概要
てんとう虫コミックス7巻及び、藤子・F・不二雄大全集2巻に収録。
名前の通りタヌキ(化け狸)を模した、使用者が他者に幻を見せて体感させるためのひみつ道具。ドラえもんにおける22世紀にはタヌキが人を化かすメカニズムが科学的に解明&証明されており、それを人の力で再現させた道具である。
タヌキの目回りの模様を模したメガネと、同じくタヌキの尻尾を模した付け尻尾からなる。
メガネはターゲットへの照準を当てる「照準レンズ」と、使用者がイメージした幻を増幅させて相手に伝える「アンテナつる(レーダーつる)」で構成されている。(尻尾の役割は不明だが補助増幅機とバッテリーパックの可能性がある)
幻覚系でよくある目を通した催眠ではなく、後ろを向いている相手に対して脳に直接暗示をかけるものとなっているようだ。
成り立ちおよび原理的にドロン葉の上位互換となるひみつ道具であり、ドロン葉はイヌ科の動物しか使えない制約があるが、こちらは人間でも使える上、人間に対して使用可能であり、なおかつドロン葉に存在した使用者の危機状況下でしか使えない制限が解除されている。
ストーリー
皆と会話しながら道を歩いていたのび太だったが、向こう側から歩いてきた男性が捨てたタバコの吸い殻が首元に入ってしまい、更に「まるでかちかち山だ」と言ったことでスネ夫から「ずっと前から思っていたが、のび太の顔はタヌキに似ている」と笑われ、これに同調して皆も大笑いし出した。
怒りながら帰宅し経緯を話すと最初ドラえもんはこれに激怒していたが、すぐに同じく大笑いしだした。再び怒って部屋から出て行ったが、すぐに謝りに来て「のび太が侮辱されたということは僕が侮辱されたのとおなじことだ」と言い、復讐のため「タヌ機」を取りだした。
のび太は再びバカにされたと思ってドラえもんを殴ったが、昔からタヌキが人をばかしたという話の説明を聞くと、この道具を使えばヒトをばかせるのか質問。ドラえもんのいうままこの道具を着用すると、まずドラえもんをじーっと睨みつけ、自身をタヌキだと思わせ歌を歌わせながら腹ずつみもうたせた。
外に出ると続いてスネ夫も背後から睨みつけ、この先にあった曲がり角の先の商店街を大森林に見せ驚かした。この科学文明の時代にタヌキにばかされたのだろうかと思いながらスネ夫は森林に入って行ったが、この中で道に迷ってしまい日も暮れだしたため大騒ぎし出した。
この様子を犬を連れた男子は不思議そうに見物していたが、スネ夫は見つけたぼろ屋に入って行き、本当はここはしずかの家で、彼女を着物を着た綺麗な女性と間違え、更に彼女が廊下の雑巾がけに使っていたバケツの水を美味しそうなおかゆに見えたため、がぶ飲みし始めてしまった。
だが当然の不味さだったため、怒ってしずかをキツネかタヌキが化けた姿だと言い出し、尻尾を見つけるためスカートをめくり出した。「スネ夫さんがおかしいわ」と言いながらしずかはジャイアンの後ろに隠れ、ジャイアンもスネ夫にしっかりするよう言ったが、ゴリラ呼ばわりされると顔面にパンチを食らわした。
逃げながら謝るスネ夫を笑いながら見ていたのび太だったが、スネ夫がかわしたことで自分の顔面にジャイアンのパンチがヒットし、目元のあざがタヌキのようになってしまった。帰宅後ママからも「どうしたのよ、タヌキみたいな顔して」と言われ、「ママまであんなこと言ってる」と嘆くのび太を見て、ドラえもんはあっけに取られていた。
ちなみに上記のしずかの台詞のうち「おかしくなったのよ」は現在の単行本増刷分や大全集において修正変更された物で、元々は「スネ夫さんが、くるったのよ」だった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1979年5月16日及び2002年5月3日に、水田版は2014年10月24日にそれぞれ放送している。
1979年版
- 冒頭にてのび太が話していたのは校門の前で、ジャイアンは自分は体育だけは自身があることを話していた。またタバコを投げた男性はサングラスをしていて、髪型はリーゼントをしており、手に書類は持っていなかった。
- のび太はジャイアンにパンチされるだけでなく、更に殴られていた。
- 本編終了後のショートアニメは、ドラえもんがかちかち山のタヌキに扮装したが、背負っていた薪に火がついてしまうと言うものだった。
2002年版
- サブタイトルが「タヌ機で化かそう」に変更。
- 冒頭にて一同は動物園にて動物の写生をしていて、スネ夫はサイ、ジャイアンはクローズアップした象の顔面、しずかは2羽のフラミンゴを描いていて、のび太はタヌキを描いていたことでスネ夫にからかわれた。これ故にタバコを投げ入れられる下りは描かれていない。
- のび太から経緯を聞かされたドラえもんは、「タヌキに罪はないけどタヌキに似てるって言われてどんな思いをするのか分かってない!」と腹を立て、のび太がなだめても「のび太くんは悔しくないのか!」と叫んでのび太の悔しい気持ちを確かめると、この道具を出した。またのび太は原作と同様に最初はこの道具に対してバカにされていると思ったが、殴ってはいなかった。
- のび太が最初に道具で化かしたのはおやつのどら焼きを盛ってきたママで、化かされた彼女はドラえもんを王様だと思い込みどら焼きを献上した。
- 上記の件があったためドラえもんものび太と一緒に出掛けていて、スネ夫は漫画を読みながら「せっかく新しい漫画勝ったのに、のび太のタヌキ顔思い出しちゃって漫画なんかじゃ全然笑えなくなっちゃったよ」と言っていた。そして化かされたスネ夫は旅人になったつもりでいて、入ったのはしずかの家ではなく自分ちだったため、家も大きな屋敷に、出迎えたのも母親だった。だが母親が山姥に見え、更に自分を食べようと包丁を研いでいるようにも見えたため、慌てて逃げ出した。
- スネ夫を化かし終わったのび太はドラえもんから道具を返すよう言われたが、もう少しだけとお願いし、あまり調子に乗らないことを条件に貸してもらうと、続いてジャイアンも化かして旅人にした。そして旅人になったジャイアンとスネ夫は、その後公園の砂場でさち子という少女と、一緒にいたしずかが持っていた買い物かごの中のニンジンや大根を団子やまんじゅうだと思い生のまま丸かじりしていた。
- 公園の噴水を温泉だと思わせジャイアンとスネ夫に入らせる下りが追加されていて、追いかけて来たしずかの他多くのギャラリーがこの様子に困惑しているのを見てのび太は大笑いしていたが、うっかりガラスの掲示板を見たことで自分自身が化かされてしまい、一緒に温泉に入ることとなった。そしてしずかの悲鳴を聞いてやってきたドラえもんは、この様子に呆れるしかなかった。
2014年版
- スネ夫は冒頭で、父親に買ってもらった最新型のデジタルカメラを自慢していて、この場で撮ったドラえもんの写真や、過去に撮った溝にはまるのび太の写真を編集しタヌキの姿に変えて見せバカにした。
- ドラえもんは「ネコのプライドをバカにされた!」と思っていたが、のび太はしずかに笑われたことがショックで廊下で泣き崩れていたので、「たまにはやられたらやり返すくらいの根性見せてごらんよ!」と喝を入れ、道具を取りだした。またのび太がドラえもんを殴ったのは部屋の中だった。
- 2002年版と同じくドラえもんもスネ夫を化かすのに同行していて、スネ夫が迷い込んだのは、狸と書かれた提灯が飾られていたり狸の置物が置かれた朱塗りの屋敷が並ぶ場所だった。また綺麗な女性からはタヌキの尻尾がちらりと見えていて、原作通りスネ夫は追いかけたもののスカートをめくる描写はなかった。
- ジャイアンもスネ夫と同じように化かす下りが追加されたが、街並みを楽しみ出したり、おかゆじゃ腹に溜まらないからと、おやつのどら焼きを食べられてしまった。そしてこれに激怒したドラえもんとのび太は、巨大化けタヌキになって脅かしにかかったが返り討ちにされてしまい、2人して原作のオチに至った。
ドラドラポンポコ大捜査
概要
2017年4月7日に放送された、水田版オリジナルエピソードで、こちらでも本道具が活躍している。ちなみに兄タヌキの声は梶裕貴が担当し、氏は後に映画『のび太の宇宙小戦争2021』でロコロコの声を担当している。
ストーリー
スネ夫は最近うちの庭にタヌキが出ることを話したが、ジャイアンは「どうせドラえもんでも見たんじゃねえのか」と信じなかったため、チルチルの餌を狙いに来ていることも説明。これにジャイアンは面白そうだから今すぐ見に行こうと言い出すが、狸が夜行性なため夜にしか現れないというので、その晩スネ夫の庭に集合することとなった。
そしてその晩、狸が出現しゅるとジャイアンとスネ夫は早速、捕獲用の網を発射するバズーカで捕まえようとするが間違ってドラえもんがかかったことでにげられてしまい、後を追って行った。だが2人が行った後すぐにこのタヌキが戻って来て、何かを言っているようだったので動物語ヘッドホンを使い聞いてみると、ドラえもんのことを「兄貴」と呼び出した。
そして妹を探していて、元々は町はずれの雑木林に住んでいたが、その場所が開発されたことで巣穴が壊され妹とも離れ離れになってしまったことを聞かされた。翌日、学校を理由に捜索に参加できないのび太に代わってドラえもんが手伝うことになり、たずね人ステッキを使ってみたが、先にあったのはタヌキの置物や、「田貫」という苗字の女性の家だった。
更に捜索を続けても見つかったのは路地裏にいたハクビシンだけで、おまけにタヌキから今日のお礼としてネズミを持ってこられる始末だった。それでも改めて翌日もたずね人ステッキで捜索を続け、見つけても別のタヌキだったり、入った家で犬に吠えられたりしたが、夕暮れ時にスネ夫の家の前を通りかかると、庭に置かれた餌を妹狸が食べているのを発見した。そしてこの直後、ジャイアンとスネ夫によって狸の兄妹は捕まえられてしまったが、取りだした「タヌ機」で2人を自身がタヌキだと思わせたことで逃れることができた。
去ろうとするドラえもんに兄タヌキは、これからも一緒にいてあちこちまわろうと涙ながらに訴えるが、ドラえもんは二度とこんな目に遭わないために安全な山の中に帰るよう兄貴として忠告し、一緒にいられて楽しかったことを伝えるとその場を後にした。だが翌日、ドラえもんが物思いにふけながら雲を眺めていると、この兄妹がやって来て、結局住みやすいこの町に住むことにしたと伝えられた後、妹タヌキがお礼にネズミを持ってきたため、再びこれに仰天することとなった。