概要
「モンスターハンターワールド:アイスボーン」にて初登場した古龍種であり、本作のラスボス枠。
別名は「地啼龍(じていりゅう)」。「啼」は鳥や獣の鳴き声という意味を持ち、転じてアイスボーンの重要キーワードである“歌”と関連付けたネーミングであると思われる。
作中において「大いなる存在」と呼ばれており、レイギエナの大移動、イヴェルカーナをはじめとした古龍たちの活性化、そして渡りの凍て地で頻発している地殻変動騒動の全ての元凶。その存在自体が地脈に多大な影響を与えているという途方もない影響力を持つ古龍である。
ストーリー終盤、各地で引き起こされていた異常現象の調査報告をそれぞれ照らし合わせたところ、上述の異常現象すべてが大陸の地脈回廊に沿うように螺旋状に発生しているということが明らかになった。そして地脈回廊(螺旋)の延長線上、はるか彼方に未確認の孤島が確認され、そこに「大いなる存在」がいるのではないかという推論も導き出された。
調査班リーダーは主人公と編纂者、そしてフィールドマスターら一部ハンター達を調査隊として抜擢、一同は地脈の中心地とされる「淵源の孤島」へと調査に赴くこととなる。
戦闘能力
大地の唄への震慄
戦闘開始直後は全身を岩で覆っており、一見すると四足歩行のゴーレムのよう。しかしそれ以上に目を引く箇所といえば、背から伸びている今まで見たことのない異形の翼だろう。巨大な4本指の拳にも見えるそれは見かけ倒しなどではなく、激しく地面に叩きつけたりツメを立ててブルドーザーのように突進してきたりと見た目通りの豪快で高威力な攻撃を仕掛けてくる。
また、アン・イシュワルダはこの翼を地面に突き立て振動させることで地盤を一時的に流砂に変えてしまうのだが、その際に鼓膜を震わせる生き物の鳴き声のような甲高い音色が響き渡る。これこそが今作の調査の要になっていた、大陸を越えて古代樹の森にまで届いた“歌”の正体である。
この流砂が中々に厄介で、移動速度や回避距離が低下するばかりか、アン・イシュワルダの攻撃に連動して爆発を起こしてしまう危険地帯となる。さらにアン・イシュワルダの攻撃には振動を伴うものが非常に多いため、流砂で身動きが取れなくなっているところに攻撃の振動で追い打ちをかけられ再び動けなくなる…なんてことも。「水場・深雪適応」と「耐震」は必須スキルといっても過言ではない。
上述の通り高い攻撃力と硬い肉質を持つが、その代わり動きは鈍足で頭部と胴体には攻撃がよく通るようになっている。戦闘中に受付嬢が部位破壊のヒントを教えてくれるのでガンガン攻撃して岩を剥がしていこう。
また、ぶっ飛ばしで壁に激突させても怯むのみでダウンは取れないが、マップ上で罠アイコンがある(明るく黄色みがかっている)壁にぶっ飛ばしをすると落石が発生、ダウンした上で大ダメージが狙える。
順調に頭部や胴体を部位破壊していくと、突如BGMが不穏な雰囲気を帯び、なんとアン・イシュワルダが自ら全身の岩を剥がし始める。
岩々が地面に落ちる衝撃で姿が見えなくなるほどの猛烈な砂埃が舞い―――
「…ッ!?あの姿は…!?」
やがて砂埃の中から姿を現したかの龍は、先程まで対峙していた時とは全く異なる姿を呈していた。
一幻華
全身の岩が剥がれきると、前作のラスボスを思わせる巨大な龍が姿を現す。
この形態に変化すると、直後にすさまじい咆哮を上げ周囲の岩壁が吹き飛びエリアが広くなるギミックが起こる。
岩に隠れていた真体は蓮の花が天に向かって捻じ曲がったような慈鱗に覆われ、露わになった尊顔はまるで目を閉じた般若の面のよう。開かれた口内には牙ではなく人間に似た臼歯が並び、翼膜を完全に失い鋭利になった翼は飛行よりも攻撃に特化した形状に進化している。
第一形態のような物理的な攻撃に加え、翼の先端からは細い振動波を発射するようになり、翼の先端を一か所に収束させて放つ強力な超振動波でハンターを仕留めにかかる。また、自身の周囲程度に収まっていた流砂の変化範囲がほぼフィールド全域に広がるなど全ての攻撃のスケールが大きく、また一つ一つが第一形態に劣らぬ威力を誇るため、装備を十分に固めていないと一瞬で体力が溶けてしまう。
特に収束した超振動波は、アカムトルムのソニックブラストもかくやといったマップの端から端まで届く超射程距離を誇り、あまりの威力に発射している本人(龍)が後ずさりしてしまうほど。しかも、アカムトルムの大技であるソニックブラストと違いアン・イシュワルダの超振動波はあくまで通常攻撃なので、さも普通のブレス攻撃であるかのように連発してくる。おまけに多段ヒットするためガードは厳禁。当たれば剣士でもお陀仏一直線なので緊急回避などで対応しよう。
形態変化前と同様ぶっ飛ばしだけでは怯むのみに留まり、ダウンさせるにはマップの罠アイコンの場所で落石を狙う必要があるが、あまり能動的に動かない上に攻撃によって岩壁が破壊されてしまうため、狙うには運が絡む。
更にダメージを与えていくと、咆哮と共にギョロリとした曼陀羅のような眼―――慈眼が見開かれ、プレイヤーに第二形態の不気味さをより強く実感させる。
この開眼したアン・イシュワルダが放つ最大の必殺技が、『入滅蓮華劫珠砲(にゅうめつれんげこうじゅほう)』である。
アン・イシュワルダが流砂に潜行しフィールド端に現れたら発動の合図。人間の腕のように翼を上げ、空間に超巨大な振動波の塊を形成、一瞬の静寂ののち流砂の中央へ解き放ち、フィールドが一切見えなくなるほどの砂塵と衝撃波を含んだ大爆発を引き起こす。威力は超振動波の約2倍で、ガード強化をつけてもガード不可。生半可な防御力では体力増強をつけた剣士でも即死は免れない。
…だが、この攻撃の一番の恐ろしさはその威力だけではない。
アン・イシュワルダは『入滅蓮華劫珠砲』を投げた直後からもう次の攻撃行動に移っている。
そのため、『入滅蓮華劫珠砲』の砂塵で何も見えないフィールドから突然現れた超振動波によって乙っているというハンターが後を絶たない。画面を埋め尽くす大爆発も轟音も避けられて一安心していたハンターたちなどつゆ知らず、鈍い音を立てながら砂塵を切り裂いて突然飛んでくる超振動波は、十分すぎるほどにハンターらに恐怖を植え付けることだろう。
安置はアン・イシュワルダの懐、反対方向のフィールド端、そして流砂になっていない通常の地面の上だが、上述の不意打ちを食らう確率を減らすために足元などに張りつくのが最善か。幸い『入滅蓮華劫珠砲』を撃った後は全ての流砂が吹き飛んで通常の地面に戻るため、直後の攻撃モーションをしっかり見極めて立ち回ろう。
熾烈な戦いの果てに地啼龍を打ち倒した主人公。後を追いかけてきた編纂者や1期団の面々と無事を喜び合ったのも束の間、背後で倒れていたアン・イシュワルダは突如ギョロギョロと慈眼を動かしながら息を吹き返すという驚異の生命力を見せ、再び調査団一行に襲いかからんと咆哮を上げる。
しかしその時、同じく先の戦いで生き残っていた大自然の自浄作用の襲撃によって引導を渡され、『大いなる存在』は淵源の真中にてついにその息の根を止めたのであった。
これは、シリーズ内において「古龍が外的要因によって死ぬ」ことが明確に描写された初例となった。(ゼノ・ジーヴァは討伐はされたが生死描写だけはぼやかされていた)
なお、ゼノ・ジーヴァと同じく、『アン・イシュワルダ』という名前はクリア後にギルドが命名することで判明する。
部位破壊
頭部と両前脚が部位破壊可能。頭部は二段階破壊であり、完遂すると頭殻の一部が欠け落ち、そこから2回剥ぎ取りができる。
準レア素材である地啼龍の慈眼殻、及びレア素材である地啼龍の顕玉を高確率で入手できる部位なのでなんとしてでも狙いたいところだが、部位破壊に必要なダメージと体力の関係で非常にシビア。アン・イシュワルダの頭部の耐久値は非常に高く、まず適当に戦っていてはまず間違いなく破壊しきる前に討伐してしまう。「破壊王」をLv3まで積み、前脚の部位破壊やスタンによるダウン、麻痺などで拘束して頭部に攻撃を集中させたいところ。操虫棍であれば、頭部に印弾をつけてひたすら打撃虫を飛ばすという方法でも完全破壊することができる。
なお、尻尾が切断はおろか破壊すら不可能というシリーズでも珍しい仕様を持っている。
余談
- 名前の由来だが、「アン」はシュメールの言語で「天」を、「イシュワルダ」はヒンドゥー教最高神シヴァの仏教名である「イーシュヴァラ」と思われる。
また仏教でのシヴァ神は「3つの目と8本の腕を持つ」とされ、アン・イシュワルダの額にある慈眼殻および計8本の翼脚はシヴァ神の意匠を組み込まれているのではないかと推測される。
- 「乗りシステム」がMHW…どころかシリーズ最高難度と言われている。
まず乗り中の行動のほとんどでスタミナ減少を発生させるため、別の部位に移動してスタミナ消費を最低限に抑える、という基本戦法が事実上不可能になっている。
乗り中のモーションも特殊で、アン・イシュワルダは通常のモンスターと違いハンターに乗られた状態のまま通常攻撃を継続する仕様がある。誰かが乗ったからといって迂闊に近づくと普通に攻撃を食らって力尽きかねないほどには攻撃モーションが変わらない。また、暴れた際にしがみついて耐えるタイミングが不規則な上に乗り時間も非常に長く、下手すれば40秒近く乗りっぱなしになることもある。
- かねてよりネット上では、開眼後のアン・イシュワルダが見つめているのはハンターではなくプレイヤーカメラの方向、すなわち画面の向こうのプレイヤーである我々であるという意見が多くみられた。これは、古来から絵画に使われている八方睨みという技法で、どこを向いても自分の方向を見ているような視線が特徴。有名どころでは葛飾北斎の「八方睨み鳳凰図」、京都の世界遺産・天龍寺の「雲龍図」などが挙げられる。
- 設定資料集には、シリーズの世界観から見た「学者の唱える説の一つ」として、時間と時空を超越する古龍の存在が示唆されている他、過去作には日食からなる空の歪みからとある古龍が現れる演出が見られる事から、【別次元】の存在と古龍を結び付ける描写は少ないながら存在する。上述の、プレイヤーを睨むこの地啼龍は、別次元を知覚する力が備わっているのかもしれない。
関連項目
オンラインラスボス(メインシリーズ)