オレは全ての女の子の味方さ
女の子は誰でもキレイになれるって思うんだよね
『美少女戦士セーラームーン』のスピンオフ漫画『コードネームはセーラーV』の登場人物。初登場は第9話「デブリーネ編」のラスト。
キャラクター
作内のテレビドラマ(劇中劇)である『快盗A』の主人公であり、それを芸能事務所「エースベックス」所属の少年タレント最上(さいじょう)エースが演じている。
が、ドラマのプロモーションやエース本人のフェミニストな性格もあり、まるで実在するかのようなメタな存在として扱われる。(あくまで『セーラーV』の作中において、であるが)
デブリーネ編ラストで、エナジーを搾り取られて太らされた被害者が元に戻らない事に困り果てたセーラーVの前に現れ、ローカロリーキャンディーや格安エステおよび無理のないダイエットのビラをバラ撒き、彼女ら(と、美奈子)の「最後の希望」となった。
かくしてAは美奈子が最高に憧れる究極のアイドルとなったのである。
その後もAはセーラーVのピンチに登場しては、華麗なトランプの投擲技で彼女を救っていく。
ダーク・エージェンシー(セーラーVでの敵組織。言うなればダークキングダムの下請け組織)が繰り出した最後の刺客である姉妹妖魔「ファンデ姉妹」を直接倒したのもAである。
まぁ『美少女戦士セーラームーン』におけるタキシード仮面のようなものと考えて間違いはないのだが、その立ち位置は……
※ 以下、ネタバレ
その正体(ネタバレ)
実はダーク・キングダムの下部組織である芸能プロダクションである「ダーク・エージェンシー」および「エースベックス」の首魁であるダンブライトその人。ダーク・キングダムにおいては四天王筆頭であるクンツァイトの直属の部下である。つまりは『コードネームはセーラーV』におけるラスボス。
ちなみにA登場時「ダーク・エージェンシー」はまだ存在していたが、同社がセーラーVに向けた最後の刺客であるファンデを倒したのもエースだったりするので、しっかりと計画倒産だったり。
ところが、その目的は「セーラーVの打倒」ではなく「セーラーVを鍛え上げて前世への覚醒を促し、一人前の戦士にする事」だった。敵組織に存在しながら、明らかに組織の存在意義とは完全に矛盾する目的を持っている。
実は前世においては、「アドニス」という名前であり、ヴィーナスと同様に金星出身で同じ星の守護を持っていた。ヴィーナスに憧れていたが、金星の姫であり月の王女の守護戦士として月に仕えたヴィーナスと、地球に取り立てられた一介の衛兵に過ぎない彼とでは、同じ星の出身とはいえ大きな身分の壁があった。
それでも順調に星が廻れば彼自身にもヴィーナスとの恋愛の目は十二分にありえた(彼の前世の名がそれを示す)のだが、月の王女と地球の王子の恋に端を発する一連のゴタゴタで運命が狂わされ、ヴィーナスはよりによって自分の上司であるクンツァイトと急接近。星1つが丸ごと転生した後にすら尾を引くレベルのNTRというトラウマをかまされてしまい、そこを付け込まれてクンツァイトと共に妙な闇堕ちをするハメに。結果として今生でもセーラーVの敵となってしまう。
が、彼の真骨頂はココからである。
闇に堕ちてセーラーVの敵となる運命を前世から引き継いで背負った彼は、その宿命を利用して運命に反逆する事を思い立つ。
運命にそのまま従うならば、弱いうちにセーラーVを手にかけて、ダーク・キングダムに捧げるべきだったダンブライトことAは、あえてそれをせずに部下を次々に繰り出して、まるでVを鍛えるかのような行動をとる。その一方でVの前にAとして現れ、彼女のピンチを助けていく。
そして最後に映画のセットを利用して、Vを倒そうとする最後の部下の作戦を「Vを倒すのは私だ」と自身の手で邪魔し、部下をあえてVに倒させ「最大の敵」としてVの前に立ちふさがる。
(ちなみに、ここでAがVを助けなければVの命運は詰んでいた)二人の戦いの舞台は燃え盛り崩れ落ちる白亜の城。
そこに自らの「前世での死」をダブらせた美奈子は、ついにセーラーヴィーナスの記憶と能力を取り戻す!
ここで、実はこれこそがAの悲願であった事が明かされる。
「敵対し倒される事が運命として避け得ないならば、せめて自らが愛するヴィーナスにこそ倒されたい」
だが洗脳されて前世すら思い出さず、前世から恋敵への嫉妬に狂っているドしつこい首魁に粛々と従っていたヘタレ上司に比べれば、よっぽど未来を見据えた気骨ある行動である。
AはセーラーVに前世からの因果を語りながら先制攻撃を仕掛け、カウンター攻撃を促すことによって願いどおりにセーラーヴィーナスにトドメを刺される。その中で「あたしは好きになった人を倒していく運命なの!?」と涙ながらに嘆くヴィーナスに「愛ではなく使命にしか生きられない運命」を予言、優しい笑みを浮かべながら「戦い続けろ。本当の戦いはこれからだ」と言い残し、敵としての矜持を貫き通して命を散らした。
そして美奈子はAに背中を押されるように前世の導きを信じ、セーラームーンの元へ向かったのだった。
そういう意味では、逆に言えばAがいなければ美奈子は戦士の覚悟を決められなかった。早い話Aはシリーズきっての(美奈子=セーラーヴィーナスの生き様にとっての)キーキャラクターとしての側面を持っている。
運命に勝利した男?
以上の事よりラスボスとして敗北した存在という印象が強いA。
だが同じ過程を経て倒されるにしても、単にラスボスとして倒されたのと、自覚がありながら目的としてあえて倒されるのとでは、大きく意味が違ってくる。
怪盗Aは「自身の目的を達成した」という意味でならばダーク・キングダムにもセーラーVにも勝利している。ハッキリ言ってしまえば『セーラーV』の物語は、その意味においてはAの独り勝ち状態で終っているのである。
少なくとも、彼はVに倒される事によって「最も苦い思いをさせられた敵」として美奈子の心に永遠に残る事となる。この意味でも彼の目的は達成されており、同時にこの事によって「ヴィーナスと対等の関係になれた」と言う事も出来る(A本人もそれを言及している)のである。
まぁ、美奈子は引きずらない性格なので、普段はそれを意識するコトなど無いが。
ダーク・キングダムがAに与えた闇の運命に抗い、彼らが目指す滅びに一石を投じて見せた男。Aをそう見るファンも存在する。ある意味では浦和的な隠れたニーズを掘り起こしているキャラでもある。
と、ゆーワケで、実はAは敵でありながら最初から最後までV(美奈子、ヴィーナス)側の存在であり、その愛を貫くために倒されたという悲運のキャラ。ヴィーナスへの愛のために己の命すら厭わず、自身の属する組織や運命すら裏切ってみせた、その一人愛という孤独を突っ走る漢っぷりはどこぞの先生すら思い起こさせるかもしれない。
ちなみに
実は何気に幻の銀水晶の覚醒前から前世の記憶を持っていたキャラである。美奈子以外のセーラー戦士たちも、衛やうさぎや果てはクイン・ベリルや四天王たちですら、銀水晶が目覚めるまでは前世の記憶なんて思い出していなかったのに。
四天王ファンには「前世の記憶あるんだったら四天王に教えてやれよ!」とツッコまれたりもするが、美奈に思いを寄せるAであるがゆえに、それができたかどうかは推して知るべしであり、ある意味で皮肉ですらある。
穿った見方をするならば、Aの字面はVを180度回転させたかのように見えない事もない。また「一途に見えながら惚れっぽい美奈子に対して遊び人として浮名を流しているように見えながらヴィーナス(美奈子)に一途である事」「同じ金星の生まれでありながら光と影に分かたれた」「流行を追いまくるミーハーな美奈子に対して流行に流される事なく己を貫き通し、結果として流行の最先端を走る」「前世の使命を順守する美奈子に対し、少しでも前世の運命に抗おうとするA」など、明らかに「美奈子のシャドウ」のような設定が目立つ。
また「前世によって運命が定められた世界で、運命を逆用して目的を果たし独り勝ち」「V(ヴィーナス)に倒されて死んだことによって勝ち逃げ」「ラスボスになった事で、おこがましくも前世での身分を越えて美奈子と肩を並べうる存在と化した」「美奈子の覚悟を決めさせた=美奈子に躊躇なく四天王やクンツァイトを倒させる意識を植え付けた」と、設定上あからさまに浦和にならぶセーラームーンシリーズの前世さんファンや大きいお友達の殺意を大人買いして、しかるべきキャラでもある。が、同時にやっぱり浦和同様に、その一本筋と道理の入った生き方に涙するファンも多い。
ダンブライトとしては物語当初から登場しているが、物語初期から中期にかけてのダンブライトはAが語る目的に沿うそぶりは見せておらず、時に自身の組織内での立場すら心配するクリーン悪トリオや後のブンビーさんすら彷彿とさせるリーマンの悲哀を感じさせる小市民的なキャラとして(顔は出ないままで)描かれていたりする。おまけに口調も成人男性(社会人…というか会社人、というか…*むしろ社畜。なんと会社の倒産まで心配している)そのものであり、後の正体を現したAとは大違いである(もっとも上位組織のダーク・キングダムや、あるいは部下の妖魔たちに対して、 正体を隠すための演技だった可能性もある。実際ダンブライトのオフィスには部下の妖魔たちが頻繁に通信を行ってたり出入りしていたりする)。
そのため「A=ダンブライト」の設定は、物語が佳境に入る(そして人気作品ゆえにセーラー戦士たちに彼氏設定が付けられない)上で物語を無理にでもまとめるための後付設定の可能性が大きい、と指摘される事もある。
ちなみに現代の美奈子の従者であるアルテミスはカラーリングと頭文字がAと同じ、Aが登場している間はアルテミスがいない描写があることから、元々はアルテミスの人間体として登場する構想だったのかも…。Aもまた、作品人気の犠牲となったのかもしれない。
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タキシード仮面 - 立ち振る舞いがそっくり。怪盗として登場したのも同じ。旧作アニメでは薔薇を投擲技に用いる。