※この記事には、『ヒーリングっど♥プリキュア』の核心につながるネタバレが記載されています。本編未視聴者は、十分に閲覧注意。
概要
『ヒーリングっど♥プリキュア』のオープニング主題歌「ヒーリングっど♥プリキュア Touch!!」の歌詞の一部である。
単にこの楽曲の歌詞だけを読み取ると、 「この出会いが運命」 というフレーズはプリキュアとヒーリングアニマルとのパートナー関係を示していることは明らかであり、それ以上の別の意味を見出すことはできない。
しかし、OPアニメでは主人公のキュアグレース/花寺のどかと敵・ビョーゲンズであるダルイゼンが対峙するシーンに合わせてこの歌詞が歌われてしまっており、まるでのどかがダルイゼンと出会ったことに意味があるかのように感じられてしまうのである。
ダルのどのCPが誕生した原点も、このOPアニメが最初のきっかけである。
同じく歌詞の一部である 「生きてるって感じ」 というフレーズも、のどかとダルイゼンの双方の口癖として使われているため、2人には何かしらの過去があることを示唆されていた。
交わる運命
と思われた矢先に第27話、第28話でこの歌詞の『真の意味』を知ることとなる。
のどかとダルイゼンはお互いの真実を知ったことでさらに深い関係となる。2人に待ち受けている運命の果てはどうなるかが今後の焦点になるだろう。
流転するダルイゼンの運命
第41話の終盤、のどかがラビリンといつもように早朝のランニングをしている最中、突然ダルイゼンがやってきた。
「ハァ…ハァ…見つけた…」
しかし、いつもと違って、傷つき息づかいが荒い状態であった。
「いいからよこせよ、その体!」
いきなり、のどかの肉体を求めてきたダルイゼン。
のどかは怯えつつもプリキュアに変身して対峙する。だが、ダルイゼンの戦い方はいつもと違っていた。いつものような飄々とした態度はなりを潜め、必死の形相で焦りを見せている。
実は、キングビョーゲンがダルイゼンを自らの一部と取り込もうとしていたことが発覚し、ダルイゼンはそれを恐れて逃亡したのだ。
そして、逃げる彼を追うキングビョーゲンによってダルイゼンが深い傷まで受けていた。
満身創痍でまともに戦うことができず、倒れてしまうダルイゼン。
その様子の困惑するグレースに、ダルイゼンはなんと命乞いをしてきた。
「助けてくれ……クッ…このままじゃ…おれはおれじゃなくなる…消えてなくなる!」
「頼む、キュアグレース……お前の中におれを匿ってくれ…」
のどかはダルイゼンを育てた宿主であるため、のどかの肉体に再び宿ることで傷が治せるとダルイゼンは言う。
ダルイゼンはグレースの腕に差し伸べようとしたが、グレースは恐怖のあまりその腕を払いのけ、その場から逃走してしまう。
逃げるグレースの後ろ姿にダルイゼンは絶望し、恨み節を言い放った。
「おまえ…おれに言ったよな!? 自分さえよければいいのかって…!」
「結局お前も同じじゃん!」
その言葉はのどかに重くのしかかる。
恐怖でパニックになったからとはいえ、のどかは助けを求める相手を見捨てる選択を選んでしまった。それは揺るぎない事実なのである。
はたしてのどかは、自身の選択に対してどのように向き合うのだろうか…。
のどかの選択、その苦い結末
第42話、のどかはダルイゼンの事を気にかけており、学校でぼーっとしてしまう。
それを見ていたラビリンはのどかに本心を聞く。
長年の病気やメガパーツを取り込まれて苦しんだりしていたので、もうあの経験はしたくないから助けたくないという。
するとラビリンは助けなくていいという。自分を犠牲にしたり、悩む必要は1つもない。自分の気持ちに素直になればいいと言い、のどかはようやく答えを見つける。
一方でダルイゼンはボロボロのまま下水道に逃げており、そこで大量のメガパーツを自分の体に取り込み、進化して地球を蝕む。
しかし自我は残っており、キュアグレースに助けを求めるが、グレースは自分の気持ちをぶつける。
「そしたらわたしはどうなるの!?」
「いつまで!?」
「あなたが元気になったらどうするの!?」
「あなたはわたし達を、地球を、二度と苦しめないの!?」
このグレースの言葉に、ダルイゼンは怯み、何も答えられなかった。
「わたしはやっぱり、あなたを助ける気にはなれない!」
ダルイゼンは彼女の言葉に項垂れ、絶叫して辺りを攻撃した。
「ダルイゼン。あなたのせいで、わたしがどれだけ苦しかったか、あなたは全然わかってない!」
「わかってたら地球を、たくさんの命を、蝕んで、笑ったりしない!」
「都合のいい時だけ、わたしを利用しないで!」
「わたしはあなたの道具じゃない!」
「わたしの体も!心も!全部、わたしの物なんだからー!」
ダルイゼンを浄化すべくプリキュア達はファイナルヒーリングっど・シャワーを撃ち込んだ。完全に浄化するつもりで技を放ったが…。
「おれだって…おれの体も…心だって…!」
ダルイゼンは浄化しきれず初期形態に戻り気を失って倒れ込んだ。
そこにシンドイーネが現れた。
「バカね。あんなに派手に暴れちゃ、見つけてくれって言ってるようなもんじゃない。」
彼女はかつてダルイゼンにメガパーツを分けてもらった恩も忘れ
「キングビョーゲン様! ダルイゼンは、こちらでーす!」
と容赦無く彼の所在をキングビョーゲンに報告した。
「フッ。ようやくか…。」
そしてキングビョーゲンが降臨し、彼を吸収しネオキングビョーゲンへと進化した。
結果だけを見れば、プリキュアとダルイゼンの戦いの結末は「キングビョーゲンの漁夫の利」であり、ネオキングビョーゲンはダルイゼンを助けなかったキュアグレースを「ダルイゼンを見捨てながら、地球のみんなと全てを守ると言うか。ずいぶんな思い上がりだ」とあざ笑った。
キュアグレースは顔を歪めた。その心の内は視聴者には分からない。
彼女が選んだ運命の選択は、本当に正しかったのか?
…だが、もう別の道は無い。
彼女は迷いを振り切るように
「ダルイゼンを追い詰めたのは誰?あなたに言われたくない!そんな言葉には負けない!わたしは絶対あなたを浄化する!それがわたしの今の気持ちだよ!」
と言い返し、ネオキングビョーゲンに敢然と立ち向かった。
そして、ネオキングビョーゲンは倒され、ダルイゼンは分離すること無く浄化された。
これが二人の運命の結末である。
もう一つの意味……
第29話からはOP映像は『映画プリキュアミラクルリープ_みんなとの不思議な1日』の公開に向けた仕様になっているが、ここでは当該歌詞のところはヒープリチームと先輩チームの邂逅シーンに重なっており、こちらは「この出会いが運命」と呼ぶに相応しい感動的なものとなっている。
余談
シリーズ構成・香村純子氏によると、
2021年アニメージュ3月号のインタビューで語っており、更にはキュアグレースに命乞いしたダルイゼンが拒絶され退場する42話の内容については1話の時点で既に決まっていたと2021年アニメージュ3月号のインタビューで語っている。
即ち和解することなく全員倒し、誰かがナノビョーゲンになりキュアアースの体内に吸収する路線(シンドイーネが選ばれた)は初めから決まっていた訳であり、コロナ禍を抜きにしても香村氏も多少携わっていたピカリオや、もっと遡ればこのお方のように脚本変更で生き残る事も難しかったようだ。
また、花寺のどか役の悠木碧氏は第43回アニメグランプリ声優部門1位の受賞インタビュー内で、主人公花寺のどかの選択は視聴者への問題提起であるとし、
「『ヒーリングっど♥プリキュア』は『のどかが優しい自分のままでいられる世界とは?』を1年かけて提示してきた作品です。
のどかは、頑張り屋で他者に優しさを与えすぎてしまう部分もありました。
でも、『自分を大事にすること』が周りの人たちの幸せに繋がる事を学んで。第42話では、ダルイゼンというヒール役を滅ぼすかどうかという展開がありました。
視聴者の方はきっとのどかと一緒に『正義とは何か』を考えてくださったでしょうし、のどかの選択には賛否両論があったと思います。
私は、あのエピソードは『のどかの選択は正しい』ということを伝えるのではなくて、『あなたはどう思う?』と問いかけているのではないかと思っていて。」
―正解だと主張するのではなく。
「感じ方は人それぞれなのだと。それはこの作品に限らず、世のアート作品すべてに言えると思います。」とコメントしている。
ダルイゼン役の田村睦心氏は、『ヒーリングっど♥プリキュア』オフィシャルコンプリートブック内のキャストスペシャルメッセージで、ダルイゼンとのどかの関係について「まさかこういう関係だとは思いませんでした。ついついのどかちゃんとの恋愛模様を妄想してたんですけど、見事に悪役しかしないのでこれは恋愛にはならないかもなとも思いました。」「主人公と何かを期待しちゃうイケメンでしたけど、彼は最初から最期まで一貫してのどかちゃんにとって悪だったなと思います。」「もうちょっとやさしさがあって、絆を深めてたらもしかしたらもしかしたかもしれないって、私は思っちゃいますけどね。」と話している。
『ダルイゼンの宿主だったキュアグレース/のどかに何かひと言言うとしたら?』という質問に対しては、「苦しませるばっかりでごめんなさい!苦しい決断をしなくちゃいけなかったのは本当に辛かったと思います。それでも、自分の心と身体を守ってダルイゼンを拒否したのは、とてもいい決断だったと思います。自分を犠牲にする人が少しでも減りますように。」と答えている。
アニメージュ8月号でのインタビュー内では、シリーズディレクターの池田洋子氏は「ビョーゲンズが消滅したからといって、すべて終わってせいせいしたなんて、のどかは思っていません。キングビョーゲンを滅ぼしたこともダルイゼンを見捨てたことも、自分の責任と受け止めていると思います。ダルイゼンを助けたい気持ちはあった。だから苦しんだんです。最終的に彼を突き放したという事実は、のどかがこの先も抱えていくものだと思います。」と答えている。
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