「ここは行くあてのない者たちの集まる地
居場所がないならばここで生きよ」
概要
この記事は多大なネタバレを含みます。未試聴の方は注意。 |
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『スター☆トゥインクルプリキュア』に登場する敵対勢力。理不尽な理由で母星を追われた異星人たちのコミュニティから発展した組織。
「見捨てた者たちへの怒り、憎しみを力に変えるのだ」をモットーに全宇宙の支配を狙い、様々な惑星を侵略している。
現在は、宇宙征服の鍵となるプリンセススターカラーペンと宇宙妖精フワの確保を最優先に行動している。
プリキュアシリーズ初のメンバー全員が異星人で構成される組織であり、強大な科学力を持つ。
その科学力は高く、言語翻訳機を用いて地球の言葉を話せるほか、宇宙空間を移動する際は攻撃機能を搭載したアダムスキー型のUFOを用いて移動する。
また、首領代行のガルオウガは空間を切り裂きワープゲートを開く能力を有しており、宇宙のどんな場所でも構成員を送り込める。
おうし座のプリンセスによると、ノットレイダーに支配された宇宙は星々の光が消えて暗闇に包まれるという。
さらに第31話のトッパーによれば、その悪夢の兆候はすでに始まっており、今この時にでも天の光は少しずつ消えていっているらしい。
ちなみに彼らにとっては地球は、「プリミティブな辺境の地」に当たるらしい。
構成員
構成員たちは作中設定上は異星人だが、デザイン上のモチーフになっているのは日本の妖怪である。
上層部
三幹部
ダークネストやガルオウガに仕える3人の幹部で、いずれも宇宙に居場所をなくした異星人で構成されている。
第12話からダークネストの力で所持するアイテムを強化され、第21話からはアイワーンが独立して2人体制となる。
3人共最終的にはプリキュアや宇宙星空連合と和解し、それぞれ星の復興などに力を注ぐ。
カッパード(声:細谷佳正) |
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河童のようなノットレイダーの幹部。元々は資源を奪われ続けてきた星の出身。 |
テンジョウ(声:遠藤綾) |
天狗のようなノットレイダーの幹部。元々は差別が蔓延するグーテン星の出身。 |
アイワーン(声:村川梨衣) |
一つ目をしたノットレイダーの幹部。元々は宇宙を彷徨う浮浪児。第21話で独立した。 |
アイワーンの部下
戦闘員
ノットレイ(声:下山吉光、他) |
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ノットレイダーの戦闘員たち。プリキュアとの戦闘が任務。いずれも居場所をなくした宇宙人で構成され、アイワーンが開発したスーツを着用する。 |
巨大ノットレイ(声:下山吉光) |
ダークネストの力で強化されたテンジョウの能力により、複数のノットレイが合体した巨大な戦闘員。通常よりも強化されている。また、人間を素体にした強化型も登場。 |
アイワーンの兵器
ノットリガー(声:下山吉光) |
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アイワーンが使役する怪物。プリンセススターカラーペンを闇に染めた「ダークペン」で召喚される。 |
アイワーンロボ(声:なし) |
アイワーンが操縦する戦闘機。ユニから奪った宇宙船を素体にし、エネルギーに変換した歪んだイマジネーションを注入して姿を現す。登場した機体は16号と23号の2機である。 |
元構成員
以下、第49話以降のネタバレ注意
黒幕
プリキュアとの戦闘
ノットレイダーの特徴として、幹部たちの戦い方がそれぞれ異なるということがある。
自身に決め技が直撃することも多々あるが、浄化されて心が綺麗になったりすることはなく、ただダメージを受けたり吹っ飛ばされたりするだけである。
これは、構成員たちが単に戦闘力がある異星人に過ぎないため。これは下級戦闘員ノットレイでさえそうである。
(ニチアサ繋がりで言えばスーパー戦隊シリーズに多く見られる宇宙人系の怪人に本質は近い)
構成員たちの経緯
第11話で、カッパードやテンジョウによって、ノットレイダーは故郷の星を奪われて、暗く凍える宇宙の最果てに追いやられ、闇に潜んで生きてきた難民の集まりであることが明かされた。
彼らはこの過去を理由に「侵略される側」から「侵略する側」へと回り、これを生存戦略として正当化している。
このことは彼らが侵略した星の住民を自軍に取り込んだという状況を説明しているように思われていたが、第32話でガルオウガによってそれが否定された。
ノットレイダーの起源は、ガルオウガが統率していた難民コミュニティであった。
彼自身も理不尽な理由で母星が破壊され、その災厄を前に何も救えなかった過去を持っており、責任を感じていた。
彼は、唯一の生存者として故郷の破片に留まり続けたが、やがて同じく居場所を失った者たちが流れ着き、コミュニティが形成された。
そこへダークネストが現れ、部下になって自分に協力するよう取引を持ちかけた。彼らはそれを受け入れ、ノットレイダーが結成された。
彼らは「誰かのせいで不幸になった」という強い被害者意識を共有している。憎悪の対象は特定の個人ではなく、宇宙文明の歪みや無関心に向けている。
誰にも助けてもらえなかった彼らに、手を差し伸べたのはダークネストだけだった。だから彼らは忠誠を誓い、宇宙を揺るがす凶悪な集団と化したのである。
これは、宇宙星空連合も彼らを救えなかったことを意味している。もっとも、連合にも限界があり、全てを救うことは不可能であるが。
逆に言えば、自分を不幸にした元凶をある特定の人物と考えてしまった者はノットレイダーに長くはいられない。
事実、アイワーンはユニへの復讐心に囚われたがためにノットレイダーから離れることになった。
そして、彼らにとって、プリキュアの存在は非常に皮肉である。本作において、プリキュアは宇宙の危機に現れる伝説の戦士であり、ノットレイダーの被害者を救う存在だからだ。
つまり、宇宙は彼らの過去の不幸は助けるに値しないが、彼らの被害者は救うべきだと暗に示しているように見える。
被害の規模が異なるため、一概に同列に扱うわけにはいかないが、ノットレイダーは今の宇宙に何の期待も価値も感じていない。
そのため、たとえダークネストの支配で宇宙が暗闇に覆われようと、何も変わらないと考えている。
また、第11話でカッパードは「闇に潜んで生きてきた」とも語っている。彼らは助けを求めず、孤立を選び、迫害から身を隠しながら生き延びてきた可能性がある。
そのため、ノットレイダーの構成員も同様に宇宙社会で差別されてきた者たちであると窺える。
彼らは他の種族の社会では差別や迫害を受けるような立場であるがゆえに、故郷を失った後は目立たないように隠れるしか選択肢がなかったのかもしれない。
隠れ住んできた背景には、他の種族の社会で差別や迫害を受けた過去がある。
彼らのモチーフが日本の妖怪であることも、虐げられてきた「まつろわぬ民」のメタファーと解釈できるかもしれない。
宮元宏彰SDは、妖怪モチーフのデザインから「居場所を追われ、闇に潜んで生きる”排除された者達”」という設定を思いついたと語っている。(アニメージュ2020年3月号より)
本拠地
彼らの本拠地は、宇宙のどこかにある機械都市である。この都市は、砕かれたガルオウガの母星の残骸の上に新たに築かれたもの。
都市の中心には、剣のような巨大な岩塊が突き刺さっている。これはダークネストが降臨した際に現れたものであり、彼女の居城となっている。
ノットレイダーの作戦司令部もこの岩塊に存在し、ダークネストが座るべき玉座が据えられている。司令部は、宇宙の星空を見渡せるバルコニーのような開けた場所にあり、周囲はねじ曲がった木の枝のような岩に囲まれている。
その先端にはクリスタルが鎮座し、その中で首領ダークネストが眠りについていた。
通常は司令部のシーンが描かれるが、第38話ではアイワーンの回想を通じて市街部の様子が明らかになった。市街部には、居場所を失った無数の異星人が身を寄せ合って住んでいる。
街の外観は、1960〜70年代のアニメに登場する未来都市を意識したレトロフューチャーな雰囲気が漂っている。建築様式にアール・ヌーヴォーの意匠を取り入れている点や、無数の歯車が都市の土台を支えている点でスチームパンクの要素も見られる。
ユニによれば、この都市はブラックホールの近くに位置しているらしい。(第32話)
ワープするためにはガルオウガの腕輪が必要であり、それがなければ都市にたどり着くことはできない。(つまり、幹部たちが毎週の戦いで敗北した後、本拠地へ撤退する際に開かれる転移ゲートは、彼ら自身ではなく、本拠地にいるガルオウガが開いていた)
シリーズ屈指の団結力
上記のように、ノットレイダーは異なる経緯で集まった者たちが互いに心の傷を共有しているため、非常に強固な結束を誇る。
派閥による対立や自己利益を優先する行動は見られず、共闘時も足の引っ張り合いが起こらない。
幹部も無理な要求をせず、上層部も失態に対して重罰を課さず、過度なノルマも設定しない。
ドライな面もあり、離反者には執着しないが、組織全体で人材の不要な損失を避けている。
惑星レインボーでも、裏切りに遭い孤立したアイワーンに迅速に援軍が送られた。カッパードも急な派遣に文句を言わず、裏切りについても咎めなかった。
アイワーンは「ノットレイダーに居場所はない」と述べていたものの、多少の降格があったとしても、その後も在籍できた可能性が高い。
テンジョウ役の遠藤綾も「(ノットレイダーは)会社としてはたぶんとてもホワイトです」と述べている。(『アニメージュ スター☆トゥインクルプリキュア特別増刊号』より)
ただし、この運営方針は実質的な統括者であるガルオウガによるものであり、本来の統率者であるダークネストは冷徹な人物である。
ダークネストは封印状態で動けない時に幹部を無償でパワーアップさせた一方、ペンを確実に奪うために、アイワーンが苦しむのも厭わずその自我を奪い操った。
この行動は一見矛盾しているように見えるが、部下を手駒として最大限に活用するためと考えればおかしくはない。
部下を不要に使い捨てにはしないが、命を散らす場面では躊躇がないということである。
構成員たちもダークネストの冷徹さを理解しつつ忠誠を誓っているが、その忠誠は「力」に対する信頼であり、「心」に対するものではない。
構成員たちが心を寄せているのはガルオウガであり、彼こそが組織の精神的支柱である。
ノットレイダーの「仲のよさ」や「居心地のよさ」は視聴者に意図的に強調されて演出されている。
シリーズ構成の村山功によれば、ノットレイダーは異なる出自や種族を持つ者たちが肩を寄せ合い暮らしている「擬似家族」であり、思いが同じなら家族になれることを示しているらしい。(上述のアニメージュプリキュア増刊号より)
以前に村山が担当した『魔法つかいプリキュア!』では、「多様性」のテーマを肯定的に描いていた。このテーマを、本作は敵側に移している。
これは、本作が描く「違う思い」を持っている者同士の関係性を強調するものと考えられる。
結末
第46話より、プリキュアおよび宇宙星空連合の艦隊とノットレイダーの全軍がぶつかった第二次スターパレス攻防戦が勃発。ノットレイダー側の兵士には幹部メンバーも含めて「歪んだイマジネーションを強化する鎧」がダークネストから与えられており、その力で星空連合を圧倒する。だが、この鎧は歪んだイマジネーションを引き出しすぎると理性を失い暴走してしまう危険なものであった。
徐々に理性を失いつつあるノットレイダーの者達と拳を交えるプリキュア達は、彼らが自らのイマジネーションを制御できず苦しんでいることを見ていられず、必死で言葉をかける。
その真摯な言葉は、ノットレイダーの者たちの心に届き、暴走一歩手前で彼らは意識を取り戻した。
だがこれはダークネストにとっては望まぬことであった。
もはや茶番はここまでと捉えたダークネストは、自らの正体である「蛇遣い座のプリンセス」の姿をあらわにし、ノットレイ達の鎧を意図的に暴走させ、彼らの歪んだイマジネーションを自らの力として吸収する。実はダークネスト=蛇遣い座は最初から、この戦いでノットレイダーという組織を鎧の暴走によって自壊させ、彼らの歪んだイマジネーションを取り込んで自らの力にするつもりだったのである。この戦いに勝てば蛇遣い座の望みは叶うのだから、ノットレイダーという組織をこれ以上維持する必要はなかったのだ。
自分たちが切り捨てられたことを知ったノットレイダーの構成員達は、あなたと共に宇宙を支配するという約束は嘘だったのかと蛇遣い座に問い詰めるが、蛇遣い座は騙される方が悪いとばかりにあざ笑う。そして自分の目的はこの宇宙の消滅であり、ノットレイダーも消えゆく運命だと宣言した。
ことここに至ってノットレイダーの構成員たちは、蛇遣い座に反旗を翻す。
プリキュアや宇宙星空連合と呉越同舟の形で共闘し、蛇遣い座の計画を止めるために戦うことになる。
その蛇遣い座も48話でプリキュアによって目的を阻止され、最終的に宇宙の行く末を見守る形で姿を消した。(詳細は蛇遣い座(プリキュア)の項目へ)
このとき、自ら利用したノットレイダーのメンバーたちに謝ることなど一切しなかったが、たった一回だけワープ機能が使える腕輪をガルオウガに渡し、これをどう使うかは自由、私に復讐したいならば追ってくるが良い、と言い残している。
だが、プリキュア達が自らの力を失う選択をすることでフワを復活させたことに何かを感じたのか、ガルオウガは彼女達を星空界から地球に返すためにそのワープの機能を使った。それに対して他のノットレイダーのメンバーも異は唱えなかった。
49話(最終回)では、ノットレイダーには自分たちが住む星を宇宙星空連合から与えられたことが判明した。いつからそこに住み始めたかは不明だが、最終決戦からおよそ15年後にトッパーやララが訪れたときは、地球の桜のような花が舞う美しい星となっていた。トッパーがこのことを称賛すると、カッパードとテンジョウは自分たちのチームワークのおかげだと誇らしげに語っていた。このことから、この星の開拓には、幹部もノットレイたちも一丸となって取り組んだことがうかがえる。また、ガルオウガは自分たちを認めてくれたこと、安住の地を与えてくれたことについて感謝していた。このような宇宙星空連合の英断は、ノットレイダーにとってまさに救いであったといえる。
尚、蛇遣い座の様に一部に生存しつつも改心・和解に至らなかったものもいたが、それ以外は全員何らかの形で生存しつつ改心・和解に至ったパターンは今作で三度目となる。因みに敵の戦闘員も全員生存・改心に至ったのは今作が史上初となる。(キラキラルをうばう存在のネンドモンスターは生存したが、上司のグレイブ同様に改心・和解には至っていない。)
余談
名前の由来は侵略者を意味する「インベーダー(Invader)」と「乗っ取る」を組み合わせたものと思われる。
なお、Not Raiderと解釈すると全く逆の意味になったりする。
名前の割には作中では、フワやプリンセススターカラーペンを狙う行き当りばったりな行動が目に付き脅威が伝わりづらく、寧ろ文字通り「乗っ取った」と言える作戦を展開したのがノットレイダーを去ったアイワーンと言うのは何という皮肉だろうか。
39話予告にてようやく、主人公達の学校に潜入と言うまともな作戦を展開する辺り、武力の類に拘りすぎだった傾向がある。尤も47話の真相が明らかとなった今となっては考えて行動しない事自体が黒幕の思うツボだったのだが。
戦闘員が登場する敵組織は幻影帝国以来。また、人を素体にする事で誕生する怪物は今作で6度目となる。幹部が必ずしも怪物を使役しないのはキラキラルをうばう存在以来となる。