概要
ギリシャ神話に登場する英雄。
本名はヒッポノオス(※1)といい、兄弟であるベレロスを誤って殺した事から「ベレロフォン」(ベレロス殺し)と呼ばれるようになった。
罪を清算すべく、ティリンス王プロイトスの元に赴いたが、そこで王妃ステネボイアに誘惑されてしまう。ベレロフォンは全く相手にしなかったが、逆恨みした王妃はベレロフォンに犯されそうになったとデマカセを王に吹き込んだ。
これを真に受けて怒ったプロイトスは、しかし客人として歓待したベレロフォンを自らの手に掛けることを憚り、彼に一通の手紙を持たせて義父イオバテスの支配するリュキアへ送った。手紙にはベレロフォンの暗殺依頼が暗号で書かれていた。
リュキア(※2)ではキマイラという獅子の体にヤギと蛇の特性を併せ持つ魔獣が暴れていた。イオバテス王はベレロフォンを亡き者にする方法として、彼にキマイラ討伐を任せる。こんな化け物とまともに戦って勝ち目は無いと見た彼はアテナ神の助力を得てペイレーネーの泉でペガサスの捕獲に成功、アテナから授かった黄金の轡と手綱で使役する事が出来た。
ベレロフォンはペガサスに騎乗し、キマイラとの戦いに臨んだ。キマイラが火炎を吐こうと口を開いた瞬間に鉛の塊を付けた槍を突き刺した。鉛の塊はキマイラの火炎で溶け落ちキマイラの喉を焼き尽くす事に成功。見事にキマイラ退治を成し遂げた。(※3)
その後もペガサスを駆り、ソリュモイ人(※4)、アマゾネスの討伐をこなし、彼を体良く始末する為に王の命で待機していた兵士を全員返り討ちにした。
王は彼を勇者と認め、体良く利用していた事を詫びて娘と結婚させ、これまでの仕打ちは手紙が全ての原因であった事を告げた。(※5)
しばらくして彼はティリンスに帰還する事となる。彼が帰還した理由は王にキマイラ退治の報告をする為などでは無く、自分を謀殺しようと目論んだ憎っくきステネボイアに復讐する為である。
そんなステネボイアはベレロフォンが死んだとは露知らず、生贄を捧げていた最中であったのだが、当のベレロフォンが現にこうして目の前にいたのだから、驚きは隠せなかっただろう。
ベレロフォンは彼女を許したかのような素振りを見せると、ペガサスの背に乗らないかと誘いを掛けた。彼女はまんまと誘いに乗り、ペガサスは天高く空へ羽ばたき出して行く。ベレロフォンは頃合いを見つけるとステネボイアを蹴落として復讐を成したのだった。
こうして英雄として功成り名遂げたベレロフォンだったが、次第に慢心していく。自分の偉業に自惚れて、神々への仲間入りをすべく、ペガサスと共にオリュンポス山に向かおうとしたが、自惚れに怒ったゼウスの雷霆で撃ち落とされてベレロフォーンはペガサスから落馬して死んでしまった。しかしながら、生存したという説もあり、こちらでは視力や足が不自由になったとされる。
また、ペガスス座の星座神話においては、ゼウスの差し向けた一匹のアブがペガサスに噛みついた事でペガサスから振り落とされたという説が主流になっている。
一方のペガサスはこれまでに英雄の冒険を手助けした功績が認められて星座となり、以後はゼウスの雷霆を運ぶ役割を仰せつかったという。
注釈
(※1)馬のオスという意味ではない。しかし、馬に関係する名前である事は間違いない。
(※2)今のトルコ南沿岸部。
(※3)空中から弓矢を射る事で倒したという説や、鉛の塊を投げ込んだという説もあり。
(※4)一説ではリュキアの先住民族。
(※5)そもそもな話、イオバテス王はステネボイアの父親である為、プロイトス王に義理立てするのは仕方のなかった話である。しかし、ベレロフォンが国内の脅威を軒並み片付けてくれた上に後継者に相応しい人物であるとわかった以上、彼と敵対する道理はなくなっているので賢明な判断と言えよう。
家族関係
息子にイーサンドロス、ヒッポロコス、娘にラーオダメイアがおり、(慢心し、破滅した事はともかくとして)ヒッポロコスからは非常に尊敬されており、彼の息子であるトロイア戦争の将グラウコス(海神とは別人)には『祖先に泥を塗るな』と釘を指したほど。(グラウコスの末路についてはアイアスの項目を参照。)
ちなみに、ベレロフォンの父親の名前もまたグラウコスだったりする。このグラウコスもまた馬に縁があり、かつて馬を強くするために人肉を喰ませていたが、ある時競技会でイオラオスと戦車競争をしていた折に、腹を空かせたグラウコスの馬が主人を貪り尽くし、イオラオスが勝利してしまう。以後彼の霊魂は馬を狂わせる悪霊『タラクシッポス』になったという。
どうやらアフロディーテを軽んじたり、馬に交尾をさせなかった事が原因のようである。息子共々自分の馬に破滅させられる末路を辿るのは何とも因果なものである。
表記揺れ
- ベレロポン
- ベルレフォーン
- ベレロフォーン
- ベレロポンテスなど
創作作品では
ペガサスの相棒はペルセウスとされる事が多いため、あまり出番が与えられない事が多い。
しかし、原典の神話においてペガサスの逸話の大半はベレロフォーンのものだったりする。
彼がペガサスを御する為に使った轡(ここでは手綱となっている)がペガサスに関係のある英霊の宝具として登場。彼の名前が宝具名となっている。
本人は未だ未登場となっているが、一応存在はしている模様。仮にFateシリーズに登場した場合、クラスはライダーである事が窺える。
一応は本人という設定で登場しているが、ペガサスに乗っている事以外は出っ歯で禿げているなどギャグ漫画らしい外見をした人物として描かれる。こんななりでも勇者のようだが。
第40話『とべよペガサス! ゼンダマン』(脚本:佐藤和男)にベロロフォンという名前で登場。
数あるギリシャ英雄の中でも当時としてはかなりマイナーどころからの選出となった。
神属性のカードとして登場。レアリティはレジェンド。
なんと女体化されており、進化させるごとに神々しい姿へと変わっていく。
刻のイシュタリア
「天馬の乙女ベルレフォン」という女体化キャラクターとして登場。
「強襲型ド級レジェンド」の異名を取るI2CO陣営のユニットとして登場。
アーマローダーズ
作中世界の根幹を為す機体のネーミングになった。
外伝作品「海皇再起」にて神罰の女神ネメシスの配下である英魂士(スピリット)「銀翼(アーリス)のベレロポーン」が登場。
神話のベレロフォンその人であり、逸話に由来してか天馬星座の青銅聖衣に似た鎧を纏う。
ポセイドンの護衛についたクリュサオルのクリシュナと戦うが、お互いの鎧のモデルとなったクリュサオルとペガサスは兄弟関係にあるモンスターである。
ベレロフォンに由来する事象
- ベレロフォン級戦艦
- ベレロフォン(小惑星)
小惑星帯に存在する小惑星の名前。これとは別にペガサス座51番星bにこの名が付いていたが、この小惑星に既に使用されていた為、承認されなかった。
- ベレロフォン(古代生物)
オルドビス紀から三畳紀に生息していた貝類の一種。
関連イラスト
関連タグ
ペルセウス:先代ペガサス騎乗者。
イカロス:同じく、自らの力を過信して破滅したギリシャ神話の登場人物。
ペガサス星矢:同じくアテナの寵愛を受けた天馬の勇者。神々に挑んだ末に悲惨な末路を辿るという共通項を持つ。