「俺はお前を倒して、唯一無二のヒーローになる……!!お供もいらない……俺一人で十分だ!!」
「ドンモモタロウ…やはりお前は邪魔な者……」
「違うぞ!ヒトツ鬼はこの俺が倒すべきもの···」
演:石川雷蔵
概要
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の登場人物である桃谷ジロウに隠されたもう一つの人格で、通称「危ないジロウ」。
こちらの人格が表に出ると、ドンドラゴクウではなくドントラボルトに変身するようになる。
彼は元々臆病な自尊心と尊大な羞恥心を持つ問題人物だが、自分が思い描く理想のヒーロー像を(直接間接問わず)否定されると、それが一気に臨界点を超え、明確な別人格として発言する。
その正体は、恐らくタロウへの憧れと尊敬の延長線上か裏にある「嫉妬や嫌悪等の負の感情」。
それがだんだん膨れ上がった結果、ひとつの人格として形成され闇ジロウになったと思われる。
また、素でも「処刑」などのサイコパス発言をするが、もしかすると闇ジロウの部分が小さく染み出ているのかもしれない。
資料によっては「闇のジロウ」と表記されることもある(例・『てれびくん』2022年9月号p49、小学館)。
人物像
極めて凶暴でドンブラザーズのメンバーにも容赦なく攻撃を仕掛けるなど、まさしく戦闘狂を体現したような存在。タロウを敬愛する通常のジロウとは逆で、とことんタロウを毛嫌いしている。
声も普段の明るい喋り方でなくドスの効いた口調になり、外見も白い羽織を纏うようになり顔に隈取りがつく。
また、時折首を鳴らす仕草を見せる。
『欲求不満や願望を拗らせた末に、暴走する』というその行動概念は、本来ドンブラザーズが討伐すべきヒトツ鬼と本質的に同じであり、これもまた一種のモンスターより人間の方が、生々しくて怖い…といえよう。
後にドン29話で、実は元々の本人格は、この闇ジロウの方だったことが発覚する。
何者も寄せ付けない唯一無二の存在になることばかりに囚われていたが、ルミを始めとした幼馴染達との交流を経て、彼らとの友情を育んだ結果、誰かに寄り添おうとする気持ちが芽生え、それが現在のジロウの人格誕生に繋がったのだった。
ジロウとの邂逅、その影響
下記のドン23話でジロウの体から分離して実体化、ジロウと「邂逅」。互いに心の奥底に秘めた本質をさらけ出し合い、流れで(結構大雑把だが)共闘。
以降は再びジロウの体に戻るが、戦闘狂な一面は相変わらず。
だが本質を理解し合った影響か、ジロウに体の主導権を奪い返されやすくなった。
また何らかの条件が満たされるとジロウから分離する(ジロウが変身しているとドントラボルト状態で分離する)。
さらに少しずつでは角が取れてきたのか、あるいは純粋にジロウの闇として分離し元のジロウに混ざっていた感情がなくなったからか 「邪魔なドンブラザーズを排除し、タロウを消して唯一無二のヒーローになる」 から「ただひたすらタロウを越える」ことに固執するような言動や行動が増え、虎龍攻神の合体時にはじたばたもがいて逃げ出そうとし、(半ば強制的に合体後)ジロウから「ハウス!」と諌められて渋々諦めるなど(本人は狙ってないであろうが)、ジロウと若干コミカルなやりとりをするようになった。
さらに下記のドン27話ではジロウが自らドントラボルトにチェンジしてくると任されたように敵を蹴散らし、ドン25話や28話では自ら顕現して助太刀したりするような言動や行動をするなど獰猛な一面はそのままに、ジロウの成長にともない少しずつ性格が軟化してきている。
活躍
ドン16話「やみおちスイッチ」
他のメンバーから鬱陶しがられ、タロウにも「後継者」である事を否定され「お前はお供だ」と言われた事で初めて表に出現(見た目は変わっていない)。何故かホラー染みた雰囲気且つタロウが悪役になっている内容に改変した桃太郎を空読みしながらメンバーを夜道で襲撃し、ドンブラザーズの証のサングラスを奪って変身不能にする暴挙に出る。
「むかーーし、むかーし、あるところに···おじいさんと おばあさんが 住んでいました。
おばあさんが川で洗濯をしていると···大~きな桃が流れてぇ···きました。
桃の中からとても汚い赤ん坊が出てきました。
タロウです。
仕方な~~くおじいさんとおばあさんは···タロウを育てました。
やがてタロウは、わがままで乱暴な青年に成長しました。」
更に翌日、恐竜鬼と戦闘中のドンモモタロウの前に現れ、ドンブラザーズの力を全て奪って自分が唯一のヒーローになるべくタロウを襲撃。
「傲慢なタロウにおじいさんとおばあさんが困り果てているとき、天から真のヒーローがやってきました。
ジロウです。
ジロウはタロウを成敗しました。
めでたし めでたし···。」
イヌブラザー、サルブラザーに連続変身してタロウの攻撃を封じつつ立ち回ったが、乱入して来たキジブラザーに妨害され、はるかの平手打ちを受けてしばらくなりを潜めるが…。
ドン20話「はなたかえれじい」
暴次郎戦隊ドラゴンファイヤーズとして大活躍し、すっかり天狗になっていた所にマスターから「実は隠れてタロウが手助けしていた」という事実を聞かされたことで、プライドを傷つけられて絶望し再び出現。以前よりショックの度合いが大きかったため、完全に顕現したらしく闇ジロウの姿となった。
今度はドントラボルトに変身しドンモモタロウを襲撃するが、戦闘の邪魔になるという理由から五星鬼にターゲットを変更し撃破。再びドンモモタロウに襲いかかるが、当人はドンオニタイジンに合体するところだったため、軽くあしらわれた。
巨大戦の後は、ダイレンジャーのアバタロウギアが変化したキバレンジャーアバタロウギアを手にしていたが、その後の動向は不明。
ドン21話「ごくラーメンどう」
獣人に襲われたアノーニを救う為に現れたドンムラサメに喧嘩を売る形で登場。
今回は登場と同時に闇ジロウの姿を見せていたが、ムラサメとの交戦後、彼との戦いから何か感じられるものがあったようで、「なぜだ…?やつの悲しみが伝わってくる」と、発言した。
ドン23話「イヌ、いぬになる」
獣拳鬼と戦う、翼を欠いたドンブラザーズの加勢にジロウが駆け付けた際、唐突に彼の体を抜け出して分離。
『これが...まさか...もう1人の僕!?』
ジロウと対面し、互いに 「お前は桃井タロウを敬い過ぎている···。だからタロウを越えることができない」「感じます···君はタロウさんを嫌い過ぎている」と本質を理解。
しかし、互いに心の奥底をさらけ出しジロウが拒絶するでもなく「でも、僕には君が必要だ」と素直に受け入れたからかそれ以上いがみ合うこともなく、同時にアバターチェンジすると獣拳鬼へ襲い掛かり、そのままドンロボボルトへとチェンジするとさらなる猛攻を加える(ジロウと異なり狙いがかなり大雑把)。
獣拳鬼ングが出現した後もそのまま攻撃を続行しようとしたが、ジロウ/ドンロボゴクウに捕まりそのまま虎龍攻神への大合体を果たした。
- ドン24話「むすこ、ににんばおり」
ジロウに憑依した状態でドンブラザーズを蹴散らしながら忍者鬼との戦いに乱入するも、ジロウに自分の意思で主導権を奪い返される。
その後ドントラボルト状態で分離し、ジロウに 「足を引っ張っているのはお前だ」 と指摘。ジロウも「わかっています···ここが名誉挽回です!」とドンロボゴクウ、ドンロボボルトにチェンジ。
共に虎龍攻神となって出撃し、忍者鬼ング戦へ。新技「トラドラ奥義 虎抜けの術」を披露するために開放され、逃げ出そうとして再合体されつつ「ハウス!」されていた。
- ドン25話「ヒーローしごとにん」
タロウ達がつよしの悩みを聞いて勘違いし奔走する姿を見て、一同の働きぶり(過労ぶり)に感激して自分も交わろうとするジロウに分離して出現し、 「よせ…奴らに取り込まれるな。タロウを越える邪魔になる……」 と(ドンブラ中毒に対する)まさかの正論で諌める。
その後店の再建をするドンブラザーズの裏で今回の元凶がなったヒトツ鬼たる大鬼に1人ドンドラゴクウが対応していたところ脳人が久しぶりに全員乱入。圧倒的不利になり苦戦したタイミングで 「1人じゃない」 と結果的に助太刀し、なんとか時間を稼ぐことができた間にドンモモタロウが合流。
ジロウがタロウに誉められた拍子に意識の主導権を奪い返される。
大鬼ングが出現すると同時にドントラボルト状態で分離し、ドンモモタロウに 「違うぞ!ヒトツ鬼はこの俺が倒すべきもの···」 と突っかかるも(直前にソノイとドンモモタロウがヒトツ鬼はどちらが倒すべきか言い合っていた)慣れたのかタロウに「はいはいわかった、お前達やってみろ」と軽くあしらわれ、ジロウに諌められながらドンロボゴクウ、ドントラボルトにチェンジ。
その後闇ジロウと共に虎龍攻神となって大鬼ングを対処、撃破した。
その際、合体前にジロウに意気揚々と「さあ、今回もいきますよ!」と号令をかけられ、 「今日のお前はなんか強気だな。」 と愚痴っている。
- ドン27話「けっとうマジマジ」
フォローすると事情を知らなかったから仕方無いとはいえ、ジロウがタロウを倒すのは自分だとドンドラゴクウとしてソノイとタロウの決戦の場に乱入。
そのまま強制的にソノイとの戦闘にもつれ込む間、ドンムラサメや大勢の獣人、さらには魔法鬼が現れ混戦状態に。
獣人を相手取っている間にソノニ、ソノザが参戦。2人のお膳立てでタロウとソノイが決着の場を変えるため離脱してしまい、
大勢の敵に対処しきれずにいたが
闇ジロウの荒々しい狂暴性のある戦法で一気に蹴散らすのが効率的と考えたか、ジロウが自らドントラボルトにチェンジして交代してくる。
その虎の獰猛な本能のような戦法で、敵を蹴散らし魔法鬼を撃破したが、魔法鬼ングが出現すると慣れた様子でドンロボゴクウ、ドントラボルトにチェンジし虎龍攻神へ合体させられる。
魔法鬼ングの多彩な能力に手こずるも、タロウの決闘のために手早く戦いを済ませようとドンオニタイジンが加戦。共に魔法鬼ングを撃破した。
- ドン28話「ひみつのヒミツ」
科学鬼と戦うドンブラザーズに加戦しようとするジロウに取って変わる。さながらジロウの役回りを引き受けてくれたようだった。
そのままドンモモタロウと軽く口論をしながら勢いで共に必殺技で科学鬼を撃破。
「皆さ~んここは、僕に、任せてくだ···ぐっ···!」
「それは俺の台詞だ···!
アバターチェンジ!」
タロウ「いや、俺の台詞だ!」
「黙れ···!」
科学鬼ングが出現し虎龍攻神へ合体した後、タロウからトラドラオニタイジンへの合体を提案される。
興味津々なジロウに対し 「断る!気持ち悪い···」 と乗り気でなかったが、結局ジロウになだめすかされたり捕まりながらトラドラオニタイジンへの呉越同舟超絶大合体を果たした(合体シークエンス中に逃げ出そうとしているが、案の定捕まっている)。
- ドン29話「とむらいとムラサメ」
ドンムラサメと戦うジロウから意識の主導権を奪い戦闘を続けようとするも、再びムラサメから悲しみの感情を感じ取り、「そんな奴とは戦えない」と戦闘を中止しその場を立ち去ろうとしたところで、2つの人格を内に宿すジロウに興味を持ったムラサメに呼び止められ、「2つの人格を宿すことは辛くないのか」と問いかけられる。
その場は「お前には関係ない」と言い捨てるも、背後から襲いかかってきた獣人を、自らを庇うように倒したムラサメを見て思うところがあったのか、着いてきたムラサメに自分たち二重人格の成り立ちを語り始める。
以下ネタバレ注意!
「この世に生まれた時、俺はただ一人の『俺』だった。目の前に立つ者を全て圧倒する、そんな最強の戦士になるはずだった。だが、俺の前に立ったのは・・・」
闇ジロウが語ったのは幼き日の出来事。その当時の回想シーンにおけるジロウは、無表情で無口な少年であった。ある日ルミ達に誘われ、「かごめかごめ」で遊ぶことになる。言われるまま目隠しをしてしゃがむジロウ。ジロウを囲んで回りながら歌い始めるルミ達。そして歌が終わった時。
「「「「後ろの正面だぁれ?」」」」
「そして、俺の後ろに立ったのは・・・」
「サンゾウくん!」
振り向いて見せた顔は、それまでの無表情とは似ても似つかない明るく無邪気な笑顔。そしてジロウは、「後ろの正面」を当てる前に振り向いてしまったことをツッコまれながらも、友達と仲良くなることが出来たのだった。
つまり、闇ジロウによれば、闇ジロウこそが「桃谷ジロウ」本来の人格であり、現在の主人格とされている「ジロウ」の方が後天的に目覚めた2つ目の人格だというのだ。
しかし、たとえ変わっていても純粋無垢で人懐っこい「ジロウ」こそが人に愛され、その周りに友が集まるということは分かっているようで、ジロウを「前に立つ者、後ろに立つ者と笑い合う者」と評して自嘲気味に笑うと、ジロウに主導権を戻した。
その際の背中は何処と無く悲しげであった・・・
視聴者からの反応
本来のジロウが持つもう一つの人格、と言う一種の暴走状態とも言える姿なのだが、ジロウ本来の性格の方がそもそもどこか危なっかしいものであるのに加え、闇ジロウになる条件が憧れの人に助けられることと言うまさかの条件だったことから、むしろ闇ジロウの方が扱いやすいのでは?と言われ、ドン21話ではドンムラサメの感情を押し測ったことから、本来のジロウよりも闇ジロウの方が性格的にまともなのではないか?とも言われる様になった。
また素のあっけらかんとしたジロウとギャップの激しすぎる闇ジロウを演じ分けられる演技力に、中の人への称賛は高い。
余談
この「闇ジロウ」という名称は劇中では呼ばれておらず、公式が明言したもの。
衣装はh.NAOTOさんがデザインしたものだが、この時はまだ二重人格の設定が固まっていなかったらしく、当初のオーダーが「龍と虎の2フォームある中華戦士です!!」 という非常にアバウトなものになってしまったとのこと。
そして纏っている羽織についてだが、元々の衣装の原案として存在していたようで、二重人格の設定が出来上がった際、井上先生が
「なんか、虎っぽい羽織あるじゃないですか? あれ、闇堕ちするたびに『バサァ……』ってわざとらく翻して羽織ると可笑しくないですか?」
「なるほど、いいね」
(原文ママ)
と二つ返事でOKしたことから闇ジロウの標準装備になった経緯がある。
一部視聴者の間では、虎ジロウの異名でも呼ばれている。
考察
実はこの闇ジロウ、その行動パターンには不可解な部分がある。
まずジロウ自身、人間界に流れ着いた経歴から、タロウと同じドン王家の出であることは確かと考えて間違いはないだろう。
そして、そもそもドン王家の者達は現在の脳人達と同質の存在であり、その行動原理は彼ら同様に自分達の目的について合理的に動くことが殆どである。
付け加えて、ドン王家が跡取りになり得る存在を人間界に送ったのは、完全な一族根絶を防ぐ為であり、しかもドン王家再興の目途は一切立っていない。
この状況下では、必然的に少しでも多くの候補たちが残っているに越したことはない筈である。
しかし、闇ジロウとしての行動は、そんな族滅を回避しようとするドン王家の目的に反する物である。
これが意味する物とは……?
関連タグ
やみおちスイッチ:闇ジロウ定着前はこう呼称されていた。
カゲロウ/仮面ライダーエビル:30分前の登場人物が持つ、もうひとつの闇の人格(こちらは独立した存在)。偶然にもこちらも宿主は名前に「二」と入っている。
カゲロウも当初は主人公サイドに牙を向いていたものの、紆余曲折を得て実質和解済み···なのだが皮肉にもカゲロウとの和解フォームとも言える形態が初登場した30分後のエピソードで完全な闇堕ち形態のドントラボルトが初登場した回となってしまった。
悪魔(仮面ライダーリバイス):カゲロウとの共通点もあり、ある意味では単なる別人格と言うよりも、このようなもう一つの意志のような存在とも言える。
闇バクラ、闇遊戯、ブラックロールパンナ:公式からこれらと同系列として扱われている。
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