概要
スローン大提督、本名ミスローニュルオドはSTARWARSシリーズに登場する銀河帝国宇宙艦隊の最高級将校であり、作中でも一二を争う策略家である。
本名が長く、また発音が難しいことから「ミスローニュルオド」(Mitth'raw'nuruodo)の真ん中部分をとってスローン(Thrawn)と呼ばれることが多い。
元々はSTARWARSシリーズのディズニー売却前のスピンオフ作品(いわゆるレジェンズ作品)が出身で、エンドアの戦いでの大敗北の後崩壊寸前の帝国残存勢力をまとめ上げ、反乱同盟から設立して間もない新共和国を滅亡一歩手前にまで追い詰めたキャラクターとして生み出された。外部の干渉の少ない惑星の出身であることや、その明晰な頭脳、特に相手の種族の文化・芸術作品などから思考回路を紐解き敵の作戦を読み解くスタイルなどから今なお絶大な人気を誇るキャラである。
その人気もあってか、ディズニー売却後のアニメ「反乱者たち」Season3でカノン(正史)作品群デビューを飾った。これ以前にも尋問官の役職等「レジェンズ作品からの設定導入」が行われた例はあったが、特にスローン大提督の登場と活躍へのファンからの反響は大きく、後に続く各作品群での同様の設定導入に対して大きく先鞭を付ける形になった。
本項では主にカノン(正史)作品群について記載する。
経歴
青い肌と赤い瞳が特徴的な、惑星シーラ出身のチスという種族に生まれる。シーラの位置する未知領域は銀河共和国にとっては開拓や調査の進んでいない辺境中の辺境として位置づけられる領域であり、中でもチスは惑星外の勢力とはほとんど交流を持たない種族であったため、クローン戦争でも参戦せず局外中立を保っていた。唯一のクローン戦争と関わる出来事というと、彼が戦場でアナキン・スカイウォーカー将軍と偶然出会ったくらいである。
しかし、共和国が解体再編成され銀河帝国が建国されるにあたり、新たにできた帝国を見極める必要が生じたチスの政府は彼をスパイとして帝国に派遣することを決定。彼はチスからの追放者を装い氷と雪の惑星に一人赴く。
彼の発した救難信号を受信した帝国軍のスター・デストロイヤーが救援に来たのだが、早速ここで帝国に罠を仕掛ける。派遣されたストームトルーパーの暗殺、原生植物を使った偽装死体の敷設、暗殺したトルーパーの装備を強奪して通信内容を把握するなど散々帝国軍の面々を翻弄した挙句、強奪したトルーパーの装備を着込んでスター・デストロイヤー艦内に潜入することに成功。その場に居合わせたヴォス・パーク提督はこの一連の行動に感銘を受け、ミスローニュルオドのシーヴ・パルパティーン皇帝への謁見を仲介。外宇宙の脅威に関しての意見が合致したミスローニュルオドはその才能を買われ、銀河帝国の軍人としてのキャリアをスタートさせるた。
とはいえ、「人間種族至上主義」が蔓延し、非人間種族特に辺境惑星出身の種族への差別がまかり通っていた銀河帝国でのキャリアはとても順調とはいえず、訓練学校でのあからさまな嫌がらせや、閑職への左遷、理解のある上官との別れや、無理解な上官との軋轢など様々な困難を経験する。
ちなみに、これらのなんやかんや、豪華にもコミック6巻分を消費して描写されている。濃密過ぎである。
最終的にヤヴィンの戦いの三年前には、「バトンの戦い」での戦功から帝国宇宙軍の最高階級の一つである大提督に列せられる。同時期、元弟子であるアソーカ・タノとの戦いで重傷を負ったダース・ベイダーに代わり帝国に仇なす反乱勢力の掃討任務を命じられ、麾下の第七艦隊を率いて出陣する。「反乱者たち」作中でもレジェンズ同様敵の美術品や文化背景から敵の作戦を読み解くという才能を披露し、反乱者たちの潜入任務を見破ると言う場面も見られた。また、少ないデータから情報を読み解く能力に秀でており、それまで反乱組織に対して後手に回ることの多かった帝国軍を見事に指揮し、一時は反乱勢力が長い苦闘の末に設置した秘密基地の所在を短期間で看破した上完膚なきまで破壊し這々の体で逃げ出さざるをえない状況にまで追い込んだ。加えて、本人の戦闘能力自体も高く、普段は試作モデルのダークトルーパー(しかも2体同時)を相手に格闘訓練を行い、「毛のないウーキー」と称される種族ラサットの戦士であるゼブと互角に格闘戦を繰り広げられるエージェント・カラスを格闘戦で圧倒するほど。再プログラムされたダークトルーパーに部下のストームトルーパー共々襲撃された際、トルーパーが瞬殺された対し、的確に対応し破壊している点からも、戦闘力の高さが窺えるだろう。
アンタ出来ないことないのか。
最終的に、惑星ロザルからの帝国軍の追放を目論む反乱軍との戦いの中、自ら反乱軍の退路を断つ作戦に出るが、彼が反乱鎮圧に当たる限りは惑星ロザルの解放は達成不可能と判断したエズラ・ブリッジャーが奇策を打ち出す。それは巨大宇宙生物「パーギル」にスローンの旗艦「キメラ」含む第七艦隊を捕捉させ、パーギルのハイパースペース能力で自分諸共どこかに空間転移させるという自己犠牲作戦だった。これによってエズラ共々行方不明となり、銀河系の表舞台から去った。
ちなみに裏では「質より量」だった帝国の理念から外れた「量より質」がコンセプトのTIEディフェンダーの開発に力を注いでいたりしたが、惑星ロザルにあった開発本拠の工場(正確には工場に供給される燃料を貯蔵していた燃料タンク)の破壊とスローンの失踪によりこのプロジェクトは水泡に帰した。最終的に「量より質」の反乱同盟が勝利を収めたことを考えると、デススターの破壊以後に彼がいれば帝国の未来は変わっていたかもしれない(もっとも反乱同盟軍の場合、「量より質」に頼らざるを得なかったと言った方が正確だが)。
だが、ドラマ「マンダロリアン」では彼の率いる第七艦隊の記章を身に付けた暗殺ドロイドが登場するなど存在を匂わせ、最終的にエズラを追いかける者の口からこの時代(ロザルの戦いでの失踪からおよそ10年後)にもなおスローン大提督がどこかに生存し暗躍していることが語られた(つまりエズラも生きている可能性がある)。
彼の今後の動向に注目したい。
また、更に後の時代を描いた続三部作において銀河帝国の復権を掲げて武装蜂起したファーストオーダーはかつてスローンが活動していた未知領域を拠点としており、TIEディフェンダーと同様にシールドやハイパードライブを搭載し個々の戦闘力と生存性を高めた新型のTIEを開発するといった活動を行っている点から、何かしらの形でスローンが帝国に遺した技術やデータを活用しているのではないかと推測するファンも存在する。
余談
- 似たような名前の帝国軍人としてレイ・スローネ提督がいる。こちらもエンドアの戦い以後の銀河情勢に多大に影響を与えるキャラクターであり、スローンと同じく閑職に追いやられながらも自らの実力と政治力を利用してのし上がり、最終的には上述したファースト・オーダーの結成にも大きな影響を及ぼす実力者である。しかもこっちも後々大提督に任命されるので紛らわしい。一応、スローン大提督の綴りはThrawn、スローネ提督の綴りはSloaneなので原語では区別がつくのだが、スローン大提督がカノンに導入される前に邦訳された作品ではレイ・スローンと表記されていることがあり、めちゃくちゃ紛らわしい。しかもよりにもよって、ファーストネームもシークエル三部作の主人公と重なっているため、紛らわしさに余計に拍車がかかっている。
- 原語版における声優はラース・ミケルセン氏。ローグ・ワンで主人公ジンの父ゲイレンを演じたマッツ・ミケルセン氏の実兄である。ちなみにラース氏は俳優として活動する傍ら声優としても活躍しており、デンマーク語版ハウルの動く城ではハウルの吹き替えを担当している。
- レジェンズにおける彼を語るのに欠かせないのが、旗艦「キメラ」の艦長でスローンの忠実な副官であり、後にスローン亡き後の銀河帝国残党をまとめ上げたギラッド・ペレオン艦長である。彼もまたレジェンズ作品群では絶大な人気を誇るキャラなのだが、スローンと彼のボディーガードである「ルク」が正史作品群で活躍する中、彼はたった一回通信で登場しただけ、しかも『パレオン』呼びだった。この扱いの差は一体なんなんだと思われていたのだが…
- レジェンズ屈指のキャラクターだけあって正式にカノンへの参入を果たす以前からネット上では「スローンを演じるなら誰が適任か」という議論が活発に交わされてきた。その中でもおそらく最も多くのファンから支持されていたのがベネディクト・カンバーバッチで、彼が『SHERLOCK』で世界的に知名度を上げた2010年代初頭、特にエピソード7の製作が発表された2012年以降から彼の肌を青く加工しスローンの衣装を着せたファンアートや映画ポスター風のコラ画像が激増し、ネット上に溢れかえるようになった。反乱者たちでミケルセン演じるスローンが登場した後も、数多くのファンが実写版キャストとしてカンバーバッチを推挙し続けていたものの、残念ながら2021年にカンバーバッチ自身がその可能性をインタビューで否定した事で実現の可能性は無くなってしまった。本人曰く「今は家族と過ごす時間を大事にしたいので、肌を青くする特殊メイクに時間を割くような役は演じられない」との事。
- 経歴の欄で語られている通り、波乱万丈な人生経験を持ち、そのなんやかんやを描写するためにコミック6巻分が消費されたのだが、実際にアメリカでは正史に組み込まれた小説「スローン」とそれを原作としたコミック版全6巻が出版されている。なお、この小説の作者ティモシィ・ザーンはレジェンズ作品群においてスローン大提督を生み出したまさにその方である。その内容は帝国とのファーストコンタクトから始まり、訓練学校での事件、艦隊勤務、海賊討伐、紛争への介入、政治工作、メスケモとの一騎打ちなど多岐にわたり、さらに反乱者たちなどに登場するキャラクターも複数登場するなど伏線も大量にあり、「もうこれスローンの大河ドラマなんじゃね?」と思わせられるレベルで盛りだくさんの内容となっている。唯一残念なのは、小説もコミック版も未邦訳である点。
- 先述の通り、レジェンズ作品群において高い人気を誇るキャラのためか帝国軍の中でも数少ないテーマソング持ちだったりする。帝国のキャラクターで個別のテーマソングを持っているのは皇帝とダース・ベイダーくらい(あと明言はされてないがクレニック長官も象徴的なテーマがあったりする)であり、あのグランドモフ・ターキンすら個別のテーマを持ってない中、異例の高待遇がなされている。ちなみに、彼のテーマ曲「Thrawn's Web(スローンの網)」はスターウォーズ音楽の中でも珍しいパイプオルガンが主体の一曲であり、青い肌と赤い瞳という異質な外見を持つ彼の独特な雰囲気を見事に表した名曲である。
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ここから先、ドラマ「アソーカ」のネタバレ注意
2023年4月に公開されたドラマ「アソーカ」の予告編にて、ついにスローン大提督が帰還することが明かされた。
演者はアニメ「反乱者たち」でスローンの声をあてたラース・ミケルセンが続投することが報じられている。
これに伴い、ドラマ「マンダロリアン」シーズン3では、レジェンズにおいて彼の忠実な副官として人気を博し、カノンでは反乱者たち最終話で通信音声のみ描写されていたギラッド・パレオン(ペレオン)艦長が登場。のちのファーストオーダーのストームトルーパー育成の責任者であり、ハックス将軍の実父であるブレンドル・ハックスと共に、モフ・ギデオンと並ぶ「シャドウ評議会」の一員として登場するという旧三部作と続三部作、「マンダロリアン・バース」諸作をつなげるキーストーンとして注目されている。
なお、この会議においてパレオンはスローンの帰還について言及しており...?
そして、「アソーカ」第6話にて、満を持して登場。
彼はエズラ、そして乗艦"キメラ"諸共パーギルに連れ去られ、別銀河の惑星ペリディアへと連れ去られていたのである。「アソーカ」での描写を見るに、連れ去られた際に"キメラ"の3基のエンジンが全損しており、元の銀河への帰還は絶望的だった様子。
それでも現地の「魔女」たるグレートマザーたちと同盟を結び、兵士たちに彼女たちの「祝福」を与えるなど、力を蓄えていた様子。そのおかげか、配下の兵士たちも変わらずスローンへの忠誠を誓っている。
しかし、スローン自身は「スローン個人への忠誠」へはさほど興味はなく、あくまで「銀河に安定をもたらす」「そのために帝国を復興させる」という目的のため、一刻も早い元銀河への帰還を急いでいた。
一方、自分をここまで道連れにしたエズラ・ブリッジャーに関しては、「生きていようと死んでようと関係ない」として、あえて追い立てる真似はしなかったが、「反乱者たちは思いもよらないことをしてくるから油断ならない」という教訓をしっかりして、油断しなくなったなど、しっかりと対策を練っている。
また、アソーカ・タノについては、彼女の師匠がアナキン・スカイウォーカーであることを知るや、警戒心を一気に最大レベルにまであげた。このことからも、彼がいかにアナキンのことを高く評価していたかわかるだろう。
そして、スローンは"キメラ"を「シオンの目」にドッキングさせ、一刻も早い銀河への帰還を急ぐ。アソーカ一行はそんな彼の帰還を止めるべく奮闘するわけだが...?