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“In her tomb by the sounding sea!”



概要編集

1958年筑摩書房の総合雑誌〈太陽〉で連載開始し、同誌廃刊のため当時江戸川乱歩が自ら編集長を務めていた推理小説専門雑誌〈宝石〉に移り完結。

1959年末に光文社カッパ・ノベルス第一弾として初刊行。


数多い松本清張作品の中でも『砂の器』や『点と線』に次いで人気が高い(新潮文庫版発行部数順より)氏の代表作のひとつ。特に(その後清張自身何度も手がけることになる)どこにでもいそうな普通の若い女性が事件に巻き込まれた結果自分が探偵役となってその謎を追う趣向、の嚆矢ともいえる作品。

過去何度も映画化、TVドラマ化されているが、特に野村芳太郎監督による1961年版はその後の「真犯人を追い詰めるクライマックスシーンが断崖絶壁の上サスペンス定番演出のはしりだと言われる。


あらすじ編集

板根禎子(いたね・ていこ)は亡父の友人に勧められるまま十歳年上の広告会社員・鵜原憲一と見合い結婚するが、その夫の過去には謎が多いように思えた。新婚旅行後、憲一は新妻の禎子を東京に一人残して前任地の金沢へ業務引継ぎに赴くが、何故かそのまま忽然と消息を絶ってしまう。

金沢へ向かった禎子は出張所後任者本多の協力、そして憲一の残した蔵書の中に挟まれていた違った家が写っている二枚の写真などを手掛かりに夫の行方を探すが、杳として見つからない。そればかりか禎子同様金沢へやって来た憲一の実兄・宗太郎の奇妙な行動や、謎の写真の一枚と同じ立派な家に住む会社社長室田儀作・佐知子夫妻の存在等が絡み、またこれまで禎子が知らなかった夫の過去が少しずつ明らかになるにつれ、事態はますます混沌としてゆく。

そして遂には宗太郎が金沢で、本多が東京で毒殺され、そのどちらの事件にも謎の女性の影が絡んでいた‥‥。


主要登場人物編集

板根禎子

26歳の女主人公(=素人探偵役)。結婚して鵜原姓になるが、その夫が程なくして失踪する悲劇のヒロイン

縁談承諾後に辞めた会社では「女の子で綺麗だと言われる組に入っていた」。


鵜原憲一

禎子と見合い結婚した夫。36歳。A広告会社北陸(金沢)出張所主任だったが、それ以前の経歴には色々と謎が多く‥‥。


鵜原宗太郎

憲一の実兄(=禎子の義兄)。妻帯者で5歳の子供がいる。禎子の知らない憲一の過去をいくらか知っており、何者かに殺される直前まで不審な行動を‥‥。


本多良雄

A広告会社北陸出張所の後任者で、失踪前の憲一と一緒だった人物。夫の行方を追う禎子に何かと協力を惜しまないが、その真意は‥‥?


室田儀作

A広告会社北陸出張所の大口顧客・室田耐火煉瓦株式会社の社長で、この地方の名士。50歳くらいの温厚な紳士。いち広告会社員にすぎない憲一を自宅食事に招くなど、ひどく贔屓にしていたようだが‥‥。


室田佐知子

儀作とは17~8歳の年齢差がある、和装が似合う後妻。明るく社交的で、地元夫人文化団体役員も務めるこちらも女流名士。現夫とは東京で知り合った。


田沼久子

室田耐火煉瓦会社の受付係。30歳くらいだが可愛い顔立ち。同社工場で働いていた工員の夫を亡くしたばかり。ブロークンな英語が堪能。


背景と余談編集

作品名が『虚線』(〈太陽〉連載時)→『零の焦点』(〈宝石〉連載時)→『ゼロの焦点』(カッパ刊行時)と変遷している。「ゼロの焦点」は本作最終章のタイトルでもあるが、その意味するところの具体的説明は本文中には無い。


「社会派推理小説」と呼ばれる作品の宿命なのか、戦後まだ十数年と経たないこの時代(1950年代後半)の社会背景を承知していないと、令和の今では理解しづらい作中要素が幾つもある。例えば

恋愛結婚よりも見合い結婚の方が多数派で、相手がどんな人物なのかよく知らずに結婚することも珍しくないこと

新婚旅行の行先が普通に国内(鵜原夫妻の場合は甲府→信州諏訪→木曾→名古屋)

・そして今回の事件の真相に関わる、ある戦後の社会事情

等々。


『点と線』同様この作品にも鉄道が事件トリックに大きく関与してくるが、舞台となった北陸鉄道路線の幾つか(「謎の桃色ネッカチーフの女」が逃走に用いた能美線や、禎子が羽咋から能登高浜まで二度も乗車した能登線など)がその後廃止され、現在は存在しない。

映画編集

1961年版編集

1961年3月19日公開。監督は野村芳太郎。


主な出演編集

久我美子

高千穂ひづる

有馬稲子


2009年版編集

2009年11月14日公開。監督:犬童一心


主な出演編集

広末涼子

中谷美紀

木村多江


TVドラマ編集

1961年版編集

フジテレビ系列で8月15日から11月28日まで16回にわたって放送。


主な出演編集

鵜原禎子:河内桃子

鵜原憲一:小山田宗徳

室田佐知子:鳳八千代


1971年版編集

3月1日 - 19日にNHKの『銀河ドラマ』(銀河テレビ小説)枠(21:00-21:30)で15回にわたって放送。


主な出演編集

鵜原禎子:十朱幸代

室田佐知子:奈良岡朋子


1976年版編集

5月31日 - 7月2日に日本テレビ系列の『愛のサスペンス劇場』枠(13:30-13:55)で25回にわたって放送。


主な出演編集

鵜原禎子:土田早苗

室田佐知子:真理明美


1983年版編集

「松本清張のゼロの焦点」。4月16日にTBS系列の『ザ・サスペンス』枠(21:02-23:23)で放送。脚本は1961年公開映画と同じ橋本忍山田洋次


主な出演編集

鵜原禎子:星野知子

室田佐知子:大谷直子

田沼久子:竹下景子


1991年版編集

「松本清張作家活動40年記念スペシャル・ゼロの焦点」。7月9日に日本テレビ系列の『火曜サスペンス劇場』枠(21:03-23:22)で放送。


主な出演編集

鵜原禎子:眞野あずさ

室田佐知子:増田恵子


1994年版編集

NHK-BS2で6月1日から4夜連続で放送。NHK総合テレビでは、1995年2月18日・2月25日に『土曜ドラマ』枠(21:00-22:15)で放送。


主な出演編集

鵜原禎子:斉藤由貴

室田佐知子:萩尾みどり

関連タグ編集

松本清張 推理小説 昭和 北陸鉄道

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