このチラシを手にしたアナタ… 特別な島へご招待
概要
ナガノがX(旧Twitter)で連載している漫画作品「ちいかわ」のエピソードの一つ『セイレーン編』の別名であり、その舞台でもある。2023年3月14日~11月26日にかけて連載された(※作者の入院に伴う休止期間あり)。
島民の格好などから、温暖な地域のいわゆる南国の島であり、ちいかわ族だけで集落が形成されていることがうかがえる。
エピソードの内容
ある日、ちいかわたちの暮らす地域に「島でのカンタンな討伐で、報酬100倍」「限定島ラーメン、甘いもの、辛いもの、全部無料」なる怪しげなチラシが撒かれる。不審に思いつつも、レギュラーメンバーを含む多数のちいかわ族が、白鳥を象った遊覧船のような船で招待された島へ渡る。そしてそこで、怪異やでかつよ族と呼ばれるモンスターの一種と戦うことになる…。
ちいかわたちがモンスターを討伐するという通常のエピソードを大きく膨らませた話になるが、その内容があまりにも複雑かつ判断に悩むものであり、投稿時間には常に話題になっている。
特に読者を悩ませたのが、セイレーン、島民、そして事件の元凶が、三者三様に事件の被害者にして加害者であり、誰が悪いとは一概に言い切れない利害関係を成している点である。
特に事件の発端となった過去の回想はどちらに肩入れしても後味が悪いことから、他国の戦争と喩えられるほどである。
その内容とセイレーンの圧倒的な脅威ぶりに加えて、「ゴジラ-1.0」や「進撃の巨人」のアニメ最終回と公開時期が重なったこともあり、「巨大な敵と戦う」「憎しみの連鎖」という共通点から、感想がそれらの作品と被ることもあった。
登場する場所
- 船着き場
ちいかわたちが乗ってきた船(白鳥形の遊覧船のようなデザイン)が到着した場所。桟橋の前に「島へようこそ」という看板があり、島民たちが開いた屋台が並ぶ。
- 宿泊施設
高床式で木造のバンガローのような建物が建ち並んでいる。
- 住宅街
室内は宿泊施設と同じバンガロー風だが、屋根が茅葺きのようになっている。
- 海岸
砂浜があるほか、奥に「立入禁止」の看板が建てられた洞窟がある。ちいかわトリオはここでキャンプファイヤーを楽しんだ。
- 浜辺の洞窟
「立入禁止」の看板が立っていた。奥は水没しており、誰かがボートを置いていた。ちいかわトリオが初めてセイレーンと出会った場所。
- 森(ジャングル)
洞窟や崖、川などがあるジャングル。川には古びて今にも落ちそうな吊り橋や、柱のような岩場が連なった高く小さい足場があり、それを使って渡る。また、ジャングルの奥には「島二郎」という貝汁が名物の飲食店があるが、客はほとんどいない。
- 海底洞窟
海底にある洞窟。入り口が水の壁で仕切られていて洞窟内には空気があり、セイレーンと人魚が棲みかにしている。どこかで浜辺の洞窟と繋がっている可能性があるが、詳細は不明。
各キャラクターの動向
レギュラーキャラクター
ちいかわトリオ
ちいかわ・ハチワレ・うさぎの主人公トリオ。本エピソードでは、ちいかわの勉強とハチワレの修行の息抜きという事で、「報酬100倍」「島限定のラーメン&スイーツ」の誘い文句が書かれたチラシに釣られて、島に行くことになる。
モモンガ&古本屋(カニ)
本エピソードにおけるトリックスターといえるコンビ。特にモモンガは、その強欲さと奔放さから事態を悪化させる一方で、本エピソードの問題解決のための強力な助っ人でもある。結果的にではあるが、事件の根本的な問題である「セイレーンと人魚」の関係と行動をちいかわたちに教えるきっかけを作り、その後もよくも悪くも本エピソードの核心に関わる存在となる。
シーサー&栗まんじゅう
飲酒系コンビ(ゆんたくコンビとも)。シーサーは島限定のラーメンを研究するために、栗まんじゅうはいつも通りに酒に釣られて、島に行くことに。*エピソードの癒し枠といえる存在。
また、エピソード終盤では総力戦にサポート役で参加するが、その際には栗まんじゅうの意外な特技が明らかになることに。
ラッコ
討伐ランキング1位の凄腕。本エピソードではちいかわたちに誘われ島に行くことになる。
ちいかわたちに誘われた当初はチラシの内容に疑惑を抱いたものの、限定スイーツの魅力に抗いきれず、ちいかわたちの保護監督という形で島に同行する。
ゲストキャラクター
セイレーンと人魚
人魚を連れた怪異。本作のボスキャラクターであると同時に、物語の核を担う存在。
現状では「ちいかわ」の作中に登場した全キャラクターの中でも最強といってもいいほどの戦闘能力を誇る。
元々は島民に危害を加えていなかったが、ある日連れていた3匹の人魚のうち1匹が行方不明になり、島民の誰かに食べられたと考え、その犯人を捜し出して報復するべく島民たちを襲うようになった。
島二郎
作中の中盤で突如登場した助っ人キャラクター。料理店「島二郎」の店主だが、ジャングルの中に店があるせいか店は繁盛しておらず、そのせいで島民たちもその存在を知らなかった。
セイレーンと真っ向から渡り合う実力を持ち、セイレーンと対決するちいかわたちに協力する。
島の住民
島の子たち/島民(島モブ)
島に住んでいるちいかわ族。見た目は他のちいかわ族とほぼ同じだが、腰蓑や花冠など南国風の装いをしている。
「報酬100倍の討伐」のチラシを撒いてちいかわたちを島に招待し、無料の屋台を開いてもてなした。
しかし、本当は島民がたびたび行方不明になる事件の原因であるセイレーンを討伐してもらうためであり、100倍の報酬も始めから用意していなかった。その代わりに「島の特産品詰め合わせを報酬にする」と告げた。
棒状の持ち手の先端にコイルバネと顔の描かれた小さな球体がついたような島独特の武器(擬音からファンの間では「びんよよ」と呼ばれている)を所有している。
葉っぱちゃん(仮称)
上記の島モブたちの中でちいかわたちと行動を共にしている2人。頭に花冠の代わりに葉っぱを乗せているのが特徴。また、腰蓑の位置が他の島民より高く、胸の上まで覆っている。
船が到着した際、ハチワレに声を掛けられ知り合い、その後も宿泊施設で一緒にカードゲームをするなどし交流が生まれた。
セイレーンに拐われたラッコの救出に向かったちいかわたちに協力しており、道案内をしたり、びんよよでセイレーンからの攻撃を防いだりするなどの活躍を見せている。
余談
「歌」
セイレーンが登場するためか「歌」がキーワードになっており、ボスキャラクターであるセイレーンの能力だけでなく、島民やハチワレなども歌を歌う場面がある。セイレーンとの決戦も「歌を封じる」点を重点に作戦を練った。
以下は、「島編」で登場した実在する曲である。
- 私のお気に入り:島民がちいかわたちを歓迎する際に歌った。歌詞がオリジナルの内容(「島編」に合わせた内容)の替え歌になっている(参照)。一部ファンが「歌詞の後半に登場する食べ物(たこやき、すき焼き、ケバブに、てりてりソースの焼きそば)の頭文字が、並べると『た・す・ケ・て』になる」とセイレーン討伐の伏線説を唱えているが、真相は不明である。また、セイレーンも初登場時に歌っている他、島民がセイレーン討伐をほぼ強引に依頼する際にイントロが流れていた。
- 今日の日はさようなら:キャンプファイヤーをするシーンで歌われた。とある人気アニメ映画の主要キャラが生死が不明になるシーンで使用された「トラウマソング」として有名なため、ちいかわでも同じようなことが起きるのではないか?と、不安な声があがった。物語のクライマックスでも歌われている。
「ちいかわ」最長の長編
「ちいかわ」は1~2日に1ページずつ投稿される形式の漫画だが、長編エピソードで100ページを越えたのはこれが初。途中で作者のナガノの入院による休止期間があったり、時折り季節イベントの単発エピソードを挟んだりもしているが、それを除いても2023年3月14日~11月26日と、半年以上連載が続いた。このため映画化を期待する声も上がっている。
人魚伝説との関連性
愛知県春日井市に、八百比丘尼伝説という「人魚肉を食べた少女が不老不死になる」伝説がある。
島編に登場する「濃い味付けの料理」「貝(汁)」「味噌漬け」「しるこサンド」は全て、愛知県に関連する品々(※貝は日本で2番目の漁獲量)である他、セイレーンの顔が犬張子に似ている。
このため、「島」は愛知県がモチーフで、八尾比丘尼伝説を参考にしたのではないかと、ファンに考察され話題になった。 (参考記事(※リンク先ネタバレあり))
話題性
エピソードの中にしるこサンドや煮付けなどの食品が登場し、それらの物がトレンド入りして売れる、スーパーの当該商品売場にちいかわのPOPが貼られるなどの反響を呼んだ。
また、前者は製造メーカーである松永製菓が公式X(旧Twitter)で反応したほか、ニュースなどでも取り上げられた(ニュース記事)。
関連タグ
ゴジラ-1.0 進撃の巨人 妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ 京極夏彦 東野圭吾:「島編」の終盤の展開で、X(旧Twitter)上で例えとした挙がった作品や作家。