概要
2017年3月25日に遊戯王OCGにて施行された「新マスタールール」への移行時に起きた一連の混乱のことをこう呼ぶ。
遊戯王OCG自体、ちょくちょく調整ミスによる環境の崩壊自体はよくあることではあるのだが、この一件はそれらの比ではなく、25年以上続く遊戯王の歴史におけるKONAMI最大のやらかしであり、本当に遊戯王OCGを終わらせかけたまさしく黒歴史というべき一件である。
詳細
新マスタールールの制定
遊戯王OCGはマスタールール3適用下における9期においてインフレが急速に進んでいた。
特にペンデュラム召喚関連のパワーカードを刷りすぎたため、ペンデュラム召喚を使った大量展開によりデュエルの高速化に拍車がかかっていた。
そこでKONAMIは新マスタールールの施行に伴い、デュエルの高速化を抑制することを狙ってか、新しいルールを導入することにした。
それがリンク召喚の導入である。それと同時に「デュエルフィールドにエクストラモンスターゾーンを新設し、エクストラデッキのモンスターは原則的にエクストラモンスターゾーンにしか特殊召喚できない。ただし、リンクモンスターが持つリンクマーカーの向いたメインモンスターゾーンであれば、エクストラデッキからの特殊召喚が可能」というルールも同時に制定した。
また、「ペンデュラムゾーン魔法・罠ゾーンの右端、左端との兼用になる」という変更も行われた。
混乱
これらのルール変更は本来、2017年2月21日に発売予定だったVジャンプ誌面にて発表されるはずだったのだが、あろうことかフラゲによって2月17日頃には内容が流出してしまっていた。
当然のことながらデュエリストたちは大混乱に陥った。
なにせ既存のデッキほぼ全てに影響のあるルール改定、特にエクストラデッキを活用して展開を行うデッキにとっては大きな弱体化になるからである。
展開にリンクモンスターを噛ませなければいけないため、展開に必要なカード枚数が増えることになり、これまで出来ていた展開が不可能、やれても非常に難しいものになってしまった。
結果として従来の展開型デッキはほぼ全てが使用不可レベルの弱体化を受けた。
一例を挙げると遊戯王5D's作中にて存在が示唆されており、2017年2月11日に発売された「20th ANNIVERSARY PACK 2nd WAVE」にて待望の登場となったコズミック・ブレイザー・ドラゴンは2ヶ月も経たないうちに出すことがほぼ不可能なカードに成り下がってしまったのである。
これまでは新しい召喚方法が導入されてもそれを使うかどうかはデュエリスト個人の判断に委ねられており、気に入らなければ使わないということも可能だった(それで勝てるかどうかはまた別の話だが)のだが、リンク召喚はエクストラデッキのモンスターの特殊召喚に関するルールに深く結びついてしまっていたため、エクストラデッキを使いたいなら強制的にリンク召喚を使わされるというルールだったのも問題だった。
そのため、既存デッキを諦めて新ルール対応のデッキに移行したり、或いは遊戯王を引退するという動きも顕著に見られた。
その混乱はデュエリストたちの中だけには留まらず、遊戯王OCGを取り扱うカードショップにも波及した。
なにせこれまでのカードの価値がなくなる可能性があり、相場がめちゃくちゃになることは必至。
故に引退や損切りにより買取が殺到し、中には情報流出の翌日には遊戯王の買取停止を行うカードショップもあったという。
新マスタールール施行
そんな混乱の余波がまだ残る中始まった遊戯王10期だが、初期のリンクモンスターは汎用性に乏しかったこともあり、真竜や十二獣といったエクストラデッキへの依存度が低い前期の強デッキが環境を支配し、案の定というか旧来の展開型デッキは壊滅した。
さらにファイアウォール・ドラゴンなどを用いた連続リンク召喚による展開が確立されてしまい、新マスタールールにおける大目的である「環境の高速化の抑制」は完全に形骸化してしまったのである。
テコ入れ
引退者が続出し、遊戯王OCGが盛り下がる中、さすがのKONAMIもこの状況を指を咥えて見ているわけにもいかず、レギュラーパックでリンクモンスターの種類を増やす一方で新マスタールール導入の8ヶ月後となる2017年11月から「LINK VRAINS PAC」を展開。
このパックシリーズでは昆虫装機ピコファレーナや天球の聖刻印、ライトロード・ドミニオンキュリオスなど特定のテーマで汎用的に使えるリンクモンスターや極星天グルヴェイグ、セラの蟲惑魔、ハーピィ・コンダクター、古代の機械弩士、スクラップ・ワイバーンなど旧来のテーマを強く強化するリンクモンスターを増やして格差の是正に努めた。
…まあ、水晶機巧-ハリファイバーやヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム、捕食植物ヴェルテ・アナコンダ、ユニオン・キャリアーなどの問題児も産んでしまったのだが。
結果
結論だけ言えば新マスタールールへの移行は大失敗に終わった。
- デュエリストたちはこれまで使っていた思い入れのあるデッキを使えなくなり、多くの引退者を出す
- カードショップは売上が低下し、中には閉店を余儀なくされたショップも。興味があれば当時の関連企業の決算資料を見てみるといいだろう
- KONAMIは遊戯王の売上が前年比の-32%という悲惨な数字を叩き出す
というまさに誰得な事態になってしまったのである。
このルールを考えた担当と採用を決定した責任者はKONAMIを首になっててもおかしくはないだろう。
その後、遊戯王OCGでは11期への移行に伴うマスタールールへの改定によってリンクモンスターを除くエクストラデッキのモンスターをメインモンスターゾーンに出せるようになった。
これにより新マスタールールにて屠殺された展開系デッキが息を吹き返し、リンクモンスターの助けもあってむしろ全盛期以上の動きができるようになったのである。
これにより、リンクショックの影響は遊戯王OCGから消えることとなった。…一部のペンデュラム召喚関係のルールを除いては。
余談
リンクショックから約半年後に来日したSPYRALはその圧倒的な展開力から一強環境を作り上げたのだが、この時期はまだリンクショックの余波が残っており、ショップの公式大会に出るデュエリストが減っていたため、当時は圧倒的な強さを誇りながらも他のぶっ壊れテーマのようにデュエリストたちの間で語り草になることが少ない、ある意味不遇な壊れテーマになってしまった。
多くのデュエリストがルール変更に戸惑う中、唯一、満足の求道者たる満足民だけは「出せるモンスターが増えた」とルール変更に喜んだという逸話がある。デュエリストたるものかくあるべき…なのだろうか…?
なお、ファイアウォール・ドラゴン絡みのループコンボを最初に開発したのも満足民であるとされている。お前ら自重しろ。
また、2018年にポケモンカードゲームがブームとなり、汎用カードが軒並み高騰、店頭からパックが消えるほどの盛り上がりとなった。
このブームは様々な理由が重なったことで発生したものだが、その理由の一つとして、リンクショックで遊戯王から距離を置くようになったプレイヤーの移住先として選ばれたことが挙げられている。
関連動画
一連の騒動の解説動画