※Switch版CM
風のさかなの歌
Switch版では「かぜのさかなのうた」に歌詞が当てられ、本作のテーマを反映したかのような切ない雰囲気を前面に押し出している。
歌唱はシンガーソングライターの青葉市子。
ちなみに名前入力はひらがなでしか入力できない。ただしSwitch版ではカタカナ入力が可能。
プロローグ
魔王ガノンからハイラルの平和を取り戻したリンク(※)は、新たな災いにそなえて修行の旅に出た。異国での修行を終え、ハイラルに向かう航海の途中、リンクの乗る船は嵐に見舞われる。雷に打たれ、彼は意識を失ってしまう。
「あっ!気がついたのね。よかった!」
リンクは少女の声で目を覚ます。彼女の名前はマリン。マリンによると、ここは高くそびえる山の頂上に巨大なタマゴを抱く不思議な島、コホリント島。リンクはその海岸に流れ着いたのだ。
リンクは落としてしまった剣を探して、自分が漂着したという海岸に向かう。そこで出会った1羽のフクロウがリンクの姿を見て謎めいた言葉を告げた。
「ホホウ、なるほどなるほど。魔物どもが暴れ出すわけぢゃ。かぜのさかなの目覚めを告げる使者が現れたのぢゃからな」
フクロウによれば、『かぜのさかな』を起こさぬ限り、リンクはこの島から出られないと言う。
果たして『かぜのさかな』とは何なのか。リンクは無事にコホリント島を脱出し、故郷ハイラルに帰ることが出来るのか。島に隠された謎をめぐって壮大な冒険が始まる。
(※)…正確には取り扱い説明書のストーリーでは「あなた」表記。
登場人物
リンク |
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主人公。コホリント島から出るべく風のさかなを目覚めさせる『目覚めの使者』としてセイレーンの楽器を集める。神々のトライフォースのリンクと同一人物。 |
マリン |
ヒロイン。コホリント島に漂着したリンクを助けた心優しい少女。歌をうたうのが大好きで、島民からも人気があるなどアイドル的存在。リンクがゼルダ姫と見紛う容姿をしている。 |
シリーズにおいて初めて登場したゼルダ姫以外のヒロイン。 |
タリン |
画像中央下の中年。マリンの父親(GB版の取扱説明書より)。のんびりした性格で熱狂的なキノコ好き。 |
フクロウ |
主人公の行く先々に現れる謎の存在。次に進むべき道について示してくれる。 |
アイテム
装備アイテムに関しては前作神々のトライフォースから引き継いだものがほとんど。
ロック鳥の羽根
ジャンプができる。唯一の新規アイテムにして数々の謎解きに使用する最重要アイテムと言って過言でない。
さらに今作ではジャンプ中の攻撃判定が見た目通り上方にずれるために上に壁を挟んだ敵をノーリスクで攻撃できる・斜め移動がちょっと速いといった便利な仕様(あるいはバグ)もある(ふしぎの木の実では修正されてしまった。残念)。
とりあえず何もなければ装備はこれと剣が安定である。
オカリナ
前作神トラとは異なり、複数の効果の異なる曲を選択して吹くシステム。次作時のオカリナにも引き継がれた。
装備時に選択肢が出るので邪魔である。
盾
今作ではシリーズで初めて明示的にボタンを押して使うようになった。
一部の謎解きには使うものの、大抵他の必要なアイテムに押され装備されない。影の薄いアイテムである。
ブーメラン
ある場所で装備品と交換でブーメランが入手できる。スコップの活躍が終わった頃にスコップと引き換えにする人が多かった。
アイテムコンボ
本作ではボタンの少なさから他機種のような剣ボタン・かつぐボタンのような固定機能はなく、アイテムを自由な組み合わせで2つ装備できる。
いくつか特筆すべき組み合わせがある。
★竜巻斬り
ロック鳥の羽と剣のコンボで、ジャンプ中に溜めを放って回転斬りを繰り出す。後にソードカービィも、同名の酷似した技を使えるようになった。
★ダッシュ突き
剣とペガサスの靴のコンボで、走りながら突きをお見舞いする。これでしか倒せない敵もいる。
★ダッシュジャンプ
ペガサスの靴で走りながらロック鳥の羽根でジャンプ。3マスの穴を軽々と飛び越す。
★爆弾の矢
弓矢と爆弾をAボタンかBボタンにそれぞれ割り振って装備すると、ABボタン同時押しで矢の先に爆弾を装着した爆弾の矢が発射される。
発射のコツは、爆弾を置いてすぐに矢を放つこと。
矢と爆弾を両方消費するが、通常の矢を遥かにしのぐ攻撃力になる。
また、着弾後すぐに爆発するので、早く壁を壊したりすることもでき、爆弾単体で使うよりも敵に逃げるスキを与えにくい。
溶岩の先の壁を壊すことで通常想定されていないと思われるルートでのダンジョン攻略も可能。
名所案内
- 島の図書館___島で唯一の図書館。必ず、一度は訪れることになるだろう・・・。
- 夢の祠(ゆめのほこら)__…メーベの村に存在する謎の多い祠。島の住人たちの間で知られているが、誰も内部を確認していないらしい。
- 看板の迷路___同じ任天堂のゲームで主人公が見た夢を舞台にした作品である『スーパーマリオUSA』のマムーが設営したアトラクション。
- 『いま流行りのゲーム』__いわゆるクレーンゲーム。夢をみる島よりも遥か未来にリリースされた『バッジとれ~るセンター』のパロディとの噂。
- どうぶつ村___動物たちの暮らしている村。夢をみる島よりも未来にリリースされた『どうぶつの森』のパロディとの噂。
- きまぐれトレーシーのお店___元気になれるヒミツを売っているとされるお店。
- いりえのいえ___マーサの入り江にある、無人の家。誰の家だったのだろうか。漫画版では補足されている。
- 貝殻の館___手持ちの秘密の貝殻に応じてアイテムが手に入る。
夢をみる島と夢をみる島DXの違い
夢をみる島(以下、無印)と夢をみる島DX(以下、DX)には違いがある。
隠しダンジョンの追加
DX版では、隠しダンジョンが追加された。場所は、島の図書館にヒントがある。
ただし、ダンジョンに入るには、色を認識できるゲームボーイカラーもしくは、ゲームボーイアドバンス(ゲームキューブのゲームボーイプレイヤー含む)でプレイしなければならない。
通常のゲームボーイもしくはスーパーゲームボーイでプレイすると、ダンジョンの入口で通せんぼされてしまう。またマリンなど他のキャラクターを連れた状態でも入れない。
内部はゲームボーイカラーの特性を生かした、色のついた仕掛けのダンジョンになっている。
BGMはゼルダの伝説1のダンジョンのアレンジになっている。
このダンジョンをクリアすると、『色の力』が手に入る。(入手しなくてもクリアは可能だが、すこし戦いが楽になる)
写真屋
写真スキスキ! 写真屋さん!
いろいろなシーンで撮影してくれる写真屋さんが追加。もちろんあんなシーンもな……。
またマリンとのイベントも追加されており、像の前で写真を撮ったり、岬で一緒に海を見るシーンがある。
バグ関連
無印ではバグによってハートの器が無限に入手できてしまう他にバグったエリアに行けてしまう等の不具合があった。
その為、カラー化かつバグを修正してゲームボーイカラー以降の機種でのみ出現する追加要素があるDXがリリースされた。
無印にはバグがある為か、ソフト書き換えサービスのニンテンドーパワーではDXがラインナップに入り、以後のバーチャルコンソールでもDXのみが配信となっている。
その為現在無印版をプレイするには中古で入手かつゲームボーイアドバンスまでの機種を用意する必要がある…のだが?(後述)
余談
かぢばあたるの漫画版(後述)で見られたいくつかの独自展開は、DXにて表現を変えて描かれている。
「リンクとマリンが二人きりの時にタリンが現れてお邪魔虫になる」→写真撮影のイベント。
「リンクがオバケ(ナクラ)と仲良くなる」→写真撮影のイベント。
「リンクとマリンが海辺にもう一度足を運んで二人きりで話をする」→岬での隠しイベント。
隠し要素
名前入力で「とたけけ」「ぜるだ」と入力すると…それぞれ異なるBGMが流れる。
ちなみにドイツ語版は「MOYSE」と入力すると日本語版にないBGMが流れる。
なお、スイッチ版では「とたけけ」「ぜるだ/ゼルダ」は勿論のこと新規BGMが流れる名前がある。その名前は砂浜に倒れたリンクを発見した人物の名前である。ひらがなでも可。
リチャードの別荘の中で何もせずにひたすら待っていると…これまた隠し曲が。ちなみにリチャードの原作である「カエルの為に鐘は鳴る」でも全く同じ方法で聞ける場所がある。
26年の時を経て
2019年2月14日のニンテンドーダイレクトにおいてニンテンドーSWITCHで夢をみる島のフルリメイクが発表された。内容はDX版をベースにしている。
キャラクターやオブジェクトのすべてが「おもちゃ」をモチーフにしたCGで作られているのが最大の特徴で、見た目的には某ピクサー映画のような印象をもたらす。そしてゲーム中は精巧なジオラマでブンドドをしているような独特の雰囲気を味わえる。
初代GB版のCMの人形劇の雰囲気をそのままゲームに落とし込んだ感じと言えるかもしれない。
使いづらかったUI周りについてはさすがに現代的に改善されており、特にボタンが増えたことで剣と盾は常備装備となり、「それ以外」のアイテムをボタンに配置することになった
(初代やDXでは剣も盾も他のアイテムも同じ扱いで、剣と盾のどちらかを外さないと他のアイテムは使えなかった)
リメイクに伴ってラスボスの最終形態に新規BGMが追加された(今までは中ボス戦のBGMだった)。またラストバトルのフィールドも「海」を想起させるデザインに変更されている。
隠しボスにシャドウリンクが登場。
「リンク【夢をみる島】」のamiiboを読み込むとダンペイからシャドウリンクの+チップがもらえ、パネルダンジョンでこれをセットした部屋で戦える。
ゼルダの伝説35周年記念ゲーム&ウォッチ版
なんと、2021年E3でのダイレクトで「ゲーム&ウォッチ ゼルダの伝説」に「ゼルダの伝説」「リンクの冒険」と共に「夢をみる島」が収録される事を発表。しかも長年バーチャルコンソールにすらされなかったオリジナル版。…ただし、バグまで再現されるのかは不明。
漫画版
1994年にGファンタジーにてかぢばあたるによるコミカライズ版が連載された。
詳細は該当記事にて。
他にも『別冊コロコロコミック 1993年10月号』に藤赤正人による読み切りが掲載されている。内容としてはゲームで言う冒頭とカメイワでの決戦に焦点が当てられており、捕まったマリンとタリンをリンクが助けに行くというもの。戦いが終わった後、リンクはマリンから風のさかなを目覚めさせるように告げられ、「心優しい本当の勇者」として見送られた。
マリンの性格や言動がお姫様を思わせるものなのも特徴。
これ以外にも当時の4コママンガ劇場にて夢をみる島の内容が掲載されていたり、DXの発売に合わせて4コママンガも発売されている。
関連イラスト
あれこれ
オリジナル版 | DX | 3DSVC | Nintendo Switch | |
---|---|---|---|---|
機種 | ゲームボーイ | ゲームボーイカラー | ニンテンドー3DS | ニンテンドースイッチ |
ジャンル | アクションアドベンチャー | 同左 | 同左 | 同左 |
発売日 | 1993年6月6日(日) | 1998年12月12日(土) | 2011年6月8日(水) | 2019年9月20日(金) |
価格 | 3,800円+税 | 3,500円+税 | 600ポイント | 5,980円+税 |
販売元 | 任天堂 | 同左 | 同左 | 同左 |
CERO | B(12歳以上対象) | B(12歳以上対象) |
関連タグ
とたけけ - 今でこそどうぶつの森の白い犬のキャラクターであるが、夢をみる島では「猿」である。ちなみに今作で名前を「とたけけ」にすると・・・?
ふしぎの木の実…システム関連が夢を見る島を流用している。当初、この真の結末が夢を見る島のプロローグに繋がるとされていたが、現在ではその設定はシリーズの系譜では変更されている。
FF10:本作を思わせる設定・展開が散見される。
外部リンク
この先ゲームの重大なネタバレ記載に付き閲覧注意
コホリント島の真実
ユメがさめたら アワになる
マモノもみんな アワになる
だからマモノは じゃまをする
めざめのししゃの じゃまをする
コホリント島は地図に載っていない。決して載ることはない。
コホリントに住む人々、コホリントに巣食う魔物、そしてコホリントという島そのもの。それらは全て『かぜのさかな』という神が見ている夢から生まれた世界なのである。そして、『かぜのさかな』が目覚めるとき、それは、島が泡となって消えてなくなるときなのである。
いつしか『かぜのさかな』は、自分が見ている悪夢に囚われて目覚めることができなくなってしまった。やがて悪夢はマモノたちを生み出し、その中でもシャドーと呼ばれる個体は『かぜのさかな』に永遠の眠りを与え、人とマモノが共存するコホリント島という秩序を築いていた。
永遠に眠り続けることなど望んでいない『かぜのさかな』は、この悪夢から脱出するため、航海中に雷に打たれ意識を失って海に沈んだリンクと夢を共有。リンクをこの世界を破壊する「目覚めの使者」として取り込んだのだ。
リンクがこの島に招かれた本当の理由は、島を救うためではなく、住人もろとも消滅させるため。
神の見る夢から生まれたマモノたちは、だからこそ必死になってリンクの邪魔をするのである。
な、なぜだ!キサマがこなければ なにも、かわらぬものを・・・
これがさいごだ! こぞう! きえるのは、キサマだけでよい!
だがよ、オメエも消えるのさ。
かぜのさかなが起きちまえばな
オメエもオレさまと同じ
ヤツの夢……だ、か、ら、な……
消えてしまう……こわれてしまう
我らの島が、我らの世界が
……わ れ ら の し ま……
……わ れ ら……
今までのシリーズのように「世界を救う」のではなく、「自らの悪夢に囚われた神を解放する」という目的のために「世界を滅ぼす」という異色作となっている。しかし、真エンディングを見るとまた別の見方ができる。
「夢の世界に生まれた一人の少女を現実世界へと羽ばたかせる物語」とも言える。「彼女」は消えたのではなく、救われたのだと思わなければプレイヤーとしてもやってられないだろう……。
その設定からか、同じ任天堂のゲームで主人公が見た夢を舞台にした作品である『スーパーマリオUSA』のマムーが出てきたり、主人公の心の世界である『MOTHERシリーズ』のマジカントやかつて存在したコンテンツのポケモンが見た夢を扱ったポケモンドリームワールドと比較的似ていたりする(しかも前者は完全クリアの為に8つの物を集める点まで共通している)。
もう一つの関連タグ
リンクの冒険:本作と同じく永遠の眠りにつかされた者を目覚めさせる物語。
更に乱丸のコミカライズ版では、ゼルダ姫を目覚めさせる道程で多くの犠牲が出ており、リンクもまた仲間たちを失っている。物語の終盤ではダークリンクがそのことを引き合いに出し「これでもまだ守る物があるのか!? まだお前をささえる物があるというのか!?」とリンクのみならず読者の心情まで揺さぶる発言をしている(要約すると「大切な者たちを失った今の世界を守る価値があるのか?」「多くの犠牲が出たのにゼルダ姫を目覚めさせる意味はあるのか?」と言っている)。
「多くの犠牲を出してまでその役割を果たす必要があるのか?」という問いかけの部分は本作のコンセプトとよく似ている(「大切な者たちを失ってでも今の世界を壊す」という逆のコンセプトでもある)。ちなみにダークリンクは上記にもある通りSwitch版にて登場を果たしている。