局地戦闘機雷電
きょくちせんとうきらいでん
太平洋戦争で日本海軍が運用した局地戦闘機。略符号はJ2M1~7。
いわゆるペットネームではなく、れっきとした正式名称である。
三菱の堀越二郎技師による設計であり、随所に堀越技師らしいデザイン上の特色が見て取れる。
爆撃機を迎撃するため、火力と上昇力・スピードを重視した重戦闘機として設計され、大戦末期のB-29迎撃などに活躍した。
同様に爆撃機用のエンジン(中島ハ109)を装備した二式単座戦闘機は、開発開始がほぼ同時期だが、雷電の開発の難航により実用化時期は早い。
当時最大出力であった三菱製の「火星」二三型(空冷2重星型14気筒、1段2速過給)をエンジンに採用する。
空気抵抗低減のため、大口径のエンジンの先に延長軸と強制冷却ファンを追加、機体中央をずんぐりと太らせたラグビーボール状のデザインにまとめた。
しかし、最大出力発揮時の振動は運用上問題になるほどであり、「火星」エンジンもたびたび不調をきたした。また紡錘形の機体形状も速度向上にはさほど効果は無かったと言われている(※)
ちなみに振動の原因は必ずしも機体だけの原因ではなく、「火星」エンジンの振動対策の無さ、水メタノール噴射使用時の冷却不均一による振動激化(こちらはほかの水メタノール噴射装置搭載エンジンでも起きている)も一因であった。
最初は延長軸が振動原因として疑われたが、調査の結果エンジンの振動とプロペラが共振していることが判明し、プロペラ強度を上げ、「火星」も減速機の歯車比を変更することで振動問題はある程度の解決を見たが、このために一年もの時を費やす結果になっている。
結果、開発に大きな遅れが生じ、生産開始は計画要求書交付から3年半が経過した1943年9月からで、その間に旧式化が進んでしまった。
堀越技師が軍の要望する雷電と零戦の改良に手間を取られたため烈風の開発が間に合わなかったともいわれている。
二一型では九九式20mm機関砲を4門備えるなど、火力は高い水準にあった。
運動性はドッグファイト偏重の日本海軍機にしては低く(P-51と同等と評価された)、着陸時の前下方視界が極めて悪く、飛行安定性にも難があり、実戦部隊からの受けは悪かった。
失速特性にも難があり、着陸進入時にいきなり失速してポトリと落ちてしまう事故が結構遭ったらしい。
また配備後の不調も多発し、部隊の移動、出撃の際の故障等で半数以上の機体とパイロットが落伍している。
(※)模型による風洞実験では紡錘形胴体は優秀な試験結果を出したものの、プロペラ後流は機体に絡みつくように流れており、これが空力上無視できない悪影響をもたらしていたと言われる。
後知恵ではあるが、機首を無理に絞らずカウリングが太くても、形状が良ければ空力的な悪影響はさして見られないことが戦後の研究で判明しており、空冷エンジンでも十分抵抗を減らせた可能性はあった。
初の本格局地戦闘機として、零式艦上戦闘機の陸上配備を代替する目的で量産が内定していたが、雷電のテストを行った海軍横須賀航空隊は紫電改より対戦闘機戦闘能力が低い事から「生産を中止して紫電改の生産に集中すべき」という報告書を航空本部に提出した。
しかし日本軍機はアメリカ軍の大型爆撃機を迎撃するには高高度性能で劣っており、雷電の太い機体は排気タービン過給機搭載に有利と考えられ開発の継続が決定した。
最初に部隊配備されたのはバリクパパン油田の第三八一海軍航空隊で、油田攻撃に飛来する連合国軍機相手に少なからぬ戦果を挙げた。
その後、第三〇二航空隊(厚木)、第三三二航空隊(岩国、鳴尾)、第三五二航空隊(大村)、台湾の台南航空隊(台南)などの本土防空専任部隊に配備された。
特に第三〇二航空隊のエース・パイロット赤松貞明中尉は巴戦に拘ることなく、雷電の特性を活かす機動を研究し、B-29爆撃機と、それを護衛するアメリカ軍戦闘機相手にも戦果を挙げた(雷電を装備した部隊によるB-29の総撃墜数は10機前後とされる)。
部下にも縦ロールではなく横ロールを用いた空戦をするよう指導したが、零戦になれていない新人たちにも雷電の外見と操縦性には相当な忌避感があったようで、「グロテスク」「その乗り心地には最後まで慣れることが無かった」という証言がある(「海軍空戦秘録」)。
高高度適応型も試作、少数生産された。
空技廠型と三菱型があり、空技廠型は最低限の改造で排気タービンを装備、三菱型は機体にもあれこれ手を加えたものであった。
どちらも排気タービンだけでなく機体側でも問題が発生するなどして、量産化は見送られた。
他、高高度で有利な、プロペラブレードの付け根の部分まで幅広にしたプロペラへの換装が新造機と既製機の両方に実施されている。
また、30㎜機関砲2門に換装した機体も少数投入された。
日本海軍戦闘機では屈指の上昇力と強力な武装を誇り、迎撃機として評価する声がある一方、その劣悪な操縦性と多発する不具合はたいていのパイロットから忌避され、実際に訓練中の事故や故障で殉職するものも多く、「殺人機」と呼ぶ声も少なくなかった。
フィリピンでアメリカ軍に鹵獲された雷電二一型はコックピットの広さを評価されている。
『雷電』の名前の英訳が『サンダーボルト』であり、アメリカ陸軍のP-47の愛称と同じであることや、その特徴的な外観から海外からの注目度は高い。青木義博中尉機の稲光マークの塗装が人気があり、チノ(アメリカ合衆国)のプレーン・オブ・フェイムに唯一現存する雷電もこの塗装になっている。
レシプロ戦闘機 日本海軍 三面拳 ライデン(モータルコンバット) ライデン トレインボット イエロー・マジック・オーケストラ
荒野のコトブキ飛行隊 アプリ版においてはシアラとクロエの愛機である他、アニメ版3、4話において本機が重要な役割を果たす。
戦空の魂 撃墜したB-29から回収したガソリンを入れた機体が大暴れするエピソードがある。
雷電(MGS) メタルギアシリーズの登場人物。上述の米軍からのコードネームと本名のジャックに由来するコードネームであり、名付けた黒幕にとっては「どこまで行ってもただの兵器、駒に過ぎない」という意味が込められている。