ザ・道満晴明。同作者のニッケルオデオンがやや大人しいのに比べて、こちらはエロ漫画時代以上に絵柄から想像もできないキワドイネタをぶち込んだ短編集であり、小さな島を舞台に、エピソード毎に主人公が入れ替わる群像劇的要素を持つが、最終的にはたった二人の一つの結末に収束するグランドホテル方式の群像劇。
概要
太平洋南西の小島ブレフスキュ島は、政情不安な割に平穏なド田舎だがそんな所に目を付けられ脛に疵持つ連中に麻薬の売人やロボに悪魔が集まる混沌の夢の島である。
そんな島の非戦闘地域にはホテルヴォイニッチと言う、田舎に似つかわしくない大きなホテルが有る。
そこは原住民の聖地を開拓して作られた施設で、チャック=ノリスの前歯を折った男がオーナーを務めている。
大きな割りに従業員は僅かしかいないが、そこに集う客も従業員も島民も、誰もかれもが一癖も二癖も有る連中ばかりで、様々な出来事が起きていく。
登場人物
クズキタイゾウ
805号室在住の日本人。
元々皇龍会のインテリヤクザだったが、尊敬していた兄貴の死が原因で南の最果てであるブレフスキュ島に流れ着いた。
背中の刺青はコカトリス、攻撃力74。
ちなみに兄貴の刺青はマンティコア、耐魔法防御B+でドラゴンブレスも無効化できる。
エレナ
ヴォイニッチホテルのメイド従業員。褐色肌。右目は義眼。不具を嘆かぬ明るい性格で元気一杯だがいろいろずれた所が有り、クズキの刺青を見た際には『タカクラケン!』と認識した。
正体は三人の母の末の妹で、「涙の母」と呼ばれる魔女。出身はロシアだが、見た目でキャラがぶれるので現地出身ということにしているらしい。欧州のオサレな魔女にはコンプレックスを懐いており、「殺し合いならこっちの方がはるかに上」とも発言している。
ベルナ
メイド従業員2号。体中がツギハギ。無表情キャラだが結構優しい所も多い……ただし着メロの趣味は最悪である。
その正体は三人の母の次女サスピリオルムがスペイン軍に断頭処刑されたあと、残った体からエレナが作り出した存在。
エミリア
ホテルの料理人。結構いい年でオーナーに惚れてるめんどくさくない処女。
間宮姉妹
世界殺し屋ランキングに名を連ねる殺し屋。
クロサワアキラ
世界殺し屋ランキング上位ランカーのホモ。
アリス
心を病み口が利けなくなった少女。悪魔がくれた「真実のウサギ」無しでは喋れない。
スナーク
島で起こっている殺人事件の犯人。
絶対に指紋を残さない為、両腕が義肢ではないかとされている。
「スナーク(Snark)」はルイス・キャロルの詩「スナーク狩り」に登場する正体不明の生き物。様々な種類があり、中には鉤爪を備えるものもある。
少年探偵団
リーダー、オイロケ、フトッチョ、ハカセにアリスを加えたメンバーの島民。リーダーは内紛発生後さっさと逃げ出した日本企業が原因で日本人嫌い。
ハカセは三人の母の一人テネブラルムに以前から憧憬の念を懐いており、ゾンビ状態で歩き回るテネブラルムに交際を申し込んだことで、新たなコードネーム「イカレポンチ」を得る。
テネブラルム
三人の母の長女「暗闇の母」。25歳くらいで成長が止まったらしい。スペイン軍の毒矢で死亡したが、不滅の霊魂によって今なお生き永らえる。
キカイ田
軍から払い下げられたロボット刑事。色々な役に立たない機能が満載。
ギルティちゃん
メイン画像参照、みんな大好きな日本製マスコットキャラクター!名も無き宿主の目から飛び出す姿がとっても愛らしいぞ!
真面目に解説すると、島にある廃園になった遊園地『サンヨリピーロランド』のマスコット。
目から飛び出しているニャ○キみたいな方が本体のギルティちゃんで、キグルミの方は名もなき宿主。
また、メイン画像では名もなき宿主はミッ○ーだが、実際はキ○ィちゃんである。
キーワード、元ネタ
- ヴォイニッチ
ホテル名。「ホテル・ヴォイニッチ」とも(道満晴明『ヴォイニッチホテル』3巻、秋田書店、2015年、86ページ)。
元ネタは言わずと知れたヴォイニッチ手稿かと思われる。『沙耶の唄』で魔導書として扱われ、『召喚の蛮名』ではネクロノミコンの写本として登場する。
- ブレフスキュ島
1846年にスペインから独立した太平洋南西に浮かぶ小国。サンマリノより小さいらしい。かつて内戦が起こり、リーダーやハカセ、エミリアの心身に傷を残す。
元ネタはスウィフト『ガリバー旅行記』に出て来る島国「ブレフスキュ(Blefuscu)」と思われる。リリパット国と戦争中。
- 「三人の母」
かつてブレフスキュ島を治めていた三人の魔女。島民は今なお畏敬の念を懐いており、ホテルは魔女の棲家とした森に建っている。
「三人の母」はダリオ・アルジェント監督のホラー映画『サスペリア』やその関連作に出て来る三人の魔女の呼び名。それぞれ「涙の母(Mater Lacrimarum)」「嘆きの母(Mater Suspiriorum)」「闇の母(Mater Tenebrarum)」という。なお「嘆きの母」が『サスペリア』において名乗っていた名はエレナ・マルコス。
- 青いアイリス
テネブラルムの住む地下室のドアにある意匠。
『サスペリア』で魔女の部屋に到る秘密の扉には三つの青いアヤメの印がある。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
ヴォイニッチホテルに関する別名や、表記ゆれがありましたら、紹介してください。