概要
2006年52号から2007年10号まで『週刊少年マガジン』で連載されていた作品。連載開始の経緯や内容から「当時の(瞬間風速的な)ブームに便乗したがツッコミどころ満載のあげく早期打ち切りになった作品」として名前が挙がることが多い。
登場人物
主人公家族
小泉 瞬
主人公。東京に住む中学3年生の男。人間離れした体力がある一方で、後述の内容の通り賢さGである。父親の借金を返すため祖父を頼って大間へ向かうことになる。
小泉 信
瞬の祖父で、回想のみ登場。かつては大間一の猟師と言われていた。大間に住んでいたが、瞬が着いた頃には行方不明となっていた。
十和子
瞬の母親で、信の娘。回想のみ登場。大間一の美人と言われていた。ある日瞬を残して失踪してしまう。
瞬の父親
回想を含め容姿の描写なし。3000万円の借金を作ったうえ瞬を残して失踪してしまう。十和子が失踪した原因でもあり、瞬の性格がどことなくおかしいのも父親の影響と思われる。一言でいえば「絵に描いたようなクズ」。
大間の人たち
健
大間に住む中学3年生の男。マグロ漁の名人の息子に厳しくされている。外者の瞬が気に入らない模様。
山
大間のマグロ漁の名人。この人に似ている。大間に来た瞬にマグロ漁の厳しさを教える。
バタ
大間の漁師で、瞬の祖父の友人。大間に来た瞬を居候させるなど優しい一面を持つ。
ゆりね
本作のヒロインで、バタの娘。可愛い容姿であるが、空手初段。
その他
柚華
本作のもう一人のヒロインで、サッカー部のマネージャー。登場したのは第一話のみ。
桜井
借金取りで、この人に似ている。瞬の家を抵当に入れて借家にしようとしたが、瞬に抵抗される。その後上司は瞬を男娼にしようと事務所に連れてくるよう命令するが、桜井自身は瞬を逃そうとしていた。
経過
連載の経緯
2007年1月4日・5日に渡哲也主演のテレビドラマ「新春ドラマスペシャル・マグロ」の放送が決定し、2006年11月頃から渡哲也が「マグロ、ご期待ください」と呼びかける番宣が始まるとそのシュールな内容から一躍注目を上げることになった。
その時期『週刊少年マガジン』の編集部では樹林伸原作の新連載開始が遅れるとのことで代わりの穴埋め作品の検討に入っていた。そこへ先述の番宣を見た幹部が「今マグロがブームだからこれでいこう」という鶴の一声で連載が開始されることになった。
しかし肝心のテレビドラマの内容すらわからなかった状態で、既に他作品の連載終了も決まっていたことから設定を考える猶予もない状態であった。そこで編集部や原作者は「どうせ短期で終わるだろうし都市伝説を流用すればいいのでは」という考えを持ったのかは不明であるが、とにかく間に合うようにネームが作られていき、2006年の年の瀬に連載が開始された。
内容
このように見切り発車に近い状況で連載が開始されたが、第一話から読者が「ざわ…ざわ…」になるほどのものであった。話の流れを説明すると以下の通りである。
- 中学生の主人公がサッカーの試合で自陣にドリブルをしたあげくオウンゴールをするというそそっかしいを通り越して精神的にアレなのを心配されるほどのキャラ設定。
- 家に帰ったら家族が借金を残して蒸発。闇金の借金取りが「男娼として働かせる(※少年誌です)」と半ば脅しながらも相手が中学生なので見逃そうとするが、主人公が自分の力で返そうと土木工事のアルバイトを始めたあげく稼いだ金を競馬につぎ込んでスってしまう(※中学生が土木工事のアルバイトをしたり馬券を買うのは違法です)。
- 男娼しか道がないと思った矢先、大間のマグロが高額で取引されているのを知り、祖父を頼って東京から青森の大間までママチャリで向かう(※距離計測で787km、これを飲まず食わず不眠不休で向かっています)。
- 大間に着いて祖父の家に向かうも空き家となっており途方に暮れていたが、祖父の船と勘違いして勝手に他人の船を出して漁へ向かおうとする(※船舶免許なんてないしそもそも窃盗)。船の所有者だったマグロ漁の名人に制止されて殴られ、さらにマグロ漁の厳しさを教えられる(※本来であれば警察か海上保安庁へ突き出されてもおかしくなく、むしろ寛大)。
- 祖父の友人に居候するも、漁に出た祖父の友人が遭難。名人の息子と一緒に船で(※ちなみに名人の息子が操縦してるが、こちらも中学3年生なので無免許)救出に向かったところ、祖父の友人がでかいマグロがいると教え、最終回はその巨大マグロを釣り上げる。
- 釣ったマグロを売ろうと東京へ行くと借金取りに捕まってしまい、ヤクザの事務所に連れていかれ男娼させられそうになるが、大間の人が主人公を助けようと殴り込み。一触即発の中マグロが売れたとの連絡が入り、借金は全返済完了。主人公は大間に戻りめでたしめでたし。
このように終始設定がぶっ壊れており、とにかくツッコミ所しかないのである。当然読者がついていけるはずがなく、第3話で早くも巻末に追いやられる程であった。ちなみに連載で描かれたのは5までで、東京での話は単行本で追加されている。
そして連載終了
このような状況の中元となったテレビドラマの放送が行われたが、こちらも番宣がピークでブームもあえなく終了。編集部からしても連載を続ける理由がなくなった中、樹林伸による『BLOODY_MONDAY』の連載開始の目処がついたことから9話であっさり終了となった。
『週刊少年ジャンプ』ですら当時はどんなに不人気でも10話まで連載する一方で、わりと寛大な『週刊少年マガジン』で(短期集中連載を除けば)この打ち切りの早さは尋常ではなく、以降短期打ち切りの作品に対して「じょっぱる」という本来の用語とは異なる使われ方(本来は「がんばる」という意味)までされていた(なお『週刊少年ジャンプ』では2年後に本作品を上回る8話で打ち切りとなった作品が登場している)。
その他
本作に限らず『週刊少年マガジン』の「ブームに便乗して連載」は1980年代頃から行われており、90年代後半の全盛期には『金田一少年の事件簿』や『GTO』といったヒット作があった頃は小康状態となったが、全盛期が過ぎて2005年に編集長が交代すると再び便乗作品が増えている。
しかも1980年代頃はヒットした作品も多々あったが、本作の頃の便乗は「設定が無茶苦茶」だったり「畑違いの作者に描かせる」といった状態で、たとえばフィギュアスケートがブームになるとなぜかラブコメ主体の作者に連載させたり、日本沈没がブームになると自社の小説を基にした類似作品を連載するも無理やり少年設定にしたせいで話が飛び飛びだったりと迷走しては打ち切りを繰り返していた。但しすべてが失敗していたわけではなく、この作品を意識して連載された『ダイヤのA』や、AKB48公認で連載した『AKB49~恋愛禁止条例~』など成功例もいくつかある。
この方針は2013年に編集長交代により次第に転換され、現在では90年代の全盛期に近い方針になっている。