概要
ニゲミズチンアナゴ(漢字表記:逃水狆穴子、逃水珍穴子、学名:Heteroconger fugax〈※a〉;ヘテロコンゲル・フガクス)は、条鰭綱ウナギ目アナゴ亜目アナゴ科チンアナゴ亜科チンアナゴ属の1種に分類される硬骨魚類(※b)。砂底地棲の細長く小さな海水魚。
2016年(平成28年)1月に鹿児島県の奄美大島と加計呂麻島を隔てる大島海峡で発見され、同年11月に1個体が採取された(※c)。その後に研究により、未記載種と判明。2018年(平成30年)に新種として記載された(※c,d,f)。
名称
学名のうち、種小名 fugax は、多義のラテン語 "fugāx(フガークス)" から「内気な」の語義を採用して命名されている。
和名の「ニゲミズ」は「逃水/逃げ水」のことで、近寄ると見えなくなってしまうことから来ている(※c)。
英語名は "shy garden eel(シャイガーデンイール[イル])" で、これをあえて直訳するなら「シャイな庭穴子」「内気な庭穴子」「引っ込み思案な庭穴子」「恥ずかしがり屋の庭穴子」などとなる。
形質
体長約70cm(※c)。体の地色はクリーム色で、微細な暗い斑点は無い(※a)。薄茶色の水玉模様と、鰓ぶたの上にある大きな半円状の斑紋が特徴(※c)。
奄美大島の沖合30mを典型地として宮古列島沖と伊良部島沖からも確認されていたが、本州の伊豆半島沖での棲息も確認された(※a,b)。
更にその後の調査で、琉球列島からボルネオ島までの北西太平洋に広く分布していることが判明した(※a)。
砂地の海底に巣穴を掘って生活しており、夜間は巣穴に籠って眠り、昼間になると前半身だけを海中に現して活動する。
昼間はその体勢のまま漂ってくる動物性プランクトンを捕えて食べたり、隣り合った同族同士で争ったりしている。
普段は巣穴から30cm以上垂直に体を現わしているいることもあるが、近付くとすぐに頭を30cmくらいの位置に保ちながら巣穴の中に姿を隠す(※a,b)。
水深約100mの泥底に個体群(コロニー|cf.Wikipedia)を形成する。確認されている個体群の個体数は40匹前後と推定されている(※b,c)。
また、水深10~12mの砂底からも発見されている(※a,b)。
なお、生態については「チンアナゴ亜科」の「形質」節にて詳説しており、シンジュアナゴも例外には当たらない。
近縁種の分類
- genus Heteroconger(チンアナゴ属)
- Heteroconger digueti (en: pale green eel, Cortez garden eel) ペイルガーデンイール(コルテスガーデンイール)
- Heteroconger fugax (en: shy garden eel) ニゲミズチンアナゴ(逃水狆穴子)… 本項で解説している種。
- Heteroconger hassi (en: spotted garden eel) チンアナゴ(狆穴子、珍穴子)
- Heteroconger klausewitzi (en: Galapagos garden eel) ガラパゴスガーデンイール
- Heteroconger pellegrini (en: mimic garden eel, speckled garden eel) ミミックガーデンイール
- Heteroconger perissodon (en: Black garden eel) ブラックガーデンイール
- Heteroconger polyzona (en: zebra garden eel, banded garden eel) ゼブラアナゴ(ゼブラ穴子)。タイプ種/模式種(type species. cf.Wikipedia1,2)。
- Heteroconger taylori (en: Taylor's garden eel) テイラーズガーデンイール
- ほか多数。
関連イラスト
現実寄り
※作品は未だ無い。
空想全開
1. 擬人化(海洋生物擬人化)。魚っ娘 (tag) になったニゲミズチンアナゴ。
2. 同じく、チンアナゴ(左下)、ニシキアナゴ(右下)、シンジュアナゴ(左上)、ニゲミズチンアナゴ(右上)。
脚注
出典等
※a Koeda, Fujii and Motomura "A new garden eel, Heteroconger fugax (Congridae: Heterocongrinae), from the northwestern Pacific Ocean " Zootaxa, 2018 May 8;4418(3):287-295. DOI: 10.11646/zootaxa.4418.3.6. ※記載論文。
※b "Heteroconger fugax Koeda, Fujii & Motomura, 2018 ." FishBace
※c 「ニゲミズチンアナゴ」 コトバンク > 朝日新聞出版『知恵蔵mini』
※d 「新種のチンアナゴ発見」 奄美新聞社、2018年5月10日。
※e 鈴木崇哉「静岡県初記録のニゲミズチンアナゴ(ウナギ目アナゴ科)の写真記録」(PDF) 『ニッチェ・ライフ 2020 Vol.8』
※f 「ちんあなごのうた」 ウタトエスタジオ「ちんあなごのうたオフィシャルホームページ」
関連タグ
- 記事がある主な上位分類 : 硬骨魚類 条鰭類 ウナギ目 アナゴ科 チンアナゴ亜科
- 記事がある近縁種 : シンジュアナゴ ニシキアナゴ チンアナゴ
- 関連記事 : 逃げ水 シャイ 内気 引っ込み思案 恥ずかしがり屋
外部リンク
- 「ニゲミズチンアナゴ」 ウィキペディア ※現状では記事は未だ無い。随時立項される可能性はあり、リンクは張ってあるので確認可能。
- "Heteroconger fugax" ウィキスピーシーズ (cf.Wikipedia)