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高級車の編集履歴

2013-09-14 12:56:58 バージョン

高級車

こうきゅうしゃ

高級車(こうきゅうしゃ)とは、相対的に、ブランド性やポジショニング、品質(クオリティー)が高く、いわゆる高級であると認識される乗用車のことである。

概要

19世紀末に登場した乗用車は、貴族や大富豪など一部の上流階級のみが道楽として所有するものであり、高級車/大衆車という区分はされ得なかった。20世紀初頭、フォード・モデルTに始まる乗用車の普及・大衆化により初めて、相対的に高価で贅沢な商品としての「高級車」が生じることになった。更に、第二次世界大戦後、各国で次々にモータリゼーションが起こり、購買力の上昇と消費行動の多様化とも相まり、「高級車」は一般化・多様化している。


高級車の定義

何をもって「高級」とするのかはメーカーや販売先の国・地域、個人の主観と価値観に委ねられており、高級車の指し示す範囲にも明確かつ客観的な定義は存在しない。


一般的には、同様の排気量などの乗用車と比較して、高額・ハイクオリティであり、一般的な所得水準では、入手が困難であるか躊躇させるような乗用車をさし、特徴として大衆車に比べると『走行性能・静粛性能・室内装備』などが優れている場合が多い。よって、その国の所得水準や技術水準、ブランド価値にも左右され、「A国にとっては高級車」であっても「B国では大衆車」扱いである、という場合も存在しうる。


従来は、車両区分(セグメント)は大型ほど高級という図式がほぼ該当していたが、セグメントの定義が単に寸法に起因しているため、近年では一部瓦解している。「最下級」と「最上級」のグレードで2倍以上の価格差が存在する車種もあり、高級車という位置づけでありながら大衆向けのグレードも用意する、またはその逆といった販売方法が採られることもある。


独自の定義の一例として、ダイムラー・クライスラーの日本法人であるダイムラー・クライスラー日本では550万円以上の価格帯の輸入乗用車を「輸入プレミアムセグメント」と括っている。


ゼネラルモーターズ(GM)の社長アルフレッド・スローンは自動車産業界の歴史を3期に区分し、1908年までの第一期が高価な自動車だけの高級市場、第二期は1920年代までのフォードが牽引した大衆車の時代、第三期がバリエーション豊かになった大衆高級車市場とし、低価格車から最高級車までのあらゆる需要に適用するフルラインシステムを消費者の欲望を駆り立てるための第三期におけるGMの経営方針として採用した。ヨーロッパ日本では階級(クラス)が固定されていたが、新興国のアメリカでは階級はなく、経済的、金銭的に成功した人々はその成功を認め合いまた大衆は自らもそうなりたいと成功者に対し賞賛を送った。GMのフルラインは下層階級出身者のいわゆる「成金」でも、金銭的な成功の階段を昇ることが比較的容易なアメリカ型人生を販売戦略に組み入れたものだった。


第二次世界大戦敗戦後の焼け跡から復興した日本は一からの再スタートとなり、GM型の考えを参考にしたステップアップ型の高級車概念をメーカーが採用し定着した。例えば日産自動車は、セドリックや、グロリアが一般化してから相対的に高価なシーマを販売開始し上位への移行に成功した。トヨタ自動車は、クラウンが一般化してから相対的に高価なセルシオを日本で販売開始した。さらに日本でもレクサスブランドを創設した。これらはアメリカ型フルラインの上部に位置する車となる。あくまでスタンダードな車があって、差別化とより収益を得る為の「ラグジュアリー」や「プレミアム(本来の意味では付加価値)」という概念である。


一方、上流階級(ハイクラス)と呼ばれる人々のための車は、これらとは別の意味での高級車(ハイクラスのための車)となる。しかし後者の高級車だけに頼ったメーカーの多くは経営の面で長続きしなかった。現代まで生き残ったメーカーではその多くがアメリカ型経営のイメージ戦略に組み入れられている。また一部残った第一期型高級車は、第三期型の経営の安定によって支えられている。


高級車の特徴

  • 同排気量の車種よりも高額。
  • 基本的な訴求項目である、走行性能、静粛性能などが優れている。
  • ロールス・ロイスの車内は時計の秒針音しか聞こえないと言われた。20世紀末期からはクォーツのデジタル時計全盛になったので、それさえも消えた。
  • いわゆる職人技による手作業で組まれる。ほぼすべての部品が手作業によって組み立てられている車種もある。
  • 自動化が主流だが、内装やエンジンなどに手作業を多用する。
  • ほとんど自動化されておらず、ラインなどもない。フェラーリやランボルギーニなどのように、エンジンを鋳型段階から造るメーカーもある。
  • 最低でも6気筒、排気量3リッター以上。但し、近年は欧州車を中心にダウンサイジングの傾向がみられるため、必ずしもこの限りではない。
  • 各種税金や維持費(自動車税、整備費など)が高い。「ぜいたく品」という理由で懲罰的な高率をかけている国もある。
  • 盗難のリスクも高いという理由で任意保険料(自動車保険)も高くなる。

これらの特徴はあくまで一例であり、厳密な定義がある訳ではない。極論をいえば、メーカーが「高級」または高級に準ずるキャッチコピーを冠すれば、それも高級車とされることがある(例として、トヨタヴェルファイアは300万円程度から購入可能であるが、「その高級車は、強い」というキャッチコピーが与えられている)。


日本車においては実際の所、例えばアッパーミドルクラスのマークXと高級車扱いされるクラウンISGSでは見た目はともかくエンジンやプラットフォームに関しては同じものを使用しておりこれらの法則が当てはまりにくい。また、下位車種でもグレードによってはスペック上は上位車種より高級(排気量が大きい、装備が充実している、など)であったり、下位車種の上級グレードの方が上位車種の下級グレードより高額である、などといった逆転現象も散見される。


高級車のカスタム化

本来、高級車の特徴である『走行性能・静粛性能・居住性』を、ユーザーによる改造(カスタマイズ)で損なっている高級車も数多く見られる。ローダウン・ホイールのインチアップなどがその代表である。バネなどを社外品に交換し車高を下げること、また大口径ホイールの導入に伴うタイヤの偏平率の低下。また、車高を下げたことによる走行上・実用上の障害(段差がある店には入れなくなるなど)も生じる。価格や税金は高級車の定義に当てはまっているが、走行性能・静粛性能・居住性を損なっている点は、果たして高級車と呼べるのか疑問だという指摘もある。しかしながら、この様なカスタムシーンは近年において広がりつつあるとされており、社外品だけでなくメーカー自身からも、大口径ホイールやエアロパーツ装着車、カスタムメイドモデルなどが発売されている。


日本における高級車

概要

第一次世界大戦前後から第二次世界大戦前後にかけては、高級車とは即ち輸入車、その中でも特に多くを占めたのはアメリカ車であり、上流階級や富裕層の間ではパッカードやクライスラーやキャデラックなどが使われていた。また一部の愛好家の間ではイギリス車やフランス車、ドイツ車も使われていたもののあくまで少数派であった。


しかし第二次世界大戦後の混乱期を抜けるとともに、1955年には国産初の高級車であるトヨタクラウン、1960年には日産セドリックが登場し、高級車の需要は次第に国産車へも広がった。国内2大メーカーからは、1965年には日産プレジデント、1967年にはトヨタセンチュリーという最高級乗用車も発売されている。かつて憧れの存在であったアメリカ車は、信頼性の低さや燃費の悪さ、大きすぎるサイズなどから、1970年代の2度のオイルショックを通じて人気が失墜した。


1980年代に入るとメルセデス・ベンツBMWなどの欧州車が、現地よりも高い価格設定で高級感を煽り、国産車を上回るステータスシンボルとして高級車市場を席巻していった。さらに1980年代後半から勃興したバブル経済(および物品税の廃止)は、日本に空前の高級車ブームを引き起こした。クラウンやマークⅡセドリックグロリアローレルは売り上げを伸ばし、1988年には個人向け乗用車として初めて全グレード「3ナンバー」登録となった日産シーマが登場、時流に乗って大ヒットとなり「シーマ現象」なる言葉も生まれた。1989年の税制改正(消費税導入に伴う物品税の廃止)以前は、排気量2リットル超であるか一定以上のボディサイズを持つことを意味する「3ナンバー」登録の乗用車は、その税額の高さから当時の日本においては押しなべて高級車と見做されていた(3ナンバーの乗用車は物品税が23%掛かるため庶民にとって高嶺の花であった。例えば車両本体価格300万円の3ナンバー車には69万円の物品税が掛かっていた)。


1990年代中盤以降、ファミリー向けの乗用車としてツーリングワゴンSUVミニバンが人気を得た。それに伴いセダンの販売量は大きく減少するが、高級車に限ってのセダン需要は堅調であった。2005年、トヨタ自動車が国外で展開していた高級車向けブランドであるレクサス日本でも導入され、1997年以降景気低迷による販売減少となっていた高級車市場の需要喚起が期待された。2006年にはレクサスの最高級モデルであるLSが発売され、1000万円前後の価格帯であるにも関わらず好調な販売台数を記録した。一方でレクサスブランド全体の販売台数はトヨタの思惑を大きく下回っており、プレステージブランドとしてのレクサスの浸透に苦戦している。


また、ホンダが日本国外で展開する高級車ブランドであるアキュラや、日産も同様に国外で展開しているインフィニティがあるが、現時点においてレクサスのような国内市場への展開予定はない。


皇室が用いる車両

日本の皇室では、御料車としてデイムラー、ロールス・ロイス、メルセデス・ベンツやキャデラックなど輸入車が使用されていたが、1967年以降は日産・プリンスロイヤル(1967年-)やトヨタ・センチュリーロイヤル(2006年-)などの日本車(国産車)を使用している。


環境対策

エンジンの改良や電気モーターの併用、排気系の改善などによる、燃費や環境負荷の改善が行なわれている。 また、燃料の種類により、生産及び消費のそれぞれで相応の環境負荷が異なる。


ハイブリッド高級車

トヨタ自動車が先行するガソリンエンジンでのハイブリッド技術は環境志向の高まりとともにイメージと販売に寄与している。これは、減速時などの運動エネルギーをバッテリーへ回生し、加速時にモーターで使用することで、市街での燃費性能を20%前後改善できるためである。世界で初めてハイブリッドシステムを搭載した高級車はレクサスRX(2005年)であり、2007年のイギリスにおけるレクサス車の販売は当初想定していたレベルに達しないものの、過去最高を記録しており、そのおよそ1/3をハイブリッド車が占めた。その後、ヨーロッパメーカーのメルセデス・ベンツからもハイブリッドカーが発売され、BMWインフィニティなどもそれに追随している。


ディーゼル高級車

ヨーロッパ系メーカーでの導入が先行するクリーンディーゼル技術も、ハイブリッド技術同様環境志向の高まりとともにイメージと販売に寄与している。高速・長距離の走行では、ハイブリッドカーを上回る燃費と環境性能を発揮するため、ハイブリッドカーとの比較が行なわれることが多い。また、多くのメーカーで今後クリーンディーゼルでのハイブリッド機構を予定しており、その場合の燃費性能は、ガソリン車に比較しおおむね半分程度になると予想されている。また、燃料の生産時の環境負荷においても、バイオディーゼルを筆頭とする低負荷化が推進されており、将来時に発生する環境負荷は、現在のガソリンエンジンの1/4程度。ガソリン+ハイブリッドエンジンの1/3程度となることが予想されている。日系メーカーも、インフィニティが2010年よりヨーロッパ市場向けにクリーンディーゼル車を投入する。


主な高級車ブランド

決まった定義が存在しないため、しばしば、個々の嗜好やイメージによって、同一車種やブランドでも、高級車として見られるケースと、見られないケースが存在する。こうした場合、一方の側面(特にメーカー側)から高級車として広告がされていても、世論的な同意が得られていない場合、同意を行なっていない層から、「自称高級車」との表記で、それらの層が「高級車」として扱っている車種やブランドと区別しようという動きが一部に存在し、帰結のない論争となることがある。これはセダンクーペと言ったジャンル分けのように何らかの形状やスペックで区別できるものと違ってスポーツカー同様に明確な基準を持たないジャンルである以上致し方ないと言える。


主な高級車として認知されているブランドも大衆車メーカー化していることに加え、希少性も失墜しており、何が高級車ブランド、そしてその中の高級車かという議論は尽きない。現在では、500万円(日本円換算)以上をさす場合や1000万円以上の販売価格で、各ブランドのフラッグシップモデルのみを指す傾向もある。一例としてジャガー=XJ、メルセデス・ベンツ=Sクラス、BMW=7シリーズ、トヨタ=センチュリー、日産=プレジデント、レクサス=LS等である。しかし日本では、メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどは様々なメディアにおいて「プレミアムブランド」と宣伝され、最廉価で欧州では1万ユーロ台からあるAクラス、1シリーズ、A1などでさえ「プレミアムコンパクト」として扱われている。


他に、ショーファードリブン(専従運転手付きの車)の性格が強いセンチュリーやプレジデント、マイバッハなどを除外しオーナードライバーズカーの中での比較検討をしている評論家もいる。


自動車メーカーは世界的に活動するようになり、世界の各地でそれぞれに販売活動をおこなっている。高級車だけを販売している独立メーカーはほとんどなくなった。高級車は企業イメージを高めるが販売数は一般に少なく企業全体への収益貢献は少ない。その一方で、大量販売可能な廉価な大衆車は堅実に企業収益を支える。企業イメージを高めながら経営を安定させるために、複数ブランド商品群を地域別所得対象別など戦略的マーケティングの道具として使う。複数ブランド所有を一からおこなうのは時間とコストがかかるため、価値ある自動車ブランドは頻繁に売買の対象となっている。自動車メーカーの意思決定はすでに国を超えたところでなされておりドイツを本拠とするフォルクスワーゲングループでも多ブランドで多国籍での販売活動を統括している。同社はかつて「フォルクスワーゲン」のみの大衆車メーカーだったが、1990年代から傘下に組み入れたシュコダ、ベントレー、ブガッティを含めてクラシカルな高級感を強調するのが現在の戦略である。この戦略上にフォルクスワーゲンブランドでのトゥアレグ、フェートンの発売もあった。一方、同じく買収したアウディ、セアト、ランボルギーニで構成している「アウディ」部門ではハイテクさとスポーツ路線を強調している(フォルクスワーゲングループ#フォルクスワーゲン・グループ自動車部門)。


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