概要
『週刊少年ジャンプ』で連載された石山諒氏の漫画作品『歪のアマルガム』の副主人公。
特殊警察のメンバーであり、主人公の相棒にして先輩的存在である。
初登場話は第1回『怪物』。
詳細
物語の冒頭、久佐場六道と同じクラス(2年3組)に転入してきた少年。
長い黒髪を三つ編みにしており、クラスの女子を「イケメン転校生」と騒がせる容貌の持ち主。
その正体は犯罪組織『賽』の壊滅のみを目的とする警察の特務部署・警視庁零課のメンバー。
潜入と情報収集を上司の牛頭次郎課長から命ぜられており、転校してきたのも偽装の為であった。
研究員に成り済まして敵の施設に潜り込むが、そこで偶然にも妖細胞の実験体にされていた六道と邂逅する。
六道は移植手術を受けても自我を保ったままでいられたが、影舟はそれも長くは続かないものと判断、彼を殺処分しようとする。
しかしそこへ実験失敗作であるろくろ首化した女性が乱入。
六道より彼女の殺処分を優先しようとする影舟だったが、彼女を庇った六道が自我を保ちつつ妖力(スペック)を使いこなして見せたことに驚愕する。
この一件で影舟は六道の殺処分を保留とし、自我を失い次第自分が始末すると宣言する。
六道が零課に加わったことで、寮で同居しつつ監視役兼戦闘教官を務め、やがて彼から「俺が自我を失くした時に殺してくれる奴」と信頼されるまでになる。
なお第2回以降、学校に通っている描写は無く、登校を続けているのか否かは不明となっている。
来歴
彼の生まれた『黒水家』とは、古来から日本の国に仕え、その平和を保つために忍者やスパイといった「汚れ仕事」を担ってきた一族だという。
一族の者は年齢が「七」歳になると、「刀」で敵を「切」る、『切の行(せつのぎょう)』という通過儀礼を行うらしい。
影舟自身も物心付いたころから修業を受けており、7歳の時に妖細胞実験の被害者達の殺処分を母親から命ぜられ、実行した。
現在の彼は正義の味方を自称し、『賽』との戦いという使命に従事している。
しかし彼にとっての「正義」とは、「国の平和を守るために、その平和を乱す『悪』を殺すこと」であり、人を助けることではない。
故に悪を討つためなら、他人を見捨てたり利用したりといったことを平気で行ってきたという。
何の落ち度もないのに実験体にされてしまった六道を殺処分しようとする際に「同情はする」と告げたり、ろくろ首化した女性の幸せだったころの記憶に沿ったセリフを聞いて僅かに逡巡を見せたりと、まったくの非情にまではなりきれていないものの、基本的には躊躇も容赦も無く刀を振るう。
しかし六道の愚直なまでのお人好しぶりに触れたことで、ある種の変化が現れ始める。
自分にそのお人好しぶりが移ったことは認めるものの、ただ迎合するのではなく、かと言って「正義の為には情けを捨てろ。手は汚しても信念は汚すな」という母親の言葉に従属するのでもない。
影舟は、最終的にはそれらが混じって黒く濁ったのが「今の自分である」と結論付けた。
人物
そのクールそうな外見とは裏腹に、異常なまでの毒舌家かつ短気である。
拘束された人質を手錠女呼ばわりし、六道の事も二言目には愚図と罵る。
上司である牛頭にはさすがに敬語を使うものの、彼が自分を六道の教官に任命した際には暴言を吐いている。
一方で「卵を割る前には予めヒビを入れておく」ということを知らないという天然ボケぶりや、六道に救われた女子大生の感謝の言葉を(悪態混じりだが)伝えるという気遣いも見せている。
敵組織やその兵器に関して懇切丁寧な説明をするシーンが多く、作中のポジションとしては正義の味方というより読者の味方(解説役)という側面も持つ。
能力
超能力や気を操るなどといった特殊能力は持っていないらしく、あくまで武器を用いて戦う。
主武装は日本刀で、一振りで神社の狛犬を真っ二つにしたこともある。
クナイや鎖分銅といった武器の扱いにも長けており、『賽』の科学長サラ・ヴェーレンを「流石はあの零課の回し者」と唸らせている。
しかし作品そのものが短期間で終了したこともあり、作中での戦績はあまり振るわない。
敵の最高戦力と呼ばれた改造人間の森不動を追い詰めるシーンこそあるものの、隠し持っていた切り札によって結局逆転されている。
また潜入捜査中にもかかわらず、サラの目の前で意味もなく自ら仮面を外して素顔を晒しており、こちらの任務にも向いているのかどうかは怪しいところである。
最終回『result』にて
六道は黒幕サラとの死闘に勝利するが、同時に妖細胞に取り込まれ、自我を失った怪物に変貌しようとしていた。
いつか彼を殺処分しようとした時同様「同情はする」と告げ、更に「…後悔も」と歯噛みする影舟。
かつて捕らえた犯罪者尾崎京を介して、六道が「自我を失くした時に殺してくれる奴」と自分を呼んでいたことを知っていた影舟は、「お前の大切な者のために、今ココで死ね!!」と叫び、刀を突き付ける。
それは"警告"であり、"意志"であり、"覚悟"であり……"約束"だった―――。
しかし、六道は自我を取り戻してみせた。
「人騒がせな野郎だ」と例によって悪態をつく影舟。だがその顔には、微かな笑みが浮かんでいた。
以後影舟は、零課に残った六道や新たな協力者となった空佑と共に、『賽』の残党を追う日々を送っている。
相変わらず悪態をつき合ってはいるが、六道を苗字ではなく下の名前で呼ぶようになっていた。
一方六道側は、影舟を下の名前で呼ぶようになったかは不明だが。
関連人物
黒水 美影
影舟の母親。10年前の回想シーンにのみ登場。当時31歳。
影舟にとっては、作中で明確になっている唯一の家族である。
一族の使命だけでなく学業にも厳しいらしい。