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概要編集

1957年、日本交通公社(現在のJTB)発行の旅行雑誌〈旅〉に連載。

翌58年光文社より初単行本化。


松本清張にとっては初の長編作品であり、その後の社会派推理小説の隆盛、および自身のブーム最初のキッカケとなった作品。

氏の代表作筆頭に挙げられることも多い。


映像化について編集

1958年に東映東京撮影所の手によって映画化された。同年11月に東映系の映画館で公開されている。


だがこれ以降なぜか映像化なされずにいた。

そして久々に映像化されたのは2007年のこと。テレビ朝日開局50周年記念作品としてテレビ朝日自身の手によって製作され2夜連続ドラマスペシャルという放送スタイルで11月24日と25日にテレビ朝日系列局(ただし一部系列局除く)にて放送された。なお、それから約半年後の2008年5月には山陰放送TBS系列局)でも、さらに2008年の年末スペシャルドラマという格好で四国放送日本テレビ系列局、前後編分割)とテレビ山梨(TBS系列局、一挙放送)でも、それぞれ放送されている。


あらすじ編集

機械工具商の安田辰郎は馴染みの料亭「小雪」の女中二人と食事した後、東京駅で自分が乗る横須賀線電車の出発する13番ホームで見送りさせるが、そこから邪魔な列車が間に無かったため見通せた博多行特急「あさかぜ」が発車する15番ホームを「小雪」の別の女中・お時が若い男と一緒に歩いているのを目撃する。

そのお時と男は数日後、福岡県香椎海岸で揃って死体で発見される。現場の状況から毒物心中したものと判断されるが、福岡署のベテラン鳥飼刑事だけはある不審点を抱く。


情死した相手男性が汚職疑惑の渦中人物××省官僚の佐山だと判明したことで、警視庁捜査二課(経済犯罪担当部署)の三原警部補が福岡まで出張してきて鳥飼と協力する。佐山の上司石田部長は汚職の中心人物で、出入り業者の安田がそこに取り入っていたことがわかり、三原は安田が佐山とお時を自殺に見せかけて殺害したのではないかと睨む。

が、安田にはその時、まるで正反対方向の北海道へ社用で行っていたという鉄壁のアリバイがあった‥‥。


主要登場人物編集

安田辰郎

演:山形勲(1958年版)、柳葉敏郎(2007年版)

機械工具商安田商会の経営者。官庁関連の接待で「小雪」をよく使う上客。年齢は35、6。

安田亮子

演:高峰三枝子(1958年版)、夏川結衣(2007年版)

その妻。胸を患い鎌倉で療養中。文学趣味があり時刻表好き。32、3歳。

お時

赤坂の料亭「小雪」の、安田の係りの女中。26歳。

八重子

「小雪」の女中。安田と共に東京駅でお時と佐山を目撃。

とみ子

「小雪」の女中。同じくお時と佐山を目撃。

佐山憲一

××省課長補佐。31歳。お時と情死(?)しているのを発見される。

石田芳男

××省部長。汚職疑惑の中心人物。佐山の上司。

鳥飼重太郎

演:加藤嘉(1958年版)、ビートたけし(2007年版)

福岡署の刑事。42、3歳。妻と娘がおり、この娘のあるひと言が彼にヒントを提供する。

三原紀一

演:南広(1958年版)、高橋克典(2007年版)

警視庁捜査二課警部補。30をいくつも出ていない。鳥飼と協力して事件の謎を追う。


背景と余談編集

何よりも「東京駅空白の四分間」が、点も線も飛び越えて勝手にひとり歩きする程に有名。

今は横須賀線の電車は東京駅では本作完成後に竣工した総武快速線地下ホームからの発着となり、また「あさかぜ」は列車そのものが廃止されて姿を消したので、もはやその再現は不可能である。


「よくできた推理小説のキズを指摘することほど、読者の虚栄心を満足させることはない」と評論家の平野謙が作品解説で述べたように、この作品も様々な作中不具合が読者や研究者達からいろいろ指摘されているが、今や「それもご愛敬」と言ってもいい程の歴史的名作として広く認知されているのも事実である。


今では清張の代表作に挙げられる程の著名作だが、雑誌〈旅〉連載当時はほとんど読者からの反響が無く、創作継続モチベーション低下のため自ら病気休載を申し出ることもあったほど。遂には〆切直前に自ら「失踪」する事件まで起こしているが、雑誌出版元が運悪く日本交通公社だったため飛行機乗客名簿を調べられたり当時の国鉄用長距離直通電話を使われるなどして、結局清張は福岡空港にて「御用」となった。

その清張の談「乗り物に関しては交通公社からは逃げられない」。


関連タグ編集

松本清張 推理小説

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