セト神
せとしん
曖昧さ回避
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部に登場するスタンド→セト神(ジョジョの奇妙な冒険)
概要
セト〈SETT〉ステク〈SUTEKU〉
戦闘を司る神として登場するが、邪神としても扱われる。すべての束縛がなく自由な神。ギリシア神話では大怪物テュポーン、カナン神話では主神バアルと同一視される。壁画ではロバ、牛、カバの頭であらわされる神格、暴力と外国の神。
エジプト神話での役割
古代エジプト人の間では『ステク』『セウテフ』『スティ』などと呼ばれていた。
エジプト神話の神であり、エジプト9主神(ギリシャ神話のオリュンポス12神の元ネタ)の一柱。オシリス神(のち冥界神オリオン座)の弟。空の神ヌトと、大地の神ゲブとの間に生まれた四兄弟の一人。
「異国の君主」、砂漠や灼熱、エジプトの秩序に従わないあらゆる暴力を司る神。
兄にあたるオシリスを葬り一時的に最高神となるが、オシリス神の息子ホルスとの八十年に及ぶ争いの果てに最高神の座を追われる。この後セトとホルスの争いは神話の中では有名な部類となる。
時代に翻弄された戦闘神
セト神は古代のエジプトで崇拝された高潔なる最高神だった。
闇と混沌を司る邪神アポピスを打ち倒す勇猛果敢な戦闘神であり、ラーの飛行船から常にアポピスの襲撃を警戒するという、非常に重要な役割を負っている。
その信仰の人気ぶりは下エジプトでも有数となり、下エジプトにおける王座の守護者として一時はホルスをも凌駕するほどとなった。
しかし、時代が下ってオシリスの地位が再確認されるようになると、彼の息子であるホルスの重要性が説かれるようになり、上下エジプト間での熾烈な覇権争いを伴って対立候補として擁立されるようになった。
そして最終的にはオシリスを謀殺した悪しき神とされるようになり、片足と睾丸をもがれるという仕打ちを受けることになる(実際エジプト神話ではイシスが息子に首をはねられても何事もなかったかのように復活、ということもあるのでそれほど大したことではないかもしれない)。
ホルスを主神として政治権力を支える統一エジプト王国文明が栄えると、途端端折られるようになる(セトとホルスの、どちらが上、どちらが下だったかは諸説ある)。
ホルスとセトの争いの決着は世界が終わる最終戦争まで続くとされた。ホルス神との争いを通じて忌み嫌われるようになり、新王国時代以降には最強格の邪神(のちのサタンのような存在)とされた。
しかし、軍神・動乱の時代の神としては強力な神として崇拝され、新王国にも、セティ(セトのもの)、セトナクト(勝利するセト)と言った名を持つ王がいた。また異民族のファラオとなったヒクソス王朝などでは、彼らの神バアルと同一視されたセトが最高神として政治権力の支えとなった。(→セトへ)
これらの動向は、上下エジプト間の覇権争いの具現であり、セト神はその煽りをもろに食らってしまったという、不遇な立ち位置にいる。
特徴
外見
壁画では、四角い両耳、先の分かれた尾、そして曲がって大きく突き出した鼻を持つ、謎の動物の頭を備えた人間の姿であらわされる神格。
本当に「謎の動物」で、ロバ・ツチブタ・ジャッカル・馬など諸説あるが、アヌビスなどのジャッカルの頭とは似ても似つかない。
この動物の全身像を描いた図ではイヌ科の獣を彷彿とさせる。そのためこの獣は正体が謎のまま「セト・アニマル」と呼ばれている。このキメラ顔負けの融合ぶりから、想像上の動物をわざわざ作ってセトに充てた、とする説も存在する(海外ではしばしばこの合成獣を「セトの獣」と呼称する)。
また、雄カバ、豚(イノシシ)、ロバはセトとかかわりの深い獣とされた。邪神とされた時代には蛇(=アポピス)、亀(=アペシュ)もセトにまつわる獣とされた。
フィクションでは
モチーフがよくわからない事になっているためか、女神転生シリーズやドラゴンクエストシリーズではドラゴン型の悪魔やモンスターとして登場する事も。そういえば彼が名前の由来になっている人物もやたらとドラゴンや恐竜に縁があったりする。バハムートといい、ドラゴンとは全く関係なかった神話上の登場人物が現代においてドラゴン扱いされる事は結構多いようだ。
関連タグ
同性愛・・・セト神の司るものの一つ、ホルスとセトのコンビで表されるときは当時のエジプトでは『同性愛と豊穣』のシンボルの隠語であったらしい。その後神話にも影響。(ギリシャ神話など)
ロード・エルメロイⅡ世の冒険…とある人物に取り込まれた神霊として登場。
エジプト神話
セトの妻ネフティスとオシリスとの間に産まれた息子。ジャッカルの頭をもち、墓場の守護神、医療神。
セトの頭部をジャッカルと解釈すれば姿かたちもセトに近いところもあると言える。
近代ヨーロッパ人には妖怪のように見られているが、古代エジプトにおいてはあくまでも死者の安寧を護るまっとうな守護神である。
エジプト神、初代エジプト君主(ファラオ)。歴代のファラオ(王)はホルス神の生まれ変わり。セト神の兄オシリス神の息子。母神は女神ハトホル(後にギリシャ神アフロディーテと同一視される)父神を殺されたホルスはセト神の養子となるが暴虐を司る「セト神に股間を入れられた」という文面が存在する。(ホルス神自体も同性愛の気質がある。)
軍神であり、一時的だが最高神を経験した神格。理由はセトよりは弱いがセト神に比べればまともな軍神ということだそう。
- レシェフ
アモリ人の神、バアル=セトと同じくアジア系の神であり、嵐と災害と戦争の神。
オリエント神話
バアルは「主」という意味の一般名詞・尊称だが、ここではオリエントの嵐の神バアル・ハダド、もしくはウガリットの主神バアル・ゼフォンを指す。ともにセトと同じく嵐と戦いの神。
暴風雨によって農地が潤されるシリア、パレスチナでは豊穣をもたらす善神・主神としても崇められ、嵐=砂嵐のセトとは明暗が分かれる結果となった。しかしこの地方の人間がエジプトに移民した結果、同一視されるようになっていった。
ユダヤ教・キリスト教ではルシファー、ベルゼブブ(バアルゼブブ=バアルと呼ばれた神々の一柱)といったサタンクラスの悪魔を除いて、筆頭の諸侯悪魔ということになっている。
バアルの妹にして妻だが、バアルがセトと習合された結果、エジプトではセトの妻となった。
女神、軍神、戦車と馬の守護神。大体バアルと同じ。
アナトと同じ経緯でエジプトではセトの妻となった。女神、軍神。
キリスト教では悪魔諸侯の一人(大体、悪魔は自分が筆頭格のような称号ばかり持っていて、間際らしい)。
ギリシア神話
ホルスと王座を奪い合ったセトの性格が、古代ギリシャからはオリュンポスの神々を相手にして戦った大怪物と同一視された。
セトが、近代ヨーロッパ系の作品では蛇神として描かれるようになったのは、蛇の巨人テュポーンと同一視された影響だと思われる。
ゼウスの息子。マルスとテュールとウルスラグナと同一とされる神。イケメンだけで後はすべて駄目な軍神、軍神でも失格。セト神と比べると弱すぎる。
フィクションの神々
クトゥルフ神話に登場する架空の神格。エジプトの砂漠から現れ、すべてを吹き飛ばす邪神。
この神を形づくった一人であるロバート・ブロックによると、セトはトート、ブバスティス、セベクなどとともに、有史以前のナイアルラトホテップ崇拝の名残をとどめた信仰であるという。
クトゥルフ神話TRPGではナイアルラトホテップ(ニャルラトテップ)の化身のひとつとされている。
同じくクトゥルフ神話に登場する架空の神格。リチャード・L・ティアニーの設定ではセトはハスターの化身とされている。