概要
節足動物の大グループの1つ、「甲殻亜門」(学名:Crustacea)のこと。
およそ70,000種が知られ、節足動物の4大亜門のうち六脚類(昆虫など)・鋏角類の次に種数が多い。
ほとんどの甲殻類は水生かつ海洋生物であり、完全陸生のものはダンゴムシなど僅かしかない。
大雑把に言うと、節足動物のうち昆虫は「陸>淡水>海」で、甲殻類は「陸<淡水<海」という逆さまな分布具合になっている。
大型のカニやエビが印象的であるが、これらは系統的に甲殻類の一握り(軟甲綱十脚目)に過ぎない。実際、甲殻類はカニやエビの他にも、貝にそっくりなフジツボ、微小なミジンコやカイアシ類、一般に虫として知られるダンゴムシや寄生虫として知られるシタムシをも含んだ多彩なグループである。
呼称から「甲殻や甲羅をもってたくましい」イメージがあるが、必ずしもそうとは限らない。脚などの肢が枝分けられ(二叉型)、2対の触角を持つことが基本であるが、これらの特徴が変化して不明瞭になった例も少なくない。僅かな例外もいるが、最大の共通点はノープリウス幼生というプランクトンとして生活する段階を持つところ。
ほとんどの種類が水生のためか、魚介類としてのイメージが強く、陸生のダンゴムシや寄生虫の部類に入るものを除いて、節足動物の中ではさほど「虫」扱いとされないグループである。
系統分類
節足動物の中では昆虫などを含む六脚類に近いと考えられ、「汎甲殻類」としてまとめられる。それどころか、鳥は爬虫類の恐竜から進化したように、六脚類は系統的に甲殻類の間から派生したと考えられる。そのため、甲殻類は六脚類と双璧をなすというより、汎甲殻類のうち六脚類以外の様々なグループが甲殻類となっている。
詳細の経緯や、そこから展開した昆虫の起源の議論については汎甲殻類を参照のこと。
┗┳━甲殻類:カイアシ類、フジツボ、軟甲類(カニやエビ、ダンゴムシなど)
┗┳━甲殻類:カシラエビ
┗┳━甲殻類:鰓脚類(ホウネンエビ、カブトエビ、ミジンコなど)
┗┳━甲殻類:ムカデエビ
┗━六脚類:昆虫など
なお、甲殻類の具体的な起源や初期の進化の様子ははっきりしない。ワプティアやカナダスピスなど、一部のカンブリア紀の節足動物はかつて原始的な甲殻類と考えられてきたが、現在では甲殻類として認められない。ただ5億年前のカンブリア紀から既に出現したのは確かのようで、同じ地質時代の軟甲類や鰓脚類、シタムシと思われる化石が見つかっている。