概要
農業に使われる機械。精米機のように固定式のものや、刈払機のように手持ち式の機械もあるが、それらは農業機械の記事で扱い、ここでは車両の形態をとる農機について扱う。
農機は乗用車やトラックほど需要が安定せず大量生産できないため、総じて高価であり(耕耘機は安価なものもあるが)、素人が農業を始める場合、初期投資のうち最も大きいのが農機と言われている(離農者の機械を譲り受ける、中古で買うなどである程度安く揃えることは可能)。
一年中使われるわけではないため消耗が少ないことと、非常に高価なことなどから、とても長く使われるものが多い(農機の法定耐用年数は7年だが、40年以上前の古い機械も普通に現役で活躍している)のだが、故障時の対応やメンテナンスなども考える必要がある。また、大型の農機は重機などと同じく業者からレンタルを受けて運用されることも多い。
農機を公道で運転する場合は何らかの運転免許が必要になる。最高速度35km(農機以外は15km)以下で小型のものは小型特殊または普通免許、速度か車体サイズが小型特殊の基準を上回るものは大型特殊免許が必要。
近年は、クボタやヤンマーが先導して農機にロボット(自動運転)技術の導入を進めている。後付け可能な自動制御システムを開発しているメーカーもある。
農機の種類
「牽引車」の意味で、トレーラーの牽引車もそう呼ぶが、一般的に単に「トラクター」と言えば農業用トラクターのことを指す。
後部に作業機(アタッチメント)を装着することで、多彩な作業に対応できる。ロータリー・プラウ・ハロー(砕土機)を装着して耕耘・整地・代掻き、播種機やブロードキャスタを装着して種まき・肥料散布、ブームスプレーヤを装着して農薬散布、マルチャーを装着してマルチ貼り、カルチべーターを装着して除草や中耕などである。掘取機を装着してイモ堀りにも利用可能。牧場ではロールベーラといって牧草の刈り取りと円形状の成形・梱包をしてくれる作業機が用いられる。前方にフロントローダーを装着して、収穫物や飼料などの積み込みや除雪作業にも対応できるものもある。農業以外でもゴルフ場や野球場などの整地に使われることがある。
荷車をくっつけて荷物の運搬にも活用できるが、公道では牽引免許が必要(積載物を含めた総重量が750kgを超える場合)。
2つの車輪がついた機械を人が押して歩き、田畑を耕す(耕耘)機械…だが、上の画像のように小型のトレーラーを牽引することもある(今の日本ではあまり見かけないが)。耘の字が一般的な漢字ではないため耕運機、耕うん機とも表記される。アタッチメントを付けて除草や畝立てなどの農地管理にも活用されることから、管理機と呼ぶこともある。主に大型の農機が入れない段々畑などの小さな農地で使われる。
農業用耕耘機は日本においては軽トラックの最大積載量350kg以下に収まるものが多くディーゼルエンジンかガソリンエンジンを搭載する。
プロ農業者ではない園芸愛好者が使う、家庭菜園用のごく小さなもの(ミニ耕うん機)もある。ミニ耕うん機はガスボンベから燃料を供給するタイプや電動式のものもある。耕耘機での作業は常に押して行う必要があり、後退(バック)をすると、非常に危険。
作物(主に穀物)の刈り入れと脱穀と選別を同時に行う農機。略称の「コンバイン」と呼ばれることが多い。世界的に主流の普通型(汎用型)コンバイン(上の画像)は刈り取った作物の全て(穂と茎葉)を脱穀部に供給して脱穀するが、日本で独自に開発された自脱型コンバイン(下の画像)は穂だけを機械に取り込んで脱穀する。
普通型は「汎用型」とも呼ばれるようにアタッチメントの着脱で豆類やトウモロコシやアブラナなど幅広い作物に使えるのに対し、自脱型はほぼ稲と麦専用であるが米粒を傷つけることなく選別できるという特長があり、日本で「コンバイン」と言うと主に自脱型がイメージされることが多い。
刈り取りと結束のみ行う農機。コンパクトで小回りが効くことから、小規模農家や、山間地の田んぼなど大型のコンバインが入れない農地で使われる。
バインダーと併用する自走式脱穀機。本来は上記のコンバインやバインダーを含む収穫機をハーベスターというので、脱穀機をハーベスターと呼ぶのはおかしいのだが、日本の農業では俗称として定着してしまっている。
基本的に田植え専用の機械だが、除草剤や肥料散布用のアタッチメントもある。
スピードスプレーヤー
広範囲に農薬を散布するための車両で、主に果樹園で用いられる。
著名なメーカー
クボタ(Kubota)
ディア・アンド・カンパニー(農機シェア世界一)
ニューホランド(New Holland)
本田技研工業(Honda)
三菱マヒンドラ農機(三菱農機)
ヤンマー(YANMAR)
ランボルギーニ(※現在はスポーツカーメーカーとは別会社)