※この記事には、『ヒーリングっど♥プリキュア』第27〜28話で起こった事件のあらまし、および関連したその後の展開が正確に記載されています。本編未視聴者は、ネタバレ注意。
概要
「……やれやれ………」
「またおまえか………」
「折角これを………」
「……そうだ。キュアグレース」
「……おまえを使って育ててみるってのはどうだ?」
『ヒーリングっど♥プリキュア』第27話の終盤でダルイゼンの襲撃を受け、ビョーゲンズの苗床となるべく下腹部に種を植え付けられた花寺のどか。
事件の経緯
第27話
グアイワルの召喚したメガビョーゲンを見事撃退したプリキュア達。
エピローグシーンでは川辺を舞台に、両親、沢泉ちゆ、平光ひなた、風鈴アスミ、そして気球サークルの面々達と打ち上げを嗜む花寺のどかとラビリンという平和な場面が描かれていた。
だがその最中、遠くの方で妙な音を聞きつけたのどかは、真意を探ろうと川辺に面していた森へと向かう。
そこにいたのは、メガパーツを片手に森に佇むダルイゼン、その姿だった。(この際、すぐ近くに成体の鳥が数羽いた事から、ネブソックの際の失敗を活かして成体の鳥(おそらくカラスだと思われる)を素体にしたビョーゲンズを作ろうとしていたと推測できる。)
まさに鳥にメガパーツを埋め込もうとしていたその時、瞬時に変身したキュアグレースに「待って!」と呼び止められ、「何をしようとしてたの!?」と問いただされる。これに不機嫌な態度を取るダルイゼンだったが、すぐにさらなる考えを思いつく。
そして、上述の言葉を言い放った後、「何を企んでいるの!!」と迫ってきたグレースの下腹部に
メガパーツを埋め込んだ。
叫び声を上げるグレース。腹部からは赤黒い禍々しいエネルギーが溢れ、ラビリンの宿るヒーリングステッキを落とし、その場で倒れて意識を失ってしまう。
腹を抱えてうずくまるグレースをまるで嘲るような表情で見下ろすダルイゼン。
彼女にラビリンの呼び掛けは届かなかった…。
第28話
第28話では下腹部に埋められたメガパーツがのどかの体を蝕み、のどかは幼少期と同じような病状を再発させてしまう。
そのまま入院することになるが、人間の医学では原因不明であり手の施しようがない。
苦痛に喘ぐのどかに何もできないラビリンは自分を恥じるが、逆にのどかに励まされる。ラビリンの「何としてものどかを助けたい」という思いが極限まで高まったとき、ラビリンから不思議な光が放出され、それを受けたのどかが今まで以上に苦しみ出す。ラビリンはパニックになるが自分から発する光を止められない。
だが、その光はただのどかを苦しめるものではなく、体内に埋め込めれたメガビョーゲンの因子を排出させるために抗体反応を起こしていたのだ。のどかがこの苦しみに耐え抜いたとき、のどかの体から黒い闇のような「何か」が出ていった。これによりのどかの病状は快復したが、排出された「何か」は人間の少年の姿をとって実体化する。
この少年こそ、のどかの中で育った新たなるテラビョーゲン、ケダリーであった。
そしてのどかは仲間とともにプリキュアに変身しケダリーに立ち向かうことになる。
その戦いの顛末は当該項目にて。
ケダリーがテラビョーゲンとしては未成熟であったがゆえに、この戦いはプリキュア側の勝利に終わった。しかし、その一部始終を遠巻きに見ていたダルイゼンは、ケダリーがあまりに自分と似ていたことで一つの確信を得る。
それは、自分を生み出した「宿主」が幼い頃ののどかであったということ。
メガビョーゲンの種がまだ小さい幼児だった頃ののどかを襲ってその体内に潜り込み、何年もかけてダルイゼンという存在を育てていたのだ。
のどかの病気は体内にダルイゼンの種を宿していたから発症したものであり、そして完全に成長したダルイゼンはのどかの体内から自ら出ていった。ダルイゼンの記憶はこの時点から始まるので、宿主のことは覚えていなかったのである。
だが、今となっては確信できる。この花寺のどか/キュアグレースこそが、自分を育てた存在であることを。
「フッ・・・ まったく、面白い」
ダルイゼンはそう呟くと、どこか嬉しそうな笑みを浮かべ、のどかに対してこの事実をあえて暴露し、撤退していった。
病状を回復させたのどかは両親を安心させ、またいつもの笑顔を取り戻すが、その心中の覚悟を表すモノローグが流れて28話は幕を閉じた。
「わたしがダルイゼンを生み出したのなら、わたしがなんとかしなきゃ…」
反響
キュアグレースがダルイゼンにメガパーツを投入され倒れ伏すという、衝撃的な27話のラストにファンの間では大きな衝撃が走った。
(あわや闇堕ちか、と想像した視聴者もいた。)
また、のどかが生み出すことになったケダリーが、外見が「人間の男の子」にしか見えず明確な知性を持った存在であったにもかかわらず、プリキュア側が一切の躊躇も葛藤もなく攻撃を続け浄化消滅させたことについても、様々な議論が巻き起こった(これまでのプリキュアシリーズでは、「人間の見た目をした敵」をプリキュア側の攻撃によって消滅させることは長らくタブーとされていた。プリキュアタブーの項目も参考)。
プリキュアシリーズに数多く参加している演出家の田中裕太(本作ではオープニングアニメを担当したのみで各話演出には参加していない)は、いち視聴者としての感想として、一連の流れが今までのプリキュアシリーズではあまり見られないパターンであることを認めつつ、シリーズ構成の香村純子が特撮畑の出身であることも作風に影響しているのだろうという分析をツイッターで行なっている。
確かに「人間に寄生して仲間を増やす怪物」というものは特撮では定番モチーフの一つであり、特に昭和ライダーや昭和ウルトラマンでは飽きるほど使われてきたネタである。そう考えると別に奇を衒ったわけではなく、単に香村の考えるヒーローものの王道をプリキュアでやってみただけなのだろう。
ケダリーが人型であっても躊躇する展開にしなかったのも、特撮では着ぐるみの怪人も俳優顔出しの敵幹部も等しくヒーローに倒されるのは当たり前だからと言えるかも知れない。
また、実のところ放送の最初期から「のどかの病気が再発する話がくるのでは」「のどかの病気が何かを明示してないのは、ビョーゲンズのせいで病気になったので原因不明ということなのでは?」という推測は視聴者の間では当たり前にされていたので、今回の流れは「恐れていたことが現実に」という意味では多くの視聴者の予想の範疇ではあった。
余談
- コロナ禍による放送延期が無かった場合、恐らくこの回は7~8月に放映されるはずだったものと思われたが、本来の放送回は8月23日に放映されたはずと思われる。
- 第27話の最後のシーンは映画のエンディングエンドロールに映っている。
その後の展開
第41〜42話では、のどかが「ビョーゲンズの宿主」であるという運命に再び対峙しなくてはならない展開が訪れる。
そして、のどかは強い覚悟をもってある選択をした。
詳細はリンク先を参照。もちろんネタバレ注意。