概要
高い機動性と兵器搭載量の多さなど、長らくF-15のライバル的存在としてその存在感を放ってきた。大型の機体である事を利して航続距離・ペイロードに優れ、新型の高出力エンジンAL-31Fと相まって輸出の引き合いも多い。
NATOコードネームは『フランカー(Flanker:ラグビー等のポジションの一つ)』。
一般的にはこの名が有名で、ロシアにおいても逆輸入されて使用される場合がある。
またロシアでは、スホーイ機に共通する愛称として『スーシュカ(Сушка:ロシアにおけるスホーイの表記「Су」をもじったあだ名)』などのニックネームでも呼ばれる。
なお日本やアメリカでは『ジュラーヴリク(Zhuravlik)』という愛称も広まっているが、これは本国ロシアではほとんど用いられていないようだ(搭載されている通信機に類似した名前のものがあり、それが誤解されて広まったと思われる)。
原型機のT-10が初飛行したのは1970年代後期であり、本機が配備されてから30年以上が経過するが、今なお現役であり、バリエーションも豊富で、海軍型のSu-33や、改良型のSu-35、Su-37などがある。
ロシアのほかにはインドや中国が本機をライセンス生産している。
中国では「殲撃11型(J-11)」として生産されたが、原型となったのはオリジナルよりも性能の劣る「モンキーモデル」と呼ばれるタイプである。
本国での活躍
この戦闘機は元来、Su-15から発展した長距離迎撃戦闘機である。
したがってMiG-31と共に防空軍に配備されており、「ロシアの半分はSu-27が守っている」との事だが、実際には両者の長所をうまく組み合わせて配備しているものと思われる。
「長距離」と銘うつ割には増槽を搭載していないが、これは機内に十分な燃料を搭載できる為である。Su-27には元々、行動範囲を広くとれるように機体が大型である事が求められていたのだ。
(ソビエトでは空中給油は爆撃機向けが主だった)
機体の平面形も当時のTsAGI(ツアギ:ソビエトの流体力学研究所)の研究成果を反映したもの。
MiG-29とお互いに機体形状が似ているのは、双方ともにこの研究成果が活かされているからである。
それまでのスホーイの迎撃機と違い、
- 格闘戦にも強い
- 航続距離や搭載量に優れる
という強みがあり、特にプガチョフ・コブラは本機の高い運動性を象徴するマニューバーとなっている。
また二番目の「航続距離や搭載量の優越」は、MiG-29との海外セールスの違いによく現れている。
また、大型ゆえに拡張性にも優れ、その派生型は海軍向けのSu-33に留まらない。
ベクタードスラストノズルを備えたSu-37や、タンデム(縦列複座)としたSu-30などもある。
一番の変り種はサイドバイサイド(並列複座)とした戦闘爆撃機型のSu-34(Su-24の後継となる)がある。
Su-27をベースとした派生型はSu-27K、Su-27IB、Su-27M、Su-27BM等、Su-27○○といった命名がされて居る事もあり、混乱を招きやすいものとなっている。
(ロシアの命名規則の関係なので、フランカーに限った話ではないのだが)
兵装ステーションへ後ろ向きに搭載したР-73空対空ミサイル(NATOコードネームAA-11 Archer)をテイルコーン内の後方警戒レーダーと連動させ、後方の目標への発射を成功させている。
ただし実用的ではないためか、このような運用はされてはいない模様。
フィクションにおけるSu-27
pixivに限った話ではないが、機首から胴体にかけてのラインや全体的な構造の美しさが評価され、イラストの題材やフィクションなどによく登場する。
ハリウッド映画やゲームでは東側の戦闘機ということもあって敵役で登場する場合も多く、特にフライトゲームなどではフランカーシリーズは敵側の高性能機としてよく登場する。
後方へのミサイル発射を行っている作品もあるが、何故かその殆どがSu-37等の派生型で行なわれている。
主な派生型
試作機
T-10
最初に作られた原型機で、主翼がオージー翼(S字曲線翼)になっているのが特徴。しかしこれは空力的には不安定となり、また試作2号機が空中分解で失われたことから本格的な改設計が行われる。T-10Sと区別するため、この最初の規格の機はT-10-1と呼ばれるようになった。
T-10S
試作7号機以降の規格で、オージー翼をクリップドデルタへ改めるなど、現在おなじみのSu-27の姿はここでまとまった。NATOコードネームはT-10-1ともども「フランカーA」。
P-42
F-15「ストリークイーグル」の立てた世界記録を破るべく、特別チューンのエンジンを導入して徹底的な軽量化を施した飛行記録挑戦用特別機。それまでの記録をことごとく塗り替えた殊勲機である。
生産型
Su-27S/P
Sは空軍用、Pは防空軍向けのの一般形。チャフ・フレア散布装置が追加されるなど実戦仕様となった。電子機器の機能がほんの少し違うだけで、両方とも基本的に同じ機体である。
NATOコードネームは「フランカーB」。
Su-27UB
Su-27の副座練習機型で、操縦席後方に教官席が設けられている。
NATOコードネームは「フランカーC」。のちにSu-30にも発展する。
Su-27K
のちにSu-33へ改称。
海軍空母「アドミラル・クズネツォフ」向けの艦上戦闘機だったが、ソビエト崩壊後は海軍も予算が無く、肝心の空母が殆ど活動できなかった。現在も運用中だが、後継はMiG-29KRに決まっている。NATOコードネームは「フランカーD」。
Su-27M
のちにSu-35(初代)へ改称。輸出を主眼に開発された強化型。
Su-27Mはソビエト時代に開発されており、レーダーを強化型のN011「バルス」に換装している。このため機首レドームは大型化されており、またカナードを導入しているのが外観上の特徴。主翼の設計を変更し、胴体燃料タンクを拡大するなど機体設計まで手が入っていたが、ことごとく輸出は失敗し、本格的な生産に入らなかった。
NATOコードネームは「フランカーE1」。
Su-37
飛行制御をデジタルフライバイワイアとし、電子機器が大幅刷新された。レーダーFCSも能力が向上し、エンジンノズルは推力偏向型となった。これにより元来の運動性はさらに自在なものとなり、Su-37はクルビットをはじめて披露した航空機となった。
しかし輸出は相変わらず失敗しつづけ、唯一のSu-37も2002年12月に墜落して開発・生産計画は中断を余儀なくされた。
NATOコードネームは「フランカーE2」、一般には「スーパーフランカー」、「チェルミナートル」などとも呼ばれた。
Su-27SM
既存のSu-27S/Pに対して近代化改修を実施したタイプ。上述したSu-27MやSu-37で得た技術を応用したもので、主な項目はアビオニクス類の強化、精密誘導兵器の運用能力の追加、グラスコクピット化、アクティブレーダー誘導ミサイルの運用能力の追加などが挙げられる。この他にさらなる近代化改修型のSM2、新造機で電子機器のアップデートと完全なグラスコクピット化を施したSM3が存在する。
Su-35S
Su-27系統の最新型で、外観上ではカナードが撤去されている。
しかし自在な運動性はそのまま残しており、これは最新の飛行制御技術と強化エンジンのたまものによる。電子機器も最新世代のものが搭載されており、メーカーでは「第4世代++戦闘機」と分類しており、成層圏に限っては超音速巡航も可能。総合的には米欧の戦闘機にまったく引けをとらない能力を持つという。
NATOコードネームは「フランカーE1」。
関連タグ
F-15:Su-27戦闘機に相当するアメリカの高価格・大型戦闘機。
Su-35:Su-27の派生型であるSu-27SM2から発展した機体。
関連動画
【ロシア空軍運用・最新型フランカー『Su-35S フランカーE』】(英語字幕:2020年9月19日公開)
※『ロソボロネクスポルト( ROSOBORONEXPORT,JSC)』提供 公式YouTubeチャンネルより転載(詳細は統一航空機製造会社 公式サイト『Su-35』(外部リンク)の英語情報を参照の事)