「ABSORB QUEEN」「FUSION JACK」
「ABSORB QUEEN」「EVOLUTION KING」
概要
物語後半より登場する、仮面ライダー用のパワーアップツール。
開発は烏丸啓の手によるもので、同じく彼が開発に携わったBOARD製ライダーシステムに、上級アンデッドの能力を取り込み付加することで、より強力な形態への変身を可能とする役割を果たす。
作中には、仮面ライダーブレイド用とギャレン用の、計2個が登場しており、基本的には彼等がジャックフォーム、もしくはキングフォームに強化変身する際に使用されるが、一度だけ仮面ライダーレンゲルもアブソーバーを使用したことがあり、その際には本来の想定とは異なる効果が現れている(詳細は後述)。
機能・概観
本体にはカードを装填するスロットと、最大3枚のカードを収納可能なホルダーが備わっており、変身後は左腕に装着された状態で使用される。
ホルダーはブレイラウザーやギャレンラウザーと同様に、スイッチ操作で自動的に扇状に展開する形式とされ、基本的にはここにカテゴリーJ・Q・Kのカードが収められている。
本体中央部の「インサート・リーダ」にはカードが一枚装填可能となっており、上面には装填したカードの絵柄が覗けるよう四角い窓が設けられている。ここにまずカテゴリーQのカードを装填することで、「ABSORB QUEEN」の音声とともにアブゾーバーが起動状態へと移行。
この起動状態でカテゴリーJ、もしくはKのカードを、本体側部の「スラッシュ・リーダー」にラウズすることで、それぞれのカードの効果が発揮されジャックフォーム、もしくはキングフォームへの変身を可能とするのである。その際にはラウズしたカードの絵柄を模したレリーフが、リーダの上面を覆うように実体化する(メイン画像はカテゴリーKのレリーフが実体化した状態)。
強化の原理
アンデッドとの融合により、超人的な力を発揮するBOARD製のライダーシステムは、カテゴリーAのアンデッド1体とのみと融合している通常の状態に、さらにラウザーを使用した必殺技を発動することで、一時的ながら2~4体のアンデッド(カテゴリーA+使用したカードのアンデッド)との同時融合を可能とする。同じコンボ技でも、2枚よりも3枚の方がより強力な技を発動できるのはこのような原理に起因したものと言える。
とは言え、ラウザーを用いたこの上乗せ状態は、ラウザー側で使用可能なAPに上限があり、さらに上級のカテゴリーのカードについてはその本来の効果も発揮できない(※)という難点があった。
ラウズアブゾーバーは、カテゴリーQの持つ「能力の取り込み」という本来の効果を利用し、カテゴリーJ/Kの持つ本来の効果である「固有能力の付加」(J)/「強化形態への進化」(K)をさらに上乗せするためのものであり、アブゾーバーを使用して変身した強化形態は常時3体のアンデッド(カテゴリーA・Q・J/K)と融合した状態となり、この時点でも(融合の対象が上級アンデッドということもあり)通常を凌ぐ力を発揮することができる。
そしてこの状態で、前述したようにラウザーを用いて技を発動した場合、理論上では最大で6体のアンデッドと一時的ながら融合した状態となり、その分だけライダーが発揮できる能力はさらに増大する・・・という理屈である。
この原理は、作中でも物語後半にて広瀬義人が言及しており、彼がモニターしていたジャックフォーム同士の戦いにおいても、ブレイドがライトニングスラッシュを発動するという形で、5体のアンデッドと同時融合していることが明示されている。
他方で、この時ブレイド(=剣崎一真)が発揮した強さは、単に多数のアンデッドと融合しているだけでなく彼の潜在能力――即ち「融合係数」の高さに起因したものであることにも触れられており、この融合係数の高さは程なくして、本来ラウズアブゾーバー開発時の想定にはなかった現象までも引き起こすこととなる・・・。
(※ ラウズアブゾーバー以外のラウザーでカテゴリーJ・Q・Kのカードをラウズした場合、その効果も減少したAPを再チャージするのみに留まってしまう)
想定外の効果
上級アンデッドの力をライダーに上乗せするために開発されたラウズアブゾーバーであるが、前述の通り開発時には想定されていなかった効果を引き起こすという事態も、作中にて確認されている。
まず一つ目は、レンゲルこと上城睦月を支配していた、スパイダーアンデッドとの融合を解除するというものである。
これはラウズアブゾーバーを通して、睦月を救おうとしたタイガーアンデッド(城光)とタランチュラアンデッド(嶋昇)の意思が、睦月本人に直接強く働きかけられるようになったことに起因するもので、精神世界において2人の導きを受けた睦月はスパイダーアンデッドの呪縛から脱し、これと完全に分離するに至った。
その一方で、直後に睦月がスパイダーアンデッドを完全封印すべく対峙した際には、立ち回りの合間にタランチュラアンデッドの姿が睦月に被る――即ち睦月がタランチュラアンデッドと融合した状態にあることを示す演出も見られ、ここからはライダーの姿でないにせよ、前述したアブゾーバーの本来の効果も発揮されていることが窺える。
そして二つ目が、13体のアンデッドとの同時融合である。
コーカサスビートルアンデッドの封印により、スペードスートの13枚のカードを得たブレイドは、トライアルDという難敵を前にキングフォームへと初変身を果たすのだが・・・
橘「カテゴリーKと融合した。これが・・・キングフォーム」
広瀬「いや、彼は13体のアンデッドと同時に融合している」
その様子をモニターしていた2人のやり取りからも分かるように、ブレイドが変身したのは本来烏丸が想定していたキングフォーム――即ちカテゴリーKと融合した状態ではなく、それも含めたスペードスートの13体のアンデッド全てと融合したものであった。
ここまで説明してきた通り、ラウズアブゾーバーはあくまで上級アンデッド2体の力をライダーに上乗せするためのものでしかなく、その上限を遥かに超過した13体同時融合という状態は「普通ならあり得ない」と広瀬も断じている。実際、後にブレイドのキングフォームと同様に、同じスートの13体のアンデッドと同時融合した存在も登場しているが、こちらはそもそも変身者やシステムからして人知を超えた代物であり、剣崎のケースと同列に語ることはできない。
しかし剣崎の場合、前出の「融合係数」が並外れた高さであったことも手伝い、このような想定外の事態を引き起こす結果となった。そしてこの13体同時融合はブレイドに圧倒的な力をもたらすのと引き換えに、剣崎の心身両面での変質という深刻な事態までも呼び起こし、物語終盤の展開にも大きな影響を及ぼすこととなったのである。
入手の経緯
ラウズアブゾーバーの存在が剣崎達に明らかにされた時点で、烏丸はアンデッドの謎を解明する(のと、自らの命を狙っていたある人物からの捕捉を逃れる)ためにチベットへと渡り、長らく本人不在のままでストーリーが進行していた都合上、剣崎や橘の元にアブゾーバーが渡るまでの過程も様々な紆余曲折を経たものとなっている。
剣崎の場合は、チベットにおける烏丸の協力者であった嶋昇に託される形で、彼とともに日本にいる剣崎の元へ届けられたのだが・・・当初嶋はアブゾーバーの存在を伏せたまま、エレファントアンデッドに苦戦する剣崎達が「戦う目的」を自ら見出すのを待つという、彼等からすると些か不可解な姿勢を通していた。
そしてエレファントアンデッドとの再戦で、傷付きながらもブレイド(=剣崎)が戦う目的を見出したのを見届けるや、それを待っていたかのように嶋はアブゾーバーをブレイドに投げ渡し、ジャックフォームへの変身を促したのである。
このように劇的な展開を経てアブゾーバーを得るに至った剣崎に対し、橘の場合は剣崎から遅れること数週間後、チベットにいる烏丸から白井家宛に小包で届けられる、という形でアブゾーバーを入手している。
「烏丸所長から、チベットから小包が送られてきたって!?」
しかも間が悪いことにこの回、記憶喪失に陥った始とそのそっくりさんを巡るドタバタ劇がメインであるため、剣崎の時とは違って物語の本筋とはそこまで絡まない、何ともついで感のある入手となってしまった。とはいえ入手直後の橘は、嬉しそうな様子で剣崎とも握手を交わしてたりするので、本人としては満足といえば満足・・・なのかも知れない。
そしてもう一人、作中でアブゾーバーを使用したのが睦月であるのは既に触れた通りであるが、彼専用に3つ目のアブゾーバーが作られたという訳ではなく(後述)、使用したのは橘の所有していた2個目のアブゾーバーである。
これは城光からの懇願に応じ、橘が彼女にアブゾーバーを託したことに因るもので、敢えて自ら睦月に封印されることでアブゾーバーも彼の手に渡るように仕向け、結果として前述の通り睦月をスパイダーアンデッドの呪縛から解き放つことに繋がった訳である。
スパイダーアンデッドの完全封印が果たされた後、アブゾーバーは持ち主である橘の元へ返却されており、作中にてレンゲルがアブゾーバーを使用したのもこの時が最初で最後となった。
レンゲル用のアブゾーバーが作られなかった理由
明確には語られていないが、ファンの間では以下のように指摘・考察されている。
- レンゲルのライダーシステムが本来の設計思想からかけ離れた形で開発され、烏丸もそれに対応した形でアブゾーバーを設計できなかった
- 烏丸が日本を離れた時点でまだレンゲルの適合者が見付かっていなかった(桐生豪の事件を経て、レンゲルの適合者が睦月で固定されながらも、カテゴリーエースの呪縛によって睦月が暴走し続けていたため、アブゾーバーを渡すのは危険である。また、剣崎たちから烏丸に対する連絡手段もなかったので、仮に睦月が暴走しなかったとしても、烏丸にアブゾーバーの追加を頼むことができなかった)
などがファンの間で指摘・考察されている。
また、橘にアブゾーバーを発送してから物語最終盤にて帰国するまでのかなりの期間、作中における烏丸の消息が一切途絶えていた(天王路博史に命を狙われていた)ことから、作る暇がなかった、仮に作れていたとしてもこれを剣崎達の元へ送ることは困難であっただろうと見る向きもある。
そして20年後
放送20周年を記念したヒーローショーイベント『仮面ライダー剣 20th anniversary STAGE & TALK』にて、レンゲル用のラウズアブゾーバーが登場。
当時17歳だった睦月が37歳となった20年後を舞台としており、再び解放されたアンデッドと戦うために変身した睦月は、自分用のアブゾーバー、そしてクラブのカテゴリークインとカテゴリーキングを用い、キングフォームへと変身した。
備考
- 間違われやすいが、名前の表記はラウズアブソーバーではなく、濁点の付くラウズアブゾーバーである。
- 玩具は2004年8月上旬に「ラウズアブゾーバー」の商品名で発売。既出のベルトやラウザーとは異なりDXと冠していないものの、勿論それらとも連動可能な仕様とされており、付属するラウズカード6枚(うち2枚は玩具オリジナルのカード)のリードとプレートの付け替えを組み合わせることで、ジャックフォームへの変身音を発動することができる。この他、付属の剣先パーツは「DXブレイラウザー」「DXギャレンラウザー」に装着し強化状態を再現できる他、「DXキングラウザー」付属のプレートとの組み合わせでキングフォームの変身音も発動可能である。
- 2019年には、ブレイバックルやブレイラウザーと合わせて「COMPLETE SELECTION MODIFICATION」シリーズで再商品化され、後にギャレンバックルやギャレンラウザーが同シリーズで出た際にも再発売されている。CSM化に際しては、各フォーム用のプレートの造形がよりプロップに近いものとされている他、プレートの装着と電源スイッチの操作の組み合わせにより、キングフォームへの初変身時など作中での様々な場面の再現も可能な仕様となっている。
- CSMにてギャレンラウザー他が発売されるのに先駆け、橘役の天野浩成出演によるPR動画も期間限定で公開されたが、その際天野はラウズアブゾーバーについて、「あんまり見たことない」「ちゃんと触るの僕初めてかも知れない」などと、当時を振り返りつつ言及している。
関連タグ
ファイズブラスター:『仮面ライダー555』に登場する武器の一つ。こちらもギャレン用のアブゾーバーと同様に、使用者の元へ小包として送られてきたアイテムであり、奇しくも同様の展開が2作も連続する格好となった
ファイズブラスター → ラウズアブゾーバー → アームドセイバー
カイザドライバーNEXT → ラウズアブゾーバー → ハイパーゼクター