プロフィール
概要
七つの海を統べる大神、海皇ポセイドンに仕える海闘士。その最上位であるポセイドン七将軍のひとりにして、第一の忠臣。
南大西洋の柱を守護。歌声で旅人を惑わして死に至らしめたというセイレーン同様、自らも横笛の音色で相手の小宇宙を奪う技を使う。
その音色は相手の脳に直接響き、鼓膜を破っても防ぐことはできない。
また笛の音は物理的破壊力も備え、黄金聖闘士の血で強化された聖衣をも砕く。
立ち振る舞いは優雅で美しいが、実力は同じ海闘士のカノンでさえも一目おき、黄金聖闘士レベルの使い手でも相性が悪ければ苦戦は避けられない。
アニメ版では原作とは登場の経緯が異なり、ポセイドン編に先立ってアスガルド編の黒幕的な役割も一部果たしていて、主君ポセイドンの命令であれば、ためらいなく他の神を利用しようとするキャラとして描かれており、原作のキャラ設定よりもちょっと性格が悪くなっている。
作中屈指の強キャラだが、なかでも特筆すべきはその「打たれ強さ」である。アンドロメダ瞬の(黄金聖闘士魚座のアフロディーテすらほぼ一撃で倒した)決め技、ネビュラストームをまともに食らっても(柱に激突して血を吐いて落ちたものの)その後いたってぴんぴんした姿でカノンの前に現われており、またアニメ版では神闘士トップクラスのジークフリートの自爆攻撃からも生き延びる等の耐久力を持つ。
この青銅一軍並みの「頑丈さ」は、彼の戦士としての伸びしろを大きくし、十数年後を舞台にした派生作品などにも登場する「長寿性」を生み出している。またそのことが結果的に、長期間にわたって主君ポセイドンに仕える忠臣であり続けることを可能にしている。
登場の経緯
原作では、海闘士七将軍中、もっとも早く名前とビジュアルが明確になったキャラとして登場する(登場自体は海龍(シードラゴン)の海闘士が一瞬早いが、彼はある事情によってポセイドン編終盤まで顔を隠している)。
アテナ軍との本格的な戦いが勃発する前段階で、聖闘士側の戦力を削ぐべく、青銅聖闘士を抹殺する刺客として日本にやってくる。
そこで星矢たちを守ろうとする牡牛座のアルデバランと激突。闘法の相性から戦闘を優位に進めるが、その場に居合わせたアテナの威光に逆らえず、彼女を海底神殿へと案内する。
アテナ軍との闘いを、神の名のもとに地上を粛清して心清らかな人々のみの理想郷を築くためと信じており、その覇業を代行するように指示を飛ばしていたシードラゴンに対し以前から不信感を抱いていた。
シードラゴンことカノンの真の企みを知った後、この闘いがポセイドンの意志によらぬものならばすべては無意味として、天秤座の聖衣を運んでいた貴鬼を北大西洋の柱へ導き、海底神殿崩壊の手助けをする。
アテナの博愛を通じて地上はまだ希望が残されていることを悟り、自ら海底神殿を去った。
本来は音楽生であり、決戦後はポセイドンの依り代であったジュリアン・ソロと共に、償いの旅をしている。また時折ジュリアンの体に戻ってくるポセイドンとも言葉を交わし、緊密な主従関係を保っている。
キャラクター
中性的な容姿の美形で、かつ敵陣営の幹部クラス、戦いが終わったのちは改心して味方になる、という車田正美マンガで人気が出るキャラの要素をトリプルコンボで決めており、そのためか登場から30年近くが経過する今でも高い人気を保っている。
技の雰囲気や物腰、容姿などから漫画のみでは性別を間違えそうだがアニメにおけるCVなどからわかるように「男性」である(海皇再起でも自身が男であるとの発言がある)。
海皇ポセイドンの第一の忠臣で、聖闘士に対する敵愾心も強いが、敵の首領であるアテナに対しては、なぜか初対面から強い畏怖を感じ、その命令に逆らえず、「まるで臣下のように」礼を尽くしてしまう。
これは本人いわく、アテナが持つゆるぎない愛の小宇宙を本能的に感じ取り、その上で「地上にはまだ愛が残されていると認めてしまったら、自分たちがした地上粛清が過ちだと、否応なく気づかされてしまう」と無意識に感じていたためである。
また海底神殿の戦いで対戦したアンドロメダ瞬からは、「あなたは悪い人じゃない。悪い人にあんなに美しい笛の音が出せるわけがない。美しい旋律はあなたの心の清らかさそのもの」と評されている。ソレント自身はこの評を一笑に付しているが、(やや好意的すぎる感はあるものの)おそらくこれが彼の本質をもっとも言い当てている言葉である。
名前の由来は歌曲の『帰れソレントへ』から(かつては三大テノールなどがよくコンサートのアンコールなどで歌っていたポピュラーなイタリア民謡である)。歌詞には元ネタのセイレーンも登場する。
また曲の題になっている「ソレント」はイタリア・ナポリ近郊の地名。風光明媚な地中海岸の美しい観光都市であるが、オーストリア出身の音楽生がなぜこの名を名乗っているのかは不明。
技
- デッド・エンド・シンフォニー
横笛を演奏して対象の神経を麻痺させる。神経に直接作用する技のため、聴覚を破壊するという手段は全くの無意味である。実際にアルデバランも鼓膜を破壊しているものの、無効化には至らなかった。
またポセイドン編の「海底神殿の戦い」で対戦し、結果的に勝利をおさめたアンドロメダ瞬も、「笛を吹き終わる前にネビュラストームで本人をブッ飛ばす」という割と強引な方法で辛勝しているため、この技の無効化に成功した戦士は事実上存在しない。(ただし後述する「海皇再起」において「幻奏のテレプシコラ」という元・芸術の女神が、ソレントの笛とほぼ同じ原理の竪琴の音色を用いた技でこれに拮抗しているが、結果的には上位互換技を出されて敗北している)
- デッド・エンド・クライマックス
デッド・エンド・シンフォニーが最高潮に達した時、物理的な破壊力を生み出し、敵を襲う。戦いの決着をつける際の決め技。
- ヘブンリーコンチェルト
スピンオフ作品海皇再起 RERISE OF POSEIDONで初登場した技。「天上にいざなうかのような清らかに澄み切った音色と旋律」でもって悲しみを癒やし、魂を天に帰す浄化系の技(らしい)。ビジュアル的には無数の天使が飛来する絵で描かれている。
- 笛殴り
正式な技名はないが、ファンの間では人気のある闘法。文字通り手持ちの横笛で敵をぶん殴る技。一応ちゃんとした音楽家として教育を受けているらしいのに、物理攻撃に楽器を使っていいのかというツッコミが、登場当初からなされている。
対アンドロメダ瞬戦で、とどめを刺しかけた際にも使用しているので、一応ちゃんと殺傷力はあるらしい。しかし分解装着図を見るかぎりでは横笛は海魔女(セイレーン)の鱗衣のパーツではないようなので、自前(?)で用意した可能性が高い。
また格闘中に笛でもって敵の胴体部に突きを入れてもおり、こちらにも「笛突き」という技名がファンによって非公式につけられている。
なおアニメのアンドロメダ戦では、笛を使って空中に円を描き、その内側をシールドとして(クリスタルウォールのように)使う技も披露している(原作のこの場面では、特に小宇宙技を使うことなく瞬のネビュラチェーンを「カッ!」と笛で打ち返しており、シールドの技名は不明である)。
以上のように「魔性の笛の音」以外にも洗練された闘技を使いこなすことができ、あらゆる点で戦闘力の高い実力者であることが窺える。
アルティメットコスモ
2012年11月末リリース予定のPSP用ソフト「聖闘士星矢Ωアルティメットコスモ」にて
登場することがゲーム公式サイトにて判明。キャラデザ、鱗衣のデザインとも新たに起こされた。属性は水。
また、キャストは声優を引退状態にあったTVアニメ版のキャスト塩屋翼が再び登板している。
このゲームの舞台となるのは、アニメのポセイドン編終結後、推定十数年は経過している世界線であるが、ソレントはなおもジュリアン・ソロと共に旅を続けていたらしく、フルートケースを手にした旅装姿で登場する。
実はこのときジュリアンは、戦神マルスの地上侵攻の余波を受けてふたたび覚醒したポセイドンに依りつかれており、ソレントと共に絶海の孤島にある地下神殿に身を隠していた。
そしてポセイドン覚醒の小宇宙を感じ取ったアテナの使者として、その島に射手座の黄金聖闘士となった星矢が訪ねてくる。
ポセイドンに会わせろと要求する星矢に対し、ソレントはこれを強く拒絶し、戦闘となる。
アテナとポセイドン、二柱の神に仕える第一の忠臣同士が、互いの「主君であり大切な人でもある我が神を守りたい」という思いを理解しつつも、譲れない戦いを繰り広げる、いささか切ないストーリーとなっている。
またキャラ同士のやりとりを見るに、実はソレントは本音では「ポセイドン様への忠誠心は変わらないが、ジュリアン様がまた神々同士の戦いに巻き込まれることだけは避けたい。だからポセイドン様を誰にも刺激してほしくない」という矛盾した思いを抱き、葛藤しているようだ。
海皇再起 RERISE OF POSEIDON(リライズオブポセイドン)
2023年現在、チャンピオンREDにて不定期連載中のスピンオフ作品「聖闘士星矢 海皇再起 RERISE OF POSEIDON」では、七将軍中唯一の生存者であることもあって、第一話序盤から登場。
2023年7月号掲載の第四話では、義憤と神罰の女神ネメシスの配下である英魂士(スピリット)テレプシコラを相手に苦戦しつつ激闘を繰り広げ、ポセイドンの血を浴びて修復された鱗衣(スケイル)をさらに「真鱗衣(アークスケイル)」に進化させた上で、新必殺技「ヘブンリーコンチェルト」を披露している。
またこの作品において、幼少期からポセイドンに仕えるまでの経緯が一部明かされている。
ソレント自身の述懐によると、実の両親は何らかの事情で早くに亡くなり、そのあと養父母に引き取られ、比較的富裕な環境で育てられたものの、しかし彼らはすでに開花していた養子の音楽の才能を、自身の栄達の道具としか思っていないような人柄であったらしく、音楽に純粋性を求めるソレントにとっては我慢ならない俗物だったようだ。
また成長したのち、純粋な研鑽を求め身を投じた音楽学校も、傲慢と嫉妬・権力欲に満ちた泥沼だった…と本人が述懐しており、育っていく環境の中で人間や世の中への希望を失っていったようである。
自分の音楽の才や笛の音色は、心清らかな人々のみが触れるべきものであるのに、しかし世界は汚れすぎていると感じたソレントは、やがてポセイドンに出会い、地上粛清に救いをみたと語られた(回想では、ポセイドンの鱗衣自らがソレントを導きに現れている)。
だがジュリアン・ソロとの償いの旅で、様々な人々と触れ合う機会を経て人間的に成長を遂げたらしく、現在は「人間の愛は決して幻ではない」と悟って改心している。
なおこの作品の時系列は、アテナ対ハーデスの聖戦終結直後となっていて、アテナとその聖闘士たちはまだ次元の狭間から帰還できておらず、女神ネメシスによる神罰執行を止めらるのは海皇ポセイドンの海闘士、なかんずく一時的に蘇生した七将軍のみ、というかなり切羽詰まった状況下でストーリーが展開している。
そんな中ソレントは、強敵に立ち向かいながら「今度はわたしが(地上の愛と平和を)守ってみせるぞアテナの聖闘士たちよ!」と奮起。海底神殿戦での聖闘士たちのように、幾度打ち倒されてもまた立ち上がる粘り強さと、血まみれになって戦い続けるという、(海底神殿時代の彼にはなかった)泥臭い闘志を見せつけている。アテナの聖闘士たちに喫した手痛い敗北や、理想郷づくりの夢の苦い挫折など様々な経験を経て、精神的な成熟だけでなく、戦士としても一皮剥けたようだ。
余談ながら、ここで戦った英魂士(スピリット)テレプシコラは、相手のトラウマを利用して幻覚攻撃するタイプの戦士で、ソレントはかつて敗北したアンドロメダ瞬の幻影を見せられて苦戦を強いられていた。
関連タグ
ヘイムレン・シルバート、笛鬼:こちらも笛を使った必殺技を駆使する敵役。