正式名称は「ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々」。
概要
ギリシャ神話をモチーフにした不条理ギャグコメディ作品である。作中の登場人物達は全員ギリシャ神話に登場する神々や勇者達そのものだが、そこは増田らしく絶妙に残念なキャラクターにアレンジされており、ギリシャ神話をモチーフにした作品にあるまじき駄目人間の見本市と化している。
ストーリーもギリシャ神話をほとんど下敷きにしておらず、基本的に一話完結の短編ギャグ連作となっている。
2011年6月号から2014年10月号まで『ジャンプ改』で連載され、『ジャンプ改』休刊に伴い『小説すばる』で連載が続けられ、2021年に連載が終了した。
全4巻。
登場人物
神話で「○○の神」といった呼ばれ方をしている人物が多いが、作中でその全てを発揮するものは少ない。詳しく知りたい人は神話を直接調べよう。
- アキレウス:アキレス腱で有名な勇者。他が無敵すぎて逆に唯一の弱点である踵が異常に敏感で、触っただけで途方も無い激痛が襲い、蹴られると即死するらしい。その踵を守るために特製の靴を作ってもらうが、自身の汗っかきが災いしてムレにムレる。もう今すぐ脱ぎたい。ケイロンの弟子だが、師匠の守銭奴っぷりにうんざりしている。
- ヘラクレス:町内最強の勇者。ぶっ飛んだキャラが多い作中では常識人で、登場する話では基本的につっこみ役。頭のライオンがいなくなると前髪ぱっつんのおかっぱ頭となり、目もなんか頼りない感じに。そして性格も少し変わる。
- ケイロン:アキレウスの師匠で、金の亡者。自分の弟子から異常に高い月謝を取っており、異常に高い値段で自分が開発したしょぼい技を売っている。また普段は10分2000円で人を背中に乗せる商売をしている。へその辺りがちょうど0℃になっているオッサンの温度計を持っているらしい。あらゆる学問に精通しているとされるが、この作品ではそれを発揮する機会はあまり無い。
- ペレウス:アキレウスの父で、息子と同じくケイロンの弟子。出番が少ない。
- テティス:アキレウスの母。出番はほぼ無い。
- アルテミス:狩猟の女神。弓の練習のために森に来ていたが、的を大きく外してたまたま傍にいたアキレウスの頭(脳)を射抜いてしまい、彼の顔を知らなかったために殺したと思い込んでしまう。最終的にアキレウスは復活したが、彼の履いていたパンツのせいでイオバテスだと勘違いしてしまった。弓の腕は致命的になまっている。
- パトロクロス:アキレウスの友人。普通に話をしていただけなのだが、不良っぽい外見と言動からケイロンにはアキレウスが絡まれていると勘違いされてしまった。
- エロス:言わずと知れた恋愛の神。エロスという言葉がいやらしい意味で使われることを遺憾に感じており、自分では全くいやらしさの欠片も無いと言ってはいるが、傍目にはどう見てもエロの塊。もうエロの化身と言っても過言ではないTHE・むっつりスケベ。しかも小学生のようなごまかし方をしている為、非常に見苦しい。エロい単語を聞くと変顔になる奇癖の持ち主。
- テセウス:商店街と、父親の喫茶店の為にがんばる青年。しかし戦い以外の全てのセンスが壊滅的で、商店街のために出すアイデアはことごとく酷く、極め付けに自分の作った『シェフのきまぐれブルゴーニュ風オシャレビーフのナポリ風セレナーデシェフのきまぐれハチミツ越え』という謎の物体で父を殺しかける。反面戦闘のセンスはこれ以上ないほど優れており、『その辺を飛んでいたハエを指先で突き殺す』『水晶玉を拳で砕いて平然としている』など非常に強い。手相はアポロン曰く「勇者線が濃く出ている。逆に喫茶線はダメで、借金と汚物にまみれ、度々食中毒を出し、店も折に触れて大爆発する」らしい。後にケンタウロスを倒した(つもりになっている)が、その状況の説明がトークでも文章でも下手糞すぎると残念な男。
- アテナ:戦いの女神で、テセウスに戦いの道を説いた本人。基本的につっこみ役だが、ボケに回ることもある。ミノタウロスとの戦闘を間近で見ており、トークライブでその話をするが緊張しすぎて全く話が広がらず、司会者であるヘルメスに殺意を抱かれる。
- アイゲウス:テセウスの父で、アテナイ商店街(この作品のメイン舞台)の会長。自分の喫茶店におしゃれを求めており、またアホな若者のようなしゃべり方をするが、客はあまり来ない。
- イカロス:鳥のように空を飛ぶ事を夢見る少年。自前の翼を持つエロスに憧れているが、本物を見てやはり幻滅。イメージからベレロポンのファンに鞍替えしようとするが、こちらも本物を見てまた幻滅。しかし本人も学校が始まって一月経っても夏休みの宿題が手付かずと、駄目人間ぶりがかなり酷い。
- ダイダロス:イカロスの父で、デブのオッサン。太っていていいことが何もないと嘆いていたが、その腹をクッションにして空を飛ぼうとして落下する息子を助け、いい事をひとつ見つけた。しかし寒さに強かったり触ると気持ちよかったり癒し系と言われたりするなど、いいことは色々とあった模様。また、ミノタウロスに依頼されて彼の住む迷宮を作った名工だが、どう見ても迷宮じゃなく住み心地が良くて使い勝手も抜群なただの1DKルーム。
- ナウクラテ:イカロスの母親。テティスよりは出番があるが、それでもほぼ無い。
- ミノタウロス:有名な牛頭の怪物。この作品では迷宮を家として普通に生活しており、ダイダロスに頼まれてバスローブを買いに町に出た所をテセウスとアテネに出会い、無理やり戦わされる。得意技は巴投げ。口の悪いダイダロスとは腐れ縁の友達である。
- ミノス:神話では怪物ミノタウロスに悩まされる王だが、この作品ではクレタ町の町長で、アリアドネの父。
- アリアドネ:アリアドネの糸で有名な少女。テセウスに憧れているが、その想像図は間違ったビジュアル系そのもの。町で見たベレロポンを「まさかテセウスではないか」と危惧していたが、違ったようで一安心。後にテセウスのサインを求めて喫茶店にやってきてヘラクレスに間違えてサインをねだってしまい、勘違いを謝罪して帰っていったが、店に飾ってあるサインには気づかなかった。
- ベレロポン:「ペガサスに乗っている」とそれだけならばかっこよさそうだが、実際には「禿げ上がってて出っ歯」「ブリーフいっちょで腹が出てる」「乳首洗濯ばさみ」「性格も非常にめんどくさくてうざい」とただのわけのわからない人。しかしこれでも勇者である。「ベレポロン」と誤植されたことがあるけど、あんまり責める気になれない。
- クロノス:時の神。イカロスの「夏休みが戻るなら絶対ちゃんと宿題をやってみせる」という言葉をたまたま聞いて時を戻すが、基本的に何も変わらなかったので唖然としていた。
- ポセイドン:イルカショーをメインとした海の動物園「ポセイドンランド」を経営している海神。1回6000円での貸し船屋もしている。ケイロンから「儲けたいんですね」と言われて否定していたが、入場料金が大人1200円で小人1150円の時点で言い訳不可能。メインのはずのイルカショーはその全てがクソ以外の何物でもなく、むしろなぜ潰れていないのか不思議なレベル。
- トリトン:半人半魚なポセイドンの息子。ショー開演の合図とショーの最中にチュロスを売るのが主な仕事。半漁人なのに何故か地面に縁がある苦労人であり、ちっとも自分のフィールドで戦わせて貰えない。
- アポロン:占いの館を経営している予言の神。現時点では水晶玉か手相以外の占いはしていない。何故か水晶玉をひたすらしばき倒すことで見たいものを見るが、見えるものはそのしばき方で変わる。その料金は連載開始当初は1000円が基本だったが、途中から1200円になった。テセウスに壊されたものの代わりとしてヘパイストスに新しい水晶玉を作ったもらったのだが、エロスのせいでまた壊れた。
- アスクレピオス:アポロンの息子かつケイロンの医者としての弟子。エロスにしつこく「傷口ウィ~っ」ってしてくるなど、変なスイッチがある。医者としては良心的で出してくる軟膏の値段はそんなに高くない。変なスイッチさえ入らなければ名医なのにね。
- ヘルメス:旅人の神で、雄弁の神で、泥棒の神でもある。仕事の早さに絶対的な自信と誇りを持つが、動き出すのが早すぎて情報の確定が無いままとなり、その結果迷惑をかけることもある。おまけに色んなモノを盗みまくるたちの悪い泥棒である。
- ハデス:冥界を司る神だが、凄まじいドジっ子。アスクレピオスを殺そうと彼の診療所に押しかけるも、たまたまそこにいたテセウスに壊れたメガネをかけられてクラクラしてしまい、バランスを崩して冥界に戻った。後に完全な無敵になろうとステュクス河へやってきたアキレウスを「二度づけ禁止」の掟にしたがって殺そうとしたが、冥界の入り口に引っかかって逃げられてしまう。
- デメテル:豊穣の女神。娘に宛てられたハデスのラブレターを読んだが、あまりいい思いはしなかったようだ。少なくとも娘はやらんとのこと。
- ペルセポネ:デメテルの娘。かなり残念な女性だが、ハデスのストライクゾーンど真ん中らしい。深夜テンションで書いたハデスのアホなラブレターをもらって喜んでいたらしい。似たもの同士やんけ。
- アレス:戦いを司る軍神らしいが、テセウスに完全敗北し、後にベレロポンやイアソンにも完膚なきまでに叩きのめされてしまった。非常に苦しいかつみっともない言い訳で「自分は弱くない」と言い張っているが、作中の描写からは弱いとしか思えない。というか作者から「相当弱いキャラ」と言われてしまった。もともと神話の時点で人間に負けることもあったらしいし、仕方ない。母親であるヘラに髪を切ってもらっている・服も母親に買ってきてもらう・いまだにお小遣いをもらっているなど、戦闘以外も残念な男。
- ヘパイストス:鍛冶の神。アポロンに頼まれて新しい水晶玉を造ったのだが、アポロンの無理な注文でかなり安く造ったらしく、酷使しすぎると気持ち悪い汁が出てくるというよくわからない代物が出来上がった。見た目も中身も冴えない男であり、デリカシーのない母親のヘラが苦手。
- パンドラ:ヘパイストスが作り上げた人造人間の少女。生まれた瞬間からあらゆることにツッコミ続けるツッコミ人間であり、非常にうるさい。
- ガイア:大地母神。大地と一体化した巨大な女神であり、たるみにたるみきったオリンポスの神々に活を入れるべく巨人達をけしかけ、ギガントマキアを引き起こした。が、ヘラクレスの起こしたピタゴラスイッチみたいな奇跡によって阻止された。
- ヘラ:ミルキーウェイの元ネタとして有名な結婚と嫉妬の女神。神話でよく見るような酷く的外れな嫉妬を繰り返す女神では無い。イリスの生み出した変な虹を相手に肉弾戦で対抗する肉体派。駄目人間と変態ばかりのこの作品の中では大変まともな人だが、悪い意味でおばさんらしいおばさん。悪意は無いがデリカシーも無いタイプのおっかさんで大変面倒くさい。
- ヘベ:ゼウスとヘラの娘。青春の女神だが、彼女の好む青春は昭和のドラマのような、悪く言えば青臭く古臭い青春である。町で見かけたイアソンが「自分探しの旅」とまさに自分の好きな青春をしていると勘違いしてしまったかわいそうな女性。
- イリス:虹の女神。そのメンタルの弱さからアレスに惚れてスランプに陥り、一時的に小豆色が腐ったようなうんこのような臭いがする質量のある虹しか生み出せなくなっていたが、ヘラが漏らしたアレスの日常を聞いて幻滅し吹っ切れた。
- ナルキッソス:自分自身に恋をしている不細工なナルシスト。まあこいつの名前が語源だから仕方が無い。自分の顔が一番好きらしいが、鏡を見ると一時的に好きじゃなくなるらしい。それどころか、見ている時間に応じてどんどん自分を卑下しだし、最終的には「底辺の三冠王」とこき下ろす。自己嫌悪もナルシーの一種だから仕方ないね。病的なナルシストではあるが、自分以上に変なヤツを見ると冷静になるタイプ。
- イアソン:自意識過剰なコミュ障の引きこもり。冒険に出たがる勇者志望だが、何かと理由をつけて結局家に帰ってしまい、メンバー募集も「初心者歓迎・経験者希望」とわけがわからない。以前はケイロンのもとで修行をしていたらしいが、途中でやめたらしい。ちなみにアレスには勝てた。
- アルゴス:船大工。どっからどう見てもスワンボートの「アルゴー号」を作った人。とにかくおしゃべりで、話す内容も自分語りが中心のきっついオッサン。
- オリオン:ポセイドンの息子。水の上を歩ける巨人だが、弓の腕はなまりきっているしどうでもいい話にやたらと食いついてくる残念なイケメン。
- モルペウス:夢の神。ハデスとおなじく冥界に住む神であり、「ゆ~め~ゆ~め~波ーーーー!!」のかけ声で人に無理矢理夢を見させる変な能力の持ち主。
- ヒュプノス:眠りの神。モルペウスの父だが全然似てない。矢鱈とうるさい動作で人を眠らせる能力を持つが、どう考えても眠れそうに無いほどやかましい。
- ペルセウス:盾に写ったメデューサの姿をみて戦っていたが、後ろ向きでは戦いづらいからと一瞬だけ振り返ったら左足の膝下だけ石にされてしまった。それ以降、メドゥーサと生殺し合戦を繰り広げることに。
- メドゥーサ:その目を見たら石にされるという怪物。何を言うにも無駄に溜めるくせがある面倒臭い姐さん。増田ヒロインのなかではトップクラスにかわいい。
- エリス:黒い翼が特徴的な争いの女神。争いをエネルギー源にしているのだが、如何せんこの世界は平和すぎるのでどいつもこいつもしょっぱい争い事しかしてくれず、常にガス欠で死にかけている。
- アフロディテ:美の女神。普通に美人で性格も謙虚なのだが、謙虚すぎて容姿を褒められると恥ずかしさから変顔をきめてしまう。
- オイディプス:予言の神アポロンのいい加減な占いのせいでスピンクスと闘う羽目になった青年。頭はいいのだが考えすぎてしまう悪癖のせいでスピンクスの謎謎に悪戦苦闘してしまう。
ドラマ化
2020年にTVドラマ化と舞台化が決定した。舞台はコロナ禍の影響で残念ながら講演中止となってしまった。