というか会社の定期健康診断では肝機能検査のうちAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの3つは必須項目となっている。
基本的にASTとALTは同時に測定される。
主に肝臓の病気(肝臓病)を調べるために使われるが、ALTと異なりASTは心臓や筋肉、血液の病気でも数値が上昇することがある。
概要
そもそもASTとALTは共に肝臓などに存在する酵素のことである。
ASTの正式名称はアスパラギン酸アミノ基転移酵素。昔はGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)とも呼ばれていた。
ALTの正式名称はアラニンアミノ基転移酵素。昔はGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼ばれていた。
大きな違いとしてはASTは肝臓だけでなく心臓や筋肉、腎臓、赤血球などにも豊富に含まれているが、ALTはほぼ肝臓にしか存在しないという点があげられる。
また、体内ではASTの方が含有量が多い。
ASTの半減期は約5〜20時間、ALTの半減期は40〜50時間であり、ALTの方が長い。
肝臓などの細胞が壊されると血液中に流れ出るため、検査では数値が大きいほど多くの細胞が破壊されていると推測することができる。
検査におけるASTとALT
AST、ALT共に単位はU/L。
正常範囲は30以下。31以上は要注意。(ただし、検査を実施している病院によってはAST:35以下、ALT:40以下でも正常と判断される場合がある)
51以上になると要精密検査となることが多い。
特に100以上の場合は明らかに治療が必要な状態と考えられるので、すぐに病院に行くべきである(目安としては100以上で進行した脂肪肝や慢性肝炎の疑い、500以上で重い急性肝炎の疑い、1000以上で劇症肝炎が疑われる。)。
疑われる病気
実はASTとALTの比率である程度病気を推測することができる。
例えば非アルコール性脂肪肝や慢性肝炎ではALTが上昇するが、ASTは上昇しにくい。
ただしALTと共にASTも上昇傾向にある場合は肝炎が進行していたり既に肝硬変になっている危険性もある(肝硬変まで進行するともう治らないので注意)。
アルコール性脂肪肝や薬剤性肝障害(薬の副作用で起こる肝障害)ではAST、ALT共に上昇する。さらにγ-GTPも上昇する。
急性肝炎では急激に肝臓の細胞が壊されるため、AST、ALT共にかなり上昇する。
また初期はASTの方が高いものの、回復期にはALTの方が高くなる。(ALTの方が半減期が長いため)
逆にALTは低いがASTだけが高い場合は心臓や筋肉、血液の病気が疑われる。
ただし血液検査の数値だけでは何が原因でASTやALTの数値が上がっているかまでは分からないので、精密検査では肝炎ウイルス検査や腹部超音波(エコー)なども行われる。
例えばALTが高かったので脂肪肝だと思って食事療法や運動に気を付けていたがそれでも数値は下がらず、実は脂肪肝より危険なB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していた、なんてパターンもある。
注意点
- ウイルス性肝炎だけでなく、他の感染症(エボラ出血熱、デング熱、COVID-19など)でも肝臓が腫れることがあり、その場合はAST・ALTが上昇する。
- 劇症肝炎では状態が改善しないにもかかわらずAST・ALTが急激に低下してくる場合があり、これは予後不良のサインである。
- 慢性肝炎が悪化して肝硬変になると正常な肝臓の細胞が減るため、AST・ALTの数値はむしろ低下する。したがってAST・ALTの数値が下がったからと言って必ずしも安心できるわけではない。
- 健康な人でも激しい運動や筋トレによって筋肉や赤血球が壊れると、ASTの数値が上昇することがある。
- ALTが正常範囲内であってもASTより高い場合は何らかの肝疾患が隠れている可能性がある。(全く病気が無い健康な人ではASTの数値の方が高いのが普通であるため)
- 正常範囲内であってもALTが20以上の場合は脂肪肝などの予備軍である可能性がある。
- AST・ALTが低いことを問題視するケースは少ないが、低過ぎる(10未満の)場合は栄養失調を起こしている可能性もある。したがってAST・ALTが低値だからと言って問題が無いわけでは無い。
- 例えばALTが極端に低い場合はビタミンB6(ピリドキシン)が不足している可能性がある。