概要
本作における妖刀とは、自然の中で発生する特殊な鉱石『雫天石』を六平国重が独自の特殊な加工法で刀として鍛造した品である。
斉廷戦争の中で打った六工と、戦後に打った一工だけとなっている。彼しか加工法を知らないので、彼の死後に存在するのはこの七作品のみ。
性能
人に宿る超自然の力「玄力」を刀の中で増幅させ、人体では生成・保持できないほど超高密度に練り上げる。それを異能として形にし、任意で放つ事が可能。
斉廷戦争では劣勢だった戦況を五本が好転させ、そして最も強いとされる「真打」によって勝利へと導かれた。
妖術師が正面からの戦闘を避け、戦争を知っている者からは畏怖を以て語られる。
妖刀には『本領』と呼ばれる領域がある。
使用者の妖刀に対する解釈や肉体的影響、その他にもあらゆる物が作用し、作刀時には想定していなかった未知の力が発揮される。
妖刀を使用すると、使用者の玄力の凝縮体が現れる。
この凝縮体を通して周囲をある程度把握することができ、敵地への視察に利用することができる。
命滅契約
六平国重が作刀時に設けた制限機構。
妖刀を握った者と契約し、その力を引き出せるのは契約者のみとする。他の者が使用して能力を発揮するには、契約者の命が尽きた時以外は不可能。
そのため、戦後は神奈備にて契約者は一部例外を除いて全員が身柄を保護、または監禁されている。
妖刀一覧
「淵天(えんてん)」
契約者:六平千鉱
玄力反応:金魚
六平国重が戦後に打った最後の妖刀であり、彼の死後は息子の千鉱が手にして武器としている。
使用時は、異能を金魚に因んだ形で放出する。
扱いやすいシンプルな術を扱う妖刀であり、術の名前は「色」に関連する言葉で統一されている。
- 「涅(くろ)」
現れる金魚は、黒い出目金。
効果は遠撃。
刀を振るった軌道の形に斬撃を放つ。
効果範囲も広いので多対一での敵の一掃、迎撃や牽制等応用が利く。千鉱が最も多用するが、利き手によって威力等も左右される。
- 「涅 千(ちぎり)」
淵天の本領に触れた事で千鉱が体得した新たな活用法。
通常時よりも激しい玄力の消費を代償にして無数の小さな金魚として放出した簡易斬撃を展開する。これを束ねる事で、小さな振りでも本来の斬撃にも劣らない威力の効果を発揮する。
- 「猩(あか)」
現れる金魚は、赤い琉金。
妖術を吸収し、任意で解き放つ。
妖術師が放った技を吸い取り、カウンターとして相手に返す事が多いが、その他にも強力な一撃に対する防御にも用いられる。
- 「錦(にしき)」
練り上げた超高密度の玄力を纏い、一挙手一投足に上乗せする。
これにより、身体能力が極限まで強化される事で実力者以外には対応できない超速での行動が可能。無論、本来は人体で生成・保持できない量を体に帯びているので、その代償として激痛に苛まれる上に長時間使用すれば逆に体を破壊される。
後に、本領に触れた千鉱が動作に上乗せではなく補助として付与させる事で、激痛は変わらずとも負担を軽減する活用法を見出す。
「刳雲(くれぐも)」
契約者:巳坂→双城厳一→六平千鉱
玄力反応:龍
国重襲撃後、毘灼から譲り受けた双城が使用。
双城死亡後は、死闘の末に折れた死に際の状態を千鉱が使用している。
雲に因んだ3種類の自然現象を操ることが出来る。
「降」水、氷「結」、雷「鳴」……というように術名も天候やそれに関する現象に由来している。
- 「鳴(めい)」
雷の能力。刀を中心として広範囲に放電する、刳雲において最も殺傷性が高い力。
充分な効果を発揮するには十数秒の溜めが必須であり、不充分だとその分だけ威力は低下するが、
溜めた際の威力は妖術師ですら防御不能の凶悪さ。
また使用者との親和性が深まるに連れてインターバルも短縮される。
後に、本領に達した双城によってこの雷を纏う事で超高速移動が可能となった。
他にも、避雷針と同様の効果により、刳雲と雷を纏わせた物をどちらか一方へと瞬時に引き寄せる事ができる。
- 「鳴 千(ちぎり)」
千鉱が本領に触れた事で発動。
黒い雷を身に纏い、通常時を遥かに上回る速度と攻撃力を発揮する。
- 「降(こう)」
水の能力。単純に刀身から放水したり、目眩ましの霧として放つ事も可能。
最大の特徴は刳雲の他の2種類の術を扱う際の起点となれる事であり、
「降」から「鳴」へ繋ぐことで水を伝って不十分な溜めの雷でも広範囲かつ必中に攻撃することが可能となり、
「降」から「結」へ繋げばより大規模な氷結を発生させることが出来る。
- 「結(ゆい)」
氷の能力。刀から瞬時に尖った氷塊を多数発生させる。
攻防において高いバランスを誇る能力であり、刺した物や、振るった先、刀の周囲を凍らせる事で相手の行動の阻害や防御、尖らせた氷塊による攻撃が可能。
「酌揺(くめゆり)」
玄力反応:のっぺらぼうの花魁
毘灼に奪われた妖刀の一振り。契約者である漆羽の襲撃に際して昼彦が持ち出しており、
彼の死と同時に酌揺は新たな契約を結ぶこととなる。
「飛宗(とびむね)」
契約者:座村清市
玄力反応:鳥
毘灼に奪われた妖刀の一振りだが漣伯理の転送によって元々の契約者である座村の下に戻る。
居合術の達人でもある座村の技量と戦争を通して触れ続けてきたであろう「妖刀の本領」が合わさり、最早誰にも止められないという程の実力を見せつける。
鳥に由来する妖刀であり、こちらも能力名は鳥の名前で統一されていると思われる。
- 「鴉(カラス)」
使用すると黒染の羽根が大量に舞う。
説明がなく詳細不明だが慚箱の入り口に戻された状況から一瞬で建物内に戻って大群を切り伏せており、高速移動・瞬間移動に類する能力だと思われる。
- 「梟(フクロウ)」
梟の眼力が浮かびあがり人や物の感知を行う。
居場所の他、感知した対象の動きや状態も分かる模様。
盲目の座村とは反則的に相性が良く、本領に触れた飛宗の梟は空を覆い尽くし対象の居場所を即座に特定する。
本人曰く「どこにいても感知出来る」らしい。
- 「?(???)」
未判明。
真打「勾罪(まがつみ)」
六平国重の最高傑作・無双の一振り
契約者:剣聖(本名不明)
使用者:剣聖(本名不明)→漣京羅
玄力反応:蟲
作刀において、何本か刀を作った末に最高の出来の物が「真打」、他の物が「影打(かげうち)」と呼ばれる。
「勾罪」という銘があまり知られていないのか作中では千鉱を含む殆どの人間から「真打」と呼ばれる。
他の刀とは一線を画する性能を持ち、戦時中にも最後に持ち込まれ戦争を勝利に導いた一振り。真打を神奈備が回収する事で何百万もの命が救われるとまで言われている。
作った国重本人も「異質」と称し、真打の情報は千鉱にも殆ど伝える事は無く、他の妖刀よりも厳重な封印を施した上で「真打だけは、もう二度と誰にも使わせちゃいけない」と警戒していた。
異質と称されるだけあって、使用時には他の妖刀では起きえない下記の異常現象が発生する。非常に多岐にわたる為箇条書き。
- 命滅契約ですら力を完全に制限できず、鞘から抜き放たずとも能力の一端を行使出来、鞘の状態で物を切断できる異常性を持つ。
- 更に現在も剣聖と命滅契約下にある影響か、使用者は能力こそ使えるものの剣聖から遠隔コントロールを受け徐々に精神を蝕まれていく。
- その刀身は生命エネルギーたる玄力に満ち溢れており、少し鞘から抜いただけで玄力の黒い雫が滴り、その雫や鞘が触れた箇所からは毒々しい花が咲き乱れる。さらに使用者以外がこれに触れると生命を蝕まれあっという間に花の養分となってしまう。
- 使用者はたとえ瀕死の重体でも妖刀の力で生かされ動くことが出来、それどころか術も無しに身体能力が向上する。
- 妖術で作られた亜空間を侵食し、最終的には崩壊させてしまう。
楽座市編では以上の現象が抜刀すらしていない状態で発生した。
毘灼が国重を襲撃した最大の目的でもあり、この真打にかけられた封印を本来10年かかる所をわずか3年で開放している。
使用時には巨大な蝶が出現する。
虫をモチーフとしており、術名も虫偏を含む漢字一文字で統一されている。
- 「蛛(クモ)」
発動すると相手の足元にクモの巣の紋様が現れる。これを受けると金縛り状態となってしまう。
離れた位置でも即座に発生する強力な拘束術。
- 「蜻(トンボ)」
発動時、刀身を胴体に見立てたようにトンボの翅が生える。
花畑を伴った侵食する玄力を一直線に飛ばすことが出来る。
千鉱は本能的に「触れたらだめだ」と危険を察知していたが、恐らく触れたら先述の通り花の肥やしとなっていた可能性が高い。
- 「蜈(ムカデ)」
発動時、ムカデの形状をした玄力の凝縮体が現れる。
刀を少し開けた状態で溜めを作り、金打を打つ動作を取る事で、
周囲をまとめて弾き飛ばすほどの斬撃を全方位へと放つ大技。