概要
ぬうりひょん、滑瓢ともいう。発祥は岡山県や秋田県の伝承という説もある(相模女子大学の文学研究者・志村有弘の著作『日本ミステリアス 妖怪・怪奇・妖人事典』(p.73-p.75)より)。
発祥
岡山県
備讃瀬戸(備讃灘)で多く出没する海坊主。人間の頭ほどの大きさの丸い玉が波間に浮遊しているので、引き上げようとすると「ぬらり」と手をすり抜け「ひょん」と浮いてくるといったことを繰り返すので、この名が付けられた(クラゲやタコなどを妖怪視したともされる)。
秋田県
旅行家・博物学者の管江真澄の著作『管江真澄遊覧記』に掲載されている。
「男は女に逢ひ女は男に行き会ふ事あり、又ぬらりひょん、おとろし、野槌なんど百鬼夜行することありと、化物坂といふ人あり」
京極夏彦と多田克己が「ぬらりひょん」の名を分析し解説した記述によれば、「ぬらり」とは滑らかな様子・状態を表し、「ひょん(な)」は日葡辞書(ポルトガル語の日本語解説辞典)にも記載があり、思いがけない、奇妙だという意味である。
総合してぬらりひょんとは、「要領を得ない掴み所のない妖怪」である。頭の大きな隠居した老人姿で、口元に笑みを浮かべて全体的にきつい印象はないとされている。人々が忙しなくしているところにやって来ては勝手に家に上がりお茶などを飲む。姿は僧のようでもあり、商人のように振る舞う。人々が忙しなくしているものだから、人々はその正体を確かめようとはしない。本来何を目的として人前に現れるのかは、依然として不明である。
文献におけるぬらりひょん
妖怪画の『百鬼図巻』に残されている。同じく『画図百鬼夜行』に辻駕籠から降りて家屋に入ろうとするところも描かれている。乗り物から降りることを「ぬらりん」と言ったことから、名と動作をかけ合わせた図であると共に、「遊里通いの放蕩者」として描かれているという説もある。
『好色敗毒散』では、「その形ぬらりひょんとして、たとえば鯰に目口もないようなもの、******あれこそ嘘精なれ」とあり、のっぺらぼうのような物の怪として当時の人々に理解されていたと推測されている。
座敷童のような神格や精霊にされた由縁は、作家の佐藤有文や山田野理夫の著書だった。また、民俗学者の藤沢衛彦が「根拠は定かではない」にもかかわらず、怪物の親玉と自著で説明した(『地獄先生ぬ~べ~』では佐藤・山田・藤沢の説をイメージし、客人神として描かれている)。これらは村上健司、多田により、故なき創作であるとも指摘され、伝承は本来の意味から時に遠く離れ、人為的に捻じ曲げられつつあるとされる。
それらを概ね踏まえていた水木しげるは、『妖怪事典』等にて妖怪の総大将だが特に悪い妖怪ではないと記述した。そして以下の様に、『ゲゲゲの鬼太郎』で妖怪の纏め役としても登場させた。
創作物におけるぬらりひょん
『ゲゲゲの鬼太郎』のぬらりひょん
詳細はぬらりひょん(ゲゲゲの鬼太郎)へ
その他の創作作品におけるぬらりひょん
『妖怪ウォッチ』
当初はドケチングやヤミまろがその風貌から、ぬらりひょんが変化したものではないかと考える人もいたが、映画妖怪ウォッチの「エンマ大王と5つの物語だニャン!」および、「妖怪ウォッチバスターズ月兎組」から初めて登場する。詳細は→ぬらりひょん(妖怪ウォッチ)
『ぬらりひょんの孫』
主人公・奴良リクオの祖父で、関東妖怪総元締「奴良組」の初代組長。 いつの間にか家に上がりこむという性質は、他者の視覚認識に干渉する特殊能力としてアレンジされている。
詳細はぬらりひょん(ぬら孫)で説明。pixivでは総大将タグが使われることが多い。また、大半が若いころの美男子姿で描かれている。
『GANTZ』
大阪編のボスキャラクターとして登場。1体で100点という高得点が設定されており、それに見合う恐るべき戦闘能力を誇っている。
意識の外からの攻撃(つまり不意打ち)でないと決定打を与えられないという特性を持ち、何度倒しても(倒したように見えても)すぐに再生してパワーアップしてしまう。登場直後は一般的なぬらりひょんのイメージに沿う老人姿だったが、戦いの中で再生や変身を繰り返すうちに禍々しい怪物姿へと変貌していく。
目から放つ怪光線、触れることなく人体を破壊する念力、自分の体を自由自在に変形・増殖させる変身能力、GANTZハードスーツと互角に殴り合うパワーなどで大阪及び東京のGANTZチームを苦しめた。
『忍者戦隊カクレンジャー』
第1話「忍者でござる」に登場。400年前に妖怪忍者の頭領ヌラリヒョンとして暗躍していたが、先代カクレンジャーに封印されていた。頭部は遠目には妖怪画にあるような形に見えるが、大きな怪物の顔になっている。なお妖怪軍団の支配者として妖怪大魔王が登場したため、回想シーンにしか登場せずに本編のカクレンジャーとは交戦していない。
『あやかし天馬』
野球チームの監督として登場。物語の終盤に正体を明らかにする。
『地獄先生ぬ〜べ〜』
6巻の単発エピソードにて登場。
相手に手をかざして「わしは誰じゃ」と問うと、相手がぬらりひょんを「この場の主人と思い込む」怪しい光を発して催眠状態にしてしまう。
美樹の家に勝手に上がり込んだが、彼女のいつもの悪知恵で贅沢三昧に付き合わされることになる。
結果、妖術から目覚めた店主たちから追い回されるハメになり、最後は古びた商店の神棚に逃げ込んだ。
騒動を察知したぬ〜べ〜によって、ぬらりひょんが本来の己を見失っている事に気づき、その正体が「家々を渡り歩く客人神(まろうどかみ)」だと看破したことで神格を取り戻し、去っていった。
つまりぬ〜べ〜的解釈では、神としての力を失った神様となった。
『鬼灯の冷徹』
ナマズのようなヒゲをはやした小柄な老人。異様なほど影が薄く、飲食店に入っても店員に気付かれない。本人は内気な性格で、「妖怪の総大将」として描かれているぬらりひょんに憧れている。
関連タグ
効率の良い検索を行うため、版権作品に登場するぬらりひょんには作品名タグの併用を推奨したい。